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四回目
第8話
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この時間はまだ通学する生徒も少ない。
どちらかというと、散歩をするご近所さんの方が多いくらいだ。
顔見知りのご近所さんに挨拶をしていると、いつもなら犬を連れて散歩をしているおじさんに会った。
でもそのおじさんは、家の前で何か塞ぎ込んでいる感じだ。
「おじさんおはよう。ハナはどうしての?」
「あぁ、悠一君か……おはようさん。それがな、ハナが脱走しちまってな……昨日から姿が見えないんだ」
え、あのおとなしいハナが?
僕も何度もあってるけど、ハナが脱走するなんて想像もつかない。
むしろ、怖がりなハナが脱走するだろうか。
って、あれ?おかしい……
前回の時は、通学中にハナを散歩させてるおじさんに挨拶している……
もしかして、僕が家を早く出たことで変化が起こった?
いやまさか……でも、そうと考えなきゃこれの説明ができない。
とりあえず僕は、ハナを見つけたら保護するとおじさんに話をしてその場を後にする。
もしかすると、わずかながら変化が起こってるのかもしれない……
愛理といつも合流する心臓破りの急こう配に到着した。
もちろん、そこには愛理の姿はない。
愛理にも僕が早く家を出てるって伝えてなかったから。
あ、輝と愛理にはメールすれば済んだのか。
まあ、今更だけどね。
学校に向かって歩いていると、少しづつ生徒の数が増えだした。
誰も彼も疲れ切った顔で、この急な坂を一生懸命登っていく。
遠くからの通学なのか、必死に自転車をこいで登っていく同級生。
励ましの声をかけると、「おう!!」って目いっぱいのハッタリで声を出していた。
どう見ても限界ギリギリなのにな。
僕も彼らに負けじと、この坂を上っていく。
もうすぐ……あの場所だ。
ドクン
心臓の鼓動がまるで耳元で鳴っているかのように大きく響く。
ついに見えてきた……僕が殺された場所。
その場所がもう目の前に迫っている。
そこは校門からも見える少し大きめな交差点で、いろいろな人が行きかう場所でもある。
押しボタン式の信号機のついた交差点で、通勤の車も多く通っている。
よく目を凝らしても、今は不審者の影は見えない。
ドクン
もう目の前だ……
心臓の音が拡声器でも当てたかのように、一際大きくなって聞こえてくる。
周りを見ても生徒だらけで、不審者は見当たらない。
さすがにこんな状態で紛れていれば、鈍感な僕でも気が付くはず。
ドクン
あと少し……
あと少しで……
心臓の音がより激しく……より大きく鼓動を刻む。
僕の心臓は限界を超え、もうやめてくれと言わんばかりに悲鳴をあげている。
ドクン
もう少し……
あと少しだ……
僕の警戒度は今まで生きていた中で、最高潮に達していた。
冷たい汗が背中を伝っていくのが分かる。
息も荒くなり、呼吸をするたびに喉が渇いていく。
ドクン
そして僕はその場所を通り過ぎた。
やった!!
ついにやった!!
僕は殺されなかった!!
周辺を隈なく見回しても、誰も襲ってくる気配はなかった。
良かった……
僕は一安心して、坂を上っていく。
肩の力が抜けたのか、さっきまで感じる事のなかった疲労感が、一気に押し寄せてきた。
校門では生徒指導の先生が、朝の挨拶運動を行っていた。
毎度誰かは「校則違反だ!!神妙に縛に付け!!」って言って捕まってたりするけど、今日は居ないらしい。
あの進路指導の先生……絶対に時代劇ファンだよね。
学校の敷地まで入ってしまえば、不審者に襲われることはないはず。
不審者が来たら先生たちが止めてくれるだろうしね。
僕は靴箱から上履きを取り出すと靴を履き替えた。
ぶつん
「え?まじか……こんなことって本当にあるんだな」
一瞬躓きかけて足元を見てみると、右足の上履きの靴紐が切れていた。
何だろうな、なんか嫌な予感がする。
妙な胸騒ぎが、僕の中で燻っていく。
購買は……まだやってないか。
仕方がないな、一時間目まではこのまま我慢しよう。
チリン……
え?なんで?
なんでこの音が聞こえるんだ⁈
ここは学校内だぞ……なのになんで!!
