絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

文字の大きさ
12 / 51
五回目

第12話

しおりを挟む
 すると突然ルリが、コンクリートの地面に押し倒された。

「おいルリ!!お前、ルリに何した!!」
 
 それに驚いた僕は、慌てて声を張り上げてしまう。
 犯人に怒りの視線を向けると、やれやれと言わんばかりに肩をすくめている。
 僕の中に何か黒い殺意の様な物が芽生え始めていた。
 
 その後から映し出された映像は、見るに堪えないものだった。
 恐怖に駆られて逃げ回るルリを、その人物がカメラ片手に執拗に追い詰める。
 そして追いつくとまたルリを地面に押し倒す。
 それでも逃げるルリを、今度は蹴り飛ばしコンクリートの壁に打ち付ける。
 必死に恐怖と戦いながら逃げようとするルリ。
 それを嘲笑うかのように無理やり押さえつけながら、ルリの服を乱暴に引きちぎっていく。
 
「やめろ!!やめてくれ!!」

 僕の悲痛な叫びは届くはずもなく、行為はエスカレートしていく。
 ルリはボロボロになりながらも、何とか犯人の拘束をかいくぐって逃げる。
 だけどそのたびに捕まり、陰湿な暴行を受け、その行為自体エスカレートしていく。
 ルリを弄ぶかのように、これ見ようがしに手にしたナイフを、恐怖に歪んだルリの顔に押し付ける犯人。
 震え怯えるルリを、僕は直視できなくなってくる。
 そのたびに犯人は僕の顔を無理やり抑えつけて、直視する事を強要する。
 
 そしてルリの身体には逃げるたびに、一つ……また一つと、いくつのも切り傷が刻まれていく。
 浅く付けられた傷の一つ一つから、鮮血が滲んでいる。
 その痛みにルリの表情は、さらに恐怖の度合いを深めていった。
 犯人はあえて浅い傷をいくつもつけていくようだった。
 ルリが逃げ出せてるのだって、あえてその隙を作っているようにしか見えない。
 逃げられるという希望と、捕まるという絶望。
 それぞれがリルを恐怖に染め上げていっているのは、見るからに明らかだった。

「やめろ……もう、やめてくれ……頼む……」

 全身が露わになったルリの肌が納められたカメラの映像。
 手足はすでに拘束され、逃げ出すことも叶わない。
 手持ち撮影のせいで、前後に映像がぶれていく。
 こんなの、何をしているかなんて考えなくてもわかる……
 苦痛と恐怖に歪むルリの顔が、目に焼き付いて離れない……
 ちくしょう……
 なんでルリがこんな目に……
 なんで……

 そして映像の中に収められていたのは、絶望に染まるルリの瞳だった……
 瞳から流れる涙が、徐々に乾き、感情を失っていった。
 唇からは血が流れ、ルリが必死で感情を殺しているのが伝わってくる。
 それすらも楽しんでいるかのように、犯人の行為は続いていった。

 そして映像が進むうちに、僕はあることに気が付いた。
 ルリがいる部屋って……まさか……ここなのか⁈
 僕が今縛られている椅子が、カメラに収められている。
 そこにはまだ誰も座っていな……
 まさか……
 まさか……
 まさか……
 僕の脳裏に嫌な予感がよぎる。

 そして映像の最後……ルリは物言わぬ身体となっていた。
 全身にあざや切り傷。
 机からルリの四肢が力なくだらりと垂れさがる。
 僕が手入れしていた綺麗な髪は、見るも無残に切り刻まれていた。
 犯人はルリの遺体すらも弄ぶかのように、カメラに収め、ナイフでその肌を傷つけ続けた。

「ルリ……あぁ、ルリ……ルリ、ごめんなぁ……僕のせいで……ごめん……」

 僕から漏れる声は、ルリには届かないだろう……
 僕の懺悔の言葉が、静かなコンクリートの部屋に木霊する。

 精神的に折れかけた僕に満足したのか、犯人は部屋の奥にあるテーブルにかけてあったブルーシートをばさりと外す。

「ルリ!!」
 
 そこに横たわっていたのは、見るも無残なルリの姿だった。
 腹部は深く切り裂かれ、四肢にも深い傷がつけられていた。
 どうしてそこまで遺体を冒涜できるんだ!!

「外せ!!今すぐこれをはずせ!!ルリ!!ルリ!!返事してくれ!!」
「クソ野郎!!絶対ぶっ殺してやる!!」

 そして犯人は、鼻歌でも歌ってるかのように、ウキウキとしながら床に置いてあったポリタンクを持って、僕のもとまでやってくる。
 まさか……やめろ!!

 犯人は躊躇する事もなく、その中の液体を僕に向けたかけ始める。
 どう考えても灯油だ。
 僕にかけ終えると、今度は残りをルリにかけ、そのまま残りを出口に向けて流していく。

「おい、待て!!やめろ!!」

 僕の願いは叶うことなく、犯人はオイルライターを灯し、そのまま床にポトリと落とす。
 一気に広がる火の海。

 絶対許さない……
 こうして僕は犯人によって焼き殺された……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...