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4.アレキサンドライトの輝き
22.『死界』への出発
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翌朝、1の鐘の音がなる朝6時に、僕達は『フォレスト・フォート』の西街門前に集合しました。うぅ、朝6時集合ってちょっと早過ぎですよね。眠い目を擦りながら、僕は街門を見つめます。
「谷を控えた天然の要害の割に、街門も立派ですわね。危険になれば橋を落とせばよいのですから、こんなに立派な門は必要ないんじゃありませんの」
思わず呟いたイリスさんの声が聞こえたのでしょう。副官のシュテラさんが生真面目に答えてくれます。
「残念ながらそれではいけないのです。この街道は、当時は征西軍第3軍への補給路となっていた為、橋を落とせば補給路を喪失する事になるのです。その為、西街門は強固な作りとなっているのです」
あぁ、当時は兵站の始点が『フォレスト・フォート』だったのですね。そうなると、敵側はこの街を落とす事ではなく、橋自体を狙っていたのかもしれませんね。
やがて時間が来ると、街門の脇の小門が開きます。どうやら、1人ずつ小門を通らねばならないようですね。
「申し訳ありませんが、許可者か否か照合を行いながら通行しますので、小門を使うのです。その為時間がかかってしまいますので、早朝の集合となってしまった事をお詫びするのです」
「それだけどさくさ紛れに、通行しようとする者も居るという事ですか」
「なのです」
シュテラさんとユイの言葉を聞きながら、僕は昨日の乱入者『バスティアン』を思い出します。確かに彼らは無理やり突破しようとしていましたからね。
僕は耳元のスイッチを操作して、タブレットの音声入力を行います。
(『ユイ、昨日のうちに対策したのは要らなかったみたいだね』)
直ぐにユイから返答が帰ってきます。
(『判りませんよ? この列に荷車などを突入させて、交代要員として入る事を狙うか、どさくさ紛れに強行突破することも有り得ましたから』)
(『いずれにしても、彼らの一味は寝かしつけたのですよね? 安全第一ですわ』)
昨日の様子から、僕達は『バスティアン』達が何か起こすのではないかと予想しました。ユイが張り付けていた『闇在鬼』で襲撃計画を知った僕達は、彼らの宿を特定して急襲。速やかに昏睡魔法をかけさせて頂きました。目覚めるのは明日になるでしょうから、今日何か事を起こす事は彼らには出来ません。
小門では僕達は『冒険者登録証』を確認されました。首から下げている金属プレートに、名前やランクが刻まれているのは、エリクシアのものと同じですが、僕達のプレートには魔力波の検知機能が付いているので、仮に奪うことができても身につければ文字は消えてしまいます。
細かい所での偽造チェックや本人チェックは言うに及ばす、盗難時の不正使用なども考慮されています。なぜならば、この『冒険者登録証』があればアレキサンドリア共和国への入国が可能と成りますからね。考えうる対策は全て施してあると聞いています。
小門を抜けた僕達を待っていたのは、大きな広場と更に奥に存在する門でした。僕達は呆気にとられて、周囲を見渡します。周囲を壁に囲まれた、長方形の空間に僕達はいます。
街側の門は四角い空間の南東の隅にあり、谷側は北西の隅に存在しています。その間の空間で兵が隊列を組むような仕組みとなっていますね。街門を突破しても、直ぐに外には出れない様になっているのですね。
「では、この場で移動隊形をとるのです。皆さんは、北西の先頭に移動するのです」
はぁ、多少ぽやぽやしてて大丈夫かなと思っていたシュテラさんですが、そこは流石に軍人でしたね。その点に安心するような、微妙な気持ちになりますが、指示通りの場所に僕達は移動します。
「ん~、なんか軍に組み込まれたみたいで、変な気分だなぁ」
日本でも別に軍人になった経験はありませんでしたが、軍隊のイメージに近いものが今朝の経験で感じられますね。
「気にする事はありませんわ。私達は依頼を遂行するだけですもの。いざとなればどうにでも出来ますしね」
