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桜が散ったらサヨナラ
しおりを挟む高校を卒業して、大学生になる少し前。
僕は君に出会った。
家から少し離れた桜並木が有名なあの場所で、僕は何となしに歩いて、時に立ち止まって写真を撮った。
そんな僕に話しかけて来たのが君だった。
初めて見たのは、君に話しかけてもらう数日前。
桜の下の長椅子に静かに座る君の姿は、まるで隠れ損ねた雪の精だと思った。
真っ白なワンピースを身にまとった君。
徐々に、見かける度にそのワンピースの色は桜色になり、僕に話しかけて来る頃には桜並木と同じような可愛い色をしている。
桜色のワンピースを身にまとった君は、ひらひらと可憐に舞う花弁のように、僕に話しかけて来た。
「何を撮ってるの?」
初めて聞いたその声は柔らかく。
僕は自分が君に恋をしているのだと気づいた。
「どうして桜を撮るの?」
そう聞く君に、僕は笑った。
「どうしてだろうね。」
初めて話したその日の翌日。
僕はその日、最後の一枚に君を収めた。
散りゆく桜のように、まるで儚く消え去るような君が写っていた。
「また明日。」
そう言っていつも別れていた僕と君。
けれど何時からだろう。
君は「また明日」と返さなくなっていた。
明日、会えるとは限らないと言うかのように。
僕が大学に入って暫くも、毎日その場所で会っていた。
もうすぐこの桜並木が全て散り落ちる頃。
それを表現するかのように、君のワンピースは桜色に葉桜の緑が加わる様になっていた。
「また、明日も会おう。」
そう言った僕に、君は悲しげに笑う。
「明日から、会えないの。」
どうして、と問えなかった。
何となく、分かっていたから。
「それじゃあ、来年は?...会えないかな。」
「私に会いたい?」
「会いたい。」
嘘偽りなく、そう応えた。
それを聞いた君は嬉しそうに、静かに、美しく笑った。
「分かった。」
「じゃあ、また来年。」
「うん、また来年。」
「「きっと、この場所で。」」
最後に収めた君の姿は、儚くも力強い魅力に溢れていた。
君に恋をした。
春の日に会える君に。
桜が散っても君の姿は鮮明に憶えている。
また、来年も桜が散るまで君に恋をする。
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