後天スキル【ブラックスミス】で最強無双⁈~魔砲使いは今日も機械魔を屠り続ける~

華音 楓

文字の大きさ
106 / 142
第8章 富士の樹海ダンジョン

第106話 探索者ギルドにて 2

しおりを挟む
「全く……人の話はきちんと聞くように教わらなかったのか?俺がその【探索者ライセンス】の所有者だって言ってるのに……。公営組織探索者支援組合探索者ギルドの上位職だったら、本来はこの意味が分からないといけないんだけどな?」

 呆れ顔のケントをよそに、男性の顔は赤く染め上がっていった。
 今にも血管が切れるのではないかと、リヒテルたちが心配してしまうほどに。

「またも御託を並べおって……こうなれば私自ら……」

 と最後まで言い切ることなく、男性は膝から崩れ落ちた。
 何が起こったか分からない男性は、自分の体に起きた異変に混乱するしかなかった。

「だからさ、その身体能力を上げているスキルはどうやって手に入れたんだ?【探索者】になったからだろ?そしてそのためのダンジョンは誰が作ったんだ?考えたらわかるんじゃないのか?」

 男性の行動に、徐々にイラつきを覚えたケント。
 その言葉は次第に棘を帯びていく。

 男性は原因を探るべく、何か虚空を操作し始めた。
 そしてその原因を理解したようで、突然狼狽し始めたのだ。

「なぜだ!!なぜスキルがすべて使用不可になっているんだ!!それにレベルがすべて暗転している?!なんなんだ?!これは呪いなのか!?」

 口元を泡だらけにし、叫びだす有様であった。
 その取り乱しようにいまだ動けずに膝をついている囲んでいた【探索者】たちも慌てて何かを操作し始めた。

「俺のスキルが!!」
「なんだこれは!!」
「ス、ステータスが初期値!?」

 いろいろな話が飛び交い、その場は混乱を極めた。
 さらに周囲にいたスタッフや【探索者】たちが慌てたように彼らを介抱し、やがてその場が静かになっていった。

 それを見計らったように、一人の女性が2階から姿を現した。

「何を騒いでいるのですか?これから大事な人が来る予定なんですよ?」

 階段から降りてきた女性は手に短めの鞭を持っており、それをパシリパシリと鳴らして降りてきた。

「も、申し訳ありません。罪人を取り押さえよとしたのですが、突然ステータスに異常をきたしてしまいまして……」

 男性は先ほどまでも狼狽がウソのように顔面蒼白となり、女性に対して膝まづいた。
 他のスタッフたちも女性に向き直り頭を下げる。

 その様子についていけないリヒテルたちは、置いてけぼりを喰らってしまったようだった。

「ステータス異常ですって?そんなのあり得るわけがないでしょうに……秋斗陛下ですらそんなことは出来ませんよ?出来るとすれば、2代目【魔王】であらせられる〝中村 剣斗〟様くらいなのですから。」
「この者がその〝中村 剣斗〟様の【探索者ライセンス】を所持していたことから取り調べを行おうとしていたのです。」

 跪きながら女性に事情を説明する男性。
 若干震えていたのは恐怖からなのかは分からなかった。

 女性はその言葉を受けてケントへと視線を向ける。
 そして深いため息の後に、ケントに向けて深く頭を下げたのだった。

「部下の無礼をお許しください。〝中村 剣斗〟様。」

 その行為に、その場が凍り付いたようであった。
 男性も何が何だが分からないという様子だ。

「部下の教育はきちんとするようにね?それにその【探索者ライセンス】は本人以外には使用不可だって知ってるでしょう?それで確認できたんじゃないのか?そこまでそこの阿呆は使いものにならない人物かのか?」

 すでに切れ気味のケントの言葉が、さらに棘を増やしていく。
 男性は息も絶え絶えと言わんばかりに、短く浅い呼吸を繰り返していた。
 自身が犯した失態を噛み締めるかのように。

「ケント、これ以上はやりすぎだって。それに俺が中途半端な対応をしたせいだし、不審に思ってもおかしくないからね?」

 この場を何とか収めたいリヒテルは自分の失態が原因だとして、話を収束の方向へと向かわせようとした。
 ケントも落し所を探っていたようで、リヒテルの話に乗ることにしたようだった。

