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第13話 愛を受け取ってみた
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ビビは申し訳なさそうな様子で頭をすりつけてくる。
まるで小動物のような仕草だ。
「ごめんね。がんばって働く」
「気にしなくていい。また一緒に迷宮に潜ろう」
「うん」
何も考えずに歩いていると、周囲の風景がだんだんと変わってくる。
怪しげな雰囲気の店がそこかしこに並んでいた。
いつの間にか娼館が集まる区画に入っていたらしい。
ビビは興味深そうに見回しているが、散歩に適した場所ではないだろう。
道を何本か外れれば別の区画に出られる。
さっさと通り過ぎるべきだ。
そう考えた時、客引きの男が話しかけてきた。
「やあ、兄貴。久しぶりじゃないか。今日は女連れかい」
「ああ……」
俺は目をそらしながら応じる。
間の悪いことに、相手は顔馴染みの客引きだった。
一緒に酒場巡りをしたこともある仲だ。
最近は会っていなかったが、元気そうで何よりであった。
いや、そうではない。
俺は腕に抱き付くビビを見る。
先ほどまで上機嫌だったビビが無表情だ。
全身から冷気のようなものを発しており、迂闊に話しかけられない。
どうしたものかと思っていると、彼女から質問してきた。
「来たことがあるの?」
「付き合いで仕方なくだけどな」
「おいおい、嘘を言うなよ。お前さんは常連だろうが。お気に入りのミナが出勤しているがどうする。少し寄っていくかい?」
客引きが余計なことを言う。
ここが迷宮なら事故を装って攻撃しているところだ。
意地の悪い顔をしているので、こいつはわざとやっている。
ちょっとしたイタズラのつもりかもしれないが、俺からすると死活問題だった。
突如、ビビが俺の手を引っ張って歩き出した。
その先はなぜか娼館だった。
困惑する客引きを視線で黙らせて、ビビは俺を引きずるように運ぶ。
「行くよ」
「お、おい。ちょっと待ってくれ」
止めようとしても無駄だった。
俺は強引に娼館へと入らされる。
ビビは受付で淡々と話を進めていた。
やはり当惑気味の店員に要望を告げる。
「ミナを指名する」
「じ、時間はどうされますか」
「一晩でお願い」
そのまま案内された部屋には、蒼い髪の美女がいた。
ハーフエルフのミナだ。
何度か世話になったことがあり、まとまった金が入った時はよく利用していた。
ミナは妖艶な笑みを湛えて俺達を部屋に招く。
「へぇ、珍しいお客さんだね。三人での遊びを希望かな」
「違う」
ビビのぴしゃりと否定する。
彼女は俺をベッドに放り投げると、その上に容赦なく圧し掛かってきた。
俺の胸板を押さえるビビは、立たされたままのミナに言う。
「二人でするから見てて」
「えっ、それでいいの」
「うん」
ビビは頷いてから俺に視線を戻す。
暗い部屋の中で、彼女の双眸は独特の色を見せていた。
嫉妬と発情が入り交じっている。
「なあ、ビビ」
「何も訊かないで」
ビビが遮るように言った。
彼女はそっと顔を近付けてくる。
甘ったるい酒の香りが鼻腔をくすぐってきた。
だんだんと俺もその気になってくる。
状況的に仕方ないだろう。
理性が降参寸前であるのと自覚しながら、俺はやんわりと提案する。
「なあ、どうせならミナとも――」
ビビが情熱的なキスをしてくる。
俺は何も言えなくなった。
まるで小動物のような仕草だ。
「ごめんね。がんばって働く」
「気にしなくていい。また一緒に迷宮に潜ろう」
「うん」
何も考えずに歩いていると、周囲の風景がだんだんと変わってくる。
怪しげな雰囲気の店がそこかしこに並んでいた。
いつの間にか娼館が集まる区画に入っていたらしい。
ビビは興味深そうに見回しているが、散歩に適した場所ではないだろう。
道を何本か外れれば別の区画に出られる。
さっさと通り過ぎるべきだ。
そう考えた時、客引きの男が話しかけてきた。
「やあ、兄貴。久しぶりじゃないか。今日は女連れかい」
「ああ……」
俺は目をそらしながら応じる。
間の悪いことに、相手は顔馴染みの客引きだった。
一緒に酒場巡りをしたこともある仲だ。
最近は会っていなかったが、元気そうで何よりであった。
いや、そうではない。
俺は腕に抱き付くビビを見る。
先ほどまで上機嫌だったビビが無表情だ。
全身から冷気のようなものを発しており、迂闊に話しかけられない。
どうしたものかと思っていると、彼女から質問してきた。
「来たことがあるの?」
「付き合いで仕方なくだけどな」
「おいおい、嘘を言うなよ。お前さんは常連だろうが。お気に入りのミナが出勤しているがどうする。少し寄っていくかい?」
客引きが余計なことを言う。
ここが迷宮なら事故を装って攻撃しているところだ。
意地の悪い顔をしているので、こいつはわざとやっている。
ちょっとしたイタズラのつもりかもしれないが、俺からすると死活問題だった。
突如、ビビが俺の手を引っ張って歩き出した。
その先はなぜか娼館だった。
困惑する客引きを視線で黙らせて、ビビは俺を引きずるように運ぶ。
「行くよ」
「お、おい。ちょっと待ってくれ」
止めようとしても無駄だった。
俺は強引に娼館へと入らされる。
ビビは受付で淡々と話を進めていた。
やはり当惑気味の店員に要望を告げる。
「ミナを指名する」
「じ、時間はどうされますか」
「一晩でお願い」
そのまま案内された部屋には、蒼い髪の美女がいた。
ハーフエルフのミナだ。
何度か世話になったことがあり、まとまった金が入った時はよく利用していた。
ミナは妖艶な笑みを湛えて俺達を部屋に招く。
「へぇ、珍しいお客さんだね。三人での遊びを希望かな」
「違う」
ビビのぴしゃりと否定する。
彼女は俺をベッドに放り投げると、その上に容赦なく圧し掛かってきた。
俺の胸板を押さえるビビは、立たされたままのミナに言う。
「二人でするから見てて」
「えっ、それでいいの」
「うん」
ビビは頷いてから俺に視線を戻す。
暗い部屋の中で、彼女の双眸は独特の色を見せていた。
嫉妬と発情が入り交じっている。
「なあ、ビビ」
「何も訊かないで」
ビビが遮るように言った。
彼女はそっと顔を近付けてくる。
甘ったるい酒の香りが鼻腔をくすぐってきた。
だんだんと俺もその気になってくる。
状況的に仕方ないだろう。
理性が降参寸前であるのと自覚しながら、俺はやんわりと提案する。
「なあ、どうせならミナとも――」
ビビが情熱的なキスをしてくる。
俺は何も言えなくなった。
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