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1.何処かで聞いた都市国家
1.アリアの仕業
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……最初に目に入ったのは、見知らぬ天井でした……
そんなフレーズが頭に浮かぶけど、意外に他の言葉が思いつかないモノなんだな。確かに見知らぬ天井ではあるけど、描いてあるのは月や星だ。子供向けにデフォルメされている訳ではない、プラネタリウムも顔負けじゃないだろうか。
目が覚めると意識が覚醒してしまい、頭がハッキリするのは僕の数少ない取得でもある。その辺は、転生させられても変わらないみたいだ。正直危険な世界なら、寝起きにすぐ動けることは、生き残るには大切な特技になるだろうし。
周囲を観察すると、寝かされているのは、どうやらベットのようだ。薄くて軽い毛布が、僕の身体に掛かっている。アリアが転生といっていた事を思い出したけど、どうやら乳児スタートは避けられたようだ。とはいえ、周りの家具が大きめに見える事から、以前よりも身体が小さくなっている事は間違いない。
身体を起して周囲の観察から、自分の身体の確認を始めた僕は、嫌な予感に包まれる。小さな手、華奢な腕はまだいい。子供ならそんなもんだろうから。うつむいた拍子に、顔の左右に流れる髪の色が白いのと、長さも長いというのも許容できる範囲だろう。だけど、着ている物(着させられてるか?)は、薄く透けない程度のワンピース状のものだ。胸元から覗き込んで見えた下着らしき物は、ブリーフやトランクス、ましてや褌では断じてない。裸でなかった事を喜ぶべきなのかも知れないけど、これはズロースと呼ばれるモノではないだろうか?
「なんで?……」
発した声はやはり今までの僕の声とは違っている。身体が小さくなっているのだから、ある程度想像していた、少し高い声。でも、それは明らかに少年の声ではなく……愛らしい声で。
嫌な汗が流れ落ちる事を感じた僕は、周囲に人目が無い事を再度確認して、股間に手をやり呆然としてしまう。そこにはあるべきモノが存在しなかったからで……
*****
どのくらい茫然自失していたのか、不意にカーテンが開けられて、部屋の中が一気に明るくなる、先ほどまで星と月が写っていた天井は、太陽と雲に代わり昼間の顔を見せた。
カーテンを開けたのは、10代後半とおぼしきかわいい感じの女性だが、いつの間に部屋に入ってきたのか、僕には判らなかった。そのまま窓を開けて、部屋の空気を入れ替えている。窓の外、視界には青い水平線が広がっているのが見える。
女性は逆光の中、僕のほうを見てにこやかに笑うので、一瞬僕の背後に誰かが立っているのかと振り向いたけど、そこには誰もいない。そんな僕の様子をみて、さも可笑しげに笑う。
「あはっ、此処には私と貴女しか今は居ないよ。ようやく目が覚めたんだね。」
そういう彼女はダークブロンドの髪に、青味がかったグレイの瞳が印象的な可愛らしい女性だった。外見は白いアンダードレスの上に黒いシンプルなドレスを纏った、スレンダーな体型にピッタリの快活な女性といった口調だ。
「さて、私の名前はアレクシア・ウィンターよ。アレクシアと呼んでね。ここは私の家。さっきも言ったけど、今は私達以外誰もいないよ。」
そういう彼女は、にこやかな笑顔を僕に向けるけど、その目は少しも笑っていない。この目は僕には記憶がある。この目をしてる女の子には嘘は通じない。一葉もこんな目をしてた時には、嘘は全く通じなかったっけ……
「……で?貴女の名前は?どこからどうやって来たのかな?」
正直、美人の本気の追及は、なかなか怖いものがある。何処まで信じてもらえるかは別として、ある程度話しちゃうしかないよなぁ。アレクシアの質問から数少ない情報を得ようと僕はあがく。どこから来たって聞いてきたってことは、少なくても元々いた誰かに転生したという状況ではないらしい。この場合転生ではなく、転移なのかもしれないけど、性が変わっちゃってるからなぁ。これは異世界転性というべきものなのか?アリアのやつ、ややこしいことにしやがって。
「僕の名前は、黒江……」
そこまで言って止まってしまう。一といっても、今の外見と一致してないし、まずいよね。まあ、日本式の名前は通じない可能性が高いけどね。
「ふーん、クロエね。いい名前じゃない。家名とかはないの?」
彼女、アレクシアさんの言葉に僕は首を盾に振り肯定した。
「で?何処から来たの?」
当然来る質問だけど、どう答えたらいいんだろ。嘘を言うほど、アイオライトに詳しくないし、すぐばれてしまうだろう。まあ、信じるかどうかは判らないけど、ある程度の事を話そうと僕は口を開いた。
「……」
話そうとしてるのに、声が出ない。これは、アリアに制限かなにかされているのか。声に出す事が出来ず、僕は力なく首を左右に振り否定を伝えるしかなかった。
「……まあ、いいわ。起き抜けに悪かったわね。話せるときに話してちょうだいとは言えないのは、残念だけどね。そろそろ他の人も来るから、身繕いしておきましょうか。」
アレクシアさんの言葉は、暗にタイムリミットがあることを伝えてくる。とはいえ、彼女を納得させられるような作り話を作れるはずもなく、本当のことは口にできないのでは、記憶喪失一択しかないじゃないか。
考え込んでいると、アレクシアさんが着替えを用意してくれた。差し出されたのは、水色のアンダードレスに、濃い青のシンプルなドレスで、彼女のドレスと色違いのものだった。
あっと言う間にワンピースを脱がされ、反射的に一人で着替えられるからといったけど、女物のドレスなんて着方が判るわけも無く、結局彼女に着替えさせられてしまった。当然のことだけど、服のサイズは彼女とは異なるけど、なぜかぴったりだ。腰回りもきつくないし、袖の長さもスカートの丈もまるであつらえたかのように……
若くて綺麗な女性に着替えさせられるなんて、どんな罰ゲームだと思ったが、外見上の僕は女の子であり、特におかしいわけではない。年の離れたお姉さんが、妹の世話をしているようにしか見えないだろうし。
アレクシアさんは鼻歌を歌いながら、僕の身繕いを進めていく。髪も編み上げてくれて、先程までの様子とはうって変わって上機嫌だ。
「こんなもんかな?うん、私としては上出来」
アレクシアさんはそういうと、僕を鏡の前に立たせる。鏡の中には、美少女がいた。目・鼻・口といった顔の各パーツは、一つ一つをとれば他人と違いはないだろうけど、それが絶妙のバランスで小さめの輪郭の中に配置されている。ついつい、鏡の中の自分に見惚れてしまうが、いかんいかん、これじゃナルシストじゃないかと思い直し、なるべく客観的に見ようと努める。
まず白い髪の毛は、長く編みあげられておしゃれな感じに後ろに流されていて、とても綺麗にみえる。白だと白髪じゃないかと思っていたけど、日の光にあたったそれは、プラチナブロンドもかくやという状況になっている。瞳は紅瞳で、アルビノかよっほど肌も白いが、着せられたドレスの濃い青が、髪と淡い水色のドレスを引き立てている。
これは、アリアとアレクシアさんの合作とはいえ、改心の出来だろう。正直、アリアGJと心の中で唸ってしまった。低めの身長は小動物感満載だが、美人顔とのアンバランス差は、こちらの世界に紳士がいたらやばい状況になりそうだ。
そしてあることに気付いた僕を、半ば『くっ殺』状態にしているのが、この見た目のかわいらしさではない。口から出る言葉である。一人称が『僕』って言ってしまったことに気付き、更にアレクシアと話している言葉は丁寧な言葉が選ばれていて、礼儀正しい女の子状態である。僕っ子の美少女って、ないわぁと思いつつもそうそう急に変わるわけもない。
まあ、地球で受験の合間にやっていた某国民的MMOでも、普通にチャットしてるだけなのに女子認定されていた僕としては、この言葉遣いは普通なのだが、女性と思って話をしていた相手としては、『ネカマ?!』状態なのである。まあ、今はリアル性別が女子であり、ネカマではないのだが精神的には男子の分も残ってる訳で……グガガガガガガッ
*****
居間といっても、この手の作りの家は吹き抜けのホールにあり、部屋数も5部屋とさほど多くない。居間兼ホールに、アレクシアさんの書斎と寝室。子供部屋(僕が寝かされていた部屋だ)に、客用寝室が一部屋あるだけ。
10代後半の女性の家にしては広いけど、貴族の家としては小さい。まあ、アレクシアさんが貴族かどうかはわからないけど、ドレスを着ているのだから、裕福な平民層か、支配者層である貴族なのかと思ってたんだけど。
ホールのクッションの効いた一人掛け用の椅子に座らせられ、しばらくすると玄関のほうでコンコンとノッカーの音がする。アレクシアさんが玄関に出向き、一緒に入ってきたのは一組の男女だった。
女性のほうは、明るい金髪にサファイア色の瞳をした20代後半?の女性で、思いやりのある優しい女性に見える。にこやかな笑顔が印象的だ。
男性のほうは、20代後半から30代前半といった感じの、均整の取れた体格に高身長の人だ。おそらく180cm以上はあるだろう。黒髪黒瞳という日本人的配色で、黒づくめにマントを羽織っている。身だしなみにはあまり気を使わない人らしく、ぼさぼさとしたおさまりの悪い髪に、眼鏡といったいでたちだ。
アレクシアさんの案内で二人掛けの椅子の前に立つ二人に、僕は立ち上がって軽く会釈をする。ここの挨拶はわからないし、カーテンシーが正しいのかもしれないけど、分からずやっても無様なだけだよね。
男性の方は、興味深げにこちらを見ているし、女性の方は微妙な表情をしている。お辞儀だけじゃまずかったのだろうか?今更考えても仕方ない。
アレクシアさんの話では二人は友人らしいが、ずいぶん年の離れた友達だね。気さくな言葉遣いをするアレクシアさんに、特に気にした様子も見せない二人は、なかなかに大人だと思う。小娘にため口では、特に同性間では問題視する場合も多いだろうに……
二人の名前は、女性がリリーさん。男性がエリックさんと言うらしい。リリーさんは治癒系の魔術士とのことで、僕の状況を見にきてくれたのだろうか?内心では、『治癒系魔術師、異世界キタ~~』と小躍りしそうではあったが、表面にはなるべく出さないようにする。
前世の僕は、雑食系の読書家だったので、面白そうなものは手あたり次第に読んでいた。ラノベももちろん読んでいたしね。
リリーさんが僕を診ている間、エリックさんとアレクシアさんは何か小声で話している。たまにこちらを見るので僕のことを話しているのには間違いないんだろうけど。
そんなフレーズが頭に浮かぶけど、意外に他の言葉が思いつかないモノなんだな。確かに見知らぬ天井ではあるけど、描いてあるのは月や星だ。子供向けにデフォルメされている訳ではない、プラネタリウムも顔負けじゃないだろうか。
目が覚めると意識が覚醒してしまい、頭がハッキリするのは僕の数少ない取得でもある。その辺は、転生させられても変わらないみたいだ。正直危険な世界なら、寝起きにすぐ動けることは、生き残るには大切な特技になるだろうし。
周囲を観察すると、寝かされているのは、どうやらベットのようだ。薄くて軽い毛布が、僕の身体に掛かっている。アリアが転生といっていた事を思い出したけど、どうやら乳児スタートは避けられたようだ。とはいえ、周りの家具が大きめに見える事から、以前よりも身体が小さくなっている事は間違いない。
身体を起して周囲の観察から、自分の身体の確認を始めた僕は、嫌な予感に包まれる。小さな手、華奢な腕はまだいい。子供ならそんなもんだろうから。うつむいた拍子に、顔の左右に流れる髪の色が白いのと、長さも長いというのも許容できる範囲だろう。だけど、着ている物(着させられてるか?)は、薄く透けない程度のワンピース状のものだ。胸元から覗き込んで見えた下着らしき物は、ブリーフやトランクス、ましてや褌では断じてない。裸でなかった事を喜ぶべきなのかも知れないけど、これはズロースと呼ばれるモノではないだろうか?
