632 / 698
新たな町へ
閑話 ニングスside 5
しおりを挟むギルドから宿に戻り、部家の鍵を受け取り部屋に入ってベッドに寝転び考える。
……さて向こうからの返事は一度訪ねてくれと。
渡された手紙には短い言葉が書いてあった。
「安心したら腹が減りました…」
ベッドからむくりと起きると、部屋を出てカウンターに行き鍵を預けて馬車に乗り込むと鞄から調理済みの料理が乗った皿を数枚出して椅子に座ると手を合わせて食べ始めた。
フフフ、旦那様の癖が移りましたね…。
食事が終わると今度は風呂場に向かい、お湯を浴槽に溜め始めると、風呂場を離れてまたベッドに寝転ぶ。
「フフッ…こんな怠惰はこの旅以外では出来ませんね」
と、独り言を呟きベッドでウトウトとする。
少しだけうたた寝をしてから風呂に入り、そのあと馬車から降り、宿の部屋に戻り硬いベッドで夜を明かしてまた、馬車に戻って顔を洗って朝食をとる。
朝食が終わり食後のお茶を飲みながら今後の予定を考える。
取り敢えずは、元妻に会ってから出来れば子どもたちと話をしたいが……。それは無理だろうな。 何年も会って居ないし、子どもたちは向こうに慣れてるのだろうし…。
だが、一つだけ引っ掛かる事があるのは否めない。
妻や子どもたちと一言二言言葉を交わしたら、それで満足。なので直ぐにこの町を出て旦那様の所へ帰ろうと心に決めるニングスだった。
「さて今日は、どうしますか?町に出て屋敷の皆に土産でも買ってきましょうか」
それから更に2日後の昼に、ギルドで貰った地図を見ながら元妻の住む家に訪ねるニングスだ。
妻の住む家は、こじんまりとしていて質素な家だった。
小さな庭もあるようで庭には花が咲いていた。
「フフッ、花が好きなのは変わってないのか。どうやら幸せに暮らせて居るようだ」
庭先を少し覗き、そんな事を呟くと家の玄関の前に立ちドアをノックした。
【トントン】と扉をノックすれば少し間が空いたが中から返事が返ってきた。
「はい? どちら様ですか?」
その言葉を聞いたニングスは感極まり返事が一拍遅れた。つ、妻の声だ!
「……あ、あの、此方にレミースと言う女性が居ると聞いて来たのですが。あっ、私はニングスと申します」
とドアの前で声を掛けた。
【バン】とドアが突然開くと中から人がニングスに抱きついててきた。
「おっと……」
こ、これは非常に不味いのでは?
咄嗟の事で出てきた人を受け止めてしまったが…と焦るニングスだ。
「あ、貴方……ニングスのなの? 本当に?」
「あ、あぁ、私だ。レミース久しぶりだ」
「あなた………」
と涙を流してくれた妻に会えたのは嬉しい。
だが少し虚しさを感じてしまった。それもその筈、今や自分の妻ではなく人の妻に為ってるのだから…虚しくも為る。
だがその感情を押し殺して、ニングスは元妻に声を掛けた。
「ええと、取り敢えずは離して貰えないかな?この状況は不味いのでは?」
「あ、わ、私ったら。ごめんなさい。さあどうぞ、中に入って?子どもたちが待ってるわ」
「ああ、でも良いのか?」
「構わないわ、今の……主人も居るのよ。さっ、中へ」
それから…家の中に招かれ、家の主と軽く挨拶をして子どもたちにも久しぶりの再開をし、ニングスは元妻と子どもたちが幸せそうな暮らし振りを確認すると相手の家から暇をした。
そして…宿への帰り道に…。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,276
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる