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短編(1話完結)
EXIT〜出口はこちらです
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まことしやかに囁かれる都市伝説がある。
あるお化け屋敷で人が行方不明になると言う話だ。
何とも古典的な都市伝説だなぁと思う。
どうせどこかの誰かが冗談で言い出したのがSNSなんかで広まって真偽のほどがわからなくなったか、遊園地が客寄せの為に立てた噂だろう。
比較的長いそのお化け屋敷の中をツレと歩く。
撮影禁止とあったが、動画投稿サイトに検証動画として上げる為、ツレは隠しカメラで内部を撮影していた。
「お化け屋敷的には普通だな?古典的だし、びっくりはするけど、さほど怖くねぇっつうか~。」
「だな~。拍子抜け~。」
最近、視聴率が落ちたと嘆きながら、危機改正の企画としてこのお化け屋敷の検証動画を上げるつもりだったらしいツレはつまらなそうにそう答えた。
ほぼ真っ暗な中、出口に向かって歩く俺達。
大掛かりな仕掛けが終わった後のこの短い道筋には、特に仕掛けもない。
ただ、まっすぐ歩くだけ。
「……あれ?出口、あっちじゃね??」
後ろを歩いていたツレがそう呟いた。
一本道なのに、何言ってんだこいつ??
そう思って振り返る。
「何言ってんだよ?お前……」
振り返ると、そこにツレはいなかった。
流石に少しギョッとする。
「え??トシヤ??」
だが直ぐに思い直した。
面白い映像が取れなかったものだから、おそらく俺を脅かして面白い映像を取ろうとしているのだ。
その辺に隠れてワッとかやるつもりなのだろう。
そうは行くかと俺はその場で黙って待っていた。
あまり気の長い奴ではないから、こちらが何もせずにいれば痺れを切らし、「何だよ、ノリ悪りぃな?!」とか少し怒って出てくるだろう。
そう思って待つ事5分。
10分……。
15分……。
アイツにしては粘るな?
意地になっているのかもしれない。
俺はため息をついて来た方向に向かって歩き出した。
こんな所にいつまでもいたって仕方ないのだ。
ワッとやりたいならやらせてやればいい。
そう思って逆に歩いていく。
だが一向にツレは出てこない。
見落としたのかとまた戻って隠れられそうな所を探すが見当たらない。
そもそも、大掛かりな仕掛けが終わった先の短い出口までの通路は何の変哲もない一本道で、特に隠れる場所もない。
「……トシヤ??」
少しだけ胸騒ぎがしたが、動画投稿を始めてからのアイツはちょっと度が過ぎたイタズラをしてくる事も多かったので、これも悪ノリしてお化け屋敷を逆走する映像を取っているのかもしれない。
だとしたら、従業員に見つかって注意される可能性もある。
俺はそっちを心配して小走りにお化け屋敷の中を戻りながらあいつを探した。
だが、途中で後から入ってきた別の客と鉢合わせる。
逆走してくる奴がいるとは普通は思わないのでカップルの女性に物凄い悲鳴を上げられた。
申し訳なく思い謝りながら、他に逆走していた奴がいないか聞いてみたが、出会ったのは俺が初めてだと言われた。
流石に焦り始める。
その客達に、中でツレがいなくなって俺が探している事を従業員に伝えて欲しいと頼み、俺はお化け屋敷の中を探し回った。
だがやはり見つからない。
こうなると考えられるのは、どこかに隠れていて俺が探しに戻ってきた隙をついて自分は外に出て、必死に探して出てきた俺の映像を取ろうとしている可能性だ。
そう思うと途端に馬鹿らしくなって、俺は出口に向かって歩き出した。
そしてさっきの一本道に来たはずなのだが……。
「……あれ??出口ってこっちなのか??」
その道の脇道に「EXIT~出口はこちら」の看板が細々と光っているのが見えた。
