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学園・青春系
勝ち気なあの子
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つかず離れず、それとなく。
三歩下がって影踏まず。
昭和より先の昔の「いい女」の条件は、今や恋する草食男子の行動パターンの様だった。
当時の大和男子達が聞いたら失神してしまいかねない。
そして現代の大和撫子と言えば……、
「……ウザい。」
「え?!」
思わず自分に言われたのかと思い、何をしてしまったのだろうとあわあわとそれまでの行動を振り返る。
えっと……他の女の子達と話が終わるまで黙って待ってた事かな……それとも頭が痛いと言った時、すぐに頭痛薬を渡した事かな……それとも……。
おろおろとする僕を、あの子はさらに苛ついたように睨んだ。
……怖い。
「私、はっきり言って欲しいの。好きなら好きって。」
「え……ええぇぇっ?!」
「わかんないわよ、匂わされたって!!単に優しいのか!自分に向けられた好意なのか!!」
「え……えっと……それは……。」
「見ててイライラすんのよ!!このドラマ!!」
「………………。あ、昨日の新作ドラマ……。」
僕はほっと胸を撫で下ろす。
いつ、自分の秘めた想いに気づかれたのだろうと青くなってしまった。
「……でも、始まったばかりだよ。原作知ってる人は凄く良いって言ってたし。」
「そうかもしれないけど!私は嫌!!」
そう言って、その子は見ていたスマホの画面を閉じた。
そして「さぁ、これから文句を言うぞ!」という顔で僕を見る。
「ほのめかせて察してって無理。それを真に受けて、そいつが単に皆に優しいだけの性格だったらどうよ?!浮かれただけバカ見るじゃん?!一人で勘違いして!!赤っ恥じゃん!!トキメキ損だよ?!私の淡い想いを返せって思うわ。」
「は、あははははは……。」
真っ直ぐなその言葉が胸に痛い。
でもね、こっちも怖いんだよ。
好意をはっきり表して、「あんたごときが何?!」とか鼻で笑われたらもう、僕ら草食系は立ち直れないんだよ……。
だからどうしても予防線を張ってしまう。
君だけに優しいんじゃないんだよ?
皆に優しいだけで、特別な意味はないんだよ?
身の程知らずにそんなだいそれた想いなんか持ってないんだよ、と……。
「……好きなら好きって言ってくれなきゃわかんない。」
その子がムスッと僕を睨んだ。
自分に言われているようでたじろいでしまう。
「………………。そ、こうなんだ……。」
「そう!!わかんないままなら、良いも悪いも何も答えられないじゃん!」
「う~ん、答えは……いらないのかもしれないし……。」
「だよね~。そういう人って良い人で終わってそれでいいんだろうね~。」
呆れたようにため息をつきながら、その子は言った。
ずきりと胸が痛む。
良い人で終わっていいよ。
深く傷つくのも嫌だ。
傷ついた上、側にいれなくなるより良い人のままで……。
……本当に?
本当にそれでいいと?
もし叶うなら、誰よりもその側にいたいんじゃないのか?
「……でも、私は嫌。」
「え?」
「どうせなら、戦って死ぬ。」
思わぬ言葉に、ぎょっとその横顔を見つめる。
真剣な……覚悟を決めた眼。
武士の眼ってこんなんだろうなぁと急に思った。
現代の大和撫子は、いつだってその心に真剣を握りしめている。
戦う覚悟を持っている。
それが負け戦だろうと、最後まで自分が納得するまで戦い続ける。
そんな彼女が、僕は好きだ。
どれだけ傷付こうとも、負け戦だろうとも、まっすぐに生きる彼女が好きだ。
泣く事も、みっともなくもがく事も恐れないその強さが好きだ。
「…………なら、好きって言われたらどうするの?」
僕は恐る恐る聞いた。
そしたらその子は水を得た魚の様にニッと笑った。
「受けて立つ!!」
自信有りげにそう言って笑った。
彼女の心の刃がキラリと光る。
「受けて立つ??」
「そう!真っ向勝負!!」
「勝負?!」
「売られた喧嘩は買うに決まってんじゃん!!」
「喧嘩?!」
「好きも嫌いも!真正面から迎え撃って応えるわ!!」
「…………間違いなく皆、返り討ちにされそう……。」
何とも男前なその言葉に、僕はくらくらしてしまった。
下手に好意を口になんかしたら、ケチョンケチョンに叩きのめされそうだ。
「…………で?どうするの?」
「え??」
「喧嘩。」
「…………え??」
その子は少しだけ顔を赤らめ、ムスッと僕を睨んだ。
途端、僕は瞬間湯沸し器のように真っ赤になった。
そこにある意味を、やっと僕は理解したのだ。
「………………お、お手柔らかに、お願いします……。」
