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今から約七年前、牧瀬光流に拾われた望海は、その日から辻岡望海になった。望海の養父となってくれた辻岡静は光流のおじさんらしく、望海のような変な力を持つ人間に対する忌避の感情は全く持ち合わせていなかった。それどころか、彼自身ちょっと面白い力を持っているそうだ。
光流がAriaという、能力者を束ね、教育し、保護してくれる組織の人や光流の家族や養父と相談した結果、望海は養父とともに暮らさず、Ariaの能力者が暮らす寮のようなところで生活することになった。でも、放置されているわけではなく、定期的に顔を出してくれる養父や光流に感謝している。
あの時、彼らと出会わなければ、Ariaについて知ることができなければ、あのまま成長していたらどうなっていたのか、考えただけでもゾッとする。
あの頃の望海は「死神」と呼ばれていた。望海が写す写真は人の死や、草花の終わりしか写さなかったからだ。望海に写真を撮られると魂を抜かれ、死ぬ、と言われていた。
でも、光流にAriaについて教えてもらって、自分の力を研究し、その力と向き合うことで、望海の持つ力が人の死ではなく、カメラで未来を写すことなのだと知ることができた。あの頃に終わりしか写さなかったのは、初めて力を意識したのが、人の死を写し撮った時だったので、望海自身がそう思い込んでしまっていたかららしい。
いろいろな研究と練習の成果か、今では未来だけではなく、今この時を写すこともできるようになった。
もちろん、望んだ時を写し撮ることも可能だ。
「それ、いつ撮ったの?」
いきなり後ろからひょっこりと覗き込まれ、望海は文字どおり、飛び上がった。
「み……光流くん!いつ来たの?っていうか、勝手に入ってこないでよ!」
望海はプリンターが吐き出した写真を思わず落としてしまう。ここは、望海の部屋であって光流が勝手に入っていい場所ではない。でも、彼は望海を拾った時から、兄のような心情でいるのか、勝手に部屋に入り込むことがある。普通、大の大人が女子高生の部屋に勝手に入って来ないはずなのに……。
光流を睨みつけても、彼はどこ吹く風、というように一切気にした様子がない。
「ノックしたよ?でもお前、作業に集中してて、気づかなかっただろ?それより、その子……」
光流は今落ちた写真を拾い上げると不思議そうに首を傾げた。そこには二人の人間が写っている。向かい合って楽しそうに会話をしている二人は、白いドレスと白いタキシードを着ている。背景が学校の廊下でなければ結婚式の写真にも見えた。
「合成……じゃないな……。この二人、榊原と佐川?いつ撮ったの?」
望海の学校の先生である榊原彰禧の事はもちろん知っていたが、高校の先輩、それも部活も違う彼女、佐川未来のことを知ったのはほんの半年ほど前、彼らがAria能力者だけが出展しているAria展に来た時だった。望海は写真系能力者だし、将来カメラマンを目指す人間としてもAria展に出展していたため、手伝いに駆り出されていた。その時に彼らがAriaであることを知った。最も光流はもともと知っていたらしいし、何よりも望海が暮らすこの寮の一階にあるアトリエ部分には榊原も顔を出していたらしく、「なぜ、知らない?」という顔をされた。理不尽だと思う。榊原だって気づいていなかったのに……。
その時以外は、二人とはまともに会話をしたことはなかったが、つい先日の卒業式の日、たまたま話している二人を見かけてシャッターを切っていた。いつの時を撮るとはっきり決めていたわけではなく、なんとなく、だったので、データを見て唖然とした。ただ、この幸せそうな光景が撮れたことは嬉しかった。いつかこの未来が現実となった時、二人にプレゼントしようかと思う。
「卒業式で二人が話してるのみて、つい。私、写真部として当日カメラマンしてたから。……ただ、いつの時を撮ると明確にしてシャッターを切ったわけじゃないから……何時になるかはわからないけど、現実になった時にあげようかと」
「意識せずに撮るなんて、珍しいな」
「二人もAria能力者だからいいかな、と。ただ、一番幸せの時を撮りたいな、とは思ってたけど」
撮ったはいいけど、不幸の絶頂のような写真になったら目も当てられないし、そんな写真見たくもない。
「いいんじゃないか……榊原に見せてからかいたい気もするけど……」
光流がニヤリと笑う。この人は本当にやりそうで怖い。
「やめてよ」
光流から慌てて写真を奪い取った。持たせておくと本当にやりそうだ。
