平凡学生の俺が転移したら潜在能力最強だった件~6色の魔素を使い世界最強~

カレキ

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第四十五話 ガインの街2

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 風呂を出て、食事や見知らぬ街を楽しんでいると既に日は落ちていた。楽しいときの時間が過ぎる速さは異常だ。特に今日は時間の流れが一段と早かった。なぜなら、アムステリア南方の砦を落とした記念祭をあちこちの店でやっていたり、催し物が開かれていたからだ。記念祭が開かれていることは俺たちを嫌な気持ちにさせたが、敵国にいるのだから我慢するしかないだろう。



「もう7時になるのね」

「ええ、楽しいときは時間の流れが速いですね」



 リリーとイリアも同じことを思っているのか、物足りなそうにしている。俺も二人とはまだまだ遊び足りないが、会長の指定した時間まで残り1時間を切っている。1時間でできることはあるだろうが、遅刻すれば会長のことだから罰ゲームか何かを行うだろう。とすれば、早めに酒場に向かうほうがよさそうだ。



 俺はリリーとイリアにそう伝えると、二人も納得してくれたので、酒場に向かった。







 酒場に入るとまだ他の生徒は着いていないのか、いるのは会長とルルだけであった。



「イツキ君たち、早かったのね!」



 会長はそういうと、にやけながら手招きしている。



「会長、何か企んでいますね......」



 リリーはそんな会長の様子を察したのか尋ねていた。



「ふふふ。ばれてしまったようね! 記念祭がこの街のあちこちで行われているじゃない? そして、このお店でも催しが夜8時に行われるみたいなの」



 会長は綺麗な髪をなびかせながら言っていた。



「そういう理由で、終始にやけていたんですね。それで、内容はどういうものなんですか?」



 再びリリーが尋ねると、会長はしたり顔で答えていた。



「それはね! 愛の告白ゲームよ! 8時になると数字が書いた札が配られるの。それで、コスプレをした店員さんが箱に入った札を取っていくから、あたった人は誰かしらに告白をしなければいけないということよ!」



 会長の言葉に俺たちは唖然とした。会長のことだからなにか企んでいるとは思っていたが、まさか愛の告白ゲームとは思わなかった。リリーとイリアを見ると同じ意見らしく、ぽかんと口を開けている。



「なぜそんなゲームに参加しようと思ったんですか?」



 俺が尋ねると会長は肩にかかった髪を払うと、今度は真剣な表情で答えた。



「今は戦時中じゃない? これから先、いつ命を落とすか分からないわ。だから、もし気になる人がいれば今のうちに伝えておいた方がいいと思って」



 会長がそう言うとリリーもイリアも目を伏せていた。そして、俺も傍から見たら考え込んでいるように見えるだろう。会長の言う通り、今は戦争中でいつ死んでも可笑しくはない。だから、気になる人がいれば、今のうちに伝えるというのは理