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終章
日本皇国
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「私が行った時安藤晴人は今までの憑物が取れたかの様に私を見て笑ったわ」
令和58年。渡部は念願通り編集の仕事で辣腕を辣腕を振るっていた。一時はあの戦争について自社より依頼された本『英雄軍』を書いて近年まれに見るヒットを飛ばした。それでも編集社に残ったのはこの仕事が好きだからだった。
「じゃあ、何で安藤がそのように笑ったのかはもう分からないんですか?…」
そう聞いてくるのは今の若者向けにあの戦争の特集をする、そのための話を聞きに来ていた渡部の部下の木下だ。大きな仕事で意気込んでいる。
「うーん、何で笑ったのか……私は安藤君に穏やかだって言ったの……」
「はい…」
「けど、今は分かるの。あの笑みは穏やかなんかじゃなかった…決して。あれは何もかもを超えた顔をしていた……そうだった」
木下は黙って難しそうな顔をして頷いた。
「何で笑ったのか……………それは、分からない…」
たっぷりと考えて渡部は答えた。
「そうですか……早速その事について編集して来ます」
と、その場の空気ごと切り替えたように木下は出て行った。
渡部は木下に1つ嘘をついた。あの顔の正体。渡部はそれを今は知っている。誰にも見られていないのを確認して机の鍵付きの引き出しを開ける。そこには今はもう古くなったノートが三冊ある。あの時、安藤君は私に言った。「このノートを引き継いで欲しい」と。それから5分ほどこの近田ノートについて安藤君から聞いた。近田という先輩が作った作戦ノートだという事、その人はもう居ない事、何故ここにあるのか分からないという事、そして安倍吉彦が裏切っていた事。
「安藤君、今なら分かるよ………安倍君は裏切っていたわけじゃなかった……」
渡部は誰にともなくボソッと言った。安倍吉彦は流れに逆らっていたのだ。あの戦争の後、渡部はいろいろ調べた。近田厚広について、大道寺利彦について、安倍吉彦について、安藤晴人についてと、おおよその皇国再建部の歴史を。そして分かった…。安倍吉彦と近田厚広は実の兄弟だった……。幼い頃に両親の離婚で行き別れていたのだ。それが何の因果か同じ学校同じ部活だったのだ。そしてそこから渡部はノートについての1つの推測を立てた。ノートは何らかの形で近田厚広の実弟、吉彦に受け継がれていた。しかし、その中を見た吉彦はそのシナリオに逆らうためにあの軍を助けるために1人で動いていたのだ。シナリオ、そう第一冊目の部員に見せられた部分はカモフラージュだったのだ第二、第三冊目は正にシナリオだった。これを見た者はきっと誰でも恐れるだろう……。そう思って渡部は一度もこのノートについて喋ったことは無い。正に神の領域だからだ。それを多くの仲間を失った後の安藤が見た悔しさはこの上無かったのだろう。そのノートには何もかもの事実が書いてあった……。全てだ。皇国再建軍は負けるという事、そしてその後のこと。そう、あれは正に予言書だった。そしてそれは令和92年まで続く。そう、つまり日本は令和92年まで近田厚広という1人の掌中にあるのだ。
信じられなかった。しかし、全てが見事に当たるのだ。まずあの戦争の半年後、政府は国民投票を行い、8割を超える賛成でその2年後の令和35年5月7日。大政奉還が実施された。そして同年6月に大日本帝国憲法を基にした大日本皇国憲法が発布され、最終決定は全て天皇に委ねられた。そして、令和36年に自衛隊は第日本皇国軍と改称し、皇国航空軍、皇国陸軍、皇国海軍、皇国サイバー軍、皇国宇宙軍が出来た。そして令和40年には竹島の不法占拠を理由に大韓民国と開戦、半年で大勝利を収め、今も占領という形で日本の統治下にある。これらは全て近田ノートに言い当てられている。外したものは一つもない。そしてノートの最後の最後には筆でこう書かれてある。
『続生報国』
