駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
255 / 349
7.女王の奏でるラプソディー

24.竜とのお話②

しおりを挟む
「……では、山頂部に気象観測用の小規模な施設(海上レーダーも含む)を建設させていただいても宜しいですね? この穴の付近であれば、生物はいないようですし」

 僕の問いにも、マー・アズーロさんはあっさりと了承してくれます。許可が出たとはいえ、さすがにそこまでの設備は用意していませんからね。エリックさんに制作をお願いして、任務の帰りにでも設置の為に再びこの島を訪れれば良いかと考えていたその時でした。

「ん?」 『これは!』

 僕が感知したものを、マー・アズーロさんも把握したのでしょう。マー・アズーロさんとは少し違った魔力のパターンを感じます。それは、あっという間に穴の上空に到達し、一気に穴を下りてくる気配です。

「ちょっと、何考えてるんですか!?」

『……全く、あの考え無しめ!!』

 とっさに障壁を張って何者かが降りてきたために発生した強風から、DM2や自分たちを守ります。そんな僕たちの頭の中に、現われたものの声が響きました。

『マー・アズーロ、自分はわしん知己の者を勝手に呼び出して、挨拶もせえへんとは、どないなってんねん?』

 蒼い竜の前に立つのは、緑色の鱗をもった飛竜の姿をしています。そうですね、モン〇ンのリオレ〇アに似ていますが……何故、関西弁??

『……カッチャトーレ、貴様にはいつも言ってるであろう。竜族たるもの、もう少し重みのある言葉を使えと……』

 マー・アズーロさんの声が重々しく響きますが、カッチャトーレさんは聞く気が無いようですね。そして、そんなカッチャトーレさんを見たクラリスさんとコリーヌさんの顔は対照的です。

「あ~、カッチャトーレさんだ。久しぶりだね~、元気してた?」

『お~、嬢ちゃんも久しぶりやな。ワイはめっちゃ元気やで。嬢ちゃんも元気にしとったみたいやなあ』

 ……近所の気の良いおじさんと会話して、楽しそうにしているのがクラリスさんで、

「……この方が、プランシェ家最後の飛竜、カッチャトーレ殿だというのか……いや、言葉遣いは強さには関係しないが、しかしこれは……」

 などと呟いているのはコリーヌさんです。まあ、確かにコリーヌさんの中にあったカッチャトーレさんのイメージが、音を立てて崩れて行ってるのが予想できてしまいます。きっと、子供のころから聞かされていた話では、勇者もかくやというほど美化されていたでしょうからねぇ……

 その後、二竜の話し合いは無事終わりました。本来、他の竜のえにしを結んだ者を呼び出す場合、事前にその竜の了解を得るのが決まりなのだそうです。それをせずに、マー・アズーロさんはクラリスさんをさらってしまったので、頭にきたカッチャトーレさんがやってきたようですよ。
 来たついでと言う訳ではありませんが、コリーヌさんが自己紹介をすると、カッチャトーレさんはコリーヌさんの実力を測るかのようにじっと見つめてました。
 やがて、カッチャトーレさんはコリーヌさんの実力を認めてくれたようですね。マー・アズーロさんが言っていたように、一族に禁止されていなかったのであれば、コリーヌさんを主と認めても良かったと……

「やはり、人との交流を禁止されているせいで、ブランシェ家の騎竜には慣れないのでしょうか?」

『今のとこ、他所たしゅぞくには触らへんちゅうのが一族の総意やしね。人同士で戦うてるうちはありえへんわな』

『本来、竜騎兵というのは人と竜族が共通の敵と戦う際に協力した姿であった。竜はその身が大きく力は強いが、小回りはきかぬ。背に回られれば、取り得る対抗手段は多くは無く、自分自身の鱗の防御力に頼るしかない。
 逆に人は小回りがきく分、大火力を使わずともその身はあまりにも脆すぎる。お互いの弱みを補う為の手段でもあったのでな』

 カッチャトーレさんとマー・アズーロさんはそう言います。

『それに人にはしがらみがありよるやろ。「魔との戦いで出せるのなら、なんでわしらの国を守る為に使えへんのか」っちゅう上役は、何処にでも居るし、そうそう人も拒否でけへんさかいね』

