異世界バックヤード

ねぎ(ポン酢)

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はじめまして、異世界。

記憶、売ります。

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ここは、プラーシパル。
異世界都市だ。

私、れんげ。
元の世界で言うところの大学2年生。
2週間前にこの世界にやってきた。
正直、気づいたらこの世界にいたから、何がどうなってここに来たのか覚えていない。
ただ、見てくれは変わっていないので、異世界転生したんじゃなくて、異世界転移したのだと言う事はわかっている。

『レンゲ?お客さん入ったから、スタンバって?』

「了解です。マーメイ。」

私はインカムから聞こえた声に答え、チラリとモニターを見た。
小さなモニターの一つに受付のマーメイが映っていて、カメラに向かってグッドサインをしている。
私も顔を上げ、私を撮っている小型カメラに笑いかけてグッドサインを返した。

さてと、仕事だ。
異世界に来たって生活するにはお金が必要だ。
私はまず両足首に電子装置のついたバンドを巻きつけると、腕に何ヶ所かセンサーを取り付ける。
それからフルヘルメット型のセンサーを被り、最後に両手にセンサーグローブをはめた。
そしてリラックスできるよう、リクライニングチェアーに座って、体を少し倒した。
そして覚醒スイッチを入れ、全システムを待機モードからスタンバイモードに切り替える。

「おはようさん~。」

部屋全体のシステムが目覚めると同時に、奥の部屋から眠そうな男性がこちらの部屋に入ってきた。
私は顔が赤くなるのを悟られないようにしながら、ムッとして見せた。
もっとも、これだけ装置がついていれば、私の表情なんて見える事はないのだけれども。

「おはようって、もう昼近いですよ?ユーゴさん?」

「そなの?知らんかったわ。」

「知らないって……。」

慣れた調子でユーゴさんは私の周りの装置を操作していく。
まだ待機モードのヘルメットモニター越しにそのかったるそうな姿を観察した。

「昨日の依頼、仕上げとって遅くなったねん。」

「寝てないんですか?」

「寝たで?さっきまでぐっすりや。モーニングコールがマーメイのどなり声じゃなきゃ、いい目覚めだったで。次からはレンゲちゃんが起こしてや。」

「私じゃユーゴさん、起きないでしょ?」

「せやな。」

クククッと喉で笑う声が繋がったインカム越しに響く。
ニヤァと笑いながら振り向かれ、変にドキッとする。
それを知ってか知らずか、インカムマイクを見せつけるようにしてユーゴさんが私に囁いた。

『準備ええか??』

「はい。」

『ほないくで。』

ヘルメットモニターの画面が切り替わる。
そして私は、暗示にかけられたように意識を手放した。
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