金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している ~平凡冒険者の迷宮スローライフ~

結城絡繰

文字の大きさ
71 / 111

第71話 死闘を制してみた

しおりを挟む
 ずっと余裕と慢心を映していた死霊術師の目に驚愕が走る。
 彼はよろめいて後ずさり、己に刺さった短剣を凝視した。

「なっ……こ、これは……」

「さっき宝箱で手に入れた全属性の魔術武器だ」

 最初は黒い刃から闇属性かと思った。
 しかし、内包された魔力と魔術書で得た知識により、それが勘違いだと判明した。

 短剣が全属性の触媒だと知った俺は、賭けに打って出た。
 錆びた剣で攻撃する直前、闇魔術の収納に入れていた短剣をもう一方の手に隠し持ち、光属性符を付与してから刺したのだ。
 本来なら難なく防がれただろうが、錆びた剣を囮にすることで成功させた。

 これらの騙しの技能は知り合いの盗賊から得たものだ。
 相手の意識や視線を誘導することで、本命の一撃を命中させるのである。
 どちらかと言うと暗殺術に近いかもしれない。
 あまり使う機会がなかったが、覚えておいてよかった。

 死霊術師は短剣を引き抜こうとする。
 ところが、触れた指が浄化されて溶けた。
 どうやら浄化の効果が柄まで浸透しているようだ。
 そのせいで握る前に指が崩れてしまうらしい。
 鼻血を垂らす死霊術師は、廃墟を背にして叫ぶ。

「くそ、触れられ、ない……!」

 その狼狽を見るに、死霊術師が焦っているのは間違いなかった。
 俺は治療用の錠剤を噛み砕きながら告げる。

「魔力の流れからして、強い力を持っていることはすぐに分かった。お前にどこまで通用するか未知数だったが、その様子だと致命傷らしいな」

「ま、まさか……賭けに出たのか。正体の分からない魔術武器に、頼るなど、馬鹿げている……っ」

「そうでもしないと勝てない戦いだった。平凡な俺に死霊術師の相手は荷が重すぎる」

 俺は荒い呼吸を整えながら言う。
 心臓が痛みを訴えていた。
 脱力感も凄まじく、今にも気を失いそうだった。

 錆びた剣と黒い刃の短剣を使い、左右の手でほぼ同時に属性付与を行ったのだ。
 魔力が枯渇寸前でそんな無茶をやったため、肉体への反動が大きい。
 追撃どころか、その場から動けないほど疲弊している。

 短剣の処置を諦めた死霊術師は禍々しい殺気を発散させた。
 怒り狂う彼は俺を睨んで構えを取る。

「もう勝ったつもりで、いるのか……憐れだなァッ!」

 何らかの術を行使させる気だったのだろう。
 しかし、その前に死霊術師は大量に吐血した。
 膝をついて再び血を吐き出す。
 鼻や目からも、どろどろと鮮血が流れた。

「ゲブァッ!?」

 激しく血を吐く死霊術師は、震える手を動かす。
 やはり何も発動しない。
 それどころか指先から崩壊が進み、再生もされず朽ちていく。
 死霊術師は血走った目で吼えた。

「な、なんだこの短剣は……僕の魔力を、聖属性に変換している……ッ!?」

 動くことができない俺の前で、死霊術師の肉体が崩壊が悪化する。
 まず四肢が蒸発して倒れた。
 短剣の刺さる脇腹を中心に、胴体も浄化されていく。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...