駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

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2.いつか醒める夢

13.新年祭①

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今回のお話は三人称視点で試験的に書いています。

*****

 新年祭で賑わう上層街の大通りを、アレクシスはオリバーと連れ立って歩いていた。
 別段2人は気があっている訳ではないが、移動制限の為上層街での動ける範囲は全く同じであり、受ける講義も制限上被る為、自然と一緒に居るのが多くなるだけの事である。
 今日は上層街のとある店で、新年を祝う男子学生有志のパーティーに参加する為に歩いていたのだ。
 しかし、その表情は明るいとは言えなかった。国に戻っていれば、高位貴族の集うパーティや舞踏会などへの参加で忙しくなっていた筈ではあった。
 しかし、今年の冬はユイ(元リン)の事があり、下手に帰国するとお互いに出し抜かれる(元より0に近かったのだが……)と思った彼らは、帰国せずにアレキサンドリアでの新年祭を迎える事となったのであった。
 結局ユイは、アレキサンドリアを選び、二人の苦労は無となった。そんな彼等の眼前を、見知った男子が、見慣れない女子をつれて歩いているのだから、爆発しろと呪いたい気分も強いのだろう。

 「はぁ、やはりユイが留学生から外れてしまったのは大きいですねぇ。」

 ついアレクシスの口から漏れた言葉に、オリバーが珍しく同意をした。

 「全くだな。ユイが居ないせいで、そもそも女子学生との接点自体が消えてしまったではないか。」

 オリバーの言葉に、アレクシスは珍しい事があるものだと、言葉を返した。

 「珍しいですね。貴方はアレキサンドリアの学生を含めて、市民も下に見ていたはずですが?」

 言われたオリバーも特に考えて口にしたわけではなかったらしい。そういえばそうだな、などと独り言を口にしている。
 そんな彼らの視界を、白・黒・ダークブロンド・明るいブロンドの4人組みが横切る。その取り合わせは、最近学院でも有名になりつつある、低年齢クラスの女子生徒達である。そろいも揃って、美形かつ成績優秀であり、重要な事にどの娘も男子の手がついていないという、希少価値の高いカルテットであった。
 今では、普通クラスの男子にも、その存在は知られているが、大半の男子は高嶺の花と諦めている。一部無謀にもアタックしようとした者は、何者かにひそかに妨害されたとの噂もあるようだ。
 先程2人の話にでた、ユイもそのメンバーであり、ユイが留学生リンとして居たことにより秋空の下で、このカルテットの手料理を味わえた事は記憶に新しかった。

 思わず目で追っている二人の視界の隅で、4人は揃って一軒の店へと入っていく。そこは言わずと知れた、ウィンター家とエアリー家の共同事業で展開している飲食店の『四季four seasons』であり、魔都アレキサンドリアの中でも近年噂の店である。
 2人はともに王族であり、学院の長期休暇である夏季の休暇は、自国に戻り避暑地へと出掛けていた為、この店の夏季限定のカキ氷を食する機会を得ていなかった。
 自国から戻り、学友から聞いたカキ氷の話は、雪を盛った器に甘いシロップを掛けたものということで、冬の寒村で、食べるものがない子供達が、僅かにでも食した気分になるために食べるそれと異なるものではないなと思ってはいた。
 しかしそれを、夏に都市部で行えるというのは、どれほどのものだろうと思ってしまう。
 無論魔法があるのだから、魔法で作れぬ事はない。だが、氷魔法は水の上位魔法と言われ、習得している魔法使いは自国では少ない。
 仮に習得していたとしても、涼を求めて食べる為だけに、氷をつくって魔力を使う選択をする者など居ない。確かに魔力は時間と共に回復し、その回復量は持ち主の最大魔力量に比例するが、率にすると1時間当たり約4%程度と知れている。使い切ってしまった魔力が戻るのは25時間かかる計算であり、戦時に魔法使いの運用が難しい理由でもあった。
 回復・治癒系の魔術師やイリスが魔力を温存したがるのは、この為である。遊びで魔力を使った直後に、緊急性を要する患者の治療に使用する魔力がなかったなど、回復・治癒を生業とする魔術師にとって、恥ずべき事なのだから。逆に、攻撃系の魔術しかもたない魔法使いは、平和な時はいたずらに魔力を浪費する傾向があるのは、クロエを見ても判るであろう。

 氷系の魔法は、上位魔法であり其れなりの魔力を使用する。それにもかかわらず、町で販売できる量を確保できるという点だけでも、いかにアレキサンドリアに攻撃系の魔法使いが多いかが判る事例である(彼らには冷蔵・冷凍関連の魔道具が存在している事は知らされていない)。
 あのカルテットの内の一人だけでも自国に(合法的に)つれ帰る事が出来れば、それだけでもアレキサンドリアへの留学の成果と認められるだろう。今の所、彼らが自国にもたらせたのはサッカーだけという情けない状態なのである。そんな事を考えながら、二人で立ち止まっていると、不意に声がかけられた。

 「他国とはいえ王族ともあろう方々が、女の子を追いかけるなんてマネはしてないでしょうね? 追いかけるだけなら、自国の美姫だけにしておいてくれないと、折角の留学が終了となってしまいますよ。」

 オリバーとアレクシスが声のしたほうを見てみると、そこに立っているのは、言わずとしれたワイアットである。というか、この男くらいしか、仮にも王族の2人にこのような口利きはしない。隣にはいつも通りユアンも立っていた。

 「ワイアットにリアンか。なに、アレキサンドリアは美しい女が多いからな。市民とはいえ、側妃や愛妾「はいはい、余計な事は言わないで下さいよ。新年早々」モゴモガ……」

 オリバーの不穏な発言は、アレクシスによって口を封じられた。新年早々、街中でこんな発言をするのは流石に危険である。道行く人々から怪訝な目で見られながらも、オリバーの口を押さえて、アレクシスはワイアットに質問をする。

