平凡学生の俺が転移したら潜在能力最強だった件~6色の魔素を使い世界最強~

カレキ

文字の大きさ
43 / 45

第四十三話 アミルの死神

しおりを挟む
様々な種類の鳥類が朝を知らせる鳴き声を発する頃に地方都市ガインを目指して再び出発した今、俺たちは山を下りガインへ向かう道を歩いている。そして、道行く行商人や羊飼いにこの先の状況を聞きながら歩いている俺たちは衛兵に怪しまれることなくここまで来ている。どういうことかというと、斥候が衛兵を見つけたとしたら、俺たちは複数の班に分かれ衛兵がいるエリアをやり過ごしているということだ。

 そんな俺たちは安全に地方都市ガインまでたどり着けると考えていたが、甘かったようだ。斥候の情報によると数キロ先に大隊級の騎士部隊が検問をしているらしい。この情報を聞いた俺たちは地方都市ガインに寄ることを諦め、来た道を引き返した。だが、なんとその先にアムステリアからの帰還兵が疲労困憊の様子でこちらに向かっているようだ。

 ここまで運が悪いことが未だかつてあっただろうか。考えていればいくつか思いつくだろうけど、今まさに絶賛ピンチ中なので、俺の頭はないと判断する。

 そんなサンドウィッチの具材である俺たちはどちらか一方に近づく他に方法がなく、どうせ戦うことになるなら、ガインで過ごせる方を選ぶべきだという満場一致だった。

「最悪の状態になったわね。どちらに向かえど騎士に見つかってしまうし」
「そうだな。そして、騎士を倒せるとしても我々がユーミール小国連合に潜入していることがばれてしまう。なにかいい方法はないものか......」

 ロドリゴ先輩と会長は隊を先導しながら、がっかりした様子で話している。

 たしかにこの先の戦闘で勝利したとしても、残党や、そこを通った人々に見つかり役人に知らされてしまうだろう。最悪な状況だ。

「そうだわ! 思いついてしまったけど......」

 会長ははっとした表情をしたと思えば、目を伏せている。

「エル! もったいぶらないで言ってくれ」

 ロドリゴ先輩がまるでクイズの答えを聞きたくて仕方がない子供のように言っていた。

「わかったわ。これはイツキ君頼りの作戦で確実に遂行できるかわからないけど、イツキ君の魔力を見せつけ、家族を人質にとればと思ったの」

「会長、それはどういうことですか?」

 リリーが眉をひそめながら聞いている。

「そんなに心配するようなことじゃないわ。イツキ君なら地方都市ガインを焼き尽くすことだって可能なはずよ。騎士達はガイン出身者が多いだろうから、その力を見せつければ上に報告することを少し遅らせることができると思って」
「なるほど!! ってなりませんよ! 俺にそんな力があると思っているのですか」
「イツキ君はアミルで気絶していたからわからないだろうけど、あの時の未知の技じゃなくても、今のイツキ君なら可能なはずよ」

 会長がそういうと周りにいる生徒会メンバーや、A組の生徒は頷いている。どうやら、アミルの街で俺はとんでもないことをしたようだ。

「わかりました。やってみますが、期待はしないでくださいね」

 俺がそういうと会長は「もちろんよ」というと、再び渋い顔になり、何やら考え込んでいた。



 そんなことを考えては共有しながら歩いていると、ついに検問をしている騎士一行が民の持ち物などを確認している様子が見えた。

「いよいよね。イツキ、あまり気負わないでね」
「リリーありがとう」

 俺は短く感謝だけを伝えると、魔素を使用するために深呼吸をし、魔素の流れを感じるために集中する。

 すると、面接官に名前を言われる受験生のように体を硬直させるような声が聞こえてきた。

「止まれ!」

 前方から声が聞こえ来る。大隊規模、騎士数百人が俺たちを見つめている。

「戦時中のため、怪しい者がユーミールに侵入していないか確かめるために検問をしている。協力願いたい」

 リーダーのような風貌をした一人の騎士が近づいてきて、俺たちに話しかけていた。

「わかりました。皆、フードを下して顔を見せなさい」

 会長がそういうと、俺たちは深々と被っていたフードを下す。

「随分と若い一行のようだな。それに戦闘経験があるような面構えだ。ガインの騎士養成校の生徒かな?」

 どうやら男はガインの生徒と勘違いしてくれているようだ。この様子ならばガインの生徒ということで乗り切れそうだ。

「隊長...... よく見てください。彼らの人数や風貌を...... そして、この国では見られない顔の男がいることを!」

 ある女騎士が隊長に近づくとそう言っていた。

「んん? 急になんだね。 ん...... 貴様らまさか!! アミルの死神か!」

 俺たちの正体がばれてしまったようだ。それにしてもアミルの死神とは酷い言われようだ。

「ばれてしまっては仕方ないわね。イツキ君、やってちょうだい!」

 俺は頷き、特大の天界光ヘブンズレイを唱えるために集中していると

「いや! 待ってくれ!! 何が望みだ! 金なら可能な限りだす! 頼むから、我々を殺さないでくれ!!」

 隊長は手を地面につきながら、頭を下げている。この隊長は俺たちのことを勘違いしているらしい。俺たちは殺すために戦闘を行うような集団ではない。だが、アミルの死神として通っている俺たちは、きっと残党にプロパガンダのように誇張されたに違いない。

「貴様らを殺しはしない。だが、もし仮に俺たちがここにいることをばらせば、貴様らの街が消し飛ぶだろう。イツキ、やってくれ!」

 隊長の頭を下げた姿を見てにやりとしたロドリゴ先輩はそういうと、俺に天界光ヘブンズレイを放つように命じた。その様子は傍から見たらまるで悪役が正義の騎士たちを脅しているような光景だろう。その光景を想像した俺は一瞬躊躇ったが、アムステリアが生き残るために必要なことだと再認識すると、天空に光り輝く大きな光線を出現させた。

「ああ、わかっている! こんなの見せつけられれば、せざるを得ないだろう! 約束するから、この街を破壊しないでくれ!!」

 隊長は汗をかきながら、俺たちの顔を強いまなざしで下から見ていた。

「もちろんです。ですが、守らない場合は破壊します」

 もちろんする気はさらさらない。だが、自衛のための核のようにこれは必要なことなのだ。俺はそう答えていた。

「助かる! アミルの死神たちよ。噂で聞くよりもずっと、紳士的な連中だ」

 隊長はそういうと立ち上がり、俺たちに進むように手で示した。

 時間もなく、ゆっくり街で休みたい俺たちは隊長が譲ってくれた道を進んだ。

 隊長が言っていた噂がどれほど酷いのか気になるが、ガインの街まではもう少しだ。

 噂よりも風呂や美味しい食事に頭を支配された俺は、少し足早にガインに向かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜

咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。 そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。 「アランくん。今日も来てくれたのね」 そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。 そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。 「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」 と相談すれば、 「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。 そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。 興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。 ようやく俺は気づいたんだ。 リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...