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第十八話 迫りくる影
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昨日のリリーの誕生日大作戦も無事に終わり、俺は珍しく早起きしていつも通り学校の準備をしながら、昨日の終始笑顔でいたリリーを思い返す。そんなリリーは、大勢の生徒に質問攻めされた後、友達が沢山できたのか夜遅くまではしゃいでいた。これで、リリーの悲しい顔を見ることはなくなるだろう。そんなことを考えながら、準備を終えた俺は寮を出る。
「お持ちしておりました、イツキ様。皇帝陛下がイツキ様を連れてくるようにと。どうぞ、馬車にお乗りください。リリー姫とイリア様も既に馬車の中にいらっしゃいます」
俺は少し混乱する。今は朝の7時を過ぎた頃だろう。ということは、この執事と護衛は朝の何時ころから待っていたのだろうか。イリア達も乗っているし、やけに用意がいい。これは罠かもしれない......
「イツキ、おはよう!! どうしたの顎に手を当てて」
「イツキ、ようやくおきたようだな。おはよう」
「リリー、イリア、おはよう。随分、二人は早起きなんだな」
「イツキ、まさかポストの中の封筒をまだ見てないのか?」
俺はいつも寮に帰宅すると、寮の前のポストを確認するが、ここ最近色々なことがあってポストを確認していなかった。二人とも通りで朝が早いわけだ。ということは、俺は馬車一行をしばらく待たせていたのではないか。これは、謝るべきだろう。
「すまない! 色々あって確認するのを忘れていた。 長い間待たせたな」
「大丈夫よ! 確かに色々あったもんね。それに私たちも今さっき来たばかりよ」
リリーとイリアはうんうんと頷く。どうやら偶然待ち合わせ時間と俺の出る時間が同じだったらしい。
俺は馬車の中に乗り込む。
「皇帝陛下、リリーのお父さんは何の用事で俺たちを呼び出したんだ?」
「うーん。それがわからないの。おそらく競技場の一件だとは思うけど」
リリーは親指を唇に当て考えている。そういえば、競技場で俺は勝ったのだろうか。順当に考えれば、俺は負けているはずだが、青髪の男が倒れているのは微かに覚えている。
「俺は試合に負けたのか?」
「イツキは勝ったわ! それに学院も優勝したわよ! でも、青髪の男を倒してから暴走しちゃって、帝国10騎士のユリウスが止めに入ったの」
なるほど。記憶をなくしてる間にそんなことがあったのか。数十年修行したような技を扱える気がしたのはこのせいだったようだ。しかし、競技場での暴走ということは、俺はこっぴどく叱られるのだろう。もしかすると、牢屋にぶち込まれるかもしれない。そんな俺の不安な様子を察したのか
「大丈夫よ!! お父様はそんなにひどい人ではないから! それにいざとなれば私とイリアがいるわ!」
イリアを見ると頷いている。どうやら、俺はいい友達を持ったようだ。少し緊張するが、二人もいるし大丈夫だろう。俺は城に向かう馬車で考えていた。
◇
「3人とも無事についたようだな」
「はい、お父様。ところで、今日呼び出した理由はなんでしょうか」
「単刀直入に言おう。競技場での一件の後、我々は驚かされた。それは、見たことのない技、ラムースによるミラニド教の布教。そして、イツキ テンマによる覚醒と暴走。驚かされた我々は情報を得るためミラニド教に毒されているクリル地方に帝国10騎士を送ろうとしたが既に任務に就いている。そこで、イツキ君に行ってほしいのだ。もちろん、学院は休みとする」
きけば、騎士、有力者も不在なため、その未知の力を使い潜入調査をしてほしいということだ。リリーは次期皇帝としてのスキルアップのため、イリアはその護衛で同じように任務に就くらしい。だが、陛下は俺の力を強く見積もりすぎだ。たしかに、光魔素の技は何となく覚えてはいるが、まだ使用したこともないのだ。俺が回答を渋っていると
「頼む!! リリーのお友達なんだろう。リリーを守ってはくれぬか。それに強力な助っ人も用意している」
そう言われると「はい! わかりました!」と言わずにはいられないだろう。俺はそう答えていたが、協力の助っ人とは誰だろうか。気になる。
