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第四十三話 アミルの死神
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様々な種類の鳥類が朝を知らせる鳴き声を発する頃に地方都市ガインを目指して再び出発した今、俺たちは山を下りガインへ向かう道を歩いている。そして、道行く行商人や羊飼いにこの先の状況を聞きながら歩いている俺たちは衛兵に怪しまれることなくここまで来ている。どういうことかというと、斥候が衛兵を見つけたとしたら、俺たちは複数の班に分かれ衛兵がいるエリアをやり過ごしているということだ。
そんな俺たちは安全に地方都市ガインまでたどり着けると考えていたが、甘かったようだ。斥候の情報によると数キロ先に大隊級の騎士部隊が検問をしているらしい。この情報を聞いた俺たちは地方都市ガインに寄ることを諦め、来た道を引き返した。だが、なんとその先にアムステリアからの帰還兵が疲労困憊の様子でこちらに向かっているようだ。
ここまで運が悪いことが未だかつてあっただろうか。考えていればいくつか思いつくだろうけど、今まさに絶賛ピンチ中なので、俺の頭はないと判断する。
そんなサンドウィッチの具材である俺たちはどちらか一方に近づく他に方法がなく、どうせ戦うことになるなら、ガインで過ごせる方を選ぶべきだという満場一致だった。
「最悪の状態になったわね。どちらに向かえど騎士に見つかってしまうし」
「そうだな。そして、騎士を倒せるとしても我々がユーミール小国連合に潜入していることがばれてしまう。なにかいい方法はないものか......」
ロドリゴ先輩と会長は隊を先導しながら、がっかりした様子で話している。
たしかにこの先の戦闘で勝利したとしても、残党や、そこを通った人々に見つかり役人に知らされてしまうだろう。最悪な状況だ。
「そうだわ! 思いついてしまったけど......」
会長ははっとした表情をしたと思えば、目を伏せている。
「エル! もったいぶらないで言ってくれ」
ロドリゴ先輩がまるでクイズの答えを聞きたくて仕方がない子供のように言っていた。
「わかったわ。これはイツキ君頼りの作戦で確実に遂行できるかわからないけど、イツキ君の魔力を見せつけ、家族を人質にとればと思ったの」
「会長、それはどういうことですか?」
リリーが眉をひそめながら聞いている。
「そんなに心配するようなことじゃないわ。イツキ君なら地方都市ガインを焼き尽くすことだって可能なはずよ。騎士達はガイン出身者が多いだろうから、その力を見せつければ上に報告することを少し遅らせることができると思って」
「なるほど!! ってなりませんよ! 俺にそんな力があると思っているのですか」
「イツキ君はアミルで気絶していたからわからないだろうけど、あの時の未知の技じゃなくても、今のイツキ君なら可能なはずよ」
会長がそういうと周りにいる生徒会メンバーや、A組の生徒は頷いている。どうやら、アミルの街で俺はとんでもないことをしたようだ。
「わかりました。やってみますが、期待はしないでくださいね」
俺がそういうと会長は「もちろんよ」というと、再び渋い顔になり、何やら考え込んでいた。
そんなことを考えては共有しながら歩いていると、ついに検問をしている騎士一行が民の持ち物などを確認している様子が見えた。
「いよいよね。イツキ、あまり気負わないでね」
「リリーありがとう」
俺は短く感謝だけを伝えると、魔素を使用するために深呼吸をし、魔素の流れを感じるために集中する。
すると、面接官に名前を言われる受験生のように体を硬直させるような声が聞こえてきた。
「止まれ!」
前方から声が聞こえ来る。大隊規模、騎士数百人が俺たちを見つめている。
「戦時中のため、怪しい者がユーミールに侵入していないか確かめるために検問をしている。協力願いたい」
リーダーのような風貌をした一人の騎士が近づいてきて、俺たちに話しかけていた。
「わかりました。皆、フードを下して顔を見せなさい」
会長がそういうと、俺たちは深々と被っていたフードを下す。
