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白百合、追い求める
しおりを挟む「誠に、誠に申し訳無い!!!」
私は朝から頭を下げられている。
「頭を上げて下さい、お義父様」
「いや、彼奴がこうなる事は予想出来ていた。今すぐ連れて帰ります故」
メルフィン伯爵は帝国軍の総隊長だ。
こんな所で油を売っていてはいけないのでは無いだろうか。
帰って来たかと思えば義両親から話しを聞き
飛び出る様に何処かに行ってしまった事に異変を感じ、次の日にはここに追いかけて来れるとは。
「お気になさらず…とは言えませんが、彼は少々誤解をしている様なので」
そう言ってニコリと笑顔で応える。
その当の彼だが、義父の横でムスッとそっぽを向いている。
「サムディ!お前はまず謝らんかっ!」
「…申し訳御座いませんでした」
義父に言われ、渋々謝ってくる。
感情が全く篭っていない。
「いいえ。私に謝って頂く必要は御座いません。
だが、これ以上シルヴィに危害を加えるとすれば話は別だ。
彼女の自由で素直な心を傷付ける事は許さない。
惚れた女に気が付いて欲しいが為にちょっかいを出すやり方は頂けないな」
私はとても怒っている。
昨日からシルヴィは顔を合わせてくれないんだ。
当て付けの様に、威圧は全開にさせて頂いた。
彼は青ざめて目を見開き固まってしまったが、早く帰って欲しい。
そう思い、義父を見ると此方も青ざめていた。
おいおい。
「私はシルヴィアを愛しています。彼女は私の唯一。他等、元々興味も無い。変な事を吹き込むのなら私は貴方とは相容れない。
お義父様、教育面で有れば良い人材を紹介致します。いつでもご相談下さい」
「かっ、畏まりましたーー!!!それでは、お暇致します!!」
お義父様はサムディの首根っこを捕まえて、ピューっと逃げる様に帰って行った。
ふぅ…、と溜息をつき目頭を揉んだ。
「お疲れ様です、カミーユ様」
「あぁ、ありがとうノエル。シルヴィの事はやっぱり自分で確かめたいから、他に調べて欲しい事が出来た」
「畏まりました。カミーユ様のお噂の件ですね」
「話しが早くて助かるよ。面倒だから耳にも入れてこなかったが実害が起きれば別だね。
まぁ、何となく検討は付いてるんだけど」
「…左様ですね」
「はぁ……、折角最近シルヴィが段々可愛い服を着てくれていたのに逆戻りだ」
「今日の装いは真っ黒でしたもんね」
「そうなんだ。そちらもそれはそれは似合うんだけど…。
ピアスと髪留めをしてくれているだけ有難いのかな」
「カミーユ様、本日は仕事も少し溜まっていますがどうされますか?」
「うん、其方を終わらせてからシルヴィと話しをしようかな」
「畏まりました。何やら西の方の瘴気が上がりそうだとの報告も御座います」
「早過ぎないかい?」
「今年は雨が続きましたので少々早まっているのかと」
「あ~、本当だね。討伐隊を何人か派遣しないと。問題が山積みだ」
「やはり……、本日は少し休まれては?」
「ん?どうして?」
「顔色が悪う御座います」
「…余り、人に怒った事なんて無かったからね。
疲れちゃったのかな。貧弱な身体が恨めしいよ」
そう言って笑うが、ノエルの眉間の皺が増えるばかりだ。
可笑しくて皺を伸ばすと怒られた。
「ありがとう、ノエル。心配要らないよ、仕事に取り掛かる」
「…余りにも駄目そうで有れば止めますから」
「ふふ、分かったよ。宜しく頼む」
心配性の従者が居てくれて助かるな。
とりあえず、今有る物を終わらせて早くシルヴィに会いに行こう。
今日、シルヴィはトムソン爺やと鍛錬をするとローザンヌが聞いて来てくれた。
彼女に触れられ無いだけでこんなにも辛い。
ベッドは同じだが、彼女は先に寝てしまっていた。
私に背を向け、肩を丸めて自分を守る様な格好で、だ。
おやすみ、と声を掛けたが返事は返っては来ない。
こんなにも傍に居るのに。
心が遠く感じた。
朝食も一緒に摂ったが、彼女は目も合わせずに空返事をしていたのだ。
この前避けられていた日々とは訳が違う。
圧倒的な距離感が有る。
温もりを知ってしまうと駄目だな。
あの頃の様に、影で想い続ける事なんて出来ない。
会ってちゃんと話をしなくては。
何を話せば良いかなんて分からないが、シルヴィが笑ってくれたらそれで良い。
そう思い、バリバリと仕事をして昼頃には終わらせる事が出来た。
「よしっ。ノエル、確認して」
「畏まりました」
ノエルの確認を終え、足早に邸の鍛錬場へ向かう。
もしかすれば、シルヴィは私には会いたくないかもしれない。
その時は、その時だ。
今はただ、貴女に会いたい。
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