【完結】辺境の白百合と帝国の黒鷲

もわゆぬ

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白百合、事の顛末を知る

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静かな客間が並ぶ一室
重厚感の有る扉を開くと、一人の青年が出迎えてくれる。

「カミーユ、久しぶり!」

人好きのする顔で出迎えてくれた彼は、爽やかに笑う。

「お久しぶりです、サンダード王。この度はお助け頂き誠に有難う御座いました」

「おいおい、王になったからって前の様に話してくれて構わないぞ?俺がそういうの苦手って知ってるだろ?」

「ふふ、変わらないね。アサム」

「そう来なくっちゃ」

二人で学生の時の様に笑い合う。
相変わらず、気の良い男だ。
私達は彼を訪ねて王城へ来ている。勿論、この間の話しをする為だ。


「改めて紹介するね、妻のシルヴィア」

「サンダード王、名乗るのがすっかり遅れてしまい申し訳御座いません。シルヴィアと申します」

「いやいや、この間は余り時間も無かったし騒ぎ立てたく無かったからね。アサムで良い、シルヴィア嬢」

「はい、アサム様」

彼に促されて、椅子に腰を落ち着かせる。
私以外の二人は黒髪のはっきりした顔立ちなので、何だか私だけ浮いてしまっている気がするが置いておこう。

「では、挨拶も済んだし本題に入ろう。
先日の件だが、国と国の問題に発展しかねない。全部私に一任して頂きたい」

「あぁ、そうして貰えると助かるよ。反旗を翻すのも色々と面倒だからね」

「ははは、言うと思った。いつでも独立出来るもんな、君なら」

「ふふ、しないよ。今はね」

「怖い、怖い。

それで、タチアナ嬢なんだが……プッ、クククク」

肝心の話しだ、と身構えたらアサムは急に笑い出した。
ツボに入ってしまった様で、暫くシルヴィと不思議なものを見るような目で彼を眺める。

「あ~。ダメだ、可笑しい。ごめん、ごめん。話すよ」

仕切り直した彼は、テーブルの上に置かれたお茶を一口飲んで喉を潤した。

「彼女は婚約者が、君には配偶者が居る身。私の管理下の元、カミーユとの接触は今後どのような事が有っても無いものとする。

これは余談なんだけど…
どうやら、彼女は君との子どもが授かれば例え身分に差が有れども君と結ばれると思ったらしい。
だからね、裸の相手にくっ付けば聖なる龍が赤子を運んで来てくれる。もうすぐ来るから貴方とは結婚出来ない、と言われたよ」

彼は言い終わると肩を震わせてまた笑い出す。

「あっははは、まさか公爵家は子の作り方もまともに教えていなかったらしい!
タチアナ嬢は服を着て裸のカミーユを抱き締めただけ。

カミーユが目覚めてもいないのに身篭っていると言うから変だと思って聞いてみたんだが、斜め上の回答だったよ。
涙目で顔面蒼白になりながら真剣に言うもんだから、可愛くてね。
まぁ、年齢に比べてあの容姿だったら教えにくい事もあったのだろう。絵本の記憶のままなのかな」

「成程…、私が行く時には終わった雰囲気を出していたのはそのせいか」

「それは興味深い、後で教えて」

「畏まりました」

「シルヴィア嬢。私がこんな事を言うのは可笑しいかもしれないが、彼女を許してやって欲しい」

「……」

アサムはシルヴィに問うので、シルヴィを見ると下唇を噛み押し黙ってしまった。

「致死性の有る毒では無かったという事、そしてカミーユもタチアナ嬢も綺麗なままだという事。公に出来ない、というのも大きいけれどね。

彼女は勿論、悪い事をした。
カミュと君の前には二度と出さないと誓う。
幼いまま大きくなってしまったのだ、本当の愛も知らず。仮初の愛を求めた結果なんだ」

「分かりました、とは言い難いのですが…カミュが無事なら私はそれで良いのです。毒を飲ませ、私のカミュに触れた事はとても腹立たしいですが」

「シルヴィ…」

彼女からそんな風に言ってくれるなんて思ってもいなかったので、嬉しさがフツフツと湧き上がる。

「はは!正直者だ。確かに許す、許さないの問題では無いな。忘れてくれ」

「善処します」


「…アサム、君は傷付いていないかい?」

「ん?あぁ、全然大丈夫だ。今回は大きな間違いだが、間違いは誰にでも有る。
彼女に今から色々と教えるのが楽しみだよ」

「そうか、君が良いなら良いんだ」

「あぁ、あれは矯正しがいが有りそうだ♪」


カラカラと笑う彼とその後、仕事の話しをする。
彼もあの宝石は気に入った様で、彼処に帰る迄に違う物も見せる約束もしておいた。

「あ、そうだ。シルヴィア嬢、義弟さんはどうする?此方で処分しても良いけど」

「処分…。有難う御座います。
御心だけ頂いておきます。彼とは話しをしましたので、此方では不問とさせて頂いております。
後はアサム様のお好きな様に」

「了解。では、彼を此方に留学させよう」

「おぉ。それは良い案だね、アサム」

「前回の留学では学び足りなかったようだからね。丁度良いんじゃないかな」

「で、ですがそれでは彼の得にしかならないのでは?」

「ははは、傍から見ればそうだな。
だが、うちの国はちょっとばかし厳しいんだ。暑い国だから身に学を付けないと生きていけないから。半日で泣いて帰る者もザラなのさ。
良い領主に仕上げて返すからね♪」

「そうなのですか…。是非、宜しく御願い致します」

シルヴィはホッとしたように微笑む。
アサムの国の学問はとても発達している。彼が留学に来ていたのも、学ぶというよりは外とのパイプ作りだった。
私も行けるなら行きたいと言った事は有るが、君には必要無いとアサムに言われたので諦めた。
そういえば、国での勉学の話しになると彼の目が死んでしまうのを何度も見たな。

うん、愚弟君よ頑張れ。

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