 ……確かに竜騎兵がいて、竜が共に戦ってくれれば国も守れるし、被害も少ないと考えるでしょうね。でも、その戦いは竜族からすればなんの大義名分もありませんね。自分の乗騎となってくれる竜に対して、自分の意思に従ってほしいというだけの者でしたら、そもそも竜側が契約を結びませんし、契約を結んだとしても、あくまで魔を敵とするときのみとなれば、王などからすれば役に立たないですもんね。魔との争い以外であれば、竜族には居所が知られるというデメリットしかなくなります。コリーヌさんは、がっかりしたような、でも現段階ではカッチャトーレさんに迷惑はかけられないという顔をしています。

『お嬢ちゃんとわしら共通の敵が現われたら、その時はお嬢ちゃんをさらってでも騎乗してもらうさかい、そん時はよろしく頼むで』

 カッチャトーレさんは、コリーヌさんにそう言いました。そして、それまでは他言しないよう言われます。まあ、そういう事が無いのが一番なのですがね。

「あ~、そう言えばイリスさん達が心配してるだろうから、状況を説明しておくね」

 僕は思い立って、タブレットからイリスさん達に、二人共怪我もなく、無事に帰れると連絡します。コリーヌさんとクラリスさんの二人に特に怪我はありませんが、さすがに衣類は少し裂けていますので、着替えが必要ですね。その辺はユイに連絡しておきましょう。多少は制服などの予備も置いてあるはずですしね。

 そうして、無事話も終えて、QAクイーンアレキサンドリアに戻ろうとした矢先のことでした。イリスさんから、緊急コール(緊急時のみ音が鳴ります)が入ります。

『クロエ、馬鹿二人が一番機を奪取して、そちらに向かってる。操縦士はディラン、砲術士はエリオット。彼らは「竜を倒すのは俺たちだ」って飛び出していったわ、気を付けて!!』

 ……馬鹿? しかもケンカしたのに仲がいいのは結構ですが、何もしていない竜を倒す? アレキサンドリアと竜族の争いの引き金になる気ですか……
 意識を島の外に向けると、クイーン経由で一番機が円を描くように断崖の内側にそって上昇している事を確認します。この周囲にある鉱石は、熱を加えると危険なものが多いですからね。

「マー・アズーロさん、カッチャトーレさん。お二人に事前に申し上げておきますが、うちにも馬鹿が居たようで、竜を倒すのは自分たちだとこちらに向かっている馬鹿が二名ほど居ります」

 僕の言葉で、クラリスさんもコリーヌさんも固まってしまいます。まあ、竜とは言え知り合いを倒しに来るというんですから当然の反応ですね。カッチャトーレさんはあごを開いて凶悪な様相を示しますし、マー・アズーロさんは自分の不用意な行動が、争いを招いたかと微妙な表情を浮かべています。そんな二竜二人の顔を見ながら、僕は言葉を続けました。

「申し訳ありませんが、馬鹿の処分はこちらに任せてもらってもよろしいでしょうか?」

 例え竜族相手でも、僕は有無を言わせる気はありません。彼らの虚栄心の為に、竜族とアレキサンドリア共和国が戦争状態に陥ることなど許す気もありませんしね。
 ディランとエリオットの二人は、この短期間の間に三度目の失態をし、反省している様子もありません。とはいえ、彼らは明らかな命令違反をしている訳ではありませんでした。今回の機体の奪取が、恐らくワイアット航空指令の命令ではない限り、初の命令違反でしょう。彼らは竜を倒せば、そんなものは握りつぶせると思っているようですがね。
 その他の訓練やサイドデッキでの騒乱は、アレキサンドリア軍人の品位を落とす行為とみなされるでしょうが、事が品位の話ですので重罪にはしにくいし、ならないでしょうね。エリオットの場合は特に、紅家からの横やりが入る事は間違いがありませんから。

 カッチャトーレさんは、人間の小娘に指図されることに多少不満を抱いたように見えますが、マー・アズーロさんは問題を大きくしない為にはしかたなかろうと納得してくれます。

 二竜の許可が無事(?)取れましたので、僕はタブレットを録画&発信状態でジェシーに放ります。

「ジェシー、これから起こる事を録画。リアルタイムでアレキサンドリアと『QAクイーンアレキサンドリア』に転送して。
 エマは、クラリスさんとコリーヌさんを連れて、DM2内に乗り込んで外気遮断。最悪の場合致死性の毒ガスが充満する可能性があるので、その場合はここをでて上空待機!」

 僕の言葉にジェシーは頷き撮影を開始し、エマはクラリスさんとコリーヌさんをDM2に案内し発進の機会をうかがいます。さて、馬鹿へのお仕置きをするのと同時に、軍規の明文化のきっかけにできればよいのですが……
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

処理中です...