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8.未来へ……
20.困窮した町を助けたい? つくづく甘ちゃんですね
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「こういう状況ですから明日は町にはいらず、食料を調達したらすぐに出発しようと……」
僕がそういうと、驚いたような声が割り込みます。
「ちょっと待ってくれ。こんな状態の町を放置して先に進む気か?」
僕は声の主をジト目で見つめます。ジト目の先に居るのはアルバートですね。一体なんだというのでしょうか……
「……なんだって言うんです、変な人?
あぁ、困窮している町ですから、十分な食料が調達できない可能性もありますね。その場合は、飲料水の補充だけして先を急ぎましょう」
アメリアが、僕と変な人の顔を交互に見つめて口を開きます。
「姫さん、そいつが言いたいのは、そういうことじゃないと思うんですの……」
「この時期にこんな状態じゃ、本格的な冬に入れば飢える者も多いだろう。町の住人全てを救うのは無理としても、せめて子供たちの分だけでも、手持ちの食料から……」
アルバートがさらに言葉を続けようとしますが、僕は右手を彼の前に突き出して、沈黙させます。
「貴方が何を言いたいのか理解できないわけではありませんし、何をしてほしいのかわからなくもないですが、それは僕たちの仕事ではありませんよ。
先ほども言ったように、食料の調達を行いたいのは僕たちも一緒なんです。町民全てに施すほどの食料も、予算もありませんし、僕たちは山越えを控えています。新鮮な食材はいくらあっても良いんですからね」
自分の表情が冷たくなるのを自覚してますが、僕はあえて変な人に言います。
「それに、貴方は今回の護衛依頼についてきているだけの存在です。護衛依頼のメンバーではない貴方に、物資の使い道に口を差しはさむ権利はありませんよ」
偵察用ドローンが映す映像は、町の小さな教会のような施設です。そこには十人以上の子供が身を寄せ合って空腹に耐えている様子が映し出されています。
子供たちが飢えているのは確かですが、僕たちから施しを受けてしまえば、彼らは他の旅人に対しても施しを期待するようになるでしょう。
一度施しを受けた彼らは、施ししてくれない普通の人々をケチだと思い、悪く考えるはずです。そうなれば、悪い奴から盗んだり奪ったりすることは悪くないと考えるようになるまで、ほんの少しだとおもうんですよね。
「それに、困窮しているのは今日だけではないでしょう。今日の食事を与えたとしても、明日以後飢える事には変わりはありません。
それに、ここはアルべニア王国の貴族が納める荘園なんですよ。
荘園の中では、領主は王と同じです。領内の動植物は領主のモノであり、それには領民も含まれています。
いくら領民が困窮しているからといって、他国の貴族家に施しを受けたなどという話が広まれば、領主の恥となってしまいます。名誉を重んじる貴族にとっては、決闘どころか開戦の切っ掛けになってもおかしくないのですよ」
隣国ミッテンベルグ王国は、前領主がちょこちょこ戦を仕掛けていた相手国であり、コリーヌさんは他国にも戦姫として名が知られています。
かつて戦った相手から施しを受けたという噂話は、新任領主のヴォルフ卿にとって、アルべニア国内の貴族社会で致命的な悪評になるかもしれません。
それに、他者から施しを受けるということは、民衆のためにはなりません。現実的に小さな町とはいえ、半年分の食料を提供する事ができるはずもありませんからね。
アルバートの顔を見ると、僕の話を理解したのか殊勝な顔つきになっているので、沈黙を解除してあげます。
「……俺たちにできることは何もないのか……」
アルバートのつぶやきが聞こえます。まあ、彼は他国の国民の状況を直接目にするのは初めてですからね。
僕は帝政エリクシアを一人旅した経験がありますし、アメリアは海軍での航海経験があり、他国の港に停泊することもあったでしょうから、こういった物事には耐性があります。コリーヌさんは戦場となった町を知っているでしょうから、餓えた人々を見たことはあるでしょう。
見たことがあるからといって、感情が動かないわけではありませんが、干渉できない現実があるということを知っているだけでも、精神的負担は少なくなります。
しかし、あまりにもアルバートががっかりした様子なので、僕はついつい口をはさんでしまいます。
「まぁ、恒常的に何とかする方法はありますが、あくまでも町の人々が自分で食料を調達しなければなりません。
町の人々に、それが可能だと思わせられるかは、貴方たち次第です。言っておきますが、僕は参加しませんが、やりますか?」
黒い笑顔を向ける僕に、三人は恐るおそるうなづいたのでした。
僕がそういうと、驚いたような声が割り込みます。
「ちょっと待ってくれ。こんな状態の町を放置して先に進む気か?」
僕は声の主をジト目で見つめます。ジト目の先に居るのはアルバートですね。一体なんだというのでしょうか……
「……なんだって言うんです、変な人?