「なんで?……」
発した声はやはり今までの僕の声とは違っている。身体が小さくなっているのだから、ある程度想像していた、少し高い声。でも、それは明らかに少年の声ではなく……愛らしい声で。
嫌な汗が流れ落ちる事を感じた僕は、周囲に人目が無い事を再度確認して、股間に手をやり呆然としてしまう。そこにはあるべきモノが存在しなかったからで……
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どのくらい茫然自失していたのか、不意にカーテンが開けられて、部屋の中が一気に明るくなる、先ほどまで星と月が写っていた天井は、太陽と雲に代わり昼間の顔を見せた。
カーテンを開けたのは、10代後半とおぼしきかわいい感じの女性だが、いつの間に部屋に入ってきたのか、僕には判らなかった。そのまま窓を開けて、部屋の空気を入れ替えている。窓の外、視界には青い水平線が広がっているのが見える。
女性は逆光の中、僕のほうを見てにこやかに笑うので、一瞬僕の背後に誰かが立っているのかと振り向いたけど、そこには誰もいない。そんな僕の様子をみて、さも可笑しげに笑う。
「あはっ、此処には私と貴女しか今は居ないよ。ようやく目が覚めたんだね。」
そういう彼女はダークブロンドの髪に、青味がかったグレイの瞳が印象的な可愛らしい女性だった。外見は白いアンダードレスの上に黒いシンプルなドレスを纏った、スレンダーな体型にピッタリの快活な女性といった口調だ。
「さて、私の名前はアレクシア・ウィンターよ。アレクシアと呼んでね。ここは私の家。さっきも言ったけど、今は私達以外誰もいないよ。」
そういう彼女は、にこやかな笑顔を僕に向けるけど、その目は少しも笑っていない。この目は僕には記憶がある。この目をしてる女の子には嘘は通じない。一葉もこんな目をしてた時には、嘘は全く通じなかったっけ……
「……で?貴女の名前は?どこからどうやって来たのかな?」
正直、美人の本気の追及は、なかなか怖いものがある。何処まで信じてもらえるかは別として、ある程度話しちゃうしかないよなぁ。アレクシアの質問から数少ない情報を得ようと僕はあがく。どこから来たって聞いてきたってことは、少なくても元々いた誰かに転生したという状況ではないらしい。この場合転生ではなく、転移なのかもしれないけど、性が変わっちゃってるからなぁ。これは異世界転性というべきものなのか?アリアのやつ、ややこしいことにしやがって。
「僕の名前は、黒江……」
そこまで言って止まってしまう。一といっても、今の外見と一致してないし、まずいよね。まあ、日本式の名前は通じない可能性が高いけどね。
「ふーん、クロエね。いい名前じゃない。家名とかはないの?」
彼女、アレクシアさんの言葉に僕は首を盾に振り肯定した。
「で?何処から来たの?」
当然来る質問だけど、どう答えたらいいんだろ。嘘を言うほど、アイオライトに詳しくないし、すぐばれてしまうだろう。まあ、信じるかどうかは判らないけど、ある程度の事を話そうと僕は口を開いた。
「……」
話そうとしてるのに、声が出ない。これは、アリアに制限かなにかされているのか。声に出す事が出来ず、僕は力なく首を左右に振り否定を伝えるしかなかった。
「……まあ、いいわ。起き抜けに悪かったわね。話せるときに話してちょうだいとは言えないのは、残念だけどね。そろそろ他の人も来るから、身繕いしておきましょうか。」
アレクシアさんの言葉は、暗にタイムリミットがあることを伝えてくる。とはいえ、彼女を納得させられるような作り話を作れるはずもなく、本当のことは口にできないのでは、記憶喪失一択しかないじゃないか。
考え込んでいると、アレクシアさんが着替えを用意してくれた。差し出されたのは、水色のアンダードレスに、濃い青のシンプルなドレスで、彼女のドレスと色違いのものだった。
あっと言う間にワンピースを脱がされ、反射的に一人で着替えられるからといったけど、女物のドレスなんて着方が判るわけも無く、結局彼女に着替えさせられてしまった。当然のことだけど、服のサイズは彼女とは異なるけど、なぜかぴったりだ。腰回りもきつくないし、袖の長さもスカートの丈もまるであつらえたかのように……
若くて綺麗な女性に着替えさせられるなんて、どんな罰ゲームだと思ったが、外見上の僕は女の子であり、特におかしいわけではない。年の離れたお姉さんが、妹の世話をしているようにしか見えないだろうし。
アレクシアさんは鼻歌を歌いながら、僕の身繕いを進めていく。髪も編み上げてくれて、先程までの様子とはうって変わって上機嫌だ。
「こんなもんかな?うん、私としては上出来」
アレクシアさんはそういうと、僕を鏡の前に立たせる。鏡の中には、美少女がいた。目・鼻・口といった顔の各パーツは、一つ一つをとれば他人と違いはないだろうけど、それが絶妙のバランスで小さめの輪郭の中に配置されている。ついつい、鏡の中の自分に見惚れてしまうが、いかんいかん、これじゃナルシストじゃないかと思い直し、なるべく客観的に見ようと努める。
まず白い髪の毛は、長く編みあげられておしゃれな感じに後ろに流されていて、とても綺麗にみえる。白だと白髪じゃないかと思っていたけど、日の光にあたったそれは、プラチナブロンドもかくやという状況になっている。瞳は紅瞳で、アルビノかよっほど肌も白いが、着せられたドレスの濃い青が、髪と淡い水色のドレスを引き立てている。
これは、アリアとアレクシアさんの合作とはいえ、改心の出来だろう。正直、アリアGJと心の中で唸ってしまった。低めの身長は小動物感満載だが、美人顔とのアンバランス差は、こちらの世界に紳士がいたらやばい状況になりそうだ。
そしてあることに気付いた僕を、半ば『くっ殺』状態にしているのが、この見た目のかわいらしさではない。口から出る言葉である。一人称が『僕』って言ってしまったことに気付き、更にアレクシアと話している言葉は丁寧な言葉が選ばれていて、礼儀正しい女の子状態である。僕っ子の美少女って、ないわぁと思いつつもそうそう急に変わるわけもない。
まあ、地球で受験の合間にやっていた某国民的MMOでも、普通にチャットしてるだけなのに女子認定されていた僕としては、この言葉遣いは普通なのだが、女性と思って話をしていた相手としては、『ネカマ?!』状態なのである。まあ、今はリアル性別が女子であり、ネカマではないのだが精神的には男子の分も残ってる訳で……グガガガガガガッ
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居間といっても、この手の作りの家は吹き抜けのホールにあり、部屋数も5部屋とさほど多くない。居間兼ホールに、アレクシアさんの書斎と寝室。子供部屋(僕が寝かされていた部屋だ)に、客用寝室が一部屋あるだけ。
10代後半の女性の家にしては広いけど、貴族の家としては小さい。まあ、アレクシアさんが貴族かどうかはわからないけど、ドレスを着ているのだから、裕福な平民層か、支配者層である貴族なのかと思ってたんだけど。
ホールのクッションの効いた一人掛け用の椅子に座らせられ、しばらくすると玄関のほうでコンコンとノッカーの音がする。アレクシアさんが玄関に出向き、一緒に入ってきたのは一組の男女だった。
女性のほうは、明るい金髪にサファイア色の瞳をした20代後半?の女性で、思いやりのある優しい女性に見える。にこやかな笑顔が印象的だ。
男性のほうは、20代後半から30代前半といった感じの、均整の取れた体格に高身長の人だ。おそらく180cm以上はあるだろう。黒髪黒瞳という日本人的配色で、黒づくめにマントを羽織っている。身だしなみにはあまり気を使わない人らしく、ぼさぼさとしたおさまりの悪い髪に、眼鏡といったいでたちだ。
アレクシアさんの案内で二人掛けの椅子の前に立つ二人に、僕は立ち上がって軽く会釈をする。ここの挨拶はわからないし、カーテンシーが正しいのかもしれないけど、分からずやっても無様なだけだよね。
男性の方は、興味深げにこちらを見ているし、女性の方は微妙な表情をしている。お辞儀だけじゃまずかったのだろうか?今更考えても仕方ない。
アレクシアさんの話では二人は友人らしいが、ずいぶん年の離れた友達だね。気さくな言葉遣いをするアレクシアさんに、特に気にした様子も見せない二人は、なかなかに大人だと思う。小娘にため口では、特に同性間では問題視する場合も多いだろうに……
二人の名前は、女性がリリーさん。男性がエリックさんと言うらしい。リリーさんは治癒系の魔術士とのことで、僕の状況を見にきてくれたのだろうか?内心では、『治癒系魔術師、異世界キタ~~』と小躍りしそうではあったが、表面にはなるべく出さないようにする。
前世の僕は、雑食系の読書家だったので、面白そうなものは手あたり次第に読んでいた。ラノベももちろん読んでいたしね。
リリーさんが僕を診ている間、エリックさんとアレクシアさんは何か小声で話している。たまにこちらを見るので僕のことを話しているのには間違いないんだろうけど。
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