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初めての人里
冒険者ギルド
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冒険者ギルドというものが、人界領には存在する。
というより、元々冒険者ギルド自体は百年以上前から存在し、大小様々な依頼を処理する機関として存在していた。
しかし、急速に発展し、制度の整備が進んだのは、このほんの数年に過ぎない。
そこには、冒険者ギルドがどこよりも適した役目が存在したからという事情があった。
……百年以上続いた魔族との戦争が終わり、平和になった事により仕事にあぶれた傭兵などが、野盗に堕ちる事を防ぐための受け皿という役目が。
――以来、改革が進んで今年で八年。
戦争が終わり、軍から流れてきた技術によって支部間の情報網が整備され。
勇者の一党が持ち込んだ魔族の使用していた魔導技術という、新たな技術体系を扱えることに狂喜乱舞し、半ば暴走気味に開発に勤しんでいる錬金術師たちの手によって情報を管理するシステムが構築され。
今では、国家の垣根を超えて定められた規約に則って荒事に関する各種申請を処理し、住民の依頼を冒険者に配分して対処する半ば公的な機関として、その存在感を強めていたのだった。
……そんな冒険者ギルドの、エイスワンド支部にて。
アッシュは固唾を呑んで、提出した報告書を捲る、眼前の受付嬢の動向を見守っていた。
臙脂色の上級ギルド職員の制服を纏い、肩で切り揃えられている、片目が隠れる前髪が特徴的なボブカットの金髪と、赤いフレームの眼鏡が特徴的な彼女。
おそらくほとんどの男性が美人と言うであろう容姿。生真面目で仕事も出来るが、若干キツめの性格もあって取っ付き難い印象だ。しかし冒険者の中には、逆にそれが良いと言うファンもかなりの人数が居たりする。
そんな彼女……名をユスティという、この街でのアッシュを担当するギルドの受付嬢だ。
「なるほど……では、あの子は河岸で倒れているところを見つけた、と」
そう言って、カウンター席の隅で暖かいミルクティーを飲んでいるフィアの方を、ちらっと見るユスティ。
そんな視線の先に居るフィアは、最初こそ厳つい顔揃いの冒険者たちの、興味本位の視線が集中していたことで、居心地悪そうにしていた。
しかし、見かねたユスティが淹れてくれたミルクで煮出した紅茶を口にすると、すぐにそんな周囲の男達のことなど忘れたように、今では上機嫌でカップを傾けている。
そして、その姿を眺めている男どもも、すっかり妹か娘を見るような、生暖かい視線で見守っているのだった。
閑話休題。
「心肺停止にあったあの子を蘇生したと、報告にはありますが……」
「事実だ。河岸に漂着していた時、あの子は息をしていなかった」
アッシュは、何も嘘は言っていない。だからそれ以外答えようがないのだが、一方で事情聴取しているユスティは、頭痛を堪えるようにこめかみを抑える。
「……アッシュさんであればご存知かとは思いますが、心臓が止まってから蘇生可能な時間は数分が限度です。しかも、あのように何事も障害を残す事なく回復するのであれば、もっと短くなりますよね?」
その言葉に、アッシュは頷く。
ギルドの集めた過去の事例を元にしたガイドラインでは、心臓が止まってから三分で、死亡する確率は50%を超過すると定められている。
だが……それには、稀な例ではあるが例外的に当て嵌まらない事例が存在した。
「それは、身体が冷え切って、半ば凍りついていたからで……あいつを見つけた場所はほら、北の魔族領からの氷混じりの水が流れて来る時期だろ?」
「なるほど……確かに、雪山で遭難した方が、一週間後に発見され、心肺蘇生が成功した例もありますし、可能性としてはありえますね」
メモにペンを走らせながら、アッシュの言葉に賛同するユスティ。どうやら納得してくれたらしい、とアッシュが息をつこうとした。
「では、あの子の体が、髪の色素欠乏以外には問題ない理由は?」
「ぐっ……」
「全身が凍結していたのであれば、たった一日であのような元気な姿でいられる訳がありませんよね?」
たとえ人よりは治癒力が高い半吸血鬼であっても、凍傷による細胞の壊死をはじめ、相当長い期間ベットから離れられない生活を余儀なくされる事は間違いないだろう。
「あれ程綺麗に再生するには、たとえあの子が再生能力に優れた半吸血鬼だとしても、相当希少な薬品かあるいは……何か特殊な魔法が必要になりますよね?」
疑いの眼差しを向けるユスティから、アッシュは目を背ける。
どうにも、アッシュはこの才女が苦手だった。しかも、アッシュが隠しているある事情も薄々察している節があるため尚更だ。
「……たまたま、持ってたんだよ」
故に、そんな苦しい言い訳しか出てこなかった。
「成る程。希少な薬を報告無しで懐に入れていたと」
「ちょ、待っ……」
「違うのであれば、所持技能に申告隠しの疑いあり、と書かざるを得ないのですが?」
「……ソレデイイデス」
完敗を認め、がっくりと肩を落とすアッシュ。
どのみち、妥当な落とし所だとは思う。渋々と始末書を受け取って、ペンを走らせ始める。
「はぁ……ありがとな、ユスティ」
「……何のことかわかりません」
「はは、そうかい。でも、ありがとう」
言い方は厳しいが、ユスティはつまるところ、話の辻褄を合わせ、自分の証言をギルドに認めさせることに協力してくれているのだ。
誤解無きように言っておくと、そうした薬品類……ポーションなどを始めとした即効性の魔法薬の所持数量や使用量の報告は、何かあった時に迅速に依頼に対処できるようにする為である。きちんと数量を管理・報告しているのであれば、所持は問題ない。だから、この件もただ報告の不備ということで、簡単な始末書を書く程度の罰則だ。
一方で、所持技能……特に魔法技能に関しては、かなり厳しいと言われている。
例えば火炎系魔法や隠密系魔法などに多い話だが、物によっては犯罪に使用されかねない場合も多いからだ。
それならば、ポーションの無断使用の始末書一枚程度で済むのなら、安いものだ。
見た目と言動はキツいが、担当する冒険者思いで親切。それが、彼女にファンクラブが存在する理由なのだった。
しかし、親切であることと、では恐ろしくはないかということは、全くの別問題で。
「噂によれば、かの行方不明の勇者様や聖女様は、まるで奇跡のような治癒術を使えたそうですが……」
「へぇ、そいつぁ羨ましいこって」
「…………」
無言のままの視線の圧力が痛い。
いい加減、冷や汗がアッシュの頰を伝い始めた頃。
「まぁ、良いでしょう。では、そのように処理しておきます」
その言葉と共に責め苛んでいた圧力から解放され、アッシュは深く深くため息を吐いた。
「それと……こちらを」
スッと差し出されたカード。
表にはフィアの顔の肖像……ギルドの有する映写機械によるものだ……が印刷され、裏返すとそこには『ランクB+級冒険者アッシュ=ヘルト。この者を護衛中である事を証明する』と書かれ、ギルドの判が捺されている。
「彼女の護衛依頼受注証明書です、どうぞ。もし衛兵などに職務質問された場合、こちらをお見せください」
「ああ……助かる、本当に」
これが、アッシュが服屋よりもギルドに来る事を優先した理由だ。
証明書には、フィアが半吸血鬼であることも記載されている。同時に……彼女が、冒険者ギルドから人界領に滞在することを許可されているという証明でもある。
なので、任務を受けているアッシュの監視下にある限り、これで彼女は大手を振って街を歩けるということになる。
安堵し、いそいそとギルド員証と共に依頼証明書をしまい込んでいると。
「それで……まさかとは思いますが、このまま服を見に行くつもりですか?」
「あ、ああ、そのつもり……」
言いかけたアッシュが、キッと向けられたユスティの険しい目に、口をつむぐ。
「その前に、あの子をお風呂に入れてください。女の子を汚れたまま連れ歩くつもりですか」
「あー……でもなぁ、どっちだ?」
ユスティには、フィアが呪いによって少女になった元少年である事を説明してある。はたして女湯に入れる事に対して、生真面目な彼女が良い顔をするかどうか。
しかし……だからといって彼女のような少女を、粗野な者が多いギルドの男湯に放り込むというのはもちろん問題外だ。
「さっき、男湯を一時的に貸し切りにするよう指示を出してきました。まだ明るいこの時間なら問題ないでしょう?」
「ああ、それなら……」
ピタリと、アッシュの言葉が止まる。
フィアが、こちらの風呂の使い方を知っているとは思えない。
そして……準備されたのは、男湯。
「……待て、誰があいつを風呂に入れるんだ?」
そんな、嫌な予感からダラダラと額から流しながら訪ねるアッシュに……ユスティの、決まっているじゃないですかと雄弁に語る視線が突き刺さるのであった。
というより、元々冒険者ギルド自体は百年以上前から存在し、大小様々な依頼を処理する機関として存在していた。
しかし、急速に発展し、制度の整備が進んだのは、このほんの数年に過ぎない。
そこには、冒険者ギルドがどこよりも適した役目が存在したからという事情があった。
……百年以上続いた魔族との戦争が終わり、平和になった事により仕事にあぶれた傭兵などが、野盗に堕ちる事を防ぐための受け皿という役目が。
――以来、改革が進んで今年で八年。
戦争が終わり、軍から流れてきた技術によって支部間の情報網が整備され。
勇者の一党が持ち込んだ魔族の使用していた魔導技術という、新たな技術体系を扱えることに狂喜乱舞し、半ば暴走気味に開発に勤しんでいる錬金術師たちの手によって情報を管理するシステムが構築され。
今では、国家の垣根を超えて定められた規約に則って荒事に関する各種申請を処理し、住民の依頼を冒険者に配分して対処する半ば公的な機関として、その存在感を強めていたのだった。
……そんな冒険者ギルドの、エイスワンド支部にて。
アッシュは固唾を呑んで、提出した報告書を捲る、眼前の受付嬢の動向を見守っていた。
臙脂色の上級ギルド職員の制服を纏い、肩で切り揃えられている、片目が隠れる前髪が特徴的なボブカットの金髪と、赤いフレームの眼鏡が特徴的な彼女。
おそらくほとんどの男性が美人と言うであろう容姿。生真面目で仕事も出来るが、若干キツめの性格もあって取っ付き難い印象だ。しかし冒険者の中には、逆にそれが良いと言うファンもかなりの人数が居たりする。
そんな彼女……名をユスティという、この街でのアッシュを担当するギルドの受付嬢だ。
「なるほど……では、あの子は河岸で倒れているところを見つけた、と」
そう言って、カウンター席の隅で暖かいミルクティーを飲んでいるフィアの方を、ちらっと見るユスティ。
そんな視線の先に居るフィアは、最初こそ厳つい顔揃いの冒険者たちの、興味本位の視線が集中していたことで、居心地悪そうにしていた。
しかし、見かねたユスティが淹れてくれたミルクで煮出した紅茶を口にすると、すぐにそんな周囲の男達のことなど忘れたように、今では上機嫌でカップを傾けている。
そして、その姿を眺めている男どもも、すっかり妹か娘を見るような、生暖かい視線で見守っているのだった。
閑話休題。
「心肺停止にあったあの子を蘇生したと、報告にはありますが……」
「事実だ。河岸に漂着していた時、あの子は息をしていなかった」
アッシュは、何も嘘は言っていない。だからそれ以外答えようがないのだが、一方で事情聴取しているユスティは、頭痛を堪えるようにこめかみを抑える。
「……アッシュさんであればご存知かとは思いますが、心臓が止まってから蘇生可能な時間は数分が限度です。しかも、あのように何事も障害を残す事なく回復するのであれば、もっと短くなりますよね?」
その言葉に、アッシュは頷く。
ギルドの集めた過去の事例を元にしたガイドラインでは、心臓が止まってから三分で、死亡する確率は50%を超過すると定められている。
だが……それには、稀な例ではあるが例外的に当て嵌まらない事例が存在した。
「それは、身体が冷え切って、半ば凍りついていたからで……あいつを見つけた場所はほら、北の魔族領からの氷混じりの水が流れて来る時期だろ?」
「なるほど……確かに、雪山で遭難した方が、一週間後に発見され、心肺蘇生が成功した例もありますし、可能性としてはありえますね」
メモにペンを走らせながら、アッシュの言葉に賛同するユスティ。どうやら納得してくれたらしい、とアッシュが息をつこうとした。
「では、あの子の体が、髪の色素欠乏以外には問題ない理由は?」
「ぐっ……」
「全身が凍結していたのであれば、たった一日であのような元気な姿でいられる訳がありませんよね?」
たとえ人よりは治癒力が高い半吸血鬼であっても、凍傷による細胞の壊死をはじめ、相当長い期間ベットから離れられない生活を余儀なくされる事は間違いないだろう。
「あれ程綺麗に再生するには、たとえあの子が再生能力に優れた半吸血鬼だとしても、相当希少な薬品かあるいは……何か特殊な魔法が必要になりますよね?」
疑いの眼差しを向けるユスティから、アッシュは目を背ける。
