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第四十四話 ガインの街1
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ここ数日野宿しかしていない俺たちは旅の疲れを癒すために、足早にガインに向かった。そして、無警戒のガインの衛兵はすんなりと俺たちを通した。
「さて! 街についたことだし各自自由行動! だけど、夜の8時にはここの酒場に集合よ」
背伸びをした会長は伸びることをやめると、右側にあるライトアップされた看板が特徴の酒場を指をさしていた。
以前、俺は似たような看板の店に入ったことがある。あれはたしかクリルの街で入った獣人コスプレ酒場だ。同じような酒場だとすると、変な雰囲気になる可能性がある。
俺は会長に近づき、会長にこっそりと教えると
「それくらいわかっているわ。そのほうが楽しいじゃないの!」
そういうとにやりと笑っていた。少し意地悪なことを言う会長の姿を久しぶりに見た気がする。これも気が抜けたおかげだろう。こんなに嬉しそうに笑う会長を止めることはやめるべきだろう。
俺は「そうですね」と言い、リリーとイリアのところに戻った。
「エル会長なんて言っていたの?」
リリーが少し不安そうな表情をしながらそう言った。
「そっちの方が楽しいと言っていたよ」
「実に会長らしい意見だな。最初は緊張するが、慣れれば問題ないし、良いのではないか?」
イリアは腕組しながら頷いている。イリアの言う通り、インパクトはすごいが、時間がたつとただのコスプレ酒場だとわかる。
「そうね。旅の疲れを癒すにはあれくらいの場所のほうがいいのかもね!」
リリーは微笑むと俺に抱き着いてきた。柔らかい感触が全体を包む。
「リリー、皆が見てるよ」
「関係ないでしょ! これが私にとっての癒しなんだし久しぶりなんだからいいじゃない!」
リリーはそういうとさらに強く抱きしめてくる。
「姫様! ずるいですよ! 私もしたいけど、人目が......」
イリアはそういうとぐぬぬと唇を噛んでいる。
正直この状況は俺にとっても癒しではあるが、周りの人々の目線が気になる。ここは早めに銭湯に向かうほうがいいだろう。
「せっかく街に寄ったのだし、風呂入りにいかないか!」
俺がそういうとリリーは力を弱めて俺の顔を見ながら言った。
「そうね! 賛成よ!」
「私も賛成だ。ゆっくりと風呂に入りたい」
「そうと決まれば、早速銭湯に向かおう!」
リリーとイリアは頷くと、俺から一定の距離を保ちながらぴったりと横にくっついている。ときおり、怪訝な目線を感じるが、問題ないだろう。こういうのは感覚の問題だ。そう自分に言い聞かせる。
そんなことを考えているとイリアは銭湯を発見したのか、指をさして言っていた
「ここのようだ」
指の先を見ると、看板に「ゆ」と書かれている。装飾も派手ではないし怪しい店でもなさそうだ。
俺たちは店のドアを開け入ると、大勢の客で賑わっていた。
「いらっしゃいませ! 本日アムステリア南方の砦を落とした記念祭で込み合っています! 可能であればカップル専用の風呂に入っていただきたいのですが」
店員が近づいてきて俺の両隣にいるリリーとイリアを見るとそう言った。
「普通の湯はどれほど待つのですか?」
「そうですねー...... 1時間ほどです」
1時間くらいなら待っても問題ないだろう。俺は「待ちます」と言いかけると
「カップル専用のほうがいいかな......」
リリーはそういうと俺を上目遣いで見つめている。そんな顔をされたら断ることもできず、店員に「カップル専用の方で」と言っていた。
「ひ、姫様は積極的すぎます!」
イリアは脱衣所につくなり、強い語気でそう言っている。
「私たち、もう親しい仲なのだし、いいと思って。 やっぱり控えたほうがいいのかしら?」
リリーはそういうと目を伏せた。
たしかに、リリーは合宿の一件以来より積極的になった。だが、それはキスをしたからであって、当然の変化なのだろう。むしろ、変化していない俺やイリアのほうが可笑しいのかもしれない。
「いや、俺たちがまだ慣れていないだけなのだと思う。リリーはありのままでいるべきだ」
「そう! ありがとうイツキ!」
リリーはそういうと再び抱き着いてくる。
「ずるいですよ! 姫様!」
イリアも今度は反対側から抱き着いてくる。