あぁ、困窮している町ですから、十分な食料が調達できない可能性もありますね。その場合は、飲料水の補充だけして先を急ぎましょう」
アメリアが、僕と変な人の顔を交互に見つめて口を開きます。
「姫さん、そいつが言いたいのは、そういうことじゃないと思うんですの……」
「この時期にこんな状態じゃ、本格的な冬に入れば飢える者も多いだろう。町の住人全てを救うのは無理としても、せめて子供たちの分だけでも、手持ちの食料から……」
アルバートがさらに言葉を続けようとしますが、僕は右手を彼の前に突き出して、沈黙させます。
「貴方が何を言いたいのか理解できないわけではありませんし、何をしてほしいのかわからなくもないですが、それは僕たちの仕事ではありませんよ。
先ほども言ったように、食料の調達を行いたいのは僕たちも一緒なんです。町民全てに施すほどの食料も、予算もありませんし、僕たちは山越えを控えています。新鮮な食材はいくらあっても良いんですからね」
自分の表情が冷たくなるのを自覚してますが、僕はあえて変な人に言います。
「それに、貴方は今回の護衛依頼についてきているだけの存在です。護衛依頼のメンバーではない貴方に、物資の使い道に口を差しはさむ権利はありませんよ」
偵察用ドローンが映す映像は、町の小さな教会のような施設です。そこには十人以上の子供が身を寄せ合って空腹に耐えている様子が映し出されています。
子供たちが飢えているのは確かですが、僕たちから施しを受けてしまえば、彼らは他の旅人に対しても施しを期待するようになるでしょう。
一度施しを受けた彼らは、施ししてくれない普通の人々をケチだと思い、悪く考えるはずです。そうなれば、悪い奴から盗んだり奪ったりすることは悪くないと考えるようになるまで、ほんの少しだとおもうんですよね。
「それに、困窮しているのは今日だけではないでしょう。今日の食事を与えたとしても、明日以後飢える事には変わりはありません。
それに、ここはアルべニア王国の貴族が納める荘園なんですよ。
荘園の中では、領主は王と同じです。領内の動植物は領主のモノであり、それには領民も含まれています。
いくら領民が困窮しているからといって、他国の貴族家に施しを受けたなどという話が広まれば、領主の恥となってしまいます。名誉を重んじる貴族にとっては、決闘どころか開戦の切っ掛けになってもおかしくないのですよ」
隣国ミッテンベルグ王国は、前領主がちょこちょこ戦を仕掛けていた相手国であり、コリーヌさんは他国にも戦姫として名が知られています。
かつて戦った相手から施しを受けたという噂話は、新任領主のヴォルフ卿にとって、アルべニア国内の貴族社会で致命的な悪評になるかもしれません。
それに、他者から施しを受けるということは、民衆のためにはなりません。現実的に小さな町とはいえ、半年分の食料を提供する事ができるはずもありませんからね。
アルバートの顔を見ると、僕の話を理解したのか殊勝な顔つきになっているので、沈黙を解除してあげます。
「……俺たちにできることは何もないのか……」
アルバートのつぶやきが聞こえます。まあ、彼は他国の国民の状況を直接目にするのは初めてですからね。
僕は帝政エリクシアを一人旅した経験がありますし、アメリアは海軍での航海経験があり、他国の港に停泊することもあったでしょうから、こういった物事には耐性があります。コリーヌさんは戦場となった町を知っているでしょうから、餓えた人々を見たことはあるでしょう。
見たことがあるからといって、感情が動かないわけではありませんが、干渉できない現実があるということを知っているだけでも、精神的負担は少なくなります。
しかし、あまりにもアルバートががっかりした様子なので、僕はついつい口をはさんでしまいます。
「まぁ、恒常的に何とかする方法はありますが、あくまでも町の人々が自分で食料を調達しなければなりません。
町の人々に、それが可能だと思わせられるかは、貴方たち次第です。言っておきますが、僕は参加しませんが、やりますか?」
黒い笑顔を向ける僕に、三人は恐るおそるうなづいたのでした。
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