どうにも、アッシュはこの才女が苦手だった。しかも、アッシュが隠しているある事情も薄々察している節があるため尚更だ。
「……たまたま、持ってたんだよ」
故に、そんな苦しい言い訳しか出てこなかった。
「成る程。希少な薬を報告無しで懐に入れていたと」
「ちょ、待っ……」
「違うのであれば、所持技能に申告隠しの疑いあり、と書かざるを得ないのですが?」
「……ソレデイイデス」
完敗を認め、がっくりと肩を落とすアッシュ。
どのみち、妥当な落とし所だとは思う。渋々と始末書を受け取って、ペンを走らせ始める。
「はぁ……ありがとな、ユスティ」
「……何のことかわかりません」
「はは、そうかい。でも、ありがとう」
言い方は厳しいが、ユスティはつまるところ、話の辻褄を合わせ、自分の証言をギルドに認めさせることに協力してくれているのだ。
誤解無きように言っておくと、そうした薬品類……ポーションなどを始めとした即効性の魔法薬の所持数量や使用量の報告は、何かあった時に迅速に依頼に対処できるようにする為である。きちんと数量を管理・報告しているのであれば、所持は問題ない。だから、この件もただ報告の不備ということで、簡単な始末書を書く程度の罰則だ。
一方で、所持技能……特に魔法技能に関しては、かなり厳しいと言われている。
例えば火炎系魔法や隠密系魔法などに多い話だが、物によっては犯罪に使用されかねない場合も多いからだ。
それならば、ポーションの無断使用の始末書一枚程度で済むのなら、安いものだ。
見た目と言動はキツいが、担当する冒険者思いで親切。それが、彼女にファンクラブが存在する理由なのだった。
しかし、親切であることと、では恐ろしくはないかということは、全くの別問題で。
「噂によれば、かの行方不明の勇者様や聖女様は、まるで奇跡のような治癒術を使えたそうですが……」
「へぇ、そいつぁ羨ましいこって」
「…………」
無言のままの視線の圧力が痛い。
いい加減、冷や汗がアッシュの頰を伝い始めた頃。
「まぁ、良いでしょう。では、そのように処理しておきます」
その言葉と共に責め苛んでいた圧力から解放され、アッシュは深く深くため息を吐いた。
「それと……こちらを」
スッと差し出されたカード。
表にはフィアの顔の肖像……ギルドの有する映写機械によるものだ……が印刷され、裏返すとそこには『ランクB+級冒険者アッシュ=ヘルト。この者を護衛中である事を証明する』と書かれ、ギルドの判が捺されている。
「彼女の護衛依頼受注証明書です、どうぞ。もし衛兵などに職務質問された場合、こちらをお見せください」
「ああ……助かる、本当に」
これが、アッシュが服屋よりもギルドに来る事を優先した理由だ。
証明書には、フィアが半吸血鬼であることも記載されている。同時に……彼女が、冒険者ギルドから人界領に滞在することを許可されているという証明でもある。
なので、任務を受けているアッシュの監視下にある限り、これで彼女は大手を振って街を歩けるということになる。
安堵し、いそいそとギルド員証と共に依頼証明書をしまい込んでいると。
「それで……まさかとは思いますが、このまま服を見に行くつもりですか?」
「あ、ああ、そのつもり……」
言いかけたアッシュが、キッと向けられたユスティの険しい目に、口をつむぐ。
「その前に、あの子をお風呂に入れてください。女の子を汚れたまま連れ歩くつもりですか」
「あー……でもなぁ、どっちだ?」
ユスティには、フィアが呪いによって少女になった元少年である事を説明してある。はたして女湯に入れる事に対して、生真面目な彼女が良い顔をするかどうか。
しかし……だからといって彼女のような少女を、粗野な者が多いギルドの男湯に放り込むというのはもちろん問題外だ。
「さっき、男湯を一時的に貸し切りにするよう指示を出してきました。まだ明るいこの時間なら問題ないでしょう?」
「ああ、それなら……」
ピタリと、アッシュの言葉が止まる。
フィアが、こちらの風呂の使い方を知っているとは思えない。
そして……準備されたのは、男湯。
「……待て、誰があいつを風呂に入れるんだ?」
そんな、嫌な予感からダラダラと額から流しながら訪ねるアッシュに……ユスティの、決まっているじゃないですかと雄弁に語る視線が突き刺さるのであった。
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