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第3章
札幌
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7月17日 日曜日 午前11時24分
安井会長との会見の次の日、晴人はまた大道寺元帥の供をして札幌の例の某百貨店の喫茶店にいた。今回も会う人は教えられていない。カラカラと扉の音がして10秒後位に向かいの席に1人の初老の男が座った。今回の人物は晴人にも一目見ただけで分かった。いや、今の日本に知らない人はいないぐらいだ。その人物は、歳は60前位で口髭を蓄え、スーツをきめている。
「どうも、初めまして。徳川公茂です」
徳川公茂、現宮内庁長官。某名家の生まれで、世が世ならというような御仁だ。今日は、店に誰も客が居ないので普通に喋れる。
「閣下はお忙しき身でありましょうから率直に申し上げます。私たちの計画はご存知でしょうか?」
そう大道寺元帥が聞くと、徳川長官は深々と頷いた。
「閣下、私どもは大政奉還が成った暁には閣下には宮内大臣にお成り頂きたいと考えております。その時には、誠に畏れ多いことですが、是非皇族方の中より総理大臣をと思っております」
そう言うと、もう一度長官は深々と頷いた。そしていきなり長官が口を開いた。
「私は日本国の国体とは戦前の様にあるべきと思います」
「昭和20年の終戦以降、日本国はそれとは異なる様になりました。しかし、今こそその流れを戻すべき時」
そう言うと長官はスッと立ち、「では」と言って喫茶店を華麗に去っていった。しばらくの間大道寺元帥は何も言わず黙っているだけだった。流石に緊張して、また興奮したようだった。かく言う晴人もすっかり硬く成ってしまっているのだが。
「安藤君、先程の御言葉は許可を頂いたんだな、我々は」
「………はい、きっと」
これで下準備は全て終わった。後は実行する段階まで来たのだ。もう数日するとこの国は、見違えることになる。そんな言いようの無い興奮が晴人の体を熱くしていた。
安井会長との会見の次の日、晴人はまた大道寺元帥の供をして札幌の例の某百貨店の喫茶店にいた。今回も会う人は教えられていない。カラカラと扉の音がして10秒後位に向かいの席に1人の初老の男が座った。今回の人物は晴人にも一目見ただけで分かった。いや、今の日本に知らない人はいないぐらいだ。その人物は、歳は60前位で口髭を蓄え、スーツをきめている。
「どうも、初めまして。徳川公茂です」
徳川公茂、現宮内庁長官。某名家の生まれで、世が世ならというような御仁だ。今日は、店に誰も客が居ないので普通に喋れる。
「閣下はお忙しき身でありましょうから率直に申し上げます。私たちの計画はご存知でしょうか?」
そう大道寺元帥が聞くと、徳川長官は深々と頷いた。
「閣下、私どもは大政奉還が成った暁には閣下には宮内大臣にお成り頂きたいと考えております。その時には、誠に畏れ多いことですが、是非皇族方の中より総理大臣をと思っております」
そう言うと、もう一度長官は深々と頷いた。そしていきなり長官が口を開いた。
「私は日本国の国体とは戦前の様にあるべきと思います」
「昭和20年の終戦以降、日本国はそれとは異なる様になりました。しかし、今こそその流れを戻すべき時」
そう言うと長官はスッと立ち、「では」と言って喫茶店を華麗に去っていった。しばらくの間大道寺元帥は何も言わず黙っているだけだった。流石に緊張して、また興奮したようだった。かく言う晴人もすっかり硬く成ってしまっているのだが。
「安藤君、先程の御言葉は許可を頂いたんだな、我々は」
「………はい、きっと」
これで下準備は全て終わった。後は実行する段階まで来たのだ。もう数日するとこの国は、見違えることになる。そんな言いようの無い興奮が晴人の体を熱くしていた。
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