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第一章
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四谷に連れてこられたのは、数年前にオープンし、連日賑わっていると話題のテーマパーク「童話の国アイランド」だった。女性やカップルに人気の遊園地だが、椎菜は取材で訪れたことも、個人的に来たこともなかった。興味はあったのだが、一人で訪れる勇気はなく、誰かと来るあてもなかった。そもそも、一日中時間を開けるのは椎菜には難しい。
「わぁ……一度きてみたかったんです」
行列に並びながら、何枚か写真に収める。デート企画とはいえ椎菜の仕事はこの場所の魅力を伝えることにある。
「取材していないのは知っているけど……個人的に来たこともない?」
「はい。タイミングが合わなくて……私の記事、読んでくださったんですか?」
「記事にする以上、場所は被らないほうがいい。少なくとも、最近の記事と被るのはマズイからな」
そのあたりまで気が回るのは、四谷自身が編集者として、雑誌作りに関わったことがあるからなのだろう。
「流石ですね」
「まず、どこ行きたい?」
四谷がインターネットから印刷していたであろう紙を椎菜に見せる。椎菜は一応それも写真に収めつつ、ざっと眺めた。
テーマパークは、大きく分けて五種類のエリアがある。不思議の国のアリスをモチーフにしたであろう「アリスパーク」、ムーミンをモチーフにしている「ムーミンの丘」、シンデレラや白雪姫などの、お姫様が出て来る童話をモチーフとしている「プリンセスパーク」、期間ごに中身が変わる期間限定エリア、そして、お土産屋さんやレストランなどお店や小さな催しをするための「童話の森」。期間限定エリアは、今は「ピーターパン」のようだ。
「……一日で周るのは無理ですね……」
できれば全エリアを周りたい。ここは女性読者の目を引きそうだ。とはいえ、一人でくる勇気はない。
どれが一番人気が出そうなのかを考える。外せないのは「童話の森」だろう。ここには三つのエリアにない童話をモチーフにしたお店やレストランが揃っている。とはいえ、アトラクションがあるわけではないので、ここだけと言うわけにはいかないだろう。ここは最後とし、あとはアリスか……それともプリンセスか、ムーミンも外せない。
グルグルと考え込んでいる椎菜に四谷がクスリ、と笑う。
「今日は一つにして、もう一度来たら?どうせなら近くの関連ホテルに泊まれば、恋人デートとしてはバッチリじゃない?ページはしっかり四ページ取れるんだから、いいと思うけど?」
笑いながら告げてくる四谷を呆れたように見る。
「ここに、いくら取材とはいえ一人でくる勇気は……」
「付き合うよ。来週の土日に部屋が取れれば問題ないでしょう?」
ニッコリと笑みを浮かべつつ告げられた言葉に椎菜はポカン、と四谷を見た。ライターとしての仮面を完全に忘れている。
「……何……言って……」
四谷がどんなつもりなのか真意が読めない。本当に恋人であれば何でもない一言だが、椎菜と四谷は違う。
「な……な……な……」
パクパクと口を開閉しながら四谷を見る。椎菜は自分の頰が真っ赤に染まっているのがわかった。心臓が痛いくらいに波打っている。小説を読んでいるときに入り込みすぎてこんな感情を覚えることはあったが、リアルでここまで動揺したのは初めてじゃないだろうか。
「ブハッ」
唖然としている椎菜の前で四谷が声を立てて笑っている。本当に楽しそうな、自然な笑い方で、椎菜は別の意味でも目が離せなくなってしまった。
「ごめん、ごめん、まさかこんなに反応してくれるとは……冗談だよ」
「じょ……冗談って……」
未だ笑っている四谷を椎菜は睨みつける。ただ、未だ赤く染まっているその顔でいくら睨みつけたところで全く怖くない。
「正確には……冗談ではないけど、今度泊まりで取材に来ようか、もちろん付き合う。ただ……安心して、部屋は別にとるから。……どう、かな?」
四谷の真意は椎菜にはわからない。でも、その提案はとても魅力的だった。記者のシーナにとっても、そして、椎菜個人にとっても。
「……」
ただ、その提案を受けるのは流石に恥ずかしい。何も答えられずにいる椎菜に、四谷はクスリ、と笑い真剣な表情で口を開いた。