廊下を教室に向かって歩いていると、聞き覚えのある鈴の音が耳に届く。
その音に僕は、半ばパニックに陥る。
周りを見ても生徒ばかり。
不審者なんて居ない……いないはずなんだ。
どっから聞こえたんだ⁈
チリン……
まただ……
また聞こえた……
なんでなんだよ!!
なんでここまで追っかけてくるんだよ!!
僕は慌てるように教室へ向かう。
教室なら同級生たちがいるはず。
そんな中で犯行を起こす奴は居ないはず!!
チリン……
逃げなきゃ!!
逃げなきゃ!!
逃げなきゃ!!
僕は無我夢中で廊下を走る。
でも、靴紐が切れているせいか、足元がもつれて走りにくい。
それでも僕はこの恐怖から逃れるために、全力で走る。
もう少し、もう少しで教室……
ドン!!
そう思った時だった。
背後から突然、強い衝撃が僕を襲ってきた。
僕はそのまま、廊下の壁へと押し付けられた。
その後に背中にやってきた、燃えるような熱さ。
それから少し遅れて、激しい痛みが押し寄せる。
くそ!!息ができない……
押さえつけられた痛みと、ナイフが刺さる痛みが、僕の思考の邪魔をする。
なんでなんでなんで何でなんで何でなんで!!
なんでなんだよ!!
なんでこんなところで……
「ぐふっ……ぢくじょう……なんでだよ……」
口から溢れ出る鉄臭い味と、むせかえる様な血の匂い。
少しでも外に吐き出そうとするも、それすら叶わない程溢れ出てくる。
「きゃぁ~~~~!!」
「おいマジかよ!?」
力が入らない……
犯人から投げ捨てられるように解放された僕は、ふらつきながら膝から崩れるようにして廊下へ倒れ込む。
薄れゆく意識の中で、くぐもった音のように同級生たちの声が聞こえてくる。
すると今度は背中に圧し掛かる重さを感じる。
そしてその後に襲ってきたのは……
更なる痛みの連続。
なんどもなんどもなんどもなんども……
何度も僕は背中を刺された。
そのたびに襲ってくる痛み。
いたいいいたいいいたいいいいたいいいちいあいいちあいいいあああちいあああああああ!!!!
そして僕が覚えていたのはここまでだった。
どちらかというと、散歩をするご近所さんの方が多いくらいだ。
顔見知りのご近所さんに挨拶をしていると、いつもなら犬を連れて散歩をしているおじさんに会った。
でもそのおじさんは、家の前で何か塞ぎ込んでいる感じだ。
「おじさんおはよう。ハナはどうしての?」
「あぁ、悠一君か……おはようさん。それがな、ハナが脱走しちまってな……昨日から姿が見えないんだ」
え、あのおとなしいハナが?
僕も何度もあってるけど、ハナが脱走するなんて想像もつかない。
むしろ、怖がりなハナが脱走するだろうか。
って、あれ?おかしい……
前回の時は、通学中にハナを散歩させてるおじさんに挨拶している……
もしかして、僕が家を早く出たことで変化が起こった?
いやまさか……でも、そうと考えなきゃこれの説明ができない。
とりあえず僕は、ハナを見つけたら保護するとおじさんに話をしてその場を後にする。
もしかすると、わずかながら変化が起こってるのかもしれない……
愛理といつも合流する心臓破りの急こう配に到着した。
もちろん、そこには愛理の姿はない。
愛理にも僕が早く家を出てるって伝えてなかったから。
あ、輝と愛理にはメールすれば済んだのか。
まあ、今更だけどね。
学校に向かって歩いていると、少しづつ生徒の数が増えだした。
誰も彼も疲れ切った顔で、この急な坂を一生懸命登っていく。
遠くからの通学なのか、必死に自転車をこいで登っていく同級生。
励ましの声をかけると、「おう!!」って目いっぱいのハッタリで声を出していた。
どう見ても限界ギリギリなのにな。
僕も彼らに負けじと、この坂を上っていく。
もうすぐ……あの場所だ。
ドクン
心臓の鼓動がまるで耳元で鳴っているかのように大きく響く。
ついに見えてきた……僕が殺された場所。
その場所がもう目の前に迫っている。
そこは校門からも見える少し大きめな交差点で、いろいろな人が行きかう場所でもある。
押しボタン式の信号機のついた交差点で、通勤の車も多く通っている。
よく目を凝らしても、今は不審者の影は見えない。
ドクン
もう目の前だ……
心臓の音が拡声器でも当てたかのように、一際大きくなって聞こえてくる。
周りを見ても生徒だらけで、不審者は見当たらない。
さすがにこんな状態で紛れていれば、鈍感な僕でも気が付くはず。
ドクン
あと少し……
あと少しで……
心臓の音がより激しく……より大きく鼓動を刻む。
僕の心臓は限界を超え、もうやめてくれと言わんばかりに悲鳴をあげている。
ドクン
もう少し……
あと少しだ……
僕の警戒度は今まで生きていた中で、最高潮に達していた。
冷たい汗が背中を伝っていくのが分かる。
息も荒くなり、呼吸をするたびに喉が渇いていく。
ドクン
そして僕はその場所を通り過ぎた。
やった!!
ついにやった!!
僕は殺されなかった!!
周辺を隈なく見回しても、誰も襲ってくる気配はなかった。
良かった……
僕は一安心して、坂を上っていく。
肩の力が抜けたのか、さっきまで感じる事のなかった疲労感が、一気に押し寄せてきた。
校門では生徒指導の先生が、朝の挨拶運動を行っていた。
毎度誰かは「校則違反だ!!神妙に縛に付け!!」って言って捕まってたりするけど、今日は居ないらしい。
あの進路指導の先生……絶対に時代劇ファンだよね。
学校の敷地まで入ってしまえば、不審者に襲われることはないはず。
不審者が来たら先生たちが止めてくれるだろうしね。
僕は靴箱から上履きを取り出すと靴を履き替えた。
ぶつん
「え?まじか……こんなことって本当にあるんだな」
一瞬躓きかけて足元を見てみると、右足の上履きの靴紐が切れていた。
何だろうな、なんか嫌な予感がする。
妙な胸騒ぎが、僕の中で燻っていく。
購買は……まだやってないか。
仕方がないな、一時間目まではこのまま我慢しよう。
チリン……
え?なんで?
なんでこの音が聞こえるんだ⁈
ここは学校内だぞ……なのになんで!!
廊下を教室に向かって歩いていると、聞き覚えのある鈴の音が耳に届く。
その音に僕は、半ばパニックに陥る。
周りを見ても生徒ばかり。
不審者なんて居ない……いないはずなんだ。
どっから聞こえたんだ⁈
チリン……
まただ……
また聞こえた……
なんでなんだよ!!
なんでここまで追っかけてくるんだよ!!
僕は慌てるように教室へ向かう。
教室なら同級生たちがいるはず。
そんな中で犯行を起こす奴は居ないはず!!
チリン……
逃げなきゃ!!
逃げなきゃ!!
逃げなきゃ!!
僕は無我夢中で廊下を走る。
でも、靴紐が切れているせいか、足元がもつれて走りにくい。
それでも僕はこの恐怖から逃れるために、全力で走る。
もう少し、もう少しで教室……
ドン!!
そう思った時だった。
背後から突然、強い衝撃が僕を襲ってきた。
僕はそのまま、廊下の壁へと押し付けられた。
その後に背中にやってきた、燃えるような熱さ。
それから少し遅れて、激しい痛みが押し寄せる。
くそ!!息ができない……
押さえつけられた痛みと、ナイフが刺さる痛みが、僕の思考の邪魔をする。
なんでなんでなんで何でなんで何でなんで!!
なんでなんだよ!!
なんでこんなところで……
「ぐふっ……ぢくじょう……なんでだよ……」
口から溢れ出る鉄臭い味と、むせかえる様な血の匂い。
少しでも外に吐き出そうとするも、それすら叶わない程溢れ出てくる。
「きゃぁ~~~~!!」
「おいマジかよ!?」
力が入らない……
犯人から投げ捨てられるように解放された僕は、ふらつきながら膝から崩れるようにして廊下へ倒れ込む。
薄れゆく意識の中で、くぐもった音のように同級生たちの声が聞こえてくる。
すると今度は背中に圧し掛かる重さを感じる。
そしてその後に襲ってきたのは……
更なる痛みの連続。
なんどもなんどもなんどもなんども……
何度も僕は背中を刺された。
そのたびに襲ってくる痛み。
いたいいいたいいいたいいいいたいいいちいあいいちあいいいあああちいあああああああ!!!!
そして僕が覚えていたのはここまでだった。
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