「ちょっと!! お父さん!! 私はイリアがいれば大丈夫よ!! それは、イツキには来てほしいけど......」
リリーは少し顔を赤らめながら手を何度もクロスさせそう言っていたが、陛下を見ると俺を睨みつけていた。見覚えがないが、俺は何かやらかしたのだろうか。
「イツキ君もこう言っていることだ。リリーの護衛は任せたぞイツキ君、イリアよ。それと、もう一つ。未知の光の技のことだが、あれが何か教えてはくれぬか」
俺はあれが何かはわかっていない。光球を大きくしていた記憶しかないが、おそらくは天使の仕業だろう。それ以外に考えられない。そう考えた俺は陛下に、瞑想中天使にミラ星にある神殿で殺されそうになったこと、ナッツゥとの戦闘で天使が出現していたこと、光球を大きくしている最中に記憶を失ったことを話していた。
「ふむ。ならば、それは古代の光の技、ということであるか。もし、その話が全部本当だとすれば天使と悪魔は本当に実在することになる。神話では我々人間を作り出し、そして、代理戦争の駒とした。ますますミラニド教の一件を調査しなければなるまい。だが、いざという時は逃げるのだぞ」
リーシュ皇帝もリリーと血が繋がっているだけあり、素の性格はとても優しいのだろう。微笑むと俺たちを気遣っていた。
「お任せください! なんとしてでもリリー姫とイリアは守って見せます」
それを聞いて安心したのか、陛下は気を緩めていた。それにしても、リリーもイリアもリーシュ陛下も俺を過大評価している。光の技が使えるようになったとは言え、まだ制御もできていないのだ。しかし、決まったことは仕方がない。問題は、クリル地方についた後のことだ。俺の思考と同調するようにイリアは答えていた。
「とりあえず、情報収集のためクリルの街に寄ったほうがよさそうですね。私の家から馬とお金を出しましょう」
イリアがそういうと、陛下はまるで100年付き従った従者の言葉を聞くように「うむ。すまぬな」といった。さすが代々皇帝を守っているモントート家だ。その忠誠は他のどの貴族と比べても劣らないだろうし、陛下の信頼も厚い。陛下が信頼する、なにより仲間のイリアの言葉だ。まずはクリルの街で情報収集するのがいいのだろう。俺たちはイリアの言葉に素直に頷く。
「では、頼んだぞ」陛下はそういうと俺たちは準備のために一旦寮に戻り、潜伏任務のためクリル地方へと旅立った。
「お持ちしておりました、イツキ様。皇帝陛下がイツキ様を連れてくるようにと。どうぞ、馬車にお乗りください。リリー姫とイリア様も既に馬車の中にいらっしゃいます」
俺は少し混乱する。今は朝の7時を過ぎた頃だろう。ということは、この執事と護衛は朝の何時ころから待っていたのだろうか。イリア達も乗っているし、やけに用意がいい。これは罠かもしれない......
「イツキ、おはよう!! どうしたの顎に手を当てて」
「イツキ、ようやくおきたようだな。おはよう」
「リリー、イリア、おはよう。随分、二人は早起きなんだな」
「イツキ、まさかポストの中の封筒をまだ見てないのか?」
俺はいつも寮に帰宅すると、寮の前のポストを確認するが、ここ最近色々なことがあってポストを確認していなかった。二人とも通りで朝が早いわけだ。ということは、俺は馬車一行をしばらく待たせていたのではないか。これは、謝るべきだろう。
「すまない! 色々あって確認するのを忘れていた。 長い間待たせたな」
「大丈夫よ! 確かに色々あったもんね。それに私たちも今さっき来たばかりよ」
リリーとイリアはうんうんと頷く。どうやら偶然待ち合わせ時間と俺の出る時間が同じだったらしい。
俺は馬車の中に乗り込む。
「皇帝陛下、リリーのお父さんは何の用事で俺たちを呼び出したんだ?」
「うーん。それがわからないの。おそらく競技場の一件だとは思うけど」
リリーは親指を唇に当て考えている。そういえば、競技場で俺は勝ったのだろうか。順当に考えれば、俺は負けているはずだが、青髪の男が倒れているのは微かに覚えている。
「俺は試合に負けたのか?」
「イツキは勝ったわ! それに学院も優勝したわよ! でも、青髪の男を倒してから暴走しちゃって、帝国10騎士のユリウスが止めに入ったの」