真っ赤になった僕は俯いて、小さな声でそう答えたのだった。
三歩下がって影踏まず。
昭和より先の昔の「いい女」の条件は、今や恋する草食男子の行動パターンの様だった。
当時の大和男子達が聞いたら失神してしまいかねない。
そして現代の大和撫子と言えば……、
「……ウザい。」
「え?!」
思わず自分に言われたのかと思い、何をしてしまったのだろうとあわあわとそれまでの行動を振り返る。
えっと……他の女の子達と話が終わるまで黙って待ってた事かな……それとも頭が痛いと言った時、すぐに頭痛薬を渡した事かな……それとも……。
おろおろとする僕を、あの子はさらに苛ついたように睨んだ。
……怖い。
「私、はっきり言って欲しいの。好きなら好きって。」
「え……ええぇぇっ?!」
「わかんないわよ、匂わされたって!!単に優しいのか!自分に向けられた好意なのか!!」
「え……えっと……それは……。」
「見ててイライラすんのよ!!このドラマ!!」
「………………。あ、昨日の新作ドラマ……。」
僕はほっと胸を撫で下ろす。
いつ、自分の秘めた想いに気づかれたのだろうと青くなってしまった。
「……でも、始まったばかりだよ。原作知ってる人は凄く良いって言ってたし。」
「そうかもしれないけど!私は嫌!!」
そう言って、その子は見ていたスマホの画面を閉じた。
そして「さぁ、これから文句を言うぞ!」という顔で僕を見る。
「ほのめかせて察してって無理。それを真に受けて、そいつが単に皆に優しいだけの性格だったらどうよ?!浮かれただけバカ見るじゃん?!一人で勘違いして!!赤っ恥じゃん!!トキメキ損だよ?!私の淡い想いを返せって思うわ。」
「は、あははははは……。」
真っ直ぐなその言葉が胸に痛い。
でもね、こっちも怖いんだよ。
好意をはっきり表して、「あんたごときが何?!」とか鼻で笑われたらもう、僕ら草食系は立ち直れないんだよ……。
だからどうしても予防線を張ってしまう。
君だけに優しいんじゃないんだよ?
皆に優しいだけで、特別な意味はないんだよ?
身の程知らずにそんなだいそれた想いなんか持ってないんだよ、と……。
「……好きなら好きって言ってくれなきゃわかんない。」
その子がムスッと僕を睨んだ。
自分に言われているようでたじろいでしまう。
「………………。そ、こうなんだ……。」
「そう!!わかんないままなら、良いも悪いも何も答えられないじゃん!」
「う~ん、答えは……いらないのかもしれないし……。」
「だよね~。そういう人って良い人で終わってそれでいいんだろうね~。」
呆れたようにため息をつきながら、その子は言った。
ずきりと胸が痛む。
良い人で終わっていいよ。
深く傷つくのも嫌だ。
傷ついた上、側にいれなくなるより良い人のままで……。
……本当に?
本当にそれでいいと?
もし叶うなら、誰よりもその側にいたいんじゃないのか?
「……でも、私は嫌。」
「え?」
「どうせなら、戦って死ぬ。」
思わぬ言葉に、ぎょっとその横顔を見つめる。
真剣な……覚悟を決めた眼。
武士の眼ってこんなんだろうなぁと急に思った。
現代の大和撫子は、いつだってその心に真剣を握りしめている。
戦う覚悟を持っている。
それが負け戦だろうと、最後まで自分が納得するまで戦い続ける。
そんな彼女が、僕は好きだ。
どれだけ傷付こうとも、負け戦だろうとも、まっすぐに生きる彼女が好きだ。
泣く事も、みっともなくもがく事も恐れないその強さが好きだ。
「…………なら、好きって言われたらどうするの?」
僕は恐る恐る聞いた。
そしたらその子は水を得た魚の様にニッと笑った。
「受けて立つ!!」
自信有りげにそう言って笑った。
彼女の心の刃がキラリと光る。
「受けて立つ??」
「そう!真っ向勝負!!」
「勝負?!」
「売られた喧嘩は買うに決まってんじゃん!!」
「喧嘩?!」
「好きも嫌いも!真正面から迎え撃って応えるわ!!」
「…………間違いなく皆、返り討ちにされそう……。」
何とも男前なその言葉に、僕はくらくらしてしまった。
下手に好意を口になんかしたら、ケチョンケチョンに叩きのめされそうだ。
「…………で?どうするの?」
「え??」
「喧嘩。」
「…………え??」
その子は少しだけ顔を赤らめ、ムスッと僕を睨んだ。
途端、僕は瞬間湯沸し器のように真っ赤になった。
そこにある意味を、やっと僕は理解したのだ。
「………………お、お手柔らかに、お願いします……。」
真っ赤になった僕は俯いて、小さな声でそう答えたのだった。
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