はじめに一本道だと思っていた先は特に出口の標識はない。
「そう言えば、あいつもそんな事言ってたよな……。」
どうやら俺の方が出口を間違えて、一人で行ったり来たりしていたようだ。
きっと外で「いつまで待たせんだよ!」と苛々したツレが待っているだろう。
取り越し苦労をした上、ツレにグチグチ言われると思うと頭が痛かった。
俺はその、頼りな下げに光る「EXIT」の看板の方に歩いて行った。
「本当なんですって!!」
カップルの女性が興奮気味にそう喚いた。
男の方はそれを「悪戯かもしれないだろ?!」と必死になだめている。
従業員達は顔を見合わせ困り果てた。
慌てたように出てきたこのカップルが、中で学生ぐらいの男の子が「ツレがいなくなった」と探し回っていると知らせてきたのだ。
係員は入場を止め、中を見て回ったがそんな学生風の若者は一人としていなかった。
「防犯カメラとかついてないんですか?!その子達が出てきたって、ちゃんと証明できるんですか?!」
「そう言われても……。確かに君たちの前に男の子達が2人入ったけど……。中には誰もいなかったよ。」
「最近、悪ふざけが過ぎるお客さんも多いから、隠れていないか明かりもつけて探したけど……。」
困惑する従業員達。
どう見ても疑いの目で見られているのはこちらのようだ。
流石にあまりよろしくないと思ったのか、男の方が納得していない女を連れて去って行った。
迷惑客だと思われたら、たまったものではないからだ。
「もう!なんで私達が悪く取られるのよ!!信じらんない!!」
「仕方ないだろ?多分、俺達が騙されたんだって。」
「そんな子には見えなかったわよ!!」
「あんな暗い中だぞ?顔なんか見えなかっただろうが。」
肝心の彼氏も頼りにならず、彼女は憤慨したまま、SNSに自分の身に起きた事を書いて上げた。
【EXIT】
①退去する、退出する、退場する
②死ぬ、この世を去る
③終了する、抜け出る
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【AI朗読】
https://stand.fm/episodes/65ac7d6b255aeceef4952586
あるお化け屋敷で人が行方不明になると言う話だ。
何とも古典的な都市伝説だなぁと思う。
どうせどこかの誰かが冗談で言い出したのがSNSなんかで広まって真偽のほどがわからなくなったか、遊園地が客寄せの為に立てた噂だろう。
比較的長いそのお化け屋敷の中をツレと歩く。
撮影禁止とあったが、動画投稿サイトに検証動画として上げる為、ツレは隠しカメラで内部を撮影していた。
「お化け屋敷的には普通だな?古典的だし、びっくりはするけど、さほど怖くねぇっつうか~。」
「だな~。拍子抜け~。」
最近、視聴率が落ちたと嘆きながら、危機改正の企画としてこのお化け屋敷の検証動画を上げるつもりだったらしいツレはつまらなそうにそう答えた。
ほぼ真っ暗な中、出口に向かって歩く俺達。
大掛かりな仕掛けが終わった後のこの短い道筋には、特に仕掛けもない。
ただ、まっすぐ歩くだけ。
「……あれ?出口、あっちじゃね??」
後ろを歩いていたツレがそう呟いた。
一本道なのに、何言ってんだこいつ??
そう思って振り返る。
「何言ってんだよ?お前……」
振り返ると、そこにツレはいなかった。
流石に少しギョッとする。
「え??トシヤ??」
だが直ぐに思い直した。
面白い映像が取れなかったものだから、おそらく俺を脅かして面白い映像を取ろうとしているのだ。
その辺に隠れてワッとかやるつもりなのだろう。
そうは行くかと俺はその場で黙って待っていた。
あまり気の長い奴ではないから、こちらが何もせずにいれば痺れを切らし、「何だよ、ノリ悪りぃな?!」とか少し怒って出てくるだろう。
そう思って待つ事5分。
10分……。
15分……。
アイツにしては粘るな?
