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四回目
第7話
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——————
今日は20✕✕年8月5日の朝で……
——————
「くそ!!やられた!!」
僕はベッドから飛び起きると、苛立ちをぶつけるように目覚まし時計を乱暴に止める。
身体を起こし、右の脇腹を確認すると、やはりそこには傷は見当たらない。
当然のことだけど、痛みも存在しない。
ただあるのは、突き刺されたときの痛みの名残。
そして、身体の中に入ってくるナイフの感触だけ。
その感覚は、まるで夢の中での出来事のように思える。
だけど僕は、それが現実世界を侵食してくるかのように、鮮明に覚えている。
何度確認しても、どちらのわき腹にもそんな痕なんてないのに……
でも、どうして僕は狙われているんだ?
冷静に考えると、狙われる理由なんてない。
一瞬チクリと胸の奥底に引っ掛かりの様な物を覚えた。
だけどそれが何かまでは全く分からなかった。
でも確かに、僕の知らない所で誰かが何かをしていることは間違いない……
って、もしかして僕には特別な力が……あるわけないか。
そもそも論、あったらあったで問題だって話だよね。
そんなことよりもだ……僕を襲った犯人は、間違いなく行動を変えてきた。
僕が対策したことによってだ……
つまり、どう対策しようとも必ず殺されるってことか?
でも、どうやって僕の行動の予測を?
正直監視でもされてない限り、そんなことは不可能なはず……
よし、とりあえず今日はいつもより早く家を出てみるか。
たまたまの可能性も否定できないから。
正直、冷静にこの状況を考えている自分が不思議でならない。
多分どこか現実味を感じていない証拠なのかもしれない。
行動指針が決まると、なぜか心が少し軽くなってきた気がする。
人間って現金なものだなって、なんか柄にもなくそう思えた。
だけど、カーテンの隙間から差し込む朝日が、いつもより淀んで見える。
普段と変わらない朝日な筈なんだけどな。
なぜか今の僕の心境を写し取っているよう思えた。
そしてそのカーテンを開けて、部屋を朝へと導く。
朝日が入り込んだ部屋は、少しだけど陰鬱とした雰囲気が緩んだ気がする。
僕はふと、何気なく窓の外に視線を落とした。
それは何かを感じたからじゃなく、本当に何の気なしだった。
何本も並ぶ電柱。
一車線道路ですれ違う自動車。
朝早く行き交う人々。
新聞配達員や学生、サラリーマン。
散歩する人、ランニングする人、様々な人の人生が垣間見えた瞬間だった。
これもいつもと変わらない日常。
誰もが皆同じ朝を迎えている。
ん?
一瞬だけ僕は違和感を覚えた。
本当にほんの一瞬。
視線の様な物……って言っても、誰か見ているとかは分からないけど……
なんだか監視されているんじゃないかと……
考え過ぎかな?
他に何かあるかなと見回してみた。
すると、家の外塀の上に、黒い猫が寝ころんでいた。
朝日を浴びて、大きなあくびをしながら、のんびりと朝を楽しんでいるみたいだ。
そこだけ人の世界とは違う、別な時間軸が存在しているように思えてしまう。
ただ、ふと猫と目を合わせた時に、その猫が僕に何か語り掛けているんじゃないかと思ってしまう。
まるで僕の心の中を見透かしているように、じっと僕を猫が見つめてくる。
とは言え、何か言葉を発するわけじゃないんだけどね。
「おはよう母さん」
「おはよう悠一。今日は早いのね」
いつもならもう少しだらだらしているところだけど、それをやめてみた。
犯人からすれば、時間がズレたら犯行予定が崩れるはずだから。
「言い忘れてたけど、今日ちょっと早めに出るよ。学校で少しやりたいことあってさ。」
「そうなの?それなら仕方がないわね。少し待ってちょうだい、急いで朝ごはん準備しちゃうから」
そう言うと母さんは急いで僕の分の朝食を準備してくれた。
本当だったら言ってなかったことに、お小言の一つもありそうなものだけね。
こうやって朝食の準備をしてくれるから、母さんには感謝しかないね。
「お、悠一。今日は早いじゃないか。」
「おはよう父さん。学校で用事があるから、少し早めに家を出るつもりなんだ。」
父さんは「そうか」というと、日課の新聞に目を通し始める。
ソファーに座り、新聞片手に目覚ましのコーヒーを啜る。
父さんはこれを若いころから続けているらしい。
しかも、次第にコーヒーにもこだわるようになったとか。
それからは、その日の気分で豆の配合を変えてるみたいだ。
まあ、コーヒーの飲めない僕からすれば、その違いが分からないんだけどね。
それからしばらくすると、ルリも寝ぼけ眼でリビングに降りてきた。
まあ案の定、すでに食事を始めている僕を見て、ルリは驚きを隠せないという様子だった。
「あ、そうだ母さん。輝が来たら先に行ったって伝えておいて。昨日に伝え忘れてたから」
「分かったわ。ちゃんと学校で輝君に謝るのよ?」
「分かった~、行ってきます!!」
——————
臨時ニュースです。昨夜○○県✕✕市の路上で、男性の遺体が発見されました。
状況から殺人とみて……
——————
出かけに聞こえてきたのは、殺人事件を伝えるニュース。
殺人犯は間違いなく存在する。
だけどそれが僕を殺した犯人とイコールだとは言いきれない。
結局僕を殺した奴は誰なんだ……
こうして僕はいつもよりも20分くらい早く家を出ることになった。
今日は20✕✕年8月5日の朝で……
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「くそ!!やられた!!」
僕はベッドから飛び起きると、苛立ちをぶつけるように目覚まし時計を乱暴に止める。
身体を起こし、右の脇腹を確認すると、やはりそこには傷は見当たらない。
当然のことだけど、痛みも存在しない。
ただあるのは、突き刺されたときの痛みの名残。
そして、身体の中に入ってくるナイフの感触だけ。
その感覚は、まるで夢の中での出来事のように思える。
だけど僕は、それが現実世界を侵食してくるかのように、鮮明に覚えている。
何度確認しても、どちらのわき腹にもそんな痕なんてないのに……
でも、どうして僕は狙われているんだ?
