162 / 349
5.南海の秘宝
30.水中での戦い
しおりを挟む
レギニータのお願いは、アレクシアさんと話しをした結果、妥当と判断されました。その事をレギニータに伝えると、いつもなら陽気で朗らかなレギニータの顔が、真面目に引き締まりました。失礼ですが、この娘はこんな表情もできるんだと思ってしまったのは内緒です。
「場所は屋外演習場で、非公開。対戦相手は僕達『アレキサンドライト』の6名で、一名づつの対戦でいいかな。その後は、レギニータが希望していた『銃』を持つ人との、水際や船上での戦闘訓練になるけど、大丈夫?」
僕の言葉に、レギニータは青みがかった銀の髪を揺らして頷きます。
「レギはそれで良いですの。レギの要望をかなえてくれて、うれしいんですの」
「じゃあ、最初は僕「私からお願いします」……」
僕の言葉に、上書きしたのはエマです。最近出番が少ないためか、妙に張り切っているんですよね。
「……じゃあ、エマからお願いね。地形は海岸沿いの浅瀬から、深みにかけての地形になっているよ。エマ、深みからのスタートだから注意して。水中戦のデータはないでしょ?」
「はい。私達の初期データは、主に屋内防衛戦闘を主におかれています。良いデータを得られることを期待します」
あ~、基本エマとジェシーは様々な戦闘方法についての情報収集機も兼ねてますからね。それを考えれば『水中戦』は新しいカテゴリーとなりますから、真っ先に戦いたいのかと僕も納得します。
「二人とも配置について。5分後戦闘開始の合図をだしますね」
僕の言葉に、2人は海に入っていきます。海中ですので、ドローン型のカメラは追尾していませんが、戦闘区域内を撮影する複数のカメラからの映像で、様々な情報をとる予定です。映像を見ている間に、2人は配置に付いたようですね。
「それでは、戦闘を開始してください」
『わかりました』
『始めるんですの』
2人の声で戦闘を開始します。エマは標準装備の身の丈並みの大剣を装備していますが、水中ではやはり勝手が違うようですね。
レギニータは三又のトライデントをベースとした、小振りの杖を装備しています。杖であり、接近戦の武器にもなるようですね。
僕やイリスさん、ユイ、ユーリアちゃんにエマも見守る中、レギニータが仕掛けます。人魚の水中での利点を生かして、急速に接近してトライデントを突き出します。
エマは、レギニータの接近に合わせて、大剣を振りかぶろうとしますが、水の抵抗が大きいのと、足場が固定されていない為に水中での姿勢が安定しません。
「剣速も地上に比べて遥かに遅いですね。それに比較して、レギニータさんの移動が速すぎます」
ユイが指摘したように、水の抵抗はかなり影響を与えているようですが、エマも馬鹿じゃありません。何回か地上での剣の振り方を試した後、武器と自身に水魔法による水の抵抗を減らしたようですね。剣速は上がったとはいえ、レギニータをとらえるまではいきません。
レギニータは一撃いれるとすぐ離れる、ヒットアンドアウェイ戦法で、エマに細かい傷を増やしていますが、エマも大剣の腹で防御していますので、致命傷にはなりえません。とはいえ、流血は水中である分収まらず、周囲の海水も朱に染まりだします。その後の状況の変化は突然でした。
視界の端、海中に黒い点が現れたと思ったら、見る見るうちに黒点が大きくなりました。それは、15cmの魚の塊、群れだったのです。群れの周りに、大型のサメらしき生物も見受けられます。
海の生物の知識がないエマでも、大型のサメには警戒すべきと思ったのでしょう。咄嗟に障壁を張ったようですが、その姿は小型の魚の群れに包まれてほとんど見えません。
『海中では、敵はレギだけでないんですの。血を流せば、獰猛な肉食魚が、はるか遠方からやってくるんですの。
その小さな魚は、シー・ピラニアルというんですの。群れで獲物を襲う海の殺し屋ですの。大きいほうは、レパード・シャーク。例え障壁を張っていても……』
レギニータがそういった時、レパード・シャークが身を翻して、大きな口を開き、エマの上方、海面側から障壁ごと『バクン』と飲み込みました。
「「「えええ~!!」」」
イリスさんやユイ、ユーリアちゃんから声が上がります。レパードシャークは、体長が4mあまりある大きな個体でしたが、障壁ごとエマを一飲みで飲み込んでしまったのです。周囲に群がっていた、シー・ピラニアルの数匹も含めて……
直後、レパード・シャークの周りで青い燐光が煌めき、エマがエスケープさせられて、僕達の前に現れました。