「決まり、だね。新垣編集長にはもう少し取材することは伝えておいて。どう伝えるかは瀬戸さんに任せるよ」
それは、椎菜の口にできなかった言葉を全て知っているかのような、絶妙なタイミングだった。
「わぁ……一度きてみたかったんです」
行列に並びながら、何枚か写真に収める。デート企画とはいえ椎菜の仕事はこの場所の魅力を伝えることにある。
「取材していないのは知っているけど……個人的に来たこともない?」
「はい。タイミングが合わなくて……私の記事、読んでくださったんですか?」
「記事にする以上、場所は被らないほうがいい。少なくとも、最近の記事と被るのはマズイからな」
そのあたりまで気が回るのは、四谷自身が編集者として、雑誌作りに関わったことがあるからなのだろう。
「流石ですね」
「まず、どこ行きたい?」
四谷がインターネットから印刷していたであろう紙を椎菜に見せる。椎菜は一応それも写真に収めつつ、ざっと眺めた。
テーマパークは、大きく分けて五種類のエリアがある。不思議の国のアリスをモチーフにしたであろう「アリスパーク」、ムーミンをモチーフにしている「ムーミンの丘」、シンデレラや白雪姫などの、お姫様が出て来る童話をモチーフとしている「プリンセスパーク」、期間ごに中身が変わる期間限定エリア、そして、お土産屋さんやレストランなどお店や小さな催しをするための「童話の森」。期間限定エリアは、今は「ピーターパン」のようだ。
「……一日で周るのは無理ですね……」
できれば全エリアを周りたい。ここは女性読者の目を引きそうだ。とはいえ、一人でくる勇気はない。
どれが一番人気が出そうなのかを考える。外せないのは「童話の森」だろう。ここには三つのエリアにない童話をモチーフにしたお店やレストランが揃っている。とはいえ、アトラクションがあるわけではないので、ここだけと言うわけにはいかないだろう。ここは最後とし、あとはアリスか……それともプリンセスか、ムーミンも外せない。
グルグルと考え込んでいる椎菜に四谷がクスリ、と笑う。
「今日は一つにして、もう一度来たら?どうせなら近くの関連ホテルに泊まれば、恋人デートとしてはバッチリじゃない?ページはしっかり四ページ取れるんだから、いいと思うけど?」
笑いながら告げてくる四谷を呆れたように見る。
「ここに、いくら取材とはいえ一人でくる勇気は……」
「付き合うよ。来週の土日に部屋が取れれば問題ないでしょう?」
ニッコリと笑みを浮かべつつ告げられた言葉に椎菜はポカン、と四谷を見た。ライターとしての仮面を完全に忘れている。
「……何……言って……」
四谷がどんなつもりなのか真意が読めない。本当に恋人であれば何でもない一言だが、椎菜と四谷は違う。
「な……な……な……」
パクパクと口を開閉しながら四谷を見る。椎菜は自分の頰が真っ赤に染まっているのがわかった。心臓が痛いくらいに波打っている。小説を読んでいるときに入り込みすぎてこんな感情を覚えることはあったが、リアルでここまで動揺したのは初めてじゃないだろうか。
「ブハッ」
唖然としている椎菜の前で四谷が声を立てて笑っている。本当に楽しそうな、自然な笑い方で、椎菜は別の意味でも目が離せなくなってしまった。
「ごめん、ごめん、まさかこんなに反応してくれるとは……冗談だよ」
「じょ……冗談って……」
未だ笑っている四谷を椎菜は睨みつける。ただ、未だ赤く染まっているその顔でいくら睨みつけたところで全く怖くない。
「正確には……冗談ではないけど、今度泊まりで取材に来ようか、もちろん付き合う。ただ……安心して、部屋は別にとるから。……どう、かな?」
四谷の真意は椎菜にはわからない。でも、その提案はとても魅力的だった。記者のシーナにとっても、そして、椎菜個人にとっても。
「……」
ただ、その提案を受けるのは流石に恥ずかしい。何も答えられずにいる椎菜に、四谷はクスリ、と笑い真剣な表情で口を開いた。
「決まり、だね。新垣編集長にはもう少し取材することは伝えておいて。どう伝えるかは瀬戸さんに任せるよ」
それは、椎菜の口にできなかった言葉を全て知っているかのような、絶妙なタイミングだった。
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