イリスさんの言葉に、僕達は肯きます。僕達も準備しましょうか。背負った背嚢を下ろして、閉じ紐を緩めると、なかからアレキが出てきます。
「ごめんね、アレキ。ここに入るまでは、あまり良くないと思ってさ。窮屈だったでしょう」
僕が声をかけますが、アレキは伸びをした後、周囲を見渡して毛繕いを始めます。
「ふん、煩わしいよりは狭いほうがマシじゃわい。この後は、外にでてていいんじゃな?」
「うん。まあ、ネズミ避けだからつまらないだろうけど」
「むぅ、偉大なる森猫である我輩を、唯の猫扱いするのは今さらながら無礼な奴じゃな。報酬は此度の行動中の食事のグレードを上げることを要求するぞ。特にあの、なんといったか、そうそう『ささみ』とやらは美味かった」
「あのね~、女子だけの僕達が野営で鳥の解体とか無理だから」
アレキにそう返しつつも、食事の事はあまり考えてないんですよね。この先は、『死界』と呼ばれるまでになった西部辺境領ですからね。目的地である『ウナ・コリナ』は通常であれば2日の距離ですが、途中での補給は当てになりません。その為、今回の食事等は自分達で用意することが決まっています。
「1日程度だから、毒や昏睡剤とかを盛られる事はないでしょうけどね。公爵家で雇った冒険者さんや聖職者、魔法使いさんは如何するのかは知りませんが、そちらはそちらで用意してくださいね。
私達が行軍中に、公爵家の方々と必要外に親しい所を見せることは、そちらも宜しくないでしょう?」
イリスさんがそう言った時、フローラさんがかなり残念な顔をしていたのは、記憶に新しい所です。
そんな話をしている内に、準備が整ったようですね。第2の街門の大扉が少しづつ開いてきて、その隙間から全く別の風景が見え始めてきます。
見えたのは、原始的な斜張橋で幅数メートル長さは50m程ですが、対岸には橋の主塔に似つかわしくない堅牢な門が見えます。どうやら、橋の防衛拠点もかねている簡易な要塞の様になっているようですね。その先は、森の中へと続く街道のようです。
フォレスト・フォート駐留軍の見送りの中、僕達は橋を渡り『死界・西部辺境領』に、地上では初めての一歩を踏み出しました。記念すべき第一歩は、肉球付でしたが(アレキの)……
「谷を控えた天然の要害の割に、街門も立派ですわね。危険になれば橋を落とせばよいのですから、こんなに立派な門は必要ないんじゃありませんの」
思わず呟いたイリスさんの声が聞こえたのでしょう。副官のシュテラさんが生真面目に答えてくれます。
「残念ながらそれではいけないのです。この街道は、当時は征西軍第3軍への補給路となっていた為、橋を落とせば補給路を喪失する事になるのです。その為、西街門は強固な作りとなっているのです」
あぁ、当時は兵站の始点が『フォレスト・フォート』だったのですね。そうなると、敵側はこの街を落とす事ではなく、橋自体を狙っていたのかもしれませんね。
やがて時間が来ると、街門の脇の小門が開きます。どうやら、1人ずつ小門を通らねばならないようですね。
「申し訳ありませんが、許可者か否か照合を行いながら通行しますので、小門を使うのです。その為時間がかかってしまいますので、早朝の集合となってしまった事をお詫びするのです」
「それだけどさくさ紛れに、通行しようとする者も居るという事ですか」
「なのです」
シュテラさんとユイの言葉を聞きながら、僕は昨日の乱入者『バスティアン』を思い出します。確かに彼らは無理やり突破しようとしていましたからね。
僕は耳元のスイッチを操作して、タブレットの音声入力を行います。
(『ユイ、昨日のうちに対策したのは要らなかったみたいだね』)
直ぐにユイから返答が帰ってきます。
(『判りませんよ? この列に荷車などを突入させて、交代要員として入る事を狙うか、どさくさ紛れに強行突破することも有り得ましたから』)
(『いずれにしても、彼らの一味は寝かしつけたのですよね? 安全第一ですわ』)