慣れない海中での戦いで、レギニータの攻撃を致命傷を避けながら、うまく戦っていたと思った矢先に、魚達に襲われ敗退するとは思ってはずです。しかし、エマの表情に陰りはありませんね。
「すいません、クロエ。レギニータの攻撃は、細かく速いだけで威力はさほど有りませんでしたが、あの生物達の介入は予測できませんでした。また、あの生物達の攻撃力を測定するのは危険と判断され、測定することができなかったのが残念です」
エマはそう言いますが、一飲みでエマを飲み込んだサメの口は、まさに鋸のような歯の並びが見えていましたよ。齧られたら、腕や脚どころか、胴体すら切断されていたはずです。
そこに、レギニータがフィールドからエスケープし現れます。
「お疲れ様。あの攻撃方法は、人魚族の地上人に対する戦闘方法の一つと考えてよいのかな?」
人魚族として、一般的なのでしょうけど、レギニータの肢体は細身で力があるようには見えませんが、その脚というか、尾は強靭な力を秘めています。尾で一撃されれば、強靭な男性でも一撃で沈むでしょうね。
ですが、あえてトライデントによる細かい出血を強いる戦いをしたのは、最初からあの魚達を利用する為だったのでしょう。
海水に濡れたレギニータの髪も身体も、普段見ている姿よりも輝いてみえます。そんな髪を揺らしてレギニータは答えてくれました。
「海中には直接的な敵以外の多くの『敵』がいるんですの。特に血の匂いを数km先から嗅ぎつける、シー・ピラニアルとレパード・シャークは強敵ですの。それを知っていただきたかったんですの」
レギニータの声は淡々としていますが、イリスさん達の顔をみると、三人とも顔面蒼白ですね。まあ、対処を間違えれば、あっというまに腕の一本や二本は無くなりそうです。
「エマ、水中での戦いはどうだった? 実戦では呼吸の魔法も併用するから、負担はかなり高くなると思うけど」
僕はエマの全身に、洗浄魔法と乾燥魔法をかけてから訪ねてみます。エマは、大剣を抜いて僕に見せながら話してくれました。
「足場は無く、力も入りません。腕にも剣にも、水の抵抗が常にかかりますので、水中の戦いではなかなか致命傷を与えることはできませんでした。人魚族の水中での速さは、現時点での我々では対処が不能です。
この剣が頼りなく感じたのは初めてのことです。」
そして、出血すれば肉食魚やサメがやってくると……、これはなかなか厄介ですね。
「場所は屋外演習場で、非公開。対戦相手は僕達『アレキサンドライト』の6名で、一名づつの対戦でいいかな。その後は、レギニータが希望していた『銃』を持つ人との、水際や船上での戦闘訓練になるけど、大丈夫?」
僕の言葉に、レギニータは青みがかった銀の髪を揺らして頷きます。
「レギはそれで良いですの。レギの要望をかなえてくれて、うれしいんですの」
「じゃあ、最初は僕「私からお願いします」……」
僕の言葉に、上書きしたのはエマです。最近出番が少ないためか、妙に張り切っているんですよね。
「……じゃあ、エマからお願いね。地形は海岸沿いの浅瀬から、深みにかけての地形になっているよ。エマ、深みからのスタートだから注意して。水中戦のデータはないでしょ?」
「はい。私達の初期データは、主に屋内防衛戦闘を主におかれています。良いデータを得られることを期待します」
あ~、基本エマとジェシーは様々な戦闘方法についての情報収集機も兼ねてますからね。それを考えれば『水中戦』は新しいカテゴリーとなりますから、真っ先に戦いたいのかと僕も納得します。
「二人とも配置について。5分後戦闘開始の合図をだしますね」
僕の言葉に、2人は海に入っていきます。海中ですので、ドローン型のカメラは追尾していませんが、戦闘区域内を撮影する複数のカメラからの映像で、様々な情報をとる予定です。映像を見ている間に、2人は配置に付いたようですね。
「それでは、戦闘を開始してください」
『わかりました』
『始めるんですの』
2人の声で戦闘を開始します。エマは標準装備の身の丈並みの大剣を装備していますが、水中ではやはり勝手が違うようですね。
レギニータは三又のトライデントをベースとした、小振りの杖を装備しています。杖であり、接近戦の武器にもなるようですね。
僕やイリスさん、ユイ、ユーリアちゃんにエマも見守る中、レギニータが仕掛けます。人魚の水中での利点を生かして、急速に接近してトライデントを突き出します。
エマは、レギニータの接近に合わせて、大剣を振りかぶろうとしますが、水の抵抗が大きいのと、足場が固定されていない為に水中での姿勢が安定しません。
