トイレが言えないっ!

かろ丸

文字の大きさ
3 / 59
2.電車

2

 連絡先を聞け、といわれたものの、そんな度胸があれば今日まで友達がいないということはなかったと思う。
 また今日もギリギリに来た鷹橋にホームルームが終わってから挨拶をするのさえも、覚悟を決め、違和感がないように自然を装い、心のなかで10回ほど唱えてからでないと口に出せなかった。

「お、はよう…」

「おはよう」

 にっと人好きにする笑顔で鷹橋は微笑む。

「今日も暑いねー」

 他愛もない会話を鷹橋がふってくれ、こくこくと頷いた。

「水が、すぐなくなっちゃう…」

 陽登はチラと自分の水筒を見る。

「わかる。ていうかちゃんと水筒なのえらいな。俺はいつも忘れてペットボトルなんだよね。もったいないよなー妹とか弟の分は忘れず用意するのに」

 ずいぶん家庭的な話題に少し笑った。

「弟と妹がいるんだ?」

「そうそう八人兄弟。多すぎだろ。8って。自分でもびっくりする。前まで5人だったのが急に3人も増えてさ」

 鷹橋は笑いながら話す。急に3人、連れ子だろうか。複雑な事情ならあまり深く突っ込んでもいけない気がして慎重に聞いていたが、どうやら一番下の兄弟が三つ子らしい。
 昼は学校に来て、終わるとバイトに出かけ、夜は兄弟の面倒をみたり三つ子の夜泣きをあやしているようで、何時も眠そうな鷹橋の理由がわかって少し距離が近づいたような気がした。
 
 ふと鷹橋の妹の話で連絡先を聞けという陽愛の言葉を思い出して、連絡先を聞くなら今だろうか、でも鷹橋の話が終わってないし、どうやってきこう?と言いたい言葉に緊張して鷹橋を見つめていると、彼は不思議そうに陽登を見返す。

「どした?なにか俺についてる?」

 首をふると、先生が入ってきて、同時にチャイムが鳴った。名残惜しい気持ちで前を向き、授業が始まった。

 その後も、休み時間に聞こうとタイミングを見計らっていたものの、トイレを済ませたり移動教室があったり休み中は鷹橋はそもそもねていたり、とタイミングをつかめずに放課後になった。
 何時も鷹橋は走って教室を出て帰るから、聞けないまま1日が終わってしまったと落ち込んでいると、後ろから鷹橋の陽登を呼びかける声がする。

「広瀬さぁ」

 こんなに彼がゆっくりとしているのは極めて稀な出来事だった。

「電車?」

 何を言われているのか分からず3秒ほど考えて、帰宅方法を聞かれているのだと気づいてこくこくと頷く。

「電車」



「何線?…あぁ、あっち方面ね、俺も一緒。一緒に帰ろうぜ。俺今日バイト休みなんだよ」



 トントン拍子に進んでいった一緒に下校という今までありえなかったイベントと連絡先を聞くチャンスに気をとられ、学校で用を済ませることを忘れたのは今思うとあまりにもおろかだった。

 急に止まった電車が動かなくなってから、もう1時間弱立つ。いい加減動いてくれていいはずの電車は一向に動く気配がなく、今だ再開の目処すらわからない。
 
 はじめこそ鷹橋と話せる時間が延びてうれしかった。一向に連絡先を交換してほしいことは言えないままだけれど、弟妹の話の続きやバイトの話、最近ハマっているゲームの話など鷹橋の話は全部面白かった。口下手でよく話せない陽登を気にせずに途切れることなく話し続ける姿に尊敬さえ覚える。

「俺ばっかり話してごめん」

 と気遣う素振りも見せてくれて、陽登はこんなに楽しいのは久しぶりだと鷹橋に伝えたら、大げさだと鷹橋は笑った。
 
 時を忘れるほどに楽しい時間なのに、学校から出るときから感じていた僅かな膀胱の違和感が嫌な痛みを伴って止まった車内という現実を絶望的なものへとかえていく。
 すぐに乗り換えで降りると思っていたし家までもそんなに遠くないから、我慢できると思っていたのに。
 またしても窮地に陥った膀胱の限界は一度失敗を経験しているため、おもらしが現実に起こり得る事象としてより近くに感じた。
 