七生報国を変えたと思われ、生き続けて国の恩に報いるという意味だと思われる。そう、近田厚広は………生きている。
令和58年。渡部は念願通り編集の仕事で辣腕を辣腕を振るっていた。一時はあの戦争について自社より依頼された本『英雄軍』を書いて近年まれに見るヒットを飛ばした。それでも編集社に残ったのはこの仕事が好きだからだった。
「じゃあ、何で安藤がそのように笑ったのかはもう分からないんですか?…」
そう聞いてくるのは今の若者向けにあの戦争の特集をする、そのための話を聞きに来ていた渡部の部下の木下だ。大きな仕事で意気込んでいる。
「うーん、何で笑ったのか……私は安藤君に穏やかだって言ったの……」
「はい…」
「けど、今は分かるの。あの笑みは穏やかなんかじゃなかった…決して。あれは何もかもを超えた顔をしていた……そうだった」
木下は黙って難しそうな顔をして頷いた。
「何で笑ったのか……………それは、分からない…」
たっぷりと考えて渡部は答えた。
「そうですか……早速その事について編集して来ます」
と、その場の空気ごと切り替えたように木下は出て行った。
渡部は木下に1つ嘘をついた。あの顔の正体。渡部はそれを今は知っている。誰にも見られていないのを確認して机の鍵付きの引き出しを開ける。そこには今はもう古くなったノートが三冊ある。あの時、安藤君は私に言った。「このノートを引き継いで欲しい」と。それから5分ほどこの近田ノートについて安藤君から聞いた。近田という先輩が作った作戦ノートだという事、その人はもう居ない事、何故ここにあるのか分からないという事、そして安倍吉彦が裏切っていた事。
「安藤君、今なら分かるよ………安倍君は裏切っていたわけじゃなかった……」
渡部は誰にともなくボソッと言った。安倍吉彦は流れに逆らっていたのだ。あの戦争の後、渡部はいろいろ調べた。近田厚広について、大道寺利彦について、安倍吉彦について、安藤晴人についてと、おおよその皇国再建部の歴史を。そして分かった…。安倍吉彦と近田厚広は実の兄弟だった……。幼い頃に両親の離婚で行き別れていたのだ。それが何の因果か同じ学校同じ部活だったのだ。そしてそこから渡部はノートについての1つの推測を立てた。ノートは何らかの形で近田厚広の実弟、吉彦に受け継がれていた。しかし、その中を見た吉彦はそのシナリオに逆らうためにあの軍を助けるために1人で動いていたのだ。シナリオ、そう第一冊目の部員に見せられた部分はカモフラージュだったのだ第二、第三冊目は正にシナリオだった。これを見た者はきっと誰でも恐れるだろう……。そう思って渡部は一度もこのノートについて喋ったことは無い。正に神の領域だからだ。それを多くの仲間を失った後の安藤が見た悔しさはこの上無かったのだろう。そのノートには何もかもの事実が書いてあった……。全てだ。皇国再建軍は負けるという事、そしてその後のこと。そう、あれは正に予言書だった。そしてそれは令和92年まで続く。そう、つまり日本は令和92年まで近田厚広という1人の掌中にあるのだ。
信じられなかった。しかし、全てが見事に当たるのだ。まずあの戦争の半年後、政府は国民投票を行い、8割を超える賛成でその2年後の令和35年5月7日。大政奉還が実施された。そして同年6月に大日本帝国憲法を基にした大日本皇国憲法が発布され、最終決定は全て天皇に委ねられた。そして、令和36年に自衛隊は第日本皇国軍と改称し、皇国航空軍、皇国陸軍、皇国海軍、皇国サイバー軍、皇国宇宙軍が出来た。そして令和40年には竹島の不法占拠を理由に大韓民国と開戦、半年で大勝利を収め、今も占領という形で日本の統治下にある。これらは全て近田ノートに言い当てられている。外したものは一つもない。そしてノートの最後の最後には筆でこう書かれてある。
『続生報国』
七生報国を変えたと思われ、生き続けて国の恩に報いるという意味だと思われる。そう、近田厚広は………生きている。
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