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第四話 振分け試験2
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寮へと帰った俺は明かりを灯さず、月明かりだけが室内を照らす薄暗い部屋で一人延々と考え込んでいた。
魔素が分からない現状、明日の振分け試験に出ても今日と同じ結果になる。
だけど、なんとしても笑っていた連中を、見返してやりたい。
そう思った俺は一人学院図書館へ行き魔素とは何かを学び
寮のわきにある茂みの中で一人黙々と魔素具現化の練習をしていた。
気づくと、時刻は深夜1時を回っていた。あれから数時間練習を重ねたが、練習時間が少ないのか。それとも、才能がないのか。結局、魔素の発現には至らなかった。
部屋に帰ると再び考える。明日の振分け試験で命を落とす可能性もある。でも、高校生活をしていたころの何もできなかったころとは違い、才能に恵まれ、この世界で、この異世界で活躍できる場ができそうなんだ。そう思い全身を奮い立たせ、眠った。
この世界を青色に空が染め上げてから何時間がたっただろうか。既に沢山の振分け試験が行われてきた。自分の番を静かに、さながら戦場に行く勇ましい兵士のようにその時を待っていた。
「101位 イツキ vs 98位 ナッツゥの対戦はイツキの振分け免除によりナッツゥの......」
先生がそう言いかけた時。俺は大声で叫んでいた。
「待ってください! 試合に出させてください!」
それを聞いた先生は自分の一存では決められないのか、オルフェレウス院長のもとに向かい、何やら話をしていた。
話が終わったところでオルフェレウス院長は口を開いた
「よかろう! ただし、条件じゃもし相手の技が10㎝から1mmでも超えたらその時は直ちに試合を停止する」
上等じゃないか。試合に出させてくれるだけで有難い。俺はその言葉に頷いた。
「では、双方演習場の中央へ向かい握手で始めよ」
審判でもある先生がそういうと、俺とナッツゥは向かい合い握手をした。
体を後ろにそらしながら余裕しゃくしゃくの表情でナッツゥはこう言った。
「おい! そこのお前! 名前何て言ったっけ? わりぃ、忘れたは。兎に角、攻撃しないでやるからよぉ。かかってこいよぉ!」
俺は挑発には乗らず、冷静に答えていた。
「ありがとうございます。では!光よ、俺に力を貸してくれ! 光球!! 」
まだ魔素を発現すらしてない俺は基本の技である6色球ををだそうとしたが、やはり出せなかった。
そうやって俺は昨日数時間練習した技を何回も何回もナッツゥに繰り出したが、魔素は出現しなかった。俺とナッツゥの間にあるのはただの空気だ。観客席からは笑い声も聞こえてくる。
「いやー! 笑えるねぇ! まさかこれだけ繰り返しても魔素さえ発現できない劣等性がこの学院にいるとはねぇ。君、田舎の学校にでも転校したらどうだい」
そう大声で言ったナッツゥの言葉に場内はいくら何でもやりすぎと思ったのか、同情したグループと、ナッツゥに同調し俺を排斥しようとするグループの二手に分かれた。
「そんじゃ、もう数十分たったし、締めといきますか!」
「大地よ、土のスピアを我に与えたまえ!! 土槍 」
すると、昨日の試合のように周りの空気が土色に染まり、土のスピアが形成されていく。
だが、見てみるとスピアの数は5本である。これなら俺でもいけるかもしれない...
いや、無理だ。たとえ1本であっても生身の人間では太刀打ちできない。
諦めかけてたその時、観客席のほうから女性の声が聞こえてきた。
「イツキならできる!なんてったって私の友達なんだからね!」
演習場が騒めいた。
「あいつ、姫様と友達なのか」
「姫様はお優しいなあ。劣等生ごときに慈悲をかけてくれるなんて」
そうだ。俺には異世界に来て独りぼっちだった俺を救ってくれたリリーがいる!!そう思うと突然力が湧き、周りの空間が黄色の光で包まれその中から光輝く天使のような白い服装に、白い冠を頭にのせ、薄く光輝く女性が現れた。上位精霊と思わしきそれを発現させた俺に、演習場はまた騒めいた。
「お、おい!! お前劣等生のくせに聖霊使えるのかよぉ!しかも見たことない人型の姿をしているし、こんなの不正だ、不正に決まってる」
そう言ってどこか怯えた表情をしていた。聖霊とは何かわからないが、どこからか力が湧いてくる。いや、そもそもこれは俺の力なのか?そう思っていると女性型をした天使の聖霊は土のスピアに近づき、いとも簡単にスピアを破壊させていた。戦意喪失したナッツゥは生気が宿っていないぽかーんとした表情でその場に立ち尽くしていた。
それを見た審判である先生が、試合終了の笛を吹く。そうだ、俺は勝ったのだ。
観客席に戻るとリリーが来て
「やったわね! あんな聖霊みたことないわよ! 流石はイツキね!」
どこか嬉しそうな表情をしていた。
「ありがとう。次はリリーの試合だな。がんばれ!」
「うん、じゃあ行ってくるね!」
そう言って演習場中央へと向かったリリーだったが試合が始まるや否や圧倒的力の差を見せつけ試合に勝っていた。あとで聞くと、彼女は全戦全勝だったらしい。さすがは皇族の血だ、魔素20000の力は伊達じゃない。
午前の試合も終わり、俺たちは昼食を取り終えた後、次の試合に備えるべく、観客席で英気を養っていた。もし、俺が次の試合に勝つことができたらDクラス脱却も夢じゃないし、もしかしたらリリーと同じAクラスかもしれない。そんな妄想をしていると
「次の試合! 90位 イツキ vs 3位 イリナ」
先生が言った試合は間違えたんじゃないかと思うくらい、俺の順位には合わない。
どう考えてもこのマッチアップは普通は行われない。ここで不満を言っても何も変わらない。
やるしかないだろう。そう思っていると
「3位のイリナは私の親友で、代々皇族に仕えてきた由緒正しき家のでよ。幼いころから、厳しい特訓のおかげもあり、アムステリア学院中等部では1位の座を奪われたこともあったわ。気を付けてね。」
リリーは眉間にしわを寄せながら厳しい表情でそう言った。流石にまだ魔素の扱いにも慣れてない俺に3位は厳しい。勝てない勝負なのはわかっているが、逃げるわけにはいかない。俺は演習場の中央に向かった。
「では、双方握手」
先生がそう言うとお互い握手をした。
「先ほどの試合の聖霊素晴らしかった。あれは何というのだ」
感心した様子でイリナは言ったが、あの聖霊がなんだったか俺が一番知りたい。
「実は、俺にもあれがなにかはわからない」
「まあ、よい。私はイリナ モントート。以後お見知りおきを。では、いくぞ!!」
勇ましい声が場内に響き渡る。相手は火の使いというのはわかっているが、どんな技を繰り出してくるか未知数だ。ならば、先手を取ったほうがいいだろう。そう判断した俺は
「光よ、俺に力を貸してくれ!! 光球!」
俺は何度も何度も詠唱したが、技が現れることはなかった。やはり、まだまだ練習不足らしい。さっき現れた光の聖霊はどうすれば現れてくれるのか。そう思っていると
「ふむ、まだ練習がたりぬようだな。だが、勝負は勝負だ。この試合勝たせてもらうぞ!」
そういった彼女の周囲は火の粉が舞い散り一瞬にして火でできたボールのような形になっていた。その火のボールは拳くらいの大きさだが、詠唱者の魔力のおかげなのか、とても力強い炎だ。
馬鹿な。この世界では無詠唱で魔素を発現させることができるのか。
だとしたら、彼女と俺とでは力の差は歴然だ。
やはりミスマッチな組み合わせだ。今の実力では逆立ちしても勝ち目がない。
先生の意図が何かわからないが、俺は降参することにした。
「参った。さすがに3位は強いな。手も足も出ない」
「うむ、練習不足ではあるが、凄まじい力を感じる。これからもよろしく頼む」
そう言ってイリナは演習場を後にした。
少し変わった人だが、真面目そうで日本で言うところの大和撫子のような人だ。
それによろしく頼むと言っていた。強くて容姿端麗な彼女とお近づきできるのも悪くない。そう思いながら俺は演習場を後にした。
振分け試験も無事終わり、先生達が俺たちの組を知らせている。
俺はD組、リリーとイリナはA組となった。
ちなみにいうが、ナッツゥは俺と同じD組であり、バーグはB組だ。
リリーと違うクラスなのは残念だが、明日からはいよいよ学院生活の始まりだ。
俺は期待に胸を膨らませながら寮へと戻った。
魔素が分からない現状、明日の振分け試験に出ても今日と同じ結果になる。
だけど、なんとしても笑っていた連中を、見返してやりたい。
そう思った俺は一人学院図書館へ行き魔素とは何かを学び
寮のわきにある茂みの中で一人黙々と魔素具現化の練習をしていた。
気づくと、時刻は深夜1時を回っていた。あれから数時間練習を重ねたが、練習時間が少ないのか。それとも、才能がないのか。結局、魔素の発現には至らなかった。
部屋に帰ると再び考える。明日の振分け試験で命を落とす可能性もある。でも、高校生活をしていたころの何もできなかったころとは違い、才能に恵まれ、この世界で、この異世界で活躍できる場ができそうなんだ。そう思い全身を奮い立たせ、眠った。
この世界を青色に空が染め上げてから何時間がたっただろうか。既に沢山の振分け試験が行われてきた。自分の番を静かに、さながら戦場に行く勇ましい兵士のようにその時を待っていた。
「101位 イツキ vs 98位 ナッツゥの対戦はイツキの振分け免除によりナッツゥの......」
先生がそう言いかけた時。俺は大声で叫んでいた。
「待ってください! 試合に出させてください!」
それを聞いた先生は自分の一存では決められないのか、オルフェレウス院長のもとに向かい、何やら話をしていた。
話が終わったところでオルフェレウス院長は口を開いた
「よかろう! ただし、条件じゃもし相手の技が10㎝から1mmでも超えたらその時は直ちに試合を停止する」
上等じゃないか。試合に出させてくれるだけで有難い。俺はその言葉に頷いた。
「では、双方演習場の中央へ向かい握手で始めよ」
審判でもある先生がそういうと、俺とナッツゥは向かい合い握手をした。
体を後ろにそらしながら余裕しゃくしゃくの表情でナッツゥはこう言った。
「おい! そこのお前! 名前何て言ったっけ? わりぃ、忘れたは。兎に角、攻撃しないでやるからよぉ。かかってこいよぉ!」
俺は挑発には乗らず、冷静に答えていた。
「ありがとうございます。では!光よ、俺に力を貸してくれ! 光球!! 」
まだ魔素を発現すらしてない俺は基本の技である6色球ををだそうとしたが、やはり出せなかった。
そうやって俺は昨日数時間練習した技を何回も何回もナッツゥに繰り出したが、魔素は出現しなかった。俺とナッツゥの間にあるのはただの空気だ。観客席からは笑い声も聞こえてくる。
「いやー! 笑えるねぇ! まさかこれだけ繰り返しても魔素さえ発現できない劣等性がこの学院にいるとはねぇ。君、田舎の学校にでも転校したらどうだい」
そう大声で言ったナッツゥの言葉に場内はいくら何でもやりすぎと思ったのか、同情したグループと、ナッツゥに同調し俺を排斥しようとするグループの二手に分かれた。
「そんじゃ、もう数十分たったし、締めといきますか!」
「大地よ、土のスピアを我に与えたまえ!! 土槍 」
すると、昨日の試合のように周りの空気が土色に染まり、土のスピアが形成されていく。
だが、見てみるとスピアの数は5本である。これなら俺でもいけるかもしれない...
いや、無理だ。たとえ1本であっても生身の人間では太刀打ちできない。
諦めかけてたその時、観客席のほうから女性の声が聞こえてきた。
「イツキならできる!なんてったって私の友達なんだからね!」
演習場が騒めいた。
「あいつ、姫様と友達なのか」
「姫様はお優しいなあ。劣等生ごときに慈悲をかけてくれるなんて」
そうだ。俺には異世界に来て独りぼっちだった俺を救ってくれたリリーがいる!!そう思うと突然力が湧き、周りの空間が黄色の光で包まれその中から光輝く天使のような白い服装に、白い冠を頭にのせ、薄く光輝く女性が現れた。上位精霊と思わしきそれを発現させた俺に、演習場はまた騒めいた。
「お、おい!! お前劣等生のくせに聖霊使えるのかよぉ!しかも見たことない人型の姿をしているし、こんなの不正だ、不正に決まってる」
そう言ってどこか怯えた表情をしていた。聖霊とは何かわからないが、どこからか力が湧いてくる。いや、そもそもこれは俺の力なのか?そう思っていると女性型をした天使の聖霊は土のスピアに近づき、いとも簡単にスピアを破壊させていた。戦意喪失したナッツゥは生気が宿っていないぽかーんとした表情でその場に立ち尽くしていた。
それを見た審判である先生が、試合終了の笛を吹く。そうだ、俺は勝ったのだ。
観客席に戻るとリリーが来て
「やったわね! あんな聖霊みたことないわよ! 流石はイツキね!」
どこか嬉しそうな表情をしていた。
「ありがとう。次はリリーの試合だな。がんばれ!」
「うん、じゃあ行ってくるね!」
そう言って演習場中央へと向かったリリーだったが試合が始まるや否や圧倒的力の差を見せつけ試合に勝っていた。あとで聞くと、彼女は全戦全勝だったらしい。さすがは皇族の血だ、魔素20000の力は伊達じゃない。
午前の試合も終わり、俺たちは昼食を取り終えた後、次の試合に備えるべく、観客席で英気を養っていた。もし、俺が次の試合に勝つことができたらDクラス脱却も夢じゃないし、もしかしたらリリーと同じAクラスかもしれない。そんな妄想をしていると
「次の試合! 90位 イツキ vs 3位 イリナ」
先生が言った試合は間違えたんじゃないかと思うくらい、俺の順位には合わない。
どう考えてもこのマッチアップは普通は行われない。ここで不満を言っても何も変わらない。
やるしかないだろう。そう思っていると
「3位のイリナは私の親友で、代々皇族に仕えてきた由緒正しき家のでよ。幼いころから、厳しい特訓のおかげもあり、アムステリア学院中等部では1位の座を奪われたこともあったわ。気を付けてね。」
リリーは眉間にしわを寄せながら厳しい表情でそう言った。流石にまだ魔素の扱いにも慣れてない俺に3位は厳しい。勝てない勝負なのはわかっているが、逃げるわけにはいかない。俺は演習場の中央に向かった。
「では、双方握手」
先生がそう言うとお互い握手をした。
「先ほどの試合の聖霊素晴らしかった。あれは何というのだ」
感心した様子でイリナは言ったが、あの聖霊がなんだったか俺が一番知りたい。
「実は、俺にもあれがなにかはわからない」
「まあ、よい。私はイリナ モントート。以後お見知りおきを。では、いくぞ!!」
勇ましい声が場内に響き渡る。相手は火の使いというのはわかっているが、どんな技を繰り出してくるか未知数だ。ならば、先手を取ったほうがいいだろう。そう判断した俺は
「光よ、俺に力を貸してくれ!! 光球!」
俺は何度も何度も詠唱したが、技が現れることはなかった。やはり、まだまだ練習不足らしい。さっき現れた光の聖霊はどうすれば現れてくれるのか。そう思っていると
「ふむ、まだ練習がたりぬようだな。だが、勝負は勝負だ。この試合勝たせてもらうぞ!」
そういった彼女の周囲は火の粉が舞い散り一瞬にして火でできたボールのような形になっていた。その火のボールは拳くらいの大きさだが、詠唱者の魔力のおかげなのか、とても力強い炎だ。
馬鹿な。この世界では無詠唱で魔素を発現させることができるのか。
だとしたら、彼女と俺とでは力の差は歴然だ。
やはりミスマッチな組み合わせだ。今の実力では逆立ちしても勝ち目がない。
先生の意図が何かわからないが、俺は降参することにした。
「参った。さすがに3位は強いな。手も足も出ない」
「うむ、練習不足ではあるが、凄まじい力を感じる。これからもよろしく頼む」
そう言ってイリナは演習場を後にした。
少し変わった人だが、真面目そうで日本で言うところの大和撫子のような人だ。
それによろしく頼むと言っていた。強くて容姿端麗な彼女とお近づきできるのも悪くない。そう思いながら俺は演習場を後にした。
振分け試験も無事終わり、先生達が俺たちの組を知らせている。
俺はD組、リリーとイリナはA組となった。
ちなみにいうが、ナッツゥは俺と同じD組であり、バーグはB組だ。
リリーと違うクラスなのは残念だが、明日からはいよいよ学院生活の始まりだ。
俺は期待に胸を膨らませながら寮へと戻った。
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