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第十九話 クリルへと向かう道中
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寮へと戻った俺たちは着替えや食料、その他諸々の準備をして、クリル地方へと向かっている。ここからクリル地方へは馬車で大体1日ほどの距離だ。季節は春だけあって、緑にあふれていて平和そのものだが、道を少し外れると魔物、ゴブリンなどが現れるらしい。
そういえば、この世界に来てからゲームやアニメで見られる、いわゆる魔物を見ていない。異世界だけあって魔物はいるらしいが、人間の脅威になるほどの強さを持つ魔物はあまり多くないらしい。せっかくだから見たい気もするが。
「姫様。今夜は野宿になります。ここから少し行ったところにある水場で野宿しましょう」
「そうね。食料も持ってきてあるし、水源の近くにいれば水浴びもできるし、そうしましょう」
野宿か。小さい頃、家族と親せきでキャンプをしたことがある。スーパーで買った肉に野菜、お菓子。それに大人たちはお酒。火の明かりに照らされたその光景は非日常で、わくわくしたのを今でも覚えている。その光景を今度はリリーとイリアと共に共有できるわけだ。
そんなことを考えていると、無事に水場の近くに着いたらしい。リリーとイリアは料理の下ごしらえ、俺は枝などを集めに行くことになった。枝を集めるのは少し非効率すぎるので、俺は光球で、木を切り倒し、薪の様に加工しリリー達のところに戻る。
「お帰りイツキ! さて、イツキも戻ったことだし、食べましょう! 今夜の夕食は鶏肉とパンとグレープよ」
リリーはそういうと、火球で薪に火をつけ、鶏肉を焼いていく。そういえば、今日は忙しいこともあって、朝から何も食べていない。鶏肉の香ばしい匂いに、腹が鳴る。ただでさえ腹が減っているのに、二人が焼いてくれているのだ。この世のどの食べ物より美味しいに違いない。
焚火に照らされる中、リリーは俺に焼きあがった串に刺された肉汁溢れる鶏肉を手渡す。今この瞬間のために生きてきたのだろう。俺は肉を受け取ると、頬張った。
「これは......うまい!!」
「でしょ!! こういうシチュエーションで食べるお肉はおいしんだから!!」
リリーはそういうと、小さい口で丁寧に鶏肉を食べていく。こんな風にリリーとイリアとごく普通の瞬間を過ごせるのは、とても楽しい。なんなら、天使と悪魔とやらに感謝してもいい。俺はそう思いながら、最後に残ったグレープを食べる。
「さて! ご飯も食べたし、私たちは水浴びをしてくるわね!」
「いいか、イツキ。もし姫様を覗いたら、許さないからな」
「ああ、わかってるさ。絶対に覗かない」
俺がそういうとリリー達は水浴びをしに水場に行った。
いやまて。さっき、リリーを覗いたらと言ったが、イリアを覗くことは許されるのだろうか。俺は思わず二人の水浴びを想像してしまう。いや、もし仮に覗いたとしたら、俺の生命はこのイースから遥か彼方に飛ばされるだろう。
それに、リリーとイリアは俺の事を信頼してくれている。少しは見たい気にもなるが、ここで覗いてしまっては二人のことを騙すことになる。それだけはやってはいけないことだ。俺は少し気になりながらも、待つことに決めた。
何分経過しただろうか。リリーとイリアは肌をしっとりさせ気持ちよさそうに戻ってきた。
「さっぱりしたわ! イツキも行ってきたほうがいいよ! 気持ちいいわよ」
最近色々あったし今日も長旅で疲れたが、水浴びをしたほうがいいだろう。俺は頷くと水浴びをしに水場へと向かった。
◇
目が覚めると金縛りの様に、体が動かなかったことがあるだろうか。俺はある。
中学の頃、とびきり怖いホラー映画を見たせいか眠れない日があった。俺はスマートフォンを弄りながら横になり、眠くなったのかうとうとしいると、気がつけば体が動かなかったのだ。その当時の俺はホラー映画を見たこともあり、それが幽霊の仕業だと思っていた。とても怖かった覚えがある。
何故この話をしたのかというと、今まさに体が動かないのである。手の先から足の先まで全身が暖かく、お盛を体につけられたように動かない。まだ辺りは薄暗いから、これは幽霊の仕業かもしれない。
俺は恐る恐る目を開ける......
