Aria ~国立能力研究所~

しらゆき

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最終章 事件の連鎖

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「未来、お客さんよ」
 文化祭も終わり、久しぶりにのんびりと休日を満喫していた未来は、奈々子の言葉にパソコンから顔を上げた。今書いているのは文化祭中に突然思いついた話だった。文化祭の写真部で見た一枚の写真。それを見た瞬間、どうしてもその場面を描きたくなったのだ。文化祭中に突然ノートに書き記し始めた未来に美穂や榊原が呆れたような表情を浮かべていた気がするが、未来には関係ない。書きたいときに書くのが未来だった。
 ただ、今思うと少しおかしかったな、とは思うが。いつもの榊原であれば未来の手から無理矢理ノートをもぎ取っていたはずだ。だが、その時の榊原は口では文句を告げてきたが、本当に口だけだった。教師として一応注意する、というだけで心ここにあらずに見えた。あの日、外に出た未来と美穂を見た時から彼はどこかおかしかったように思う。あんな風に震えた腕で抱きしめてくる、そんな弱さを生徒に見せるような人ではなかったのに。
「お客さん、て誰?」
 ここに尋ねてくる可能性が一番高い弥生は、既にここにいる。小説を書いている未来の横で一心に調べものをしている。来年から研究室に入るらしく、希望の研究室に入るためのレポート提出が忙しいらしい。美穂がわざわざ訪ねてくる理由も思いつかない。今日からアルバイトを始める、と言っていたから来れるとも思えない。
「榊原先生よ」
「……先生?」
 予想外すぎて思わず弥生と顔を見合わせてしまった。
「入ってもらって」
 わざわざ訪ねてきたのだから、お店でできる話でもないのだろう。

 部屋に入ってきた榊原はこわばった表情を浮かべていた。いつもの武装もしていない。と言っても未来の所に来るときはしていないことが多いが。
「草薙もいたのか……助かる、な」
「弥生にも、ですか?」
「ああ、お前たち二人に調べてほしいことがあるんだ」
 ポカンと目を瞬く。調べものをするのであれば未来たちではなく正規の探偵や、他のAria協力者の方がいいことが多い。未来や弥生の調べものには一切証拠が出てこない。裏を取る必要が出てくるので、未来たちだけでできる事はさほど多くはない。
「正式に調べるなら……」
「俺は、証拠が欲しいわけでも、真実を人に知らせたいわけでもない。……俺自身が、真実を知れればそれでいい。だから、証拠はいらない」
「私や弥生が千里眼や夢で見た内容を先生に伝えればいい、という事?」
「ああ、出来れば絵付きで、細かいこともレポートにしてくれると助かる。もちろん謝礼は払う」
「謝礼は、いらないですけど……何を調べればいいんですか?」
「数年前に妹が自殺、した。……その原因を調べてほしい」
「……全くわからないんですか?」
「いや、表向きの理由はわかっている。でも、何故そんなことになったのかわからない。……Ariaを知ったのは妹が死を選んだ時よりも後だったが、知るのが怖かった。俺が知らない唯が出てきそうで……それに、もし、死を選んだのが俺のせいだったら……」
 もしかしたら、榊原の人間嫌いはそれが原因なのだろうか。それが原因で人が嫌いになり、人を遠ざけるようになったのかもしれない。それは本来未来たちが触れる事が許されない部分。彼にとっても知られたくない部分のハズだ。それをさらしてまで過去を知りたいと願う何かが榊原にあったのだろうか。
「何で……今更……」
「この間のAriaの事件。お前たちはまだ高校生で、子供なのに自分のできる事をきちんと考えて動いていた。……お前たちを見ていたら、過去を乗り越えて前に進みたい、って思ったんだ。……生徒に、負けてられるか」
 ポツリと呟いた声に未来と弥生が再び目を瞬かせる。彼が未来たちの何を見てそう思ったのかはわからない。でも、過去をシッカリと見つめ直す勇気を持てる彼が凄いと思う。きっと、今まで知らなかった真実を知るのは怖いだろうに。
「わかりました。……妹さんの写真と名前だけ、教えてもらえますか?他は……自分で確認します。先生が知ることが真実とは限らないので……できるだけ先入観を持ちたくないんです」
 下手な先入観を持つと、夢や千里眼で見た時にミスリードされてしまう可能性も有る。
「わかった。名前は、榊原唯。自殺したのは、今から約五年前。唯が十七歳。高校三年生だった」
 すっと一枚の写真を差し出す。その裏に『榊原唯』と名前が記されていた。
 その名前に、顔に……見覚えがある。それは、未来が決して忘れる事が出来なかった名前だった。
「榊原……唯……さん……?先生の、妹、さん?」
 呆然とつぶやいた未来の隣で弥生も信じられない、という様に目を瞬いている。
 その後何があったのか覚えていない。気が付いたら榊原は帰っていて、弥生と未来だけがその場に残されていた。
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