47 / 52
白百合、事の顛末を知る
しおりを挟む静かな客間が並ぶ一室
重厚感の有る扉を開くと、一人の青年が出迎えてくれる。
「カミーユ、久しぶり!」
人好きのする顔で出迎えてくれた彼は、爽やかに笑う。
「お久しぶりです、サンダード王。この度はお助け頂き誠に有難う御座いました」
「おいおい、王になったからって前の様に話してくれて構わないぞ?俺がそういうの苦手って知ってるだろ?」
「ふふ、変わらないね。アサム」
「そう来なくっちゃ」
二人で学生の時の様に笑い合う。
相変わらず、気の良い男だ。
私達は彼を訪ねて王城へ来ている。勿論、この間の話しをする為だ。
「改めて紹介するね、妻のシルヴィア」
「サンダード王、名乗るのがすっかり遅れてしまい申し訳御座いません。シルヴィアと申します」
「いやいや、この間は余り時間も無かったし騒ぎ立てたく無かったからね。アサムで良い、シルヴィア嬢」
「はい、アサム様」
彼に促されて、椅子に腰を落ち着かせる。
私以外の二人は黒髪のはっきりした顔立ちなので、何だか私だけ浮いてしまっている気がするが置いておこう。
「では、挨拶も済んだし本題に入ろう。
先日の件だが、国と国の問題に発展しかねない。全部私に一任して頂きたい」
「あぁ、そうして貰えると助かるよ。反旗を翻すのも色々と面倒だからね」
「ははは、言うと思った。いつでも独立出来るもんな、君なら」
「ふふ、しないよ。今はね」
「怖い、怖い。
それで、タチアナ嬢なんだが……プッ、クククク」
肝心の話しだ、と身構えたらアサムは急に笑い出した。
ツボに入ってしまった様で、暫くシルヴィと不思議なものを見るような目で彼を眺める。
「あ~。ダメだ、可笑しい。ごめん、ごめん。話すよ」
仕切り直した彼は、テーブルの上に置かれたお茶を一口飲んで喉を潤した。
「彼女は婚約者が、君には配偶者が居る身。私の管理下の元、カミーユとの接触は今後どのような事が有っても無いものとする。
これは余談なんだけど…
どうやら、彼女は君との子どもが授かれば例え身分に差が有れども君と結ばれると思ったらしい。
だからね、裸の相手にくっ付けば聖なる龍が赤子を運んで来てくれる。もうすぐ来るから貴方とは結婚出来ない、と言われたよ」
彼は言い終わると肩を震わせてまた笑い出す。
「あっははは、まさか公爵家は子の作り方もまともに教えていなかったらしい!
タチアナ嬢は服を着て裸のカミーユを抱き締めただけ。
カミーユが目覚めてもいないのに身篭っていると言うから変だと思って聞いてみたんだが、斜め上の回答だったよ。
涙目で顔面蒼白になりながら真剣に言うもんだから、可愛くてね。
まぁ、年齢に比べてあの容姿だったら教えにくい事もあったのだろう。絵本の記憶のままなのかな」
「成程…、私が行く時には終わった雰囲気を出していたのはそのせいか」
「それは興味深い、後で教えて」
「畏まりました」
「シルヴィア嬢。私がこんな事を言うのは可笑しいかもしれないが、彼女を許してやって欲しい」
「……」
アサムはシルヴィに問うので、シルヴィを見ると下唇を噛み押し黙ってしまった。
「致死性の有る毒では無かったという事、そしてカミーユもタチアナ嬢も綺麗なままだという事。公に出来ない、というのも大きいけれどね。
彼女は勿論、悪い事をした。
カミュと君の前には二度と出さないと誓う。
幼いまま大きくなってしまったのだ、本当の愛も知らず。仮初の愛を求めた結果なんだ」
「分かりました、とは言い難いのですが…カミュが無事なら私はそれで良いのです。毒を飲ませ、私のカミュに触れた事はとても腹立たしいですが」
「シルヴィ…」
彼女からそんな風に言ってくれるなんて思ってもいなかったので、嬉しさがフツフツと湧き上がる。
「はは!正直者だ。確かに許す、許さないの問題では無いな。忘れてくれ」
「善処します」
「…アサム、君は傷付いていないかい?」
「ん?あぁ、全然大丈夫だ。今回は大きな間違いだが、間違いは誰にでも有る。
彼女に今から色々と教えるのが楽しみだよ」
「そうか、君が良いなら良いんだ」
「あぁ、あれは矯正しがいが有りそうだ♪」
カラカラと笑う彼とその後、仕事の話しをする。
彼もあの宝石は気に入った様で、彼処に帰る迄に違う物も見せる約束もしておいた。
