灯り火

蓮休

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灯り火

説教

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 菊一きくいちとの決闘を終えて今現在、俺は正座させられている。目の前には三希みきと侍女さんが仁王立ちで立っている、なぜこうなったのか話は少し遡る。

 俺と三希が一緒に住んでいるという問題発言は三希の説明により、三希の祖父と俺の祖父が知り合いという本当のことを言って、俺が三希の家の豪邸に居候させてもらっているという嘘で納得してもらった。その後、俺は右腕が折れた状態で蒼井あおいに肩を貸してもらい、菊一は木刀を杖代わりにしながら学校に戻ると七水菜なずな先生をはじめ数十人の先生が待ち構えていた。どうやら学校に戻った生徒の誰かが俺達の決闘を先生に報告したらしく七水菜先生をはじめ先生達はすぐに止めに行こうとしたが、そこに待ったをかけたのが白雨はくう理事長だった。
「決闘をするのもまた彼らの自由です。儂らに出来ることは戻ってきた時、思いっきり叱ることです」
 白雨理事長の言葉で先生達は俺達を待っていたが、戻ってきた俺は肩を支えられ、菊一は木刀を杖代わりに歩く姿に先生方は驚き、七水菜先生が先陣を切って俺と菊一に近づき。
「おめーら何しとんじゃ!!」
 思いっきり頬を殴られた。そこから七水菜先生の怒涛のお説教タイム、2~3時間の説教の後、俺と菊一は病院に連れて行かれた。正直に言うと病院が先ではないかと思ったが七水菜先生が恐いので言わなかった、病院では右腕にギプスを巻かれ、やっと家に帰ってこれたと思ったら三希と侍女さんに正座させられた。
「さて、たける様お帰りなさいませ」
「ただいまです侍女さん」
「なぜご自分が正座させられているか分かりますか?」
「すみません、分かりません」
「はあ~」
 侍女さんにもの凄く呆れられた。
「もしかして三希も説教に巻き込まれたからですか?」
 七水菜先生の説教には俺と菊一はもちろんのこと蒼井と三希、黒いフードを被った小柄な女子生徒も説教を受けた。その理由は七水菜先生曰く。
「あの場に残っていた人達は借家君と菊一君が心配で残っていたんでしょう、だったら一緒に怒らないとダメ」
 まあ簡単に言えば俺と菊一と親を𠮟るようなものらしい。その説教に三希を巻き込んで申し訳ないと思っていたが。
「違う!」
「違います」
 三希と侍女さんに否定された、そうなるとますます正座させられている理由が分からなくなる。
「私達に謝ることがあるだろ武」
「迷惑かけてごめん?」
「違う!心配したんだ」
「えっ?」
「武が怪我をして心配したんだ。武が痛い思いをすると私も痛いんだ、心が痛くなるんだ。だから、ってどうした武!?」
「な、なんでもない」
 俺は涙が止まらなかったバレないように顔を背ける、誰かに心配されるのが久しぶりだったから朝火あさひがいなくなって俺は一人になったから。嬉し涙なのかよく分からないけど、涙が出る。
「武様どうぞ」
 侍女さんがハンカチを手渡してくる、俺は気恥ずかしくなりながらハンカチを受け取る。
「さてご飯にしますか、今日の夜はカプレーゼです」
「カプレーゼ?」
 俺はハンカチで涙を拭いながら首を傾げる。リビングに向かうとテーブルの上にトマトとモッツァレラチーズを挟みその上にバジルの葉をのせた料理が並べられていた。
「侍女さん」
「はい、なんでしょうか」
「朝の時もですけど全部切っただけの料理ですよね」
「はい」
「温かい料理も食べたいのですが」
「申し訳ございません武様。私は
「えっ」
 侍女さんの辛そうな声に驚いて振り返ると、侍女さんが今にも泣き出しそうな表情になっていた。
「じゃあ出前頼むか」
 三希の明るい声に場が和み、出前を頼むことになった。
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