「随分と若い一行のようだな。それに戦闘経験があるような面構えだ。ガインの騎士養成校の生徒かな?」
どうやら男はガインの生徒と勘違いしてくれているようだ。この様子ならばガインの生徒ということで乗り切れそうだ。
「隊長...... よく見てください。彼らの人数や風貌を...... そして、この国では見られない顔の男がいることを!」
ある女騎士が隊長に近づくとそう言っていた。
「んん? 急になんだね。 ん...... 貴様らまさか!! アミルの死神か!」
俺たちの正体がばれてしまったようだ。それにしてもアミルの死神とは酷い言われようだ。
「ばれてしまっては仕方ないわね。イツキ君、やってちょうだい!」
俺は頷き、特大の天界光を唱えるために集中していると
「いや! 待ってくれ!! 何が望みだ! 金なら可能な限りだす! 頼むから、我々を殺さないでくれ!!」
隊長は手を地面につきながら、頭を下げている。この隊長は俺たちのことを勘違いしているらしい。俺たちは殺すために戦闘を行うような集団ではない。だが、アミルの死神として通っている俺たちは、きっと残党にプロパガンダのように誇張されたに違いない。
「貴様らを殺しはしない。だが、もし仮に俺たちがここにいることをばらせば、貴様らの街が消し飛ぶだろう。イツキ、やってくれ!」
隊長の頭を下げた姿を見てにやりとしたロドリゴ先輩はそういうと、俺に天界光を放つように命じた。その様子は傍から見たらまるで悪役が正義の騎士たちを脅しているような光景だろう。その光景を想像した俺は一瞬躊躇ったが、アムステリアが生き残るために必要なことだと再認識すると、天空に光り輝く大きな光線を出現させた。
「ああ、わかっている! こんなの見せつけられれば、せざるを得ないだろう! 約束するから、この街を破壊しないでくれ!!」
隊長は汗をかきながら、俺たちの顔を強いまなざしで下から見ていた。
「もちろんです。ですが、守らない場合は破壊します」
もちろんする気はさらさらない。だが、自衛のための核のようにこれは必要なことなのだ。俺はそう答えていた。
「助かる! アミルの死神たちよ。噂で聞くよりもずっと、紳士的な連中だ」
隊長はそういうと立ち上がり、俺たちに進むように手で示した。
時間もなく、ゆっくり街で休みたい俺たちは隊長が譲ってくれた道を進んだ。
隊長が言っていた噂がどれほど酷いのか気になるが、ガインの街まではもう少しだ。
噂よりも風呂や美味しい食事に頭を支配された俺は、少し足早にガインに向かった。
そんな俺たちは安全に地方都市ガインまでたどり着けると考えていたが、甘かったようだ。斥候の情報によると数キロ先に大隊級の騎士部隊が検問をしているらしい。この情報を聞いた俺たちは地方都市ガインに寄ることを諦め、来た道を引き返した。だが、なんとその先にアムステリアからの帰還兵が疲労困憊の様子でこちらに向かっているようだ。
ここまで運が悪いことが未だかつてあっただろうか。考えていればいくつか思いつくだろうけど、今まさに絶賛ピンチ中なので、俺の頭はないと判断する。
そんなサンドウィッチの具材である俺たちはどちらか一方に近づく他に方法がなく、どうせ戦うことになるなら、ガインで過ごせる方を選ぶべきだという満場一致だった。
「最悪の状態になったわね。どちらに向かえど騎士に見つかってしまうし」
「そうだな。そして、騎士を倒せるとしても我々がユーミール小国連合に潜入していることがばれてしまう。なにかいい方法はないものか......」
ロドリゴ先輩と会長は隊を先導しながら、がっかりした様子で話している。
たしかにこの先の戦闘で勝利したとしても、残党や、そこを通った人々に見つかり役人に知らされてしまうだろう。最悪な状況だ。
「そうだわ! 思いついてしまったけど......」
会長ははっとした表情をしたと思えば、目を伏せている。
「エル! もったいぶらないで言ってくれ」
ロドリゴ先輩がまるでクイズの答えを聞きたくて仕方がない子供のように言っていた。
「わかったわ。これはイツキ君頼りの作戦で確実に遂行できるかわからないけど、イツキ君の魔力を見せつけ、家族を人質にとればと思ったの」
「会長、それはどういうことですか?」