「あ、そうだ。シルヴィア嬢、義弟さんはどうする?此方で処分しても良いけど」
「処分…。有難う御座います。
御心だけ頂いておきます。彼とは話しをしましたので、此方では不問とさせて頂いております。
後はアサム様のお好きな様に」
「了解。では、彼を此方に留学させよう」
「おぉ。それは良い案だね、アサム」
「前回の留学では学び足りなかったようだからね。丁度良いんじゃないかな」
「で、ですがそれでは彼の得にしかならないのでは?」
「ははは、傍から見ればそうだな。
だが、うちの国はちょっとばかし厳しいんだ。暑い国だから身に学を付けないと生きていけないから。半日で泣いて帰る者もザラなのさ。
良い領主に仕上げて返すからね♪」
「そうなのですか…。是非、宜しく御願い致します」
シルヴィはホッとしたように微笑む。
アサムの国の学問はとても発達している。彼が留学に来ていたのも、学ぶというよりは外とのパイプ作りだった。
私も行けるなら行きたいと言った事は有るが、君には必要無いとアサムに言われたので諦めた。
そういえば、国での勉学の話しになると彼の目が死んでしまうのを何度も見たな。
うん、愚弟君よ頑張れ。
0
あなたにおすすめの小説
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
皇帝とおばちゃん姫の恋物語
ひとみん
恋愛
二階堂有里は52歳の主婦。ある日事故に巻き込まれ死んじゃったけど、女神様に拾われある人のお世話係を頼まれ第二の人生を送る事に。
そこは異世界で、年若いアルフォンス皇帝陛下が治めるユリアナ帝国へと降り立つ。
てっきり子供のお世話だと思っていたら、なんとその皇帝陛下のお世話をすることに。
まぁ、異世界での息子と思えば・・・と生活し始めるけれど、周りはただのお世話係とは見てくれない。
女神様に若返らせてもらったけれど、これといって何の能力もない中身はただのおばちゃんの、ほんわか恋愛物語です。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
お見合いに代理出席したら花嫁になっちゃいました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
綾美は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、お見合いの代理出席をする為にホテルへ向かったのだが、そこにいたのは!?
青天の霹靂ってこれじゃない?
浦 かすみ
恋愛
贅沢三昧でとんでもない王妃だった私、国王陛下の(旦那)から三行半を突き付けられた!
その言葉で私は過去を思い出した。
第二王妃からざまぁを受ける羽目になった私だが、おや待てよ?
それって第一王妃の仕事もうやらなくていいの?
自分磨きに独り立ちの為に有効使わせてもらいましょう!
★不定期更新です
中盤以降恋愛方面の話を入れていく予定です。
誤字脱字等、お見苦しくてすみません。
【完結】婚約者なんて眼中にありません
らんか
恋愛
あー、気が抜ける。
婚約者とのお茶会なのにときめかない……
私は若いお子様には興味ないんだってば。
やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?
大人の哀愁が滲み出ているわぁ。
それに強くて守ってもらえそう。
男はやっぱり包容力よね!
私も守ってもらいたいわぁ!
これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語……
短めのお話です。
サクッと、読み終えてしまえます。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
【完結】王命の代行をお引き受けいたします
ユユ
恋愛
白過ぎる結婚。
逃れられない。
隣接する仲の悪い貴族同士の婚姻は王命だった。
相手は一人息子。
姉が嫁ぐはずだったのに式の前夜に事故死。
仕方なく私が花嫁に。
* 作り話です。
* 完結しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる