絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

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五回目

第11話

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 それからしばらく部屋で待機して、一時間目が終わる時間に学校に到着するくらいを目安に家を出ることにした。
 出かけ際に母さんがやはり心配だと言っていたけど、大丈夫だからと無理やり家を出る。

 家の敷地を出て周囲を確認するも、特に怪しい人影は見当たらない。
 僕は周囲を気にしながらコソコソと移動を開始する。
 これ、知らない人が見たら僕の方が怪しい人に見えるんじゃないか……
 そう考えると、なんだかおかしくなってきて笑いが込み上げてくる。
 ただそれとは反対に、なぜか次第に心臓の鼓動が早くなっている。
 笑えて面白いはずなのに、妙な緊張感が僕に襲い掛かる。
 それに合わせるかのように、背中に冷たい汗が流れてる。
 ふわりと頬をかすめた風が、街に聞こえるサイレンの音を僕に届ける。
 この近くに凶悪犯が潜んでいるかと思うと、それはそれで恐怖感があるな……


チリン

 クソ!!またあの鈴の音だ!!
 家から少し歩いたところで、忌々しいあの鈴の音がまた聞こえてきた。
 何処からだ?
 僕は必死になって周囲を見回す。
 だけどそれらしき人影が見当たらない。
 何処だ……
 どこから……
 僕の心臓の鼓動は一気に加速していく。
 鞄を持つ手に汗がにじみ、今にも落としそうになる。
 そのかばんを両手で抱え、周囲を警戒する。
 しかし、周囲には誰もおらず、僕はほっと胸をなでおろす。

「なんだ……気のせい……」

バチバチバチ!!

 そこで僕の意識は途切れてしまった。
 視界が急速に暗転し、頭が重くなり、全身が鉛のように感じる。

チリン
  
 最後に聞いた音は、あの鈴の音だった。
 ちくしょう……
 またかよ……


チリン
チリン

「う……く……いってぇ~」

 首にある痛みで、僕は目を覚ました。
 と思うんだけど、真っ暗で回りが確認できない。
 その痛みに顔を顰めたくなってしまう。
 というか、椅子か何かに座らされているのか?
 身体が上手く動かない。
 意識がまだ朦朧とする中、この空間の重苦しい空気に、何か嫌なものを感じる……
 うっすらと残る血の匂いに、恐怖心がむくりと顔をのぞかせた。

 僕は逃げ出そうと手足を動かしてみたけど、ガッチリと何かに固定されているようで、身動きが取れない。
 暴れるたびに手足に食い込む縄の痛みが、これが現実だと僕に告げている。

「おい!!なんだよこれ!!」

チリン

「おい!!応えろよ!!」

チリン

 確かに誰かがそこにいる。
 だけどそいつは何も答える気はないようだった。
 僕はそれでも必死に抵抗しようと、手足を必死で動かす。
 だけど、拘束は取れることはなかった。
 暗闇の中で藻掻けば藻掻くほど、心臓の鼓動が爆発的に早くなる。
 それがされに恐怖心を煽ってくる。

カツン……コツン……
 
 拘束を解こうと暴れていると、足音が僕に近づいてくる。
 恐らく犯人の足音。
 足音が近づくたびに、僕の心臓が悲鳴を上げていく。

「おい!!そこに誰かいるんだろ!!これを解いてくれ!!」

 僕の言葉を聞き入れたのか、目隠しが急に外される。
 いきなり目に入ってきた光が、やたらと眩しく感じる。
 急激な光の変化に目がついていけなかったのか、しばらくの間目がぼやけ、頭がくらくらしていた。

 やっと目が慣れてきたのか、周囲の状況が分かってきた。
 眩しさの原因はスポットライトの様な照明が、僕に向けて当てられていたせいだ。
 そしてここはおそらくどこかの部屋。
 しかもコンクリート造りのそこそこ広い空間だ。
 窓は一切なく、外の明かりは入ってくることはない。
 部屋は換気が行き届いていないのか、微かなカビの匂いが漂い、湿気が身体にまとわりつく。
 それが僕に不快感を覚えさせた。

 そして僕の前に立つ人物……
 黒いパーカーに白い仮面。
 体格が分からないようにするためか、全部がぶかぶかだ。
 だからその犯人が男か女かも全く分からない。
 ただ言えることは、不気味悪さがにじみ出ているってことくらいだ。
 仮面の下から見え隠れする犯人の目は、どこか冷酷さを感じさせる。

 僕は抵抗を諦めず、ガタガタと椅子ごと身体を動かすが、全く動く気配が無い。
 それどころか、そのたびに縛った縄が、僕の身体を傷つけていく。
 すでに皮膚は引き裂かれ、血が滲んでいた。

 犯人は僕を見下ろすのに満足したのか、一瞬だけ仮面の隙間から見えた表情は、醜く口元が歪んだ笑みを湛えていた。
 今度は離れた場所から小さめのテーブルを引きずってきた。
 ズルズルとテーブルを引きずる音が部屋に木霊し、不気味さと恐怖心を更に掻き立ててくる。
 そしてそれを僕の前に置くと、今度はノートパソコンをその上に準備する。
 いったい何をする気だ?
 スポットライトだけが唯一の光源のこの部屋で、起動したノートパソコンの画面の明かりが、異様に感じてしまった。
 
 そして犯人がパソコンを操作すると、そこに映し出されていたのは妹のルリの姿だった。
 画角から、ハンディーカメラとかスマホとかそんな感じのものに見える。
 音声こそ入っていなかったが、何か嬉しそうにしているのは見て取れた。
 きっと誰かと話しているのかもしれない。
 なんていうか、恋する乙女?みたいな表情を浮かべていたから。
 ルリの笑顔は普段僕に向ける笑顔とは違い、ルリの違う一面が垣間見られた。

 それからしばらく、エリと撮影者の談笑が続く。
 だけど次の瞬間……僕の心臓が凍り付く……
 
「ルリ!!」

 画面の中で幸せいっぱいのルリの顔が、急に恐怖と不安を感じたように怯えていた。
 画面越しのルリの目は、誰かに助けを求めているように見えた。
 僕の体中に冷たい汗が流れ、手足の震えが止まらない……

 ルリの口元を見ていると微かに〝たすけて〟と言っているように思えた。
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