冷静に考えると、狙われる理由なんてない。
一瞬チクリと胸の奥底に引っ掛かりの様な物を覚えた。
だけどそれが何かまでは全く分からなかった。
でも確かに、僕の知らない所で誰かが何かをしていることは間違いない……
って、もしかして僕には特別な力が……あるわけないか。
そもそも論、あったらあったで問題だって話だよね。
そんなことよりもだ……僕を襲った犯人は、間違いなく行動を変えてきた。
僕が対策したことによってだ……
つまり、どう対策しようとも必ず殺されるってことか?
でも、どうやって僕の行動の予測を?
正直監視でもされてない限り、そんなことは不可能なはず……
よし、とりあえず今日はいつもより早く家を出てみるか。
たまたまの可能性も否定できないから。
正直、冷静にこの状況を考えている自分が不思議でならない。
多分どこか現実味を感じていない証拠なのかもしれない。
行動指針が決まると、なぜか心が少し軽くなってきた気がする。
人間って現金なものだなって、なんか柄にもなくそう思えた。
だけど、カーテンの隙間から差し込む朝日が、いつもより淀んで見える。
普段と変わらない朝日な筈なんだけどな。
なぜか今の僕の心境を写し取っているよう思えた。
そしてそのカーテンを開けて、部屋を朝へと導く。
朝日が入り込んだ部屋は、少しだけど陰鬱とした雰囲気が緩んだ気がする。
僕はふと、何気なく窓の外に視線を落とした。
それは何かを感じたからじゃなく、本当に何の気なしだった。
何本も並ぶ電柱。
一車線道路ですれ違う自動車。
朝早く行き交う人々。
新聞配達員や学生、サラリーマン。
散歩する人、ランニングする人、様々な人の人生が垣間見えた瞬間だった。
これもいつもと変わらない日常。
誰もが皆同じ朝を迎えている。
ん?
一瞬だけ僕は違和感を覚えた。
本当にほんの一瞬。
視線の様な物……って言っても、誰か見ているとかは分からないけど……
なんだか監視されているんじゃないかと……
考え過ぎかな?
他に何かあるかなと見回してみた。
すると、家の外塀の上に、黒い猫が寝ころんでいた。
朝日を浴びて、大きなあくびをしながら、のんびりと朝を楽しんでいるみたいだ。
そこだけ人の世界とは違う、別な時間軸が存在しているように思えてしまう。
ただ、ふと猫と目を合わせた時に、その猫が僕に何か語り掛けているんじゃないかと思ってしまう。
まるで僕の心の中を見透かしているように、じっと僕を猫が見つめてくる。
とは言え、何か言葉を発するわけじゃないんだけどね。
「おはよう母さん」
「おはよう悠一。今日は早いのね」
いつもならもう少しだらだらしているところだけど、それをやめてみた。
犯人からすれば、時間がズレたら犯行予定が崩れるはずだから。
「言い忘れてたけど、今日ちょっと早めに出るよ。学校で少しやりたいことあってさ。」
「そうなの?それなら仕方がないわね。少し待ってちょうだい、急いで朝ごはん準備しちゃうから」
そう言うと母さんは急いで僕の分の朝食を準備してくれた。
本当だったら言ってなかったことに、お小言の一つもありそうなものだけね。
こうやって朝食の準備をしてくれるから、母さんには感謝しかないね。
「お、悠一。今日は早いじゃないか。」
「おはよう父さん。学校で用事があるから、少し早めに家を出るつもりなんだ。」
父さんは「そうか」というと、日課の新聞に目を通し始める。
ソファーに座り、新聞片手に目覚ましのコーヒーを啜る。
父さんはこれを若いころから続けているらしい。
しかも、次第にコーヒーにもこだわるようになったとか。
それからは、その日の気分で豆の配合を変えてるみたいだ。
まあ、コーヒーの飲めない僕からすれば、その違いが分からないんだけどね。
それからしばらくすると、ルリも寝ぼけ眼でリビングに降りてきた。
まあ案の定、すでに食事を始めている僕を見て、ルリは驚きを隠せないという様子だった。
「あ、そうだ母さん。輝が来たら先に行ったって伝えておいて。昨日に伝え忘れてたから」
「分かったわ。ちゃんと学校で輝君に謝るのよ?」
「分かった~、行ってきます!!」
——————
臨時ニュースです。昨夜○○県✕✕市の路上で、男性の遺体が発見されました。
状況から殺人とみて……
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出かけに聞こえてきたのは、殺人事件を伝えるニュース。
殺人犯は間違いなく存在する。
だけどそれが僕を殺した犯人とイコールだとは言いきれない。
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こうして僕はいつもよりも20分くらい早く家を出ることになった。
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