地球にいた頃では考えれられないようなことが、ここイースに来てから起こっている。ここに転移してきてよかった。そう思いながら俺は風呂に入った。
「さて! 街についたことだし各自自由行動! だけど、夜の8時にはここの酒場に集合よ」
背伸びをした会長は伸びることをやめると、右側にあるライトアップされた看板が特徴の酒場を指をさしていた。
以前、俺は似たような看板の店に入ったことがある。あれはたしかクリルの街で入った獣人コスプレ酒場だ。同じような酒場だとすると、変な雰囲気になる可能性がある。
俺は会長に近づき、会長にこっそりと教えると
「それくらいわかっているわ。そのほうが楽しいじゃないの!」
そういうとにやりと笑っていた。少し意地悪なことを言う会長の姿を久しぶりに見た気がする。これも気が抜けたおかげだろう。こんなに嬉しそうに笑う会長を止めることはやめるべきだろう。
俺は「そうですね」と言い、リリーとイリアのところに戻った。
「エル会長なんて言っていたの?」
リリーが少し不安そうな表情をしながらそう言った。
「そっちの方が楽しいと言っていたよ」
「実に会長らしい意見だな。最初は緊張するが、慣れれば問題ないし、良いのではないか?」
イリアは腕組しながら頷いている。イリアの言う通り、インパクトはすごいが、時間がたつとただのコスプレ酒場だとわかる。
「そうね。旅の疲れを癒すにはあれくらいの場所のほうがいいのかもね!」
リリーは微笑むと俺に抱き着いてきた。柔らかい感触が全体を包む。
「リリー、皆が見てるよ」
「関係ないでしょ! これが私にとっての癒しなんだし久しぶりなんだからいいじゃない!」
リリーはそういうとさらに強く抱きしめてくる。
「姫様! ずるいですよ! 私もしたいけど、人目が......」
イリアはそういうとぐぬぬと唇を噛んでいる。
正直この状況は俺にとっても癒しではあるが、周りの人々の目線が気になる。ここは早めに銭湯に向かうほうがいいだろう。
「せっかく街に寄ったのだし、風呂入りにいかないか!」
俺がそういうとリリーは力を弱めて俺の顔を見ながら言った。
「そうね! 賛成よ!」
「私も賛成だ。ゆっくりと風呂に入りたい」
「そうと決まれば、早速銭湯に向かおう!」
リリーとイリアは頷くと、俺から一定の距離を保ちながらぴったりと横にくっついている。ときおり、怪訝な目線を感じるが、問題ないだろう。こういうのは感覚の問題だ。そう自分に言い聞かせる。
そんなことを考えているとイリアは銭湯を発見したのか、指をさして言っていた
「ここのようだ」
指の先を見ると、看板に「ゆ」と書かれている。装飾も派手ではないし怪しい店でもなさそうだ。
俺たちは店のドアを開け入ると、大勢の客で賑わっていた。
「いらっしゃいませ! 本日アムステリア南方の砦を落とした記念祭で込み合っています! 可能であればカップル専用の風呂に入っていただきたいのですが」
店員が近づいてきて俺の両隣にいるリリーとイリアを見るとそう言った。
「普通の湯はどれほど待つのですか?」
「そうですねー...... 1時間ほどです」
1時間くらいなら待っても問題ないだろう。俺は「待ちます」と言いかけると
「カップル専用のほうがいいかな......」
リリーはそういうと俺を上目遣いで見つめている。そんな顔をされたら断ることもできず、店員に「カップル専用の方で」と言っていた。
「ひ、姫様は積極的すぎます!」
イリアは脱衣所につくなり、強い語気でそう言っている。
「私たち、もう親しい仲なのだし、いいと思って。 やっぱり控えたほうがいいのかしら?」
リリーはそういうと目を伏せた。
たしかに、リリーは合宿の一件以来より積極的になった。だが、それはキスをしたからであって、当然の変化なのだろう。むしろ、変化していない俺やイリアのほうが可笑しいのかもしれない。
「いや、俺たちがまだ慣れていないだけなのだと思う。リリーはありのままでいるべきだ」
「そう! ありがとうイツキ!」
リリーはそういうと再び抱き着いてくる。
「ずるいですよ! 姫様!」
イリアも今度は反対側から抱き着いてくる。
地球にいた頃では考えれられないようなことが、ここイースに来てから起こっている。ここに転移してきてよかった。そう思いながら俺は風呂に入った。
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