「冗談だって。……それより時間いいの?友達と出かけるんじゃなかった?」
言われ、慌てて時計を見ると、約束の時間まで、後三十分しかなかった。
「あ、行かなきゃ……というわけで、光流くんは出て。鍵かけるから」
光流がAriaという、能力者を束ね、教育し、保護してくれる組織の人や光流の家族や養父と相談した結果、望海は養父とともに暮らさず、Ariaの能力者が暮らす寮のようなところで生活することになった。でも、放置されているわけではなく、定期的に顔を出してくれる養父や光流に感謝している。
あの時、彼らと出会わなければ、Ariaについて知ることができなければ、あのまま成長していたらどうなっていたのか、考えただけでもゾッとする。
あの頃の望海は「死神」と呼ばれていた。望海が写す写真は人の死や、草花の終わりしか写さなかったからだ。望海に写真を撮られると魂を抜かれ、死ぬ、と言われていた。
でも、光流にAriaについて教えてもらって、自分の力を研究し、その力と向き合うことで、望海の持つ力が人の死ではなく、カメラで未来を写すことなのだと知ることができた。あの頃に終わりしか写さなかったのは、初めて力を意識したのが、人の死を写し撮った時だったので、望海自身がそう思い込んでしまっていたかららしい。
いろいろな研究と練習の成果か、今では未来だけではなく、今この時を写すこともできるようになった。
もちろん、望んだ時を写し撮ることも可能だ。
「それ、いつ撮ったの?」
いきなり後ろからひょっこりと覗き込まれ、望海は文字どおり、飛び上がった。
「み……光流くん!いつ来たの?っていうか、勝手に入ってこないでよ!」
望海はプリンターが吐き出した写真を思わず落としてしまう。ここは、望海の部屋であって光流が勝手に入っていい場所ではない。でも、彼は望海を拾った時から、兄のような心情でいるのか、勝手に部屋に入り込むことがある。普通、大の大人が女子高生の部屋に勝手に入って来ないはずなのに……。
光流を睨みつけても、彼はどこ吹く風、というように一切気にした様子がない。
「ノックしたよ?でもお前、作業に集中してて、気づかなかっただろ?それより、その子……」
光流は今落ちた写真を拾い上げると不思議そうに首を傾げた。そこには二人の人間が写っている。向かい合って楽しそうに会話をしている二人は、白いドレスと白いタキシードを着ている。背景が学校の廊下でなければ結婚式の写真にも見えた。
「合成……じゃないな……。この二人、榊原と佐川?いつ撮ったの?」
望海の学校の先生である榊原彰禧の事はもちろん知っていたが、高校の先輩、それも部活も違う彼女、佐川未来のことを知ったのはほんの半年ほど前、彼らがAria能力者だけが出展しているAria展に来た時だった。望海は写真系能力者だし、将来カメラマンを目指す人間としてもAria展に出展していたため、手伝いに駆り出されていた。その時に彼らがAriaであることを知った。最も光流はもともと知っていたらしいし、何よりも望海が暮らすこの寮の一階にあるアトリエ部分には榊原も顔を出していたらしく、「なぜ、知らない?」という顔をされた。理不尽だと思う。榊原だって気づいていなかったのに……。
その時以外は、二人とはまともに会話をしたことはなかったが、つい先日の卒業式の日、たまたま話している二人を見かけてシャッターを切っていた。いつの時を撮るとはっきり決めていたわけではなく、なんとなく、だったので、データを見て唖然とした。ただ、この幸せそうな光景が撮れたことは嬉しかった。いつかこの未来が現実となった時、二人にプレゼントしようかと思う。
「卒業式で二人が話してるのみて、つい。私、写真部として当日カメラマンしてたから。……ただ、いつの時を撮ると明確にしてシャッターを切ったわけじゃないから……何時になるかはわからないけど、現実になった時にあげようかと」
「意識せずに撮るなんて、珍しいな」
「二人もAria能力者だからいいかな、と。ただ、一番幸せの時を撮りたいな、とは思ってたけど」
撮ったはいいけど、不幸の絶頂のような写真になったら目も当てられないし、そんな写真見たくもない。
「いいんじゃないか……榊原に見せてからかいたい気もするけど……」
光流がニヤリと笑う。この人は本当にやりそうで怖い。
「やめてよ」
光流から慌てて写真を奪い取った。持たせておくと本当にやりそうだ。
「冗談だって。……それより時間いいの?友達と出かけるんじゃなかった?」
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