 「なぁに、君達も気にしている低年齢クラスの美姫カルテットの姿が見えたんでね。すこし様子を見ていただけです。君達こそ、何故こんな所に? 彼女達を追いかけてきたわけでは無いんでしょう?」

 「だっ、誰があんな兎「……君も不穏な発言はよしてくれ」モガガ~」

 ワイアットは慌ててリアンの口を塞いだ。周囲を歩く獣人族、特に兎人族から睨まれている。リアンはクロエ関連となると、周りが見えずに悪態をつく習慣があるのは困りものだと思いながら。

 「寒い通りで、こんな話もなんですから、行きましょうか。」

 どうせ、お互いの目的地は同じなのである。漸くおとなしくなったオリバーとリアンを抱えながら、アレクシスとワイアットは歩き出したのであった。

*****

 『四季four seasons』は2階建てのこじんまりとした小さな店であり、1階はごく普通のカウンター席と4つのテーブル席がある。夏場のサイダーやカキ氷などが名物であり、男性でもテイクアウトできる甘味が提供される。
 しかし2階席の、通りを見下ろすオープンテラスと、予約者専用の2つの個室は、女性専用のエリアである。
 男性がここに入る事が出来るのは、婚約者のお披露目会の時だけであり、ある意味男性が独身最後に立ち入るかもしれない秘境とされている。中に生息するのは、友人の婚約者を品定めしようとする魔物だといわれるが、真実を語るものはいない。
 そして、この店には立ち入り禁止の謎のフロアがあるという都市伝説も存在した。アレキサンドリアきっての美魔女や、癒しの女神と称される始祖四家頭首が度々訪れるとされ、他国の王族ですら食する事のできない、美食の数々が作られては消えているという噂である。先程のカルテットはこの店の常連である割には、店内に姿が見られない事から、謎のフロアの4妖精と揶揄やゆされているのであった。

 しかし、一部の男子のみが知っている事実が存在する。謎のフロアが確かに存在することと、生み出されるものが、美味なる物だけではなく、凄惨な物まで存在する事を。
 そして、時たま与えられる試食じんたいじっけんと呼ばれる機会を、常に虎視眈々と狙う者達がいる事は、男子学生達の中で公然の秘密となっていた。

 「「「新年おめでとう~」」」

 クロエ以外の3人の挨拶が唱和されるなか、一人『あけましておめでとう』といいそうになって、怪訝な視線で見られたクロエではあるが、提供した料理が好評であるのに気を良くしていた。
 生前のクロエは別に料理が得意だったわけではないが、簡単に作れるお手軽料理の系統に関しては、大量の書物やネットで調べさせられた事があり、比較的詳しい。というか、作った経験まであるのは、男子としてはかなり珍しいであろう。
 これもそれも、料理が得意ではないくせに、チャレンジ精神だけが旺盛で、かつ直ぐに途中で放り出す、堪え性の無い今は無き幼馴染の影響である。
 味見して感想を言えというから、素直に完食してまずいというと、じゃあ手本を見せろなどと絡む幼馴染殿との経験と、魔法を料理にまで流用するいい加減さが、旨く噛み合ってクロエの料理の腕前は成立している。
 クロエの作る料理は水準以上のものが多いが、日持ちや製法・コスト問題などで、販売にまで至らない商品も多い。今回は新年祭ということで、コスト度外視、美味しさ満点だった料理を中心に、料理を作ったのだから不評では落ち込みも激しかったであろう。

 しかし、その中でも今一つ人気の無いのが、刺身等の生魚料理である。魚は寄生虫問題で生食はこの世界では一般的ではなく、同様に肉類もレア以上の生食は禁忌とされている。勿論、クロエは魔法による滅菌・殺菌を行っており、問題はないのであったが……
 殺菌・滅菌は、クロエのオリジナル魔法に近い。細菌学などが存在しない所為もあり、体系化しにくい為、他人が理解できないのだ。ゆえに、それが必要な料理は販売する事ができていないのである。

 「わぁ、これは懐かしいですね。」

 ユイがそう言いながら指差したのは、牛乳アイスクリームである。牛乳アイスクリームも、生卵を使用する為、殺菌・滅菌は必須であり、店売りできない一品である。室内は十分暖かいのを想定して、冷たい魔器まで自作して作っているのだから、今回のクロエの力の入れようも想定できるだろう。

 「冬に暖かい場所で食べる牛乳アイスクリームも、また格別よね。」

 イリスは好物が食べられてご満悦である。ユーリアは初めて見るばかりの食べ物の数々に目を丸くし、食べては更に驚きに固まるという事を繰り返している。アレクシアとリリー、イェンは、よく冷やしたワインやエール(ビール)のグラスを片手に、ご満悦である。ユーリアの家族にも声をかけたが、激甘夫婦である2人は家族での新年祭を優先した為不在である(ダニエルは居るが)。

 「ほんと、こんなに美味しいものばかり食べられるなら、毎日が新年祭でもいいわね。」

 アレクシアの言葉にリリーも同意した。

 「誰かさんの引き起こす、厄介事の苦労を慰労する為の会でもあるから、連日続くのは困りますわね。先払いで慰労してもらってると考えると、今年の騒動は恐ろしくなりますし。」

 その言葉に、ユイを含む全ての視線がクロエに集まり、クロエは憤慨している。

 「別に僕だって好きで厄介毎を引き起こしているわけじゃないですよ。厄介毎が僕の周りに偶々たまたま集まってくるだけで。」

 「……それって、貴女がトラブルメーカーだって自分で認めてない?」

 イリスの言葉に、更に笑いの輪が広がるのであった。
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