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第三章 1、最後の期間
1、
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新年度を迎えるたびに、毎日の流れに変化が生まれる。だがそれも一か月もすればマンネリ化するものだ。
今年は、これまでの人生のなかで、私個人に、もっとも変革をもたらしただろう。
師走に入って一週間。専門学生となり、春、夏、秋が過ぎた。
みこちゃんが、白い息を両手に吐きながら、「やっとだねぇ」と言った。学校の出入り口付近で立ち止まっているため、出入りする生徒たちが通るたび、自動ドアが開いて冷気がが入り込んでくる。
さぶー、とみこちゃんが手のひらをこすり合わせて、自動ドアから少しだけ離れた。
ついさっき、二学期の最後の出席が終えた。
明日から年末年始を含む冬休みとなる。
一部の学生は、クリスマスを過ぎても出席せねばならないが、幸運なことに、私は落第点を一つも取らなかった。しんどさが大部分を占めた実習も、今となっては、成長を迎えるための踏み台であったことも理解できた。よって、私は補習うんぬんの一部には含まれないため、まるごと冬休みを自由に過ごせるのだ。
みこちゃんは、いつもつけているピンク色の小さな腕時計を見て、「遅いなぁ」と呟いた。
ここで友人と待ち合わせをしているという。待ち合わせ相手はBクラスの生徒で、ホームルームが長引いているらしい。
「じゃあ、みこちゃん。また、来年」
「本当にとげっちゃん、こないの? 遊びいこーよ」
「バイトがあるから」
「そんなに楽しいバイトなの? 接客なら、今度遊びにいってもいいー?」
みこちゃんは、なぜかニヤニヤした表情をしている。その理由がわからず、きょとんとする私に、みこちゃんが言う。
「なんか、とげっちゃん変わったよね。可愛くなったっていうか」
「ほんと?」
「嘘なんかついてどうすんの。最初のころなんて、とっつきにくそうだったもん。まぁ、そんなところも萌えるんだけどね」
うんうん、と頷くみこちゃんに、軽く首を傾げた。たまにみこちゃんの言葉は、解読不能となる。
「よくわからないけど、私の性格が柔和になった、ってことかな。もしそうなら、みこちゃんのおかげだよ。私、こうしてお話しできることが楽しいなんて、これまで考えたことさえなかったもの」
みこちゃんは、照れを隠すことなく「嬉しいこと言ってくれるじゃん」と笑う。そんな満足げな様子のみこちゃんこそ、可愛いと思う。
「じゃあね、みこちゃん。そろそろ行くけど、来年も仲良くしてやってください」
「うん、またねー!」
ひらひら、と手を振るみこちゃんに、軽く手をあげたとき。
「あっ、そうだ」
みこちゃんが、肩にかけていたショルダーバックへ手をつっこんだ。そこから、手のひらほどの袋を取り出す。雑貨屋さんなどでよく見かける、可愛いラッピングの袋だ。過剰な梱包はされず、リボンなどはない。
「簡単なもので申し訳ない。が、これをとげっちゃんに進ぜようー」
「え、くれるの?」
「もちのろんさ。そのために、買ったんだから。使ってね」
いえーい、とみこちゃんが笑う。壊れ物のように受け取ると、「多少乱暴に扱っても大丈夫だよ」と笑われてしまった。
「嬉しい。嬉しいよ、みこちゃん!」
「はいはい、じゃ、またね」
階段を下りてきた友人たちを見つけて、みこちゃんが歩いていく。その後ろ姿に笑みを返して、私は手の中の袋を見つめた。
すぐにあけたいのが本音だけど、帰ってからの楽しみにしよう。
明日からの長期休暇に向けて、ほくほくと、私は帰路についたのだ。
***
今年は、これまでの人生のなかで、私個人に、もっとも変革をもたらしただろう。
師走に入って一週間。専門学生となり、春、夏、秋が過ぎた。
みこちゃんが、白い息を両手に吐きながら、「やっとだねぇ」と言った。学校の出入り口付近で立ち止まっているため、出入りする生徒たちが通るたび、自動ドアが開いて冷気がが入り込んでくる。
さぶー、とみこちゃんが手のひらをこすり合わせて、自動ドアから少しだけ離れた。
ついさっき、二学期の最後の出席が終えた。
明日から年末年始を含む冬休みとなる。
一部の学生は、クリスマスを過ぎても出席せねばならないが、幸運なことに、私は落第点を一つも取らなかった。しんどさが大部分を占めた実習も、今となっては、成長を迎えるための踏み台であったことも理解できた。よって、私は補習うんぬんの一部には含まれないため、まるごと冬休みを自由に過ごせるのだ。
みこちゃんは、いつもつけているピンク色の小さな腕時計を見て、「遅いなぁ」と呟いた。
ここで友人と待ち合わせをしているという。待ち合わせ相手はBクラスの生徒で、ホームルームが長引いているらしい。
「じゃあ、みこちゃん。また、来年」
「本当にとげっちゃん、こないの? 遊びいこーよ」
「バイトがあるから」
「そんなに楽しいバイトなの? 接客なら、今度遊びにいってもいいー?」
みこちゃんは、なぜかニヤニヤした表情をしている。その理由がわからず、きょとんとする私に、みこちゃんが言う。
「なんか、とげっちゃん変わったよね。可愛くなったっていうか」
「ほんと?」
「嘘なんかついてどうすんの。最初のころなんて、とっつきにくそうだったもん。まぁ、そんなところも萌えるんだけどね」
うんうん、と頷くみこちゃんに、軽く首を傾げた。たまにみこちゃんの言葉は、解読不能となる。
「よくわからないけど、私の性格が柔和になった、ってことかな。もしそうなら、みこちゃんのおかげだよ。私、こうしてお話しできることが楽しいなんて、これまで考えたことさえなかったもの」
みこちゃんは、照れを隠すことなく「嬉しいこと言ってくれるじゃん」と笑う。そんな満足げな様子のみこちゃんこそ、可愛いと思う。
「じゃあね、みこちゃん。そろそろ行くけど、来年も仲良くしてやってください」
「うん、またねー!」
ひらひら、と手を振るみこちゃんに、軽く手をあげたとき。
「あっ、そうだ」
みこちゃんが、肩にかけていたショルダーバックへ手をつっこんだ。そこから、手のひらほどの袋を取り出す。雑貨屋さんなどでよく見かける、可愛いラッピングの袋だ。過剰な梱包はされず、リボンなどはない。
「簡単なもので申し訳ない。が、これをとげっちゃんに進ぜようー」
「え、くれるの?」
「もちのろんさ。そのために、買ったんだから。使ってね」
いえーい、とみこちゃんが笑う。壊れ物のように受け取ると、「多少乱暴に扱っても大丈夫だよ」と笑われてしまった。
「嬉しい。嬉しいよ、みこちゃん!」
「はいはい、じゃ、またね」
階段を下りてきた友人たちを見つけて、みこちゃんが歩いていく。その後ろ姿に笑みを返して、私は手の中の袋を見つめた。
すぐにあけたいのが本音だけど、帰ってからの楽しみにしよう。
明日からの長期休暇に向けて、ほくほくと、私は帰路についたのだ。
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