意地になっているのかもしれない。
俺はため息をついて来た方向に向かって歩き出した。
こんな所にいつまでもいたって仕方ないのだ。
ワッとやりたいならやらせてやればいい。
そう思って逆に歩いていく。
だが一向にツレは出てこない。
見落としたのかとまた戻って隠れられそうな所を探すが見当たらない。
そもそも、大掛かりな仕掛けが終わった先の短い出口までの通路は何の変哲もない一本道で、特に隠れる場所もない。
「……トシヤ??」
少しだけ胸騒ぎがしたが、動画投稿を始めてからのアイツはちょっと度が過ぎたイタズラをしてくる事も多かったので、これも悪ノリしてお化け屋敷を逆走する映像を取っているのかもしれない。
だとしたら、従業員に見つかって注意される可能性もある。
俺はそっちを心配して小走りにお化け屋敷の中を戻りながらあいつを探した。
だが、途中で後から入ってきた別の客と鉢合わせる。
逆走してくる奴がいるとは普通は思わないのでカップルの女性に物凄い悲鳴を上げられた。
申し訳なく思い謝りながら、他に逆走していた奴がいないか聞いてみたが、出会ったのは俺が初めてだと言われた。
流石に焦り始める。
その客達に、中でツレがいなくなって俺が探している事を従業員に伝えて欲しいと頼み、俺はお化け屋敷の中を探し回った。
だがやはり見つからない。
こうなると考えられるのは、どこかに隠れていて俺が探しに戻ってきた隙をついて自分は外に出て、必死に探して出てきた俺の映像を取ろうとしている可能性だ。
そう思うと途端に馬鹿らしくなって、俺は出口に向かって歩き出した。
そしてさっきの一本道に来たはずなのだが……。
「……あれ??出口ってこっちなのか??」
その道の脇道に「EXIT~出口はこちら」の看板が細々と光っているのが見えた。
はじめに一本道だと思っていた先は特に出口の標識はない。
「そう言えば、あいつもそんな事言ってたよな……。」
どうやら俺の方が出口を間違えて、一人で行ったり来たりしていたようだ。
きっと外で「いつまで待たせんだよ!」と苛々したツレが待っているだろう。
取り越し苦労をした上、ツレにグチグチ言われると思うと頭が痛かった。
俺はその、頼りな下げに光る「EXIT」の看板の方に歩いて行った。
「本当なんですって!!」
カップルの女性が興奮気味にそう喚いた。
男の方はそれを「悪戯かもしれないだろ?!」と必死になだめている。
従業員達は顔を見合わせ困り果てた。
慌てたように出てきたこのカップルが、中で学生ぐらいの男の子が「ツレがいなくなった」と探し回っていると知らせてきたのだ。
係員は入場を止め、中を見て回ったがそんな学生風の若者は一人としていなかった。
「防犯カメラとかついてないんですか?!その子達が出てきたって、ちゃんと証明できるんですか?!」
「そう言われても……。確かに君たちの前に男の子達が2人入ったけど……。中には誰もいなかったよ。」
「最近、悪ふざけが過ぎるお客さんも多いから、隠れていないか明かりもつけて探したけど……。」
困惑する従業員達。
どう見ても疑いの目で見られているのはこちらのようだ。
流石にあまりよろしくないと思ったのか、男の方が納得していない女を連れて去って行った。
迷惑客だと思われたら、たまったものではないからだ。
「もう!なんで私達が悪く取られるのよ!!信じらんない!!」
「仕方ないだろ?多分、俺達が騙されたんだって。」
「そんな子には見えなかったわよ!!」
「あんな暗い中だぞ?顔なんか見えなかっただろうが。」
肝心の彼氏も頼りにならず、彼女は憤慨したまま、SNSに自分の身に起きた事を書いて上げた。
【EXIT】
①退去する、退出する、退場する
②死ぬ、この世を去る
③終了する、抜け出る
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【AI朗読】
https://stand.fm/episodes/65ac7d6b255aeceef4952586
応援ありがとうございます!
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