駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
251 / 349
7.女王の奏でるラプソディー

20.邂逅

しおりを挟む
「行方不明者をだしてしまい、誠に申し訳ありません……」

 士官が集まる会議室の中、ワイアット航空指令が頭を下げます。士官以外ではこの場に居るのはライラ砲術士だけで、彼女からも状況の説明を行ってもらいました。とはいえ……

「よりにもよって、他国からのお客人です。このまま放置するわけにもいきません」

 航海長のハリーの言葉にうなづきますが、まず現地でそのまま捜索を行おうとしていたワイアット航空指令を含めた先遣隊に帰艦を命じたのは僕です。
 人二人を一瞬で浚う事ができるのなら、そのまま現場に浚われる可能性のある先遣隊を残しておくわけにはいきませんからね。

「デーゲンハルト氏の言葉によれば、Aランク以上の威圧感と存在感をもち、飛空艇に搭載している警報装置を突破。油断していたとはいえ、ライラやワイアットに幻覚を見せるほどの力を持つモノが存在しているなんてね。
 しかも僕たちの偵察飛行では察知されなかったんですから、魔物としてもかなりの上級種の可能性もあります」

 僕の言葉に、士官はみな黙りこくりますが、さすがにここで積極論を出す人はいないでしょう……

「とにかく、すぐに捜索隊を出さなきゃまずいだろ」

 ……リアンは相変わらずの積極論ですね。

「夜間の捜索は危険が伴います。高台・暗闇・地形の把握も完全ではない状態では、二重遭難の危険が高くなります。その案には賛同できません」

「だからって、他国の貴族のお嬢様も含まれているんだ。探しに行かないわけにはいかないだろ」

 どちらの意見にも理がありますので、一方的には結論は出せませんね。そう考えていると、タブレットに緑のランプがついています。僕はふと気づいてタブレットを操作してみました。すると……

「……捜索は明日早朝に、僕が単騎ででます。皆さんは、出港準備と二次調査の両方が可能なように準備をお願いします」

「艦長、いくら艦長でもお一人では危険です。護衛に誰かお付けください!」

「そうよクロエ、せめて私とユイは連れて行きなさい!!」

 砲雷長とイリスさんから声が上がりますが、僕はやんわりとそれを拒否します。

「残念ですが、複数で行っても危険な相手です。ならば、最大火力の僕がでます。万が一の事があれば、ユイの指揮の元で航海を継続。任務を遂行してください」

 僕の言葉に皆は黙り込みますが、唯一人ワイアットだけが僕に声をかけてきました。

「……艦長がそう決めたのであれば従いましょう。ですが、そう決めるきっかけとなったものを見せてはいただけませんか?」

 ちっ、僕がタブレットを確認したのを見ていましたね? 仕方がありませんね、僕はタブレットに転送されていた画像を情報パネルに表示します。

「……この件については、かん口令を引きます。口外無用で、お願いしますね……」

 情報パネルに映し出されたものは、金色の毛を三つ編みにして、剣を構えて立つ女性の後ろ姿と、その向こう側に映る青い鱗を持ったドラゴンでした……

*****

「……さて、直径二十メートル、深さは不明の垂直の穴ですか……やだなぁ」

 偵察飛行で見つけた黒い穴の上空で、僕はつぶやきます。単騎とはいいましたが、実際にはエマとジェシーがついているので正確には三人ですね。DM2ドローンモドキ2でやってきたのは、VF-1バルキリーでは、垂直上昇のコントロールが難しい点がありますし、コリーヌさんとクラリスさんを救出した後、搭乗させる余裕を持たせるためです。

 垂直に落ち込む穴は、直径がさほど大きいものでは無い為に、そこまで光が届かずに暗闇の様ですね。とはいえ、いつまでもここに居てはらちがあきませんので、さっさと降下してしまいましょう。

 機体のライトを点灯し、足元の透明床から底を観察しながら少しづつ降下していきますが、百メートル以上降下してもまだ底が見えません。周囲の切り立った崖は、ところどころライトの光りを反射して、青く輝く鉱石のようなものがみえます。
 そのまま更に降下して、ほぼ海面より十メートルほど高い場所で、ライトに照らされた二人の人影が見えました。人影をローターに巻き込まないように慎重に離れてDM2を着陸させ、コクピットが開くのももどかしく、二人へと駆け寄りました。

「二人とも大丈夫ですか?」

 僕の問いかけに、辛うじて答えてくれたのはクラリスさんです。多少憔悴しているようですが、怪我をしている様子はありませんね。コリーヌさんを見てみると、服が所々裂けて、血がついていたりしますが。その下の肌はきれいです。クラリスさんの回復魔法で、怪我は治癒されているようですね。

「私は大丈夫です。コリーヌさんは、今は疲れて眠られているだけです……」

 僕はホッと息をつきます。女性の寝顔を勝手にみるのは失礼ですが、コリーヌさんは、心なしか満足しているような表情で眠っていますね。では、わざわざお二人を拉致った犯人と対決しましょうか……
 僕は、クラリスさんを見てうなずくと、彼女は歌うように言葉を紡ぎます。

『Mar Azzurro, la principessa della nave bianca è venuto(マー・アズーロ、白き船の姫が参りました)』

 クラリスさんの澄んだ声が、穴の底に響き渡り、しばらくすると水中から何かがやってきました。くぅ、圧倒的な存在感と威圧感……よく、みなさんこんなものに耐えられましたね。
 タブレットに送られてきた写真と同じ、翼を持った四つ足のドラゴンがそこに現れましたが、正直存在感が違いますね。背中を冷たい汗が流れるのがわかります。DM2のライトに照らされて、輝く鱗は澄んだ蒼。この威圧感さえなければ、素直に綺麗だと賞賛するほどの力強さと美しさを兼ね備えています。
 とはいえ、この蒼いドラゴンさんが僕の大切なお客様を拉致ったのは事実ですからね。

『Principessa della Nave Bianca, hai intenzione di dare la caccia anche a me?(白き船の姫よ、そなたも我を狩るというのか)』

「なぜ僕の友達をさらったのです?」

『「?!」』

 ……あれ? 蒼いドラゴンさんの声はやはり耳ではなく、直接心に響きますね。しかも、翻訳されています。えっ、白き船の姫?! 狩る?! なにそれ、知りませんよ?
 ドラゴンさんも、友達をさらったとの言葉に絶句していますね。なにか、お互い勘違いをしている事があるのでしょうか?
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

処理中です...