絶望の鈴音(りんね)~夢幻の牢獄と僕と……~

華音 楓

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六回目

第13話

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——————
今日は20✕✕年8月5日の朝です!!朝です!!起きるのです!!
——————

「ルリ!!」

 僕が目を覚ますと、いつもの光景だった。
 いつもと変わらない、僕の部屋。
 輝から貰った目覚まし時計が、同じ世界をまた繰り返えしていることを教えてくれる。
 そうだルリ!!

 僕は慌ててベッドから飛び起きると、すぐにルリの部屋の扉を開ける。
 そこには起きたばっかりのルリの姿が。
 僕はそのままルリを抱きしめた。

「良かった……ルリ……無事だった……本当によかった……」

バチン!! 
 
「ちょ、お兄ちゃん!!何すんのよ!!」

 僕の左頬にルリのビンタが炸裂する。
 でもこの痛みが、ここが現実だと僕に教えてくれる。
 本当によかった……
 良かったルリ……
 無事で……

「変態スケベ!!そんなんだから輝さんみたいにモテないんだからね!!」

 ものすごく怒っているルリからの、厳しい一言……
 そうだよ、輝みたいに僕はモテないよ……
 想像以上に心のダメージが大きかった。
 人生で初めてだよ、うなだれて地面に突っ伏したのは。
 それでもルリの無事を確認できただけでも良かった。

 あの犯人は絶対に許さない。
 僕の脳裏に刻まれているルリのあられもない姿が、今でも鮮明に思い出される。
 それに伴って沸き起こる憎悪と殺意。
 それを僕は止めるすべを知らない。

「ちょとお兄ちゃん?どうしちゃったの?ご、ごめん……そんなに痛かったの?」

 ルリは勘違いしてしまったのか、半泣きで謝ってきた。
 しまった、誤解させてしまったらしいな。

「ごめん、違うんだ。ルリのせいじゃないから。それと僕こそごめんな?」
「いいの、ちょっとびっくりしただけだから」

 ちょっとびっくりしただけであのビンタが飛んでくるんだから、今度からは気を付けよう。
 むしろ正拳突きが飛んでこなかっただけましだと思おう。
 僕たちは顔を見合わせると、自然と笑みがこぼれてきた。
 あぁ、生きててくれてありがとう……ルリ……僕の大切なルリ。

 部屋に戻った僕は、慌ててベッドから降りたせいか、ぐしゃぐしゃになった布団類に辟易してしまった。
 とりあえず気分転換にとカーテンと窓を開け、空気の入れ替えを行った。
 生温い風が部屋に入り込み、うっすらと汗がにじんできた気がした。
 窓の外に見える景色は、いつも通りだった。

 それから僕らは一階に行きいつものように朝食をとる。
 ここでの一コマが、僕の大事な家族との時間だと実感できる。
 それだけでもありがたいな……
 
——————
臨時ニュースです。昨夜○○県✕✕市の路上で、男性の遺体が発見されました。
状況から殺人とみて警察が捜査を開始した模様です。
詳細については……
——————

 そして流れるいつものニュース。
 僕がどれほど気を付けて対応しても、いつも殺されてしまう。
 本当にこの犯人と一緒なのか……
 一緒と考えていいのか……
 判断材料が少なすぎて判断に迷ってしまう。

 ただ言えることは、犯人は学校に侵入する事が容易で、ルリが全く警戒しない人物だって言う事だ。
 その姿を思い浮かべると、僕の背中に嫌な汗が流れる。
 そんな人物は一部の人間しかいないはずだから……
 ルリのクラスメイト?まさか……ね。
 とは言えルリのクラスメイトに、僕が狙われる理由が分からない。
 だとしたら違うのか?
 やっぱり物証不足で、どれも推測の域を出ることはなかった。

「本当に怖い事件よね。そう言えば最近近所で猫の死体とか動物の死体が目に付くって町内会でも話題に上がってたわね。」
「え?そうなの?ちょっと怖いね」

 食事が終わるころに流れたいつものニュースを見て、母さんが思い出したみたいだ。
 町内会でも少し前から話題に上がっていたみたいだけど、様子見でってことで終わっていたらしい。
 まあ犯人を見つけたらからと言って、町内会で同行できるわけじゃないんだけどね。
 それもあってか、この事件の犯人がその事件と関連性が有るのでは?って思考に傾いているのかもしれないな。

「それにね、昨日も犬の死体が河原に放置されてたそうよ。首輪もないし野良だろうって。同じ犯人だったら怖いわよね」
「そうは言っても、すべてが同じ犯人と決まったわけではないんだろ?まずは身の安全を考えていかないとな。幸いにもこうして警察が動いてくれているんだから、数週間の我慢だろうね。」

 父さんは僕たちを安心させるためか、いつもよりも少し砕けたような話し方をしていた。
 少しだけおどけたように肩をすくめて見せる父さん。
 何だかんだで一家の大黒柱なんだな。


「よし、無駄に考えても意味ないし、たまたまあの時間で刺されたんだったら、本当にたまたまだったのかもしれない。今回同じ場所で殺されるなら、犯人の行動に裏があるはず……ってなんか僕、死ぬのに慣れてきてる?」

 そう思うと、途端に自分の命が軽く感じてしまった。
 死んでも生き返る……は違うか。
 死に戻るって考えると、僕の命は大分安いのかもしれない。
 
 僕はいつも通りの時間で準備を始める。
 ルリがスマホ片手に身支度をしているけど、髪の毛は安定のぼさぼさ……
 仕方がないなと思いながら、つい手を貸してしまうのが兄としての性なのかな?
 結局いつもの日常がここにある。


ピンポーン

 いつも通りの時間に輝の到着を知らせるチャイムが鳴る。

「いってきまーす」
「あ、お兄ちゃん待ってよ!!行ってきます!!」

 慌てるようにルリも玄関を出ようとして、玄関ドアの枠に躓く。
 あわや転倒って時に颯爽と駆け付けるイケメン輝。
 さすがとしか言いようがないよね。
 実は主人公特性がついてるんじゃないの?って思いたくなるような、GoodTimingだった。

「あ、ありがとう輝君……その、お、重かったでしょ?」
「そんなことはないよ。それよりルリちゃん、ケガはない?」

 これがイケメンのなせる業か⁈って冗談を言いたくなるほどだ。
 ルリも顔を赤らめて……ほう……なるほどなるほど……
 お兄ちゃんは応援するぞルリ!!
 あ、でも輝……セクハラだけは気を付けた方がいい。
 下手すれば正拳突きが飛んでくるかもしれないから。

「どうした悠一?」
「ん?あ、あぁ、なんでもないさ。ほらルリ、足元には気を付けないとな。」

 ルリは「分かってる!!」って少し焦り気味に答えてきた。
 よほど気恥ずかしかったみたいだな。
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