リリーが眉をひそめながら聞いている。
「そんなに心配するようなことじゃないわ。イツキ君なら地方都市ガインを焼き尽くすことだって可能なはずよ。騎士達はガイン出身者が多いだろうから、その力を見せつければ上に報告することを少し遅らせることができると思って」
「なるほど!! ってなりませんよ! 俺にそんな力があると思っているのですか」
「イツキ君はアミルで気絶していたからわからないだろうけど、あの時の未知の技じゃなくても、今のイツキ君なら可能なはずよ」
会長がそういうと周りにいる生徒会メンバーや、A組の生徒は頷いている。どうやら、アミルの街で俺はとんでもないことをしたようだ。
「わかりました。やってみますが、期待はしないでくださいね」
俺がそういうと会長は「もちろんよ」というと、再び渋い顔になり、何やら考え込んでいた。
そんなことを考えては共有しながら歩いていると、ついに検問をしている騎士一行が民の持ち物などを確認している様子が見えた。
「いよいよね。イツキ、あまり気負わないでね」
「リリーありがとう」
俺は短く感謝だけを伝えると、魔素を使用するために深呼吸をし、魔素の流れを感じるために集中する。
すると、面接官に名前を言われる受験生のように体を硬直させるような声が聞こえてきた。
「止まれ!」
前方から声が聞こえ来る。大隊規模、騎士数百人が俺たちを見つめている。
「戦時中のため、怪しい者がユーミールに侵入していないか確かめるために検問をしている。協力願いたい」
リーダーのような風貌をした一人の騎士が近づいてきて、俺たちに話しかけていた。
「わかりました。皆、フードを下して顔を見せなさい」
会長がそういうと、俺たちは深々と被っていたフードを下す。
「随分と若い一行のようだな。それに戦闘経験があるような面構えだ。ガインの騎士養成校の生徒かな?」
どうやら男はガインの生徒と勘違いしてくれているようだ。この様子ならばガインの生徒ということで乗り切れそうだ。
「隊長...... よく見てください。彼らの人数や風貌を...... そして、この国では見られない顔の男がいることを!」
ある女騎士が隊長に近づくとそう言っていた。
「んん? 急になんだね。 ん...... 貴様らまさか!! アミルの死神か!」
俺たちの正体がばれてしまったようだ。それにしてもアミルの死神とは酷い言われようだ。
「ばれてしまっては仕方ないわね。イツキ君、やってちょうだい!」
俺は頷き、特大の天界光を唱えるために集中していると
「いや! 待ってくれ!! 何が望みだ! 金なら可能な限りだす! 頼むから、我々を殺さないでくれ!!」
隊長は手を地面につきながら、頭を下げている。この隊長は俺たちのことを勘違いしているらしい。俺たちは殺すために戦闘を行うような集団ではない。だが、アミルの死神として通っている俺たちは、きっと残党にプロパガンダのように誇張されたに違いない。
「貴様らを殺しはしない。だが、もし仮に俺たちがここにいることをばらせば、貴様らの街が消し飛ぶだろう。イツキ、やってくれ!」
隊長の頭を下げた姿を見てにやりとしたロドリゴ先輩はそういうと、俺に天界光を放つように命じた。その様子は傍から見たらまるで悪役が正義の騎士たちを脅しているような光景だろう。その光景を想像した俺は一瞬躊躇ったが、アムステリアが生き残るために必要なことだと再認識すると、天空に光り輝く大きな光線を出現させた。
「ああ、わかっている! こんなの見せつけられれば、せざるを得ないだろう! 約束するから、この街を破壊しないでくれ!!」
隊長は汗をかきながら、俺たちの顔を強いまなざしで下から見ていた。
「もちろんです。ですが、守らない場合は破壊します」
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「助かる! アミルの死神たちよ。噂で聞くよりもずっと、紳士的な連中だ」
隊長はそういうと立ち上がり、俺たちに進むように手で示した。
時間もなく、ゆっくり街で休みたい俺たちは隊長が譲ってくれた道を進んだ。
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