 普段人と話さない分鷹橋との会話で喉がすぐに疲れて、学校に持ってきた水筒では足らずに駅で買い足しごくごくと飲んだお茶がどんどんと濾されて膀胱を圧迫していた。

 鷹橋と話しているうちは気が紛れていたのに、尿意で時々返事がうわの空になると、何となく話題も落ち着き始める。
 席は空いているものの、すぐに降りるはずだった為にドアの近くに二人で立ったまま今まで話し込んでいたが、運転再開の放送もないからと鷹橋が椅子を指さして

「座る?」

と陽登に聞いた。ドアにもたれかかるふりをして、膀胱をかばうように少し前かがみになっていた陽登は戸惑う。足は疲れていたし、座りたい。でもこの間みたいに漏らしてしまったら、と頭にちらつく。何処だって汚したらまずいけれど、座席は一番だめだ。でも鷹橋をこのまま立たせておくのはもっと悪い気がして、どうにか上手く陽登だけ立っている言い訳を考える。
 パンパンに張り詰めた膀胱と震える括約筋に思考が全く働かずに、陽登はただそっと足をすり合わせた。

「広瀬もしかして」

 鷹橋が内緒話をするように陽登の耳に口を近づける。

「おしっこ?」

 指摘されて、気づかれるほどあからさまだった自分の態度が恥ずかしくて茹でダコのように顔が赤くなった。否定ができずにこく、と頷く。
 バレるのは恥ずかしいが、尿意を気づいてくれてほんの少し安心する自分もいた。

「我慢できる?」

 子供のように聞かれ、少し間を開けてこく、と陽登は頷く。頷く他ないと思った。車内にトイレなどないし、電車は動かないし、用を足せる場所などないのだから。
 鷹橋はちらほらと座席に座る人々から陽登が隠れるように立つと陽登の頭をぽんぽんする。

「がんばれ。抑えてていいよ。見えないように立ってるから」

 小さい兄弟たちをよく相手しているからだろうか、子供にするような妙に優しい声がけに陽登の羞恥心は余計に膨れ上がった。
 子供のように我慢することを促され、この年でそんなことをするなんて恥ずかしいはずなのに陽登は逆らえずにそこを押さえてぎゅっと太ももを閉じる。

 安全確認中です。というアナウンスが静かな車内に流れた。

「確認が済んだら動くはずだよ。もうちょっとだからね」

 動く目処が分からない不安が「もうちょっと」という言葉で解消されてホッとした瞬間、チョロ…と出始めたものに焦って慌てて握りしめる。

(ちがう、まって、まだだめ…っ)

「大丈夫大丈夫、もうちょっと」

 そう、鷹橋が励ましてくれているにもかかわらず、
一度あふれ出したものはあとからあとから塞いだ出口を分け入って漏れ出し続けて、ジワ…と濡れたズボンからぽた、ぽた、と床に水滴が落ちた。あわてて靴で水滴をごまかすも、もう服は失敗がみてわかるほど濡れていたし、ごまかせないほどの水流が流れてしまうのも時間の問題だった。
 
「こっち」

 鷹橋はもらしはじめている陽登に気づいて手を引き連結部分に連れて行く。

「しゃがんだらバレないからここでしちゃいな」

 小声で鷹橋はそういった。
 もう間に合ってない制服のシミとか、パンツから用を出すために物を取り出すにも手を離せないほど切迫している状況とか、こんなありえないところでありえない排泄をしなさいといわれたこと、陽登はすべてに混乱していた。
 しゃがまないとガラス窓のせいで用を足している姿が見えてしまう、でも、しゃがんだら我慢ができない。

