元落ちこぼれ魔法少女、異世界で本領発揮します

もわゆぬ

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 息が切れる。

 喉が焼けるようだ。

 もう血の味だか、なんだか分からなくなっている。
グイッと額の汗と流れる血を乱暴に擦った。左目に入って霞んで良く見えない。

 次の瞬間、バチバチと光が舞った。
それは、何人もの魔法少女が一体の巨大な怪人相手に立ち向かう姿だ。
 様々な魔法、体術を持って敵を攻撃する。


「ちょっと!あなた、【落ちこぼれ】じゃない!何してんの!?邪魔だから下がってて!!」


 一人の魔法少女が叫ぶ。
それは18歳にもなって、まだ魔法少女を続ける私に向けての言葉だ。

 怪人はピンピンしているのに、私だけ服が何ヶ所か裂け、血塗れなのだから驚きもするだろう。


 私が血を流してボロボロになっているのには理由が有る。
 私は【拘束魔法】しか使えないのだ。しかも無いよりはマシ、だが強い相手には足止めにもならない程度の拙い魔法。
 
 事実というのも有り、言葉に敏感になるような歳でもないので、なんとか拘束魔法と物理攻撃で時間を稼げた事に安堵する方が大きかった。
 精一杯逃がした市民の誰かが通報してくれたのだろう。何人かが応援に来てくれて、こうして怪人に攻撃が通り出す。

 ズルりと、長い手を持つ怪人の攻撃で痛めた脚が重くなった。
まだ油断してはいけないのに緊張の糸が殆ど切れてしまったのだろう、先程まで痛みを感じていなかった身体は正直だ。
 魔法少女が強くなっている昨今、怪人も力をつけ強くなっている。その為他の魔法少女にとっては勝負出来る相手でも、私には強敵となってしまう。

そろそろ悪足掻きを辞めて引退しなきゃいけないな。
 ずっと辛かった筈なのにどうして最後の歳まで続けてしまったのだろうか。


せめて邪魔にならない所に行かなければ。

 私は【落ちこぼれ】なのだから。


 木の横まで辿り着くと、呼吸を整える為にそこに座り込んだ。


『ケッケッケッ!!そんなもんか、魔法少女共めが!!』


 雑魚敵であった私から、強敵である魔法少女が複数人来てしまった事に焦ったのか、怪人は強がりを言いながら彼女たちから数メートル距離を取る。


 すると怪人はカッと目を開くと、瞬時に両の手に禍々しい色の何かを集めた。



 ーーーいけない!


 私は無意識に走り出していた。

 他の魔法少女は何が起こるのか分からず臨戦態勢を取っているが、反応が刹那遅れてしまった。


 
 狙われたのは先程叫んでいた少女だ。


 足が速くて良かった。
大した魔法が使えなくても盾になる事が出来るのだから。

 ドンッとその子の事を押して、彼女の位置に成り代わると禍々しい闇が私に向かって襲ってきた。





 そこで私の意識は途切れてしまった。




ーーーーーーーーーーーーーーー



『ーーーあ、やめっ!菖蒲!!バカ、早く起きてよ!!』


 誰か泣いてる。あぁ、大好きなあの子だ。

「……イ、リス?」

 今はコスチューム化しているイリスの声が脳内に響く。

『起きた!相変わらず世話がかかる子ね!コスチューム化しながら喋るの大変なのよ!?』

 プンプンといつもの様に怒っている声で生きているんだ、と思った。グスグスと聞こえるのも空耳では無いのだろう。

 でも、何か違和感が有った。
 皆は無事だったんだろうか?喧騒とした空気は無く、不気味なくらい静かだ。

「ここは…何処かしら?転移系の魔法だったようね。」

『そうみたいね、私にもさっぱりよ。』

 帰られる距離だといいが。昔、飛行機で行くような距離に転移魔法で飛ばされた事が有るので溜息をついた。
 自分の溜息に、命が有るだけ喜ばないといけないなと苦笑いをしてしまう。
 まだ視界はぼんやりとしているが、木にもたれかかるような体勢でいる事が分かり、立ち上がろうと力を込めた。


「痛ッ…。」

  敵の打撃がぶつかり、痛めた脚が悲鳴を上げている。
無理したら立ち上がれるだろうが、そんな事をするべきでは無い。と、理性が言っている。

「とりあえず魔法少女救急センターに電話かな。」

『そうね。負担になり過ぎる前に変身解かなきゃ。』

 イリスの言う通りだ。怪我をしているのにいつまでも変身状態で居続けると、勝手に魔力消費をしてしまって命が危ないのだ。
 意識もはっきりとしてきたので変身を解こうとしたその時、ある事に気が付いた。


 私の身体光ってない?

 
「あ、あれ?イリス、私の身体光ってない!?」

『え!?やだ、ホントじゃない!!何これ!』


 イリスはコスチューム化しているので私と視覚を共有しているから気付かなかったのだろう。
ピカピカ、とかそういうレベルじゃ無かった。

 ビカビカだ。ビカビカに輝いてる。

 その光は天まで伸び、まるで光の柱の様になっているではないか。

 どうして気が付かなかったのだろう。


「ど、どういう事?」


 困惑していると、ガサッと何度か草が踏み締められる音がした。

 しまった。あまりの事に気が動転してしまっていたが、ここは山の中の様だった。
 先程の怪人か、もしくは野生動物か…どちらにせよ今の私に何が出来るだろう。

 奥歯を噛み締めバッと身体を立たせて、そちらに向かって臨戦態勢を取った。



「何者だ。」


 それは低く透き通る男性の声だった。

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