金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している ~平凡冒険者の迷宮スローライフ~

結城絡繰

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第41話 魔術を戦略に組み込んでみた

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 トロールが俺に気付く。
 のっそりと身体を動かすも、まだ戦闘態勢ではない。
 俺が殺気を発していないからだ。
 じっとりとした目で見下ろしてくる。

 平常心は重要だ。
 魔物によっては初動を遅らせることができる。
 殺気の有無がここまで影響を与えるとは知らなかった。
 魔術以前にこれを学べた時点で、鍛練の甲斐はあったと思う。

(さて、どうするか)

 現在、俺は先制攻撃できる立場にある。
 魔術による不意打ちは選択肢から早々に省く。
 遠距離から直接攻撃できる手段に乏しく、不安定で確実性が低い。

 そもそも俺の魔力量では、遠距離攻撃できる魔術がほとんど使えなかった。
 一応は全属性の適性持ちなので、ビビのように風の刃を飛ばせる。
 しかし、射程と威力が大幅に劣化するため、攻撃手段として成立しない代物なのだ。
 だから使えないのと同じである。

(魔術以外……となっても俺は困らない。そのための手段は揃えている)

 俺は鞄から小瓶を取り出す。
 中には紫色の液体が入っていた。
 それをトロールの顔を目がけて投擲する。

 トロールは片手で遮ろうとするも間に合わず、小瓶は顔面に直撃した。
 ガラス片が割れて中身の液体が四散する。
 その途端、トロールが咆哮を上げて暴れ始めた。

 俺は被害を受けない位置で次の攻撃の準備を進める。
 小瓶の中身は猛毒だ。
 致死性が高い薬草を調合したのである。
 さらに闇属性の魔力を混ぜることで効能を飛躍的に向上させていた。

 トロールにはあまり関係ないが、闇属性には相手の魔力を乱す力がある。
 魔術を扱う敵にとってはさらに致命的だろう。
 水属性の初歩で魔力の液果や気化を習ったので、それを使って闇属性を調合に応用したのだった。

 魔術単体では遠距離攻撃に使えないが、他と組み合わせることで独自の効果を発揮する。
 この特性は、器用貧乏な俺との相性が良い。
 今までの戦い方が純粋に強化されるため、とてもやりやすい。
 水属性の液化と闇属性の毒はお気に入りの一つである。

 暴れまくるトロールは広間を破壊していた。
 白煙を上げる顔は焼け爛れて、両目が溶けて潰れている。
 肉体の再生力が高いトロールだが、部位よっては回復できない。
 眼球などはその代表例だった。

 これで視覚を潰すことができた。
 初撃としては上々だろう。
 負傷したトロールは他の方法で俺を認識しないといけない。
 激昂しているので余計に難しくなっているはずだ。

 俺は新たな魔術を発動し、闇で全身を覆った。
 外見的には黒い人型となっており、この状態は魔力の反応を遮断している。
 早い話、他者からの感知を誤魔化せるのだ。

 これも魔術師が相手だと効果は高い。
 魔力消費がごく僅かなのも良い。
 一度使えばしばらく維持できるため、魔力量が少ない俺にも適した術である。

 トロールは五感頼りの魔物なので、今回はそこまで必要ではない。
 それでも気付かれる可能性を少しでも低くしておいた方が安全だろう。

(ここまでは順調だな。闇魔術も上手く発動できている)

 俺はトロールを観察しながら自己評価を下す。
 もっとも、まだ先制攻撃が成功しただけに過ぎない。
 本番はここからだ。
 俺は風魔術で自分の足音を消すと、トロールに向かって突進した。
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