昨日の様子から、僕達は『バスティアン』達が何か起こすのではないかと予想しました。ユイが張り付けていた『闇在鬼』で襲撃計画を知った僕達は、彼らの宿を特定して急襲。速やかに昏睡魔法をかけさせて頂きました。目覚めるのは明日になるでしょうから、今日何か事を起こす事は彼らには出来ません。
小門では僕達は『冒険者登録証』を確認されました。首から下げている金属プレートに、名前やランクが刻まれているのは、エリクシアのものと同じですが、僕達のプレートには魔力波の検知機能が付いているので、仮に奪うことができても身につければ文字は消えてしまいます。
細かい所での偽造チェックや本人チェックは言うに及ばす、盗難時の不正使用なども考慮されています。なぜならば、この『冒険者登録証』があればアレキサンドリア共和国への入国が可能と成りますからね。考えうる対策は全て施してあると聞いています。
小門を抜けた僕達を待っていたのは、大きな広場と更に奥に存在する門でした。僕達は呆気にとられて、周囲を見渡します。周囲を壁に囲まれた、長方形の空間に僕達はいます。
街側の門は四角い空間の南東の隅にあり、谷側は北西の隅に存在しています。その間の空間で兵が隊列を組むような仕組みとなっていますね。街門を突破しても、直ぐに外には出れない様になっているのですね。
「では、この場で移動隊形をとるのです。皆さんは、北西の先頭に移動するのです」
はぁ、多少ぽやぽやしてて大丈夫かなと思っていたシュテラさんですが、そこは流石に軍人でしたね。その点に安心するような、微妙な気持ちになりますが、指示通りの場所に僕達は移動します。
「ん~、なんか軍に組み込まれたみたいで、変な気分だなぁ」
日本でも別に軍人になった経験はありませんでしたが、軍隊のイメージに近いものが今朝の経験で感じられますね。
「気にする事はありませんわ。私達は依頼を遂行するだけですもの。いざとなればどうにでも出来ますしね」
イリスさんの言葉に、僕達は肯きます。僕達も準備しましょうか。背負った背嚢を下ろして、閉じ紐を緩めると、なかからアレキが出てきます。
「ごめんね、アレキ。ここに入るまでは、あまり良くないと思ってさ。窮屈だったでしょう」
僕が声をかけますが、アレキは伸びをした後、周囲を見渡して毛繕いを始めます。
「ふん、煩わしいよりは狭いほうがマシじゃわい。この後は、外にでてていいんじゃな?」
「うん。まあ、ネズミ避けだからつまらないだろうけど」
「むぅ、偉大なる森猫である我輩を、唯の猫扱いするのは今さらながら無礼な奴じゃな。報酬は此度の行動中の食事のグレードを上げることを要求するぞ。特にあの、なんといったか、そうそう『ささみ』とやらは美味かった」
「あのね~、女子だけの僕達が野営で鳥の解体とか無理だから」
アレキにそう返しつつも、食事の事はあまり考えてないんですよね。この先は、『死界』と呼ばれるまでになった西部辺境領ですからね。目的地である『ウナ・コリナ』は通常であれば2日の距離ですが、途中での補給は当てになりません。その為、今回の食事等は自分達で用意することが決まっています。
「1日程度だから、毒や昏睡剤とかを盛られる事はないでしょうけどね。公爵家で雇った冒険者さんや聖職者、魔法使いさんは如何するのかは知りませんが、そちらはそちらで用意してくださいね。
私達が行軍中に、公爵家の方々と必要外に親しい所を見せることは、そちらも宜しくないでしょう?」
イリスさんがそう言った時、フローラさんがかなり残念な顔をしていたのは、記憶に新しい所です。
そんな話をしている内に、準備が整ったようですね。第2の街門の大扉が少しづつ開いてきて、その隙間から全く別の風景が見え始めてきます。
見えたのは、原始的な斜張橋で幅数メートル長さは50m程ですが、対岸には橋の主塔に似つかわしくない堅牢な門が見えます。どうやら、橋の防衛拠点もかねている簡易な要塞の様になっているようですね。その先は、森の中へと続く街道のようです。
フォレスト・フォート駐留軍の見送りの中、僕達は橋を渡り『死界・西部辺境領』に、地上では初めての一歩を踏み出しました。記念すべき第一歩は、肉球付でしたが(アレキの)……
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