なるほど。記憶をなくしてる間にそんなことがあったのか。数十年修行したような技を扱える気がしたのはこのせいだったようだ。しかし、競技場での暴走ということは、俺はこっぴどく叱られるのだろう。もしかすると、牢屋にぶち込まれるかもしれない。そんな俺の不安な様子を察したのか
「大丈夫よ!! お父様はそんなにひどい人ではないから! それにいざとなれば私とイリアがいるわ!」
イリアを見ると頷いている。どうやら、俺はいい友達を持ったようだ。少し緊張するが、二人もいるし大丈夫だろう。俺は城に向かう馬車で考えていた。
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「3人とも無事についたようだな」
「はい、お父様。ところで、今日呼び出した理由はなんでしょうか」
「単刀直入に言おう。競技場での一件の後、我々は驚かされた。それは、見たことのない技、ラムースによるミラニド教の布教。そして、イツキ テンマによる覚醒と暴走。驚かされた我々は情報を得るためミラニド教に毒されているクリル地方に帝国10騎士を送ろうとしたが既に任務に就いている。そこで、イツキ君に行ってほしいのだ。もちろん、学院は休みとする」
きけば、騎士、有力者も不在なため、その未知の力を使い潜入調査をしてほしいということだ。リリーは次期皇帝としてのスキルアップのため、イリアはその護衛で同じように任務に就くらしい。だが、陛下は俺の力を強く見積もりすぎだ。たしかに、光魔素の技は何となく覚えてはいるが、まだ使用したこともないのだ。俺が回答を渋っていると
「頼む!! リリーのお友達なんだろう。リリーを守ってはくれぬか。それに強力な助っ人も用意している」
そう言われると「はい! わかりました!」と言わずにはいられないだろう。俺はそう答えていたが、協力の助っ人とは誰だろうか。気になる。
「ちょっと!! お父さん!! 私はイリアがいれば大丈夫よ!! それは、イツキには来てほしいけど......」
リリーは少し顔を赤らめながら手を何度もクロスさせそう言っていたが、陛下を見ると俺を睨みつけていた。見覚えがないが、俺は何かやらかしたのだろうか。
「イツキ君もこう言っていることだ。リリーの護衛は任せたぞイツキ君、イリアよ。それと、もう一つ。未知の光の技のことだが、あれが何か教えてはくれぬか」
俺はあれが何かはわかっていない。光球を大きくしていた記憶しかないが、おそらくは天使の仕業だろう。それ以外に考えられない。そう考えた俺は陛下に、瞑想中天使にミラ星にある神殿で殺されそうになったこと、ナッツゥとの戦闘で天使が出現していたこと、光球を大きくしている最中に記憶を失ったことを話していた。
「ふむ。ならば、それは古代の光の技、ということであるか。もし、その話が全部本当だとすれば天使と悪魔は本当に実在することになる。神話では我々人間を作り出し、そして、代理戦争の駒とした。ますますミラニド教の一件を調査しなければなるまい。だが、いざという時は逃げるのだぞ」
リーシュ皇帝もリリーと血が繋がっているだけあり、素の性格はとても優しいのだろう。微笑むと俺たちを気遣っていた。
「お任せください! なんとしてでもリリー姫とイリアは守って見せます」
それを聞いて安心したのか、陛下は気を緩めていた。それにしても、リリーもイリアもリーシュ陛下も俺を過大評価している。光の技が使えるようになったとは言え、まだ制御もできていないのだ。しかし、決まったことは仕方がない。問題は、クリル地方についた後のことだ。俺の思考と同調するようにイリアは答えていた。
「とりあえず、情報収集のためクリルの街に寄ったほうがよさそうですね。私の家から馬とお金を出しましょう」
イリアがそういうと、陛下はまるで100年付き従った従者の言葉を聞くように「うむ。すまぬな」といった。さすが代々皇帝を守っているモントート家だ。その忠誠は他のどの貴族と比べても劣らないだろうし、陛下の信頼も厚い。陛下が信頼する、なにより仲間のイリアの言葉だ。まずはクリルの街で情報収集するのがいいのだろう。俺たちはイリアの言葉に素直に頷く。
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