するとそこにはリリーとイリアが俺を抱き枕にするように足を絡ませながら寝ていた。道理で暖かいわけである。幽霊ではないということはわかったが、この状況はよくない。俺が動けば二人は目覚めてしまうだろう。そうすれば、二人に何を言われるかわからない。「偶然でした」と言って信じてくれるだろうか。
どうやら俺には考える時間もないらしい。二人は目を覚ましていた。
「んん...... イツキ早いのね、おはよう...... って! あれ?? 私イツキにくっついてる...... ご、ごめん! 熱かったよね?」
「んん......姫様どうされましたか? お、お前!! なぜ姫様にくっついているのだ!! すぐに離れろ変態が!!」
「ご、ごめんな...... 気づいたらこうなっていたんだ」
イリアは俺と体を密着することを何とも思わないということは、俺の事を人間の男だとは思っていないらしい。少し悲しくなる。
「そ、そうだよね! イツキが私たちを襲うなんてことあるわけないもん! も、もちろん嫌だってわけじゃないわよ?」
どこまで話が膨らむのだろうか。俺は二人に無害だということを説明する。そうすると、逆に少し不機嫌になった気がするが、とりあえずは誤解が解けたようだ。
無事二人の誤解を解いた俺は、イリアが持ってきてくれたお茶を飲みながら、任務を遂行すべく精神を集中させた。
そういえば、この世界に来てからゲームやアニメで見られる、いわゆる魔物を見ていない。異世界だけあって魔物はいるらしいが、人間の脅威になるほどの強さを持つ魔物はあまり多くないらしい。せっかくだから見たい気もするが。
「姫様。今夜は野宿になります。ここから少し行ったところにある水場で野宿しましょう」
「そうね。食料も持ってきてあるし、水源の近くにいれば水浴びもできるし、そうしましょう」
野宿か。小さい頃、家族と親せきでキャンプをしたことがある。スーパーで買った肉に野菜、お菓子。それに大人たちはお酒。火の明かりに照らされたその光景は非日常で、わくわくしたのを今でも覚えている。その光景を今度はリリーとイリアと共に共有できるわけだ。
そんなことを考えていると、無事に水場の近くに着いたらしい。リリーとイリアは料理の下ごしらえ、俺は枝などを集めに行くことになった。枝を集めるのは少し非効率すぎるので、俺は光球で、木を切り倒し、薪の様に加工しリリー達のところに戻る。
「お帰りイツキ! さて、イツキも戻ったことだし、食べましょう! 今夜の夕食は鶏肉とパンとグレープよ」
リリーはそういうと、火球で薪に火をつけ、鶏肉を焼いていく。そういえば、今日は忙しいこともあって、朝から何も食べていない。鶏肉の香ばしい匂いに、腹が鳴る。ただでさえ腹が減っているのに、二人が焼いてくれているのだ。この世のどの食べ物より美味しいに違いない。
焚火に照らされる中、リリーは俺に焼きあがった串に刺された肉汁溢れる鶏肉を手渡す。今この瞬間のために生きてきたのだろう。俺は肉を受け取ると、頬張った。
「これは......うまい!!」
「でしょ!! こういうシチュエーションで食べるお肉はおいしんだから!!」
リリーはそういうと、小さい口で丁寧に鶏肉を食べていく。こんな風にリリーとイリアとごく普通の瞬間を過ごせるのは、とても楽しい。なんなら、天使と悪魔とやらに感謝してもいい。俺はそう思いながら、最後に残ったグレープを食べる。
「さて! ご飯も食べたし、私たちは水浴びをしてくるわね!」
「いいか、イツキ。もし姫様を覗いたら、許さないからな」
「ああ、わかってるさ。絶対に覗かない」
俺がそういうとリリー達は水浴びをしに水場に行った。
いやまて。さっき、リリーを覗いたらと言ったが、イリアを覗くことは許されるのだろうか。俺は思わず二人の水浴びを想像してしまう。いや、もし仮に覗いたとしたら、俺の生命はこのイースから遥か彼方に飛ばされるだろう。
それに、リリーとイリアは俺の事を信頼してくれている。少しは見たい気にもなるが、ここで覗いてしまっては二人のことを騙すことになる。それだけはやってはいけないことだ。俺は少し気になりながらも、待つことに決めた。
何分経過しただろうか。リリーとイリアは肌をしっとりさせ気持ちよさそうに戻ってきた。
「さっぱりしたわ! イツキも行ってきたほうがいいよ! 気持ちいいわよ」
最近色々あったし今日も長旅で疲れたが、水浴びをしたほうがいいだろう。俺は頷くと水浴びをしに水場へと向かった。
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目が覚めると金縛りの様に、体が動かなかったことがあるだろうか。俺はある。
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何故この話をしたのかというと、今まさに体が動かないのである。手の先から足の先まで全身が暖かく、お盛を体につけられたように動かない。まだ辺りは薄暗いから、これは幽霊の仕業かもしれない。
俺は恐る恐る目を開ける......
するとそこにはリリーとイリアが俺を抱き枕にするように足を絡ませながら寝ていた。道理で暖かいわけである。幽霊ではないということはわかったが、この状況はよくない。俺が動けば二人は目覚めてしまうだろう。そうすれば、二人に何を言われるかわからない。「偶然でした」と言って信じてくれるだろうか。
どうやら俺には考える時間もないらしい。二人は目を覚ましていた。
「んん...... イツキ早いのね、おはよう...... って! あれ?? 私イツキにくっついてる...... ご、ごめん! 熱かったよね?」
「んん......姫様どうされましたか? お、お前!! なぜ姫様にくっついているのだ!! すぐに離れろ変態が!!」
「ご、ごめんな...... 気づいたらこうなっていたんだ」
イリアは俺と体を密着することを何とも思わないということは、俺の事を人間の男だとは思っていないらしい。少し悲しくなる。
「そ、そうだよね! イツキが私たちを襲うなんてことあるわけないもん! も、もちろん嫌だってわけじゃないわよ?」
どこまで話が膨らむのだろうか。俺は二人に無害だということを説明する。そうすると、逆に少し不機嫌になった気がするが、とりあえずは誤解が解けたようだ。
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