「しゃがんで。いいから」

 鷹橋の言う通りにしゃがむと膀胱が圧迫され、シュゥゥ、ポタポタポタ…と真下にほんの小さな水たまりができる。
 後ろで鷹橋もしゃがむ気配がして後ろから手が回され、出口を押さえている陽登の腕のすき間からカチャカチャとベルトを緩めた。

「せーのでちゃっくおろすから、手はなせる?」

 もう我慢できてないのに、と軽い諦めの気持ちをかかえながらも陽登は頷いた。

「せーの」

 手を離した瞬間から、じょぉおおおお…とくぐもった音でおしっこが始まって、ビチャビチャビチャビチャ…と銀色の鉄板の上におしっこが落ち始める。
 ここまで来たら全部服のままだしたって構わないのに、鷹橋は陽登のものを取り出すとそのままてをそえて電車の下に流れるよう下の方にむけた。
 ぼどどどどどど…布にかかるような音がして、申し訳なさに目をつむる。

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…っ)

 下着やズボンに漏らした量が多く、放尿はそれほど長くかからなかった。
 尿を切る動きを鷹橋にされ、今更排尿をみられおしっこまみれの性器をもたれていることに気付いてとんでもないことをしてしまった、と我に返る。
 前回だって酷い醜態を見せたのに更に異常な状況に頭がパンクしそうだ。
 慌てている間に鷹橋は陽登の大事な部分を下着の中にしまい、ハンドタオルをカバンから取り出して、性器と下着の間に挟んでズボンのチャックまでしっかりしめた。
 ぐちゃぐちゃで不快だったそこはタオルのおかげで少しマシになったものの、鷹橋のタオルが犠牲にされている。それからもう一枚スポーツタオルを出すと鷹橋は陽登の股間太ももにかけての濡らした部分を服の上から簡単に拭いた。
 ためらいもなく汚されていくタオルに、陽登のほうが汚いもったいないありえないと叫びだしそうだった。
 
 安全確認が取れましたので順次運行を開始します。というアナウンスが流れ、次第に電車は発車した。
 乗り換えの駅について、手を引かれて降りる。グレーの制服に派手に目立つまだらな黒のしっぱいの模様が、みんなに注目されているような気がして、陽登は降りるまえもおりてからもずっと、地面しかみれないまま鷹橋の後を追った。

「着替え買って来るまでトイレで待っててって言おうとしたけど、あと一駅だから俺んち来る?駅からはそんな遠くないし」

 鷹橋が陽登を覗き込むように聞く。
 陽登は顔を見られたくなくて顔を背けた。
 電車にもういっかいこのまま乗るのは怖い。でも服を買ってもらうわけにもいかない。電車に1人でのって家までこのままかえるのもできない。つないだ手を離されたくなくてぎゅ…と強く握った。ないているのも知られたくない。

「仕方ないよ。広瀬は頑張ったよ」

 鷹橋は軽く陽登の頭を撫でる。

「ごめんね、隠すものなくて」

 本当はこんなおもらしをした人間の隣なんて鷹橋だって歩きたくないだろうし、知らない人のふりをして一人で恥ずかしい思いをしたほうがいい。
 謝ったりお礼を言ったり、何か、一人で帰れるとか、そういったことを言わなくては。そう頭には浮かんでいるのに何も言えず、つないだ手を離されたら死んでしまうような錯覚をしたまま、歩き出した鷹橋のあとを必死でついて行く。

「家、兄弟、いる…って」

 電車を待っている間にやっとのことで言葉を絞り出した。ついてきておいて、まだ迷惑をかけるつもりかと迷いがある。

「大丈夫大丈夫」
 
 軽く鷹橋はいう。
 一駅の電車の間も電車を降りて駅から歩く途中も、鷹橋の顔が見れなくて、前を見て誰かの視線を感じるのも怖くて、ずっとアスファルトばかりみていた。電車の中でも今も、どことなく影にかばうように鷹橋は立ってくれているのが分かる。
 いくつかの信号を渡って砂利道を抜けると、鷹橋の家に着いた。
 鷹橋は陽登に少しドアの陰に立つように指示すると、鍵を開け先に中にはいった。

「ただいま」

 鷹橋が言うと、

「おかえり~!」

 と元気な男女複数の子供の返事が聞こえてくる。
バタバタと音がして、子ども声が近づいてくる。

「お前ら食い物くわえながら歩くなっていっただろ。来なくていい」

「歩いてないもーん!はしったし」

「お前なぁ…」

「兄ちゃんの分のドーナツあるよ!」

「ちい兄の好きないちごのやつ」

 鷹橋の名前は千傘だから、ちいにいはおそらく鷹橋のことだろう。さらに泣き声がしてバタバタと走る音がする。

「秋兄が俺の分のどーなつとったー!」

「半分だけだろ。お前が途中で遊びだしたから、食べないならくうぞっていったじゃん!」


「ハイハイ秋も風真も喧嘩しない。俺のドーナツ後で半分あげるから。みんな宿題やったのか?おやつ食ったらまず宿題って約束だろ。ほらやってないやつは早くやる」


 にぎやかな声とともに鷹橋の声が遠ざかって、陽登は心細くなった。忙しそうだし、こんなにたくさんの    兄弟もいるし、やはり帰ったほうがいいんじゃないだろうか。場違いじゃないか。他の家族の方が帰ってきてもまずいし、おもらしして人の家の世話になるなんてやっぱりどうかしてる…と踵を返すとドアが開いて鷹橋が帰ろうとする陽登の肩をつかんだ。

「お待たせ」

 汗ばんだ姿で手招きをされ、おずおずと引くに引けずに陽登は家に入る。汚れた陽登が入ってもいいようバスタオルがしかれて、その上にのると鷹橋が、軽く服の水気を再度ふき取った。幸い靴の内側は汚れていなかったし、靴下も汚れていたのはほんの少しで、それを脱いでしまえば玄関先はそれほど汚さずに済んだ。

「こっち」

 手を引かれ風呂場に案内され、お言葉に甘えてシャワーをして外に出ると、新品のパンツと鷹橋のものと思われる服が着替えとして置かれている。
 紐で止められる半ズボンと元々オーバーサイズであろうTシャツは陽登にはかなりブカブカで、鏡に映る陽登の貧相なぺらぺらの体をより貧弱に見せた。

 風呂場をでて何処に向かえばいいのか扉をコソコソと開け戸惑っていると鷹橋が気づいて近くの部屋から手招きをした。
 部屋に入るとそこは鷹橋の部屋のようで、鷹橋はベッドに腰掛けて陽登にも隣に座るようにぽんぽん、とベッドの上を示されたものの、何となく気まずくてベッドを背もたれにしてその前の床に腰を下ろした。
 すると鷹橋も同じように陽登の横に座る。 

「おなかちゃんと温めた?」

 膀胱付近をさすられ陽登が緊張に体を強張らせると、鷹橋はごめんとぱっと手を離す。

「これ、麦茶だけどのんで。お菓子もどうぞ」

「ありがとう……」

「制服洗っといたから。乾燥機はかけられないから帰るまでに乾かないかもだけど…家帰ってまた干しとけばこんだけ暑けりゃ明日までには乾くよ」

「ごめん、色々…」

 陽登は体育座りで蹲る。

「大丈夫、あんまり気にすんな」

 頭を撫でられ、顔を上げると至近距離で鷹橋と目が合った。顔をそらそうとした陽登に気づいて鷹橋が顔を両手でつかんだ。

「な、なに…」

 じーっとみた鷹橋は陽登の前髪をすくってうえにあげた。
 長いまつ毛の生えたくりっと大きな丸い目とハの字の眉が鷹橋をうるうると見つめる。

「こっちのがいいよ」

 そのまま陽登の前髪を鷹橋はちょんまげで結ぶ。
 陽登は真っ赤になって慌てた。長いことうっとうしい髪の毛越しに世界を見ていたせいで、スッキリとした視界で人と目を合わせることは陽登にとってパンツを脱いで外に出るくらい恥ずかしいことだった。
 至近距離で鷹橋がと目が合い、息が止まる。鼓動は滝のような音をたて破裂しそうに動いていた。
 永遠にも思える3秒ほどの見つめ合いからなんとか目をそらすと、止まっていた息を、は、は、となんとか吐き出す。

「これはっだめ」

 息の仕方がわからなくて吐きそうになりながら、止められたゴムをぱっと外して陽登はバサバサと前髪をなおした。

「かわいいのに。前髪切っただけで人気者になれる」

 ふふ、と鷹橋が笑う。かわいいはずもないし散々ひどい醜態を晒した後で、地味で暗くて人とろくにしゃべれもしない陽登がいじめられることはあっても人気ものになれるわけなんてないのに。冗談にしてもあまり上手くない。ただからかわれてるだけなのに勘違いして喜ぶ陽登をみて笑いものにしたいのではないかと疑ってしまう。
 沈黙と陽登の苦笑いに鷹橋はすぐに謝った。

「勝手なことしてごめん。かわいいとかさすがにキモい発言だったよな」

 自嘲気味に笑う鷹橋に陽登はブルブルブルと大きく首を振った。

「キモいのは、俺の方だし……」

「なんで?」

「高校生にもなって、に、2回も……おもらし……っして」

 言葉にすると、ずっとこらえてた不安や羞恥や恐怖や後悔が溢れて、ボロボロと大粒の涙がこぼれ、止まらなくなった。鷹橋は無言で背中を擦ってくれる。
 せっかくシャワーをして泣き止んだのに、またこんなところで子供のようにみっともなく泣いて、最悪だ。

「俺本当に気にしてないよ。電車止まらなかったら今日も間に合ってたじゃん。」

 涙が落ち着いてきた頃に鷹橋はそういった。

「たった1時間、止まってただけなのに、我慢できないなんて引くよ」

 慰めてくれているのに否定してどうするんだろう。素直に鷹橋の言葉にうんと頷けばいいのに。口をついてでてくる言葉は鷹橋を困らせるものばかりだ。

「広瀬トイレ近いじゃん。お昼休憩の後からトイレ行ってなかったし、いつもは帰り際にトイレ行くだろ。急に話しかけてそのまま帰ろうっていった俺も悪いし」

「ちが、話しかけてくれてうれしかった」

 トイレに行かなかったのは陽登の責任なのに優しさのあまりに鷹橋のせいなどと言わせてしまって、申し訳なくてたまらない。

「俺、友達いないし、ほんとに話しかけてくれて嬉しくて、だから……鷹橋と友だちになりたくて、でも、こんな、もらすしどもるし、き、キモいやつ友だちになりたい奴いない」

 わっとまた涙が溢れて止まらなくなって、今まで家でも学校でも誰にもこんなに面倒臭い態度をとったことなどないのに。一体どうしたのかわがままに振る舞うのをやめられなかった。

「何いってんだよ。もう友達だろ」

 へ、と陽登が間抜けな顔で鷹橋を見上げると彼も驚いた顔をしている。

「友達じゃなきゃ風呂も服もかすかよ。お前がいま履いてるパンツだって俺の新品おろしたてパンツだし」

 そう言われればそうだ。急に鷹橋のものを着ていることと友達という言葉にドキドキして感情が嬉しいやら恥ずかしいやら迷子になった。

「また赤くなった」

「と、ともだち……」

「友達」

 陽登は体育座りの顔をひざに埋めうでをぎゅっとにぎる。うれしいのに、今すぐ穴に入りたい気分。
 耳まで真っ赤な自分が恥ずかしかった。

「え、なに。嫌?」

「嫌じゃない、うれしい」

「ならなんで顔隠すんだよ、みせろ」

 鷹橋は陽登の無防備な腹や脇をくすぐりはじめる。

「や、やめてっやめ、あはは、ははっ」

 陽登はくすぐったさに転がって仰向けになって笑う。

「やっと笑った」

 そう言った鷹橋の目は妙に優しく温かかった。

感想 1

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

Memory

yoyo
BL
昔の嫌な記憶が蘇って、恋人の隣でおねしょしてしまう話です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…