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7.女王の奏でるラプソディー
28.秘密の食事会にて……
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ワイアットは、今回の出港前の事を思い出していた。始祖四家現当主と、クロエを除いた次期当主候補に、ユイを加えたメンバーでの秘密の食事会での事である。
『今回補充される乗組員のうち、一部には反始祖四家の一派が含まれることは避けられない。QAが最強の武器と知れてしまった以上、その矛先がアレキサンドリアに向く事を、委員会が恐れている事は理解しているな?』
父ジャスティンの言葉に、辛うじて平静をたもったワイアットであったが、ユイやイリスが冷静であった事に意外な気持ちを持っていた。
『始祖四家などと持ち上げてはいるが、白家と黒家は本家しか存在しない。事実上、アレキサンドリアの軍は、青家の水兵と紅家の武器で成り立っていて、委員会は常にその私兵化を恐れている』
それ故に兵数・所属艦船数も抑えられてきたが、外敵の脅威に現在の兵力で対抗できるのかは常に議論されてきたのだ。
『覇権主義なんて面倒なこと、私たちはしませんわよ』
イリスが物怖じもせずに言葉を返すが、ユイにもリアンにも勿論その気は無い。そして、それはワイアットも同様であった。
『貴方たちが思う思わないは、委員会には関係ないのよ。特定の血族が、軍の上位を占めていることを問題視する意見は多いのよ』
アレクシアの言葉に、エリックやリリーもうなずく。
『現当主、次期当主含めてもそれらは無いといえますが、将来それが無いとは言えません。
しかし、軍は魔道具を多用する以上、魔力の強いものが上位を占めてしまうのも、また事実』
リリーの言葉に、やはり皆がうなづく。
『では、どうすれば良いか…… 始祖四家で成り立つ体勢に、委員会側の人員が含まれれば良いと思ったわけ。
まずは、始祖四家にユイを黄家として加える事によって、五家体制に持っていくのが一つ。もう一つが……』
『……クロエを委員会側につける事ね』
クロエは黒家の次期当主とされているが、黒家直系ではない。ならば、黒家・白家に連綿と続く、女児唯一人のみしか産まれないという血の呪縛から解き放たれる事になるのではないか?
五家となり、黄家・新黒家が委員会側になれば、百年二百年先には対等の関係となるのではないかという考えが、委員会の一部に台頭してきているのだ。
百年二百年の計といえば、人族にとっては長大な構想であるが、長命の種族からすればわずかな時である。
事実、エルフ族からも一家加えて、六家体勢にする事すら提案されたが、代替わりのタイミングが異なるエルフを含めてしまうと、エルフ族の一家に全てを握られかねないという思惑もある。
表向き、エルフ族は精霊樹の勢力圏より出る事ができないのと、エルフの森への不干渉を貫いているので、国政や軍への関与は抑えられている。勿論エルフ族にそう言った野心はなかったのであるが、短命な種族が自分たちの権益を損なうのを嫌う事は承知していたので、深入りはしなかったようである。
『別に、私たちはクロエちゃんとユイさんが、自分の意思でそれを選ぶならそれでよいの。でも、政治的な駆け引きで押し付けられるのなら反対よ』
『あぁ、そこは僕たちの意見は一致していてね。リアンの婚約も、それとは関係無いとは言えないよ。ワイアット君一人なら、仮に誰かに婿入りしても、イリス、ユイ、クロエの三人のうち二人は紅家・青家の系譜に連ならない者が伴侶となる可能性がある。そういう事実を示しておかないと、二人には無理やり相手を押し付けられそうな雰囲気もあってね』
『ええ、それにリアン君は、三人の誰にも興味が無いでしょう?』
そう言ってリアンを見るアレクシアの顔は、実に晴れ晴れとしていた。リリーもウンウン頷いている中、エリック一人は残念そうだ。
『あっ、当たり前だろ。てか、俺はまだ女に興味は……』
言いかけたリアンに対して、エリックが言葉をかぶせる。
『それが困るから、そうそうにアーシャをつけたんだよ。いつもワイアット君と一緒では、変な噂が立ちそうだしね。それにしても、あぁ、クロエ君の、あの発想とかがもったいないなぁ…… リアンが婿入りすれば、もっと面白い物が作れそうなのに……』
『やめてよ、面倒事はクロエちゃんだけで十分よ』
『そうよ、ジェシカが生活面で大きな子供の面倒を見てくれるけど、貴方の趣味の後始末をさせられるのは嫌ですのよ?』
『親父、俺よりアイツの発想の方が大事なのかよ…… それに、親父が問題児扱いかよ……』
エリック、アレクシア、リリーの言葉を聞いて、意気消沈したリアンを見て、ワイアットは吹き出しかけたが、自分に火の粉が飛んできてはたまらないので、懸命に笑いをこらえたのであった……
『いずれにしても最初の航海のように、味方ばかりの任務ではないわ。今回は海賊などの外敵ではなく、艦内でも任地でも、外の敵よりも内なる敵に注意してちょうだいね』
アレクシアの予言めいた言葉が、イリスとユイだけじゃなく、ワイアットの心にも残ったのであった……
『今回補充される乗組員のうち、一部には反始祖四家の一派が含まれることは避けられない。QAが最強の武器と知れてしまった以上、その矛先がアレキサンドリアに向く事を、委員会が恐れている事は理解しているな?』
父ジャスティンの言葉に、辛うじて平静をたもったワイアットであったが、ユイやイリスが冷静であった事に意外な気持ちを持っていた。
『始祖四家などと持ち上げてはいるが、白家と黒家は本家しか存在しない。事実上、アレキサンドリアの軍は、青家の水兵と紅家の武器で成り立っていて、委員会は常にその私兵化を恐れている』
それ故に兵数・所属艦船数も抑えられてきたが、外敵の脅威に現在の兵力で対抗できるのかは常に議論されてきたのだ。
『覇権主義なんて面倒なこと、私たちはしませんわよ』
イリスが物怖じもせずに言葉を返すが、ユイにもリアンにも勿論その気は無い。そして、それはワイアットも同様であった。
『貴方たちが思う思わないは、委員会には関係ないのよ。特定の血族が、軍の上位を占めていることを問題視する意見は多いのよ』
アレクシアの言葉に、エリックやリリーもうなずく。
『現当主、次期当主含めてもそれらは無いといえますが、将来それが無いとは言えません。
しかし、軍は魔道具を多用する以上、魔力の強いものが上位を占めてしまうのも、また事実』
リリーの言葉に、やはり皆がうなづく。
『では、どうすれば良いか…… 始祖四家で成り立つ体勢に、委員会側の人員が含まれれば良いと思ったわけ。
まずは、始祖四家にユイを黄家として加える事によって、五家体制に持っていくのが一つ。もう一つが……』
『……クロエを委員会側につける事ね』
クロエは黒家の次期当主とされているが、黒家直系ではない。ならば、黒家・白家に連綿と続く、女児唯一人のみしか産まれないという血の呪縛から解き放たれる事になるのではないか?
五家となり、黄家・新黒家が委員会側になれば、百年二百年先には対等の関係となるのではないかという考えが、委員会の一部に台頭してきているのだ。
百年二百年の計といえば、人族にとっては長大な構想であるが、長命の種族からすればわずかな時である。
事実、エルフ族からも一家加えて、六家体勢にする事すら提案されたが、代替わりのタイミングが異なるエルフを含めてしまうと、エルフ族の一家に全てを握られかねないという思惑もある。
表向き、エルフ族は精霊樹の勢力圏より出る事ができないのと、エルフの森への不干渉を貫いているので、国政や軍への関与は抑えられている。勿論エルフ族にそう言った野心はなかったのであるが、短命な種族が自分たちの権益を損なうのを嫌う事は承知していたので、深入りはしなかったようである。
『別に、私たちはクロエちゃんとユイさんが、自分の意思でそれを選ぶならそれでよいの。でも、政治的な駆け引きで押し付けられるのなら反対よ』
『あぁ、そこは僕たちの意見は一致していてね。リアンの婚約も、それとは関係無いとは言えないよ。ワイアット君一人なら、仮に誰かに婿入りしても、イリス、ユイ、クロエの三人のうち二人は紅家・青家の系譜に連ならない者が伴侶となる可能性がある。そういう事実を示しておかないと、二人には無理やり相手を押し付けられそうな雰囲気もあってね』
『ええ、それにリアン君は、三人の誰にも興味が無いでしょう?』
そう言ってリアンを見るアレクシアの顔は、実に晴れ晴れとしていた。リリーもウンウン頷いている中、エリック一人は残念そうだ。
『あっ、当たり前だろ。てか、俺はまだ女に興味は……』
言いかけたリアンに対して、エリックが言葉をかぶせる。
『それが困るから、そうそうにアーシャをつけたんだよ。いつもワイアット君と一緒では、変な噂が立ちそうだしね。それにしても、あぁ、クロエ君の、あの発想とかがもったいないなぁ…… リアンが婿入りすれば、もっと面白い物が作れそうなのに……』
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『そうよ、ジェシカが生活面で大きな子供の面倒を見てくれるけど、貴方の趣味の後始末をさせられるのは嫌ですのよ?』
『親父、俺よりアイツの発想の方が大事なのかよ…… それに、親父が問題児扱いかよ……』
エリック、アレクシア、リリーの言葉を聞いて、意気消沈したリアンを見て、ワイアットは吹き出しかけたが、自分に火の粉が飛んできてはたまらないので、懸命に笑いをこらえたのであった……
『いずれにしても最初の航海のように、味方ばかりの任務ではないわ。今回は海賊などの外敵ではなく、艦内でも任地でも、外の敵よりも内なる敵に注意してちょうだいね』
アレクシアの予言めいた言葉が、イリスとユイだけじゃなく、ワイアットの心にも残ったのであった……
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