「そうだな……こちらももう少し気を使うべきだったか……すまない。」

 女性に対して謝罪の言葉を口にするケント。
 女性は滅相もないと首を横に振っていた。

「この件は私が処理いたします。各員は各々の職務に戻りなさい。加藤部長には追って通達をいたします。それまでは自室で待機なさい。」

 女性の言葉を受けて蜘蛛の子を散らすように作業に戻るスタッフたち。
 倒れていた【探索者】たちも、急に力が戻ったようで安堵の表情を浮かべていた。
 一人いまだ力が戻らない、加藤はほかのスタッフに連れられて奥へと引っ込んでいったのだった。

「では〝中村 剣斗〟様、こちらへお越しください。皆様もどうぞこちらへ。」

 リヒテルたちはその女性の案内で、2階にある会議室へと足を運んだのであった。
 その際リヒテルは後ろを振り返ると、スタッフやほかの【探索者】たちの視線を感じていた。
 それは不穏なものを見る目にそっくりで、この先が思いやられると心の中で大きくため息をついたのであった。

——————

「先ほどは申し訳ありませんでした。この公営組織探索者支援組合探索者ギルド組合長ギルドマスター畑沢はたざわ りつと申します。」

 リヒテルたちが会議室の席に着席するなり、律は改めて頭を下げた。
 本来であれば謝罪所の話ではないはずであった。
 しかし先ほどの流れによって事なき終えたことに安堵した律だったが、それでも謝罪をしないわけにはいかなかったのだ。

「あれ?ここの組合長ギルドマスターって舞さんの親父さんじゃかなったかな?」
 
 ケントは聞いていた話と違うなと思って、律に確認を取ってみた。
 律もここで舞の話が出るとは思わずに、少しだけ驚いた様子を見せたものの、すぐに表情を戻した。

「舞をご存じなのですね。舞は私の妹に当たります。父の護は先週までここの組合長ギルドマスターを務めておりましたが、現在は総組合長グランドマスターとして本部に戻っております。」
「そうだったんですね。成程……入れ違いだったか。栄転とはおめでとうございます。」

 ケントは護の栄転について律に祝辞を述べた。
 しかし律の表情は喜びを含んではいなかった。
 むしろ少しだけ悪い顔をにじませていた。

「栄転などとんでもない。総組合長グランドマスターはほぼ名誉職。お飾りです。だいたい、父は現役続行を表明するほど脳筋で、考えなしで、全部筋肉で解決しようとする割に、組合長ギルドマスターであることにこだわり過ぎていたのです。しかもですよ?ちょどそこの二人のように引き締まった躯体をお持ちの方を見かけると、誰彼構わず戦いを挑むなど、組合長ギルドマスターとしての威厳というものをですね……ってすみません。話がそれました。」

 護の話になったとたん堰を切ったかのようにしゃべりだした律。
 それは誇るというよりは怒る……そんな感じに見受けられた。
 その怒涛の話に若干引き気味の面々を見て、熱くなり過ぎたことを謝罪した律なのであった。

「ですので現在は副マスターであった私が引継ぎ、ここを統治……じゃなかった、運営をさせていただいております。」

 そういうと、にこやかに微笑む律。
 その笑顔の裏に隠された本性が、若干見え隠れしていた。

「(ねぇ、リヒテル。あれ絶対本音だよね?)」
「(レイラ、気にしたら負けだよ?)」

 リヒテルとレイラの小声の会話を拾ったかのように、一瞬視線が鋭くなる律。
 だがすぐに微笑みに戻り、リヒテルとレイラは目の錯覚かと思ってしまったほどであった。

「それでは剣斗様、こちらをお返しいたします。皆様の分につきましては、剣斗様を保証人として仮発行の手続きを進めさせます。本発行については申し訳ありません、規定上すぐにとは参りません。何度か探索を熟していただいて、規定値を超えた段階で発行となりますので、ご了承ください。」

 そういうと、ケントの【探索者ライセンス】を返してきた律。
 それをケントが受け取ると、安堵の表情を律は見せたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...