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第46話 異常性を指摘されてみた

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 その後、俺達は何事もなく迷宮から帰還した。
 二度ほど魔物に遭遇したが、どちらもビビが瞬殺してしまった。
 風魔術を操るようになった彼女は、もはや誰にも止められない速度を誇る。
 加えて中距離や遠距離への攻撃も可能となり、戦いにおける死角がなくなった。
 様々な策や道具をこね回す俺と違い、単純に強い戦士と言えよう。

 ギルドに赴くと、例の職員が出迎えに現れた。
 彼女は俺の怪我を見て笑う。

「おかえりなさい。随分と派手にやったみたいっすね」

「まあな。その代わり戦果は大きい」

 俺は闇魔術の穴からトロールの防具を取り出した。
 床に置いた際に大きな音が鳴り、周りの冒険者が目を丸くしている。
 闇魔術の使い手はかなり少ないのだ。
 まさか俺が行使するとは思わなかったのだろう。
 それは職員も同様だったようで、彼女は防具と俺と交互に見やる。

「闇魔術の収納っすか……というか、この馬鹿な大きさの防具は何なんです?」

「トロールの防具だ。死霊魔術が仕込まれている。ギルドなら改良できるだろう。俺達の手には余るから売却したい」

「なるほど。二人で協力して狩ったんすね」

「違う。ご主人が一人で倒した」

 ビビが素早く訂正した。
 それを聞いた職員の表情が固まる。
 あまりの驚きで、いよいよ反応すらできなくなったようだ。
 彼女は困惑した顔で呟く。

「え……本当っすか」

「本当だ。おかげで大怪我を負ったがな」

「いやいやいや。さすがにおかしいでしょ。あなたの実力はよく知っています。ちょっと魔術が使えるようになったくらいじゃ、とても敵う相手ではないっすよ」

 職員は早口でそう主張する。
 優秀な魔術師である彼女だからこそ、俺の戦果が不可解であると考えたのだろう。
 別におかしなことではない。
 俺だって客観的に見れば違和感を覚えるほどである。

「疑うのか」

「事実を述べているだけです。死霊魔術が内蔵した防具ということは、アンデッド化した個体も倒したということですよね。尚更ありえません。一人前の魔術師でも単独での討伐は困難でしょう」

 職員が動揺しすぎて普通の口調になっている。
 普段からは考えられないほど饒舌な上に必死だ。
 俺は彼女を落ち着かせながら、トロール討伐までの流れを説明する。
 なるべく細かく話して納得してもらうことにした。

「魔術主体ではなく、今までの戦い方を拡張させた。全属性の利便性に助けられたのは否めない」

「ちょっと待ってください。あなたの魔力量ではそこまで多様なことはできませんよ」

「消費魔力を節約できるように加減をしている。魔術書にも記載されていたぞ」

「それは確かにそうなんですけど、さすがに連発しすぎです。魔道具に肩代わりさせた属性付与を抜きにしても異常ですね」

 職員は腕組みをして考え込む。
 いつになく真面目な表情の彼女は、ぶつぶつと高速の独り言を始めた。
 瞬きせずに延々と呟き続ける姿は不気味だ。
 これは魔術師としての顔なのだろうか。
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