「剣速も地上に比べて遥かに遅いですね。それに比較して、レギニータさんの移動が速すぎます」
ユイが指摘したように、水の抵抗はかなり影響を与えているようですが、エマも馬鹿じゃありません。何回か地上での剣の振り方を試した後、武器と自身に水魔法による水の抵抗を減らしたようですね。剣速は上がったとはいえ、レギニータをとらえるまではいきません。
レギニータは一撃いれるとすぐ離れる、ヒットアンドアウェイ戦法で、エマに細かい傷を増やしていますが、エマも大剣の腹で防御していますので、致命傷にはなりえません。とはいえ、流血は水中である分収まらず、周囲の海水も朱に染まりだします。その後の状況の変化は突然でした。
視界の端、海中に黒い点が現れたと思ったら、見る見るうちに黒点が大きくなりました。それは、15cmの魚の塊、群れだったのです。群れの周りに、大型のサメらしき生物も見受けられます。
海の生物の知識がないエマでも、大型のサメには警戒すべきと思ったのでしょう。咄嗟に障壁を張ったようですが、その姿は小型の魚の群れに包まれてほとんど見えません。
『海中では、敵はレギだけでないんですの。血を流せば、獰猛な肉食魚が、はるか遠方からやってくるんですの。
その小さな魚は、シー・ピラニアルというんですの。群れで獲物を襲う海の殺し屋ですの。大きいほうは、レパード・シャーク。例え障壁を張っていても……』
レギニータがそういった時、レパード・シャークが身を翻して、大きな口を開き、エマの上方、海面側から障壁ごと『バクン』と飲み込みました。
「「「えええ~!!」」」
イリスさんやユイ、ユーリアちゃんから声が上がります。レパードシャークは、体長が4mあまりある大きな個体でしたが、障壁ごとエマを一飲みで飲み込んでしまったのです。周囲に群がっていた、シー・ピラニアルの数匹も含めて……
直後、レパード・シャークの周りで青い燐光が煌めき、エマがエスケープさせられて、僕達の前に現れました。
慣れない海中での戦いで、レギニータの攻撃を致命傷を避けながら、うまく戦っていたと思った矢先に、魚達に襲われ敗退するとは思ってはずです。しかし、エマの表情に陰りはありませんね。
「すいません、クロエ。レギニータの攻撃は、細かく速いだけで威力はさほど有りませんでしたが、あの生物達の介入は予測できませんでした。また、あの生物達の攻撃力を測定するのは危険と判断され、測定することができなかったのが残念です」
エマはそう言いますが、一飲みでエマを飲み込んだサメの口は、まさに鋸のような歯の並びが見えていましたよ。齧られたら、腕や脚どころか、胴体すら切断されていたはずです。
そこに、レギニータがフィールドからエスケープし現れます。
「お疲れ様。あの攻撃方法は、人魚族の地上人に対する戦闘方法の一つと考えてよいのかな?」
人魚族として、一般的なのでしょうけど、レギニータの肢体は細身で力があるようには見えませんが、その脚というか、尾は強靭な力を秘めています。尾で一撃されれば、強靭な男性でも一撃で沈むでしょうね。
ですが、あえてトライデントによる細かい出血を強いる戦いをしたのは、最初からあの魚達を利用する為だったのでしょう。
海水に濡れたレギニータの髪も身体も、普段見ている姿よりも輝いてみえます。そんな髪を揺らしてレギニータは答えてくれました。
「海中には直接的な敵以外の多くの『敵』がいるんですの。特に血の匂いを数km先から嗅ぎつける、シー・ピラニアルとレパード・シャークは強敵ですの。それを知っていただきたかったんですの」
レギニータの声は淡々としていますが、イリスさん達の顔をみると、三人とも顔面蒼白ですね。まあ、対処を間違えれば、あっというまに腕の一本や二本は無くなりそうです。
「エマ、水中での戦いはどうだった? 実戦では呼吸の魔法も併用するから、負担はかなり高くなると思うけど」
僕はエマの全身に、洗浄魔法と乾燥魔法をかけてから訪ねてみます。エマは、大剣を抜いて僕に見せながら話してくれました。
「足場は無く、力も入りません。腕にも剣にも、水の抵抗が常にかかりますので、水中の戦いではなかなか致命傷を与えることはできませんでした。人魚族の水中での速さは、現時点での我々では対処が不能です。
この剣が頼りなく感じたのは初めてのことです。」
そして、出血すれば肉食魚やサメがやってくると……、これはなかなか厄介ですね。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる