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7.女王の奏でるラプソディー
43.戦闘開始前、さぁ毛を逆立てろ
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QAの飛行甲板は、二十一世紀の地球の船に比べれば狭く小さいものであったが、アイオライト上に存在するいかなる船よりも広く、洋上に在るにもかかわらず足場が揺れることはほとんどない。陸上と異なるのは、主に周囲を構成する精霊の力関係であった。
「かぁ~、こいつはマジで属性の偏りが半端じゃねぇな。土属性や火属性魔法は、精霊の力を借りるにも近くに存在してすらいねぇ」
十人一組ずつの班を組む中で、第二班を率いるリアンの口から、多少弱気なセリフが出るがそれも仕方ないことだろう。海上は四属性のうち、攻撃面で最大の火魔法と、安定した防御力を誇る土魔法にたいしては、精霊の力を借りることが難しい環境だからである。
「かといって、水魔法では水中に住む生物や魔物は抵抗力を持つものが多いですからね。風魔法も水中の敵に対しては威力はないに等しい」
第二班を率いる砲雷長のアンソニーも難しい顔をしている。土魔法や火魔法を得意とする紅家としては、自らの最大火力を行使すること自体、かなり問題がある状況だ。
「おや、紅家の皆さんは手を引きますか? それならそれで、こちらは構いませんよ?
ただし次回の見せ場は、ご自身たちで作ってください。それと、個人戦闘を希望する者がいれば、先手を取らせてあげますので、希望者を当たってください」
「おそらく彼らがやりたがるでしょう。こちらとしても、邪魔にならずに済みますからちょうどよいですね」
そういうハリーの視界の隅に映ったのは数名の男性だ。彼らにはある特徴があった。それは……
「揃いも揃って、国内の各町や村出身者で、まぁまぁイケメンって奴だな。じいさんたちの考えることは、分かりやすいな」
リアンは苦笑するが、老人たちが考える年頃の娘が気に入る要素としては重要なことなのだろう。ただし、只の女子が相手ならの話である。
「まあ、僕たちだけがチャンスを奪ったと言われるよりは良いでしょう。彼らは彼らで、独自にやってもらいましょう」
ワイアットは数名の男たちに声をかけると、彼らは戸惑いながらも魔法障壁の解除タイミングや場所を伝えるためにクロエに話しかけて、それぞれが得意な魔法攻撃を仕掛け始めた。
それを見ながら、リアンとワイアット、ハリーにアンソニーの四人は話し始める。
「一発一発の攻撃力は、かなり高いようだな」
リアンの言葉に、ワイアットを含めた三人もうなづいた。
「艦載の魔導砲すら痛痒を与えることができない相手に、只の魔法が聞くとは思えませんでしたが、やはり予想通りですか」
ファイアーランスやアイスランスなどの魔法攻撃は、十分な詠唱時間をかけて放たれてはいるが、クラーケンの体のごく一部にダメージを与えるだけに過ぎない。
そもそもイカやタコといった無脊椎動物に、痛みという感覚があるのかどうかすら分かっていないのだが、普通のタコやイカであれば、彼らを食するクジラやサメ、シャチといった生物から逃げるためには、触腕の一本も平気で切り捨てるのだから、人のそれとは異なるであろう。
「で、どうします? あんなデカ物相手に通常魔法攻撃を仕掛ければ、彼らと同じ結果が待つだけでしょう。一点を狙って撃ったとしても、倒しきれるかどうかは不明です。
こちらは完成したばかりの戦術級魔法を使用しますが、胴体部分だけで十数メートルはありますからね。最悪の場合、動きを止める事ができるかどうか……」
ワイアットがそういうと、リアンもそれに反応して口にする。
「お、動きを止めてくれるのは助かるな。こっちは威力は大きいが、到達時間がかかるんでね。あたれば消し飛んでくれそうだけどな」
「消し飛ばすって事は爆裂系ですか。あいつの外側から攻撃してもふきとばすのはむずかしいですね。多少の厚さなら平気でしょうが、胴体部だけでも十五メートルとすると、外套膜の厚さは一メートルは超すでしょう。狙うのは口でなければなりませんが、口は水中ですよ」
アンソニーの指摘にリアンもしまったという表情をするが、ハリーが提案する。
「僕の部隊で触腕やその他の腕を始末するから、やつの体が水上にあったほうが助かるな。アンソニーの部隊で奴を障壁に縫い付けられないか? そのあとクロエ艦長に障壁を回転させてもらって、海面上に奴を引きずり出してもらえばいい」
「では、最初にアンソニーの部隊の攻撃で、奴の足止めというか固定。その後、僕とハリーの部隊で奴を仕留めますが、リアンは最後に派手に奴を吹き飛ばすという事でいいかい?」
ハリーとワイアットの提案で、リアンはうんうん頷いた。派手に止めを差す役割なのだから、当然である。
アンソニーはしばらく考えていたが、現状の持てる火力を考えると、それが一番無難に思えたので、最終的に納得した。
「では、時計合わせ三分後にアンソニーの部隊から攻撃を開始してくれ。時計合わせをするよ……三十秒前……十五秒前、十秒前……五、四、三、二、一 作戦開始」
ワイアットの号令で、紅家と青家の魔法攻撃部隊、四十名の男性は甲板上で攻撃準備を開始する。三分後の見せ場のために……
「かぁ~、こいつはマジで属性の偏りが半端じゃねぇな。土属性や火属性魔法は、精霊の力を借りるにも近くに存在してすらいねぇ」
十人一組ずつの班を組む中で、第二班を率いるリアンの口から、多少弱気なセリフが出るがそれも仕方ないことだろう。海上は四属性のうち、攻撃面で最大の火魔法と、安定した防御力を誇る土魔法にたいしては、精霊の力を借りることが難しい環境だからである。
「かといって、水魔法では水中に住む生物や魔物は抵抗力を持つものが多いですからね。風魔法も水中の敵に対しては威力はないに等しい」
第二班を率いる砲雷長のアンソニーも難しい顔をしている。土魔法や火魔法を得意とする紅家としては、自らの最大火力を行使すること自体、かなり問題がある状況だ。
「おや、紅家の皆さんは手を引きますか? それならそれで、こちらは構いませんよ?
ただし次回の見せ場は、ご自身たちで作ってください。それと、個人戦闘を希望する者がいれば、先手を取らせてあげますので、希望者を当たってください」
「おそらく彼らがやりたがるでしょう。こちらとしても、邪魔にならずに済みますからちょうどよいですね」
そういうハリーの視界の隅に映ったのは数名の男性だ。彼らにはある特徴があった。それは……
「揃いも揃って、国内の各町や村出身者で、まぁまぁイケメンって奴だな。じいさんたちの考えることは、分かりやすいな」
リアンは苦笑するが、老人たちが考える年頃の娘が気に入る要素としては重要なことなのだろう。ただし、只の女子が相手ならの話である。
「まあ、僕たちだけがチャンスを奪ったと言われるよりは良いでしょう。彼らは彼らで、独自にやってもらいましょう」
ワイアットは数名の男たちに声をかけると、彼らは戸惑いながらも魔法障壁の解除タイミングや場所を伝えるためにクロエに話しかけて、それぞれが得意な魔法攻撃を仕掛け始めた。
それを見ながら、リアンとワイアット、ハリーにアンソニーの四人は話し始める。
「一発一発の攻撃力は、かなり高いようだな」
リアンの言葉に、ワイアットを含めた三人もうなづいた。
「艦載の魔導砲すら痛痒を与えることができない相手に、只の魔法が聞くとは思えませんでしたが、やはり予想通りですか」
ファイアーランスやアイスランスなどの魔法攻撃は、十分な詠唱時間をかけて放たれてはいるが、クラーケンの体のごく一部にダメージを与えるだけに過ぎない。
そもそもイカやタコといった無脊椎動物に、痛みという感覚があるのかどうかすら分かっていないのだが、普通のタコやイカであれば、彼らを食するクジラやサメ、シャチといった生物から逃げるためには、触腕の一本も平気で切り捨てるのだから、人のそれとは異なるであろう。
「で、どうします? あんなデカ物相手に通常魔法攻撃を仕掛ければ、彼らと同じ結果が待つだけでしょう。一点を狙って撃ったとしても、倒しきれるかどうかは不明です。
こちらは完成したばかりの戦術級魔法を使用しますが、胴体部分だけで十数メートルはありますからね。最悪の場合、動きを止める事ができるかどうか……」
ワイアットがそういうと、リアンもそれに反応して口にする。
「お、動きを止めてくれるのは助かるな。こっちは威力は大きいが、到達時間がかかるんでね。あたれば消し飛んでくれそうだけどな」
「消し飛ばすって事は爆裂系ですか。あいつの外側から攻撃してもふきとばすのはむずかしいですね。多少の厚さなら平気でしょうが、胴体部だけでも十五メートルとすると、外套膜の厚さは一メートルは超すでしょう。狙うのは口でなければなりませんが、口は水中ですよ」
アンソニーの指摘にリアンもしまったという表情をするが、ハリーが提案する。
「僕の部隊で触腕やその他の腕を始末するから、やつの体が水上にあったほうが助かるな。アンソニーの部隊で奴を障壁に縫い付けられないか? そのあとクロエ艦長に障壁を回転させてもらって、海面上に奴を引きずり出してもらえばいい」
「では、最初にアンソニーの部隊の攻撃で、奴の足止めというか固定。その後、僕とハリーの部隊で奴を仕留めますが、リアンは最後に派手に奴を吹き飛ばすという事でいいかい?」
ハリーとワイアットの提案で、リアンはうんうん頷いた。派手に止めを差す役割なのだから、当然である。
アンソニーはしばらく考えていたが、現状の持てる火力を考えると、それが一番無難に思えたので、最終的に納得した。
「では、時計合わせ三分後にアンソニーの部隊から攻撃を開始してくれ。時計合わせをするよ……三十秒前……十五秒前、十秒前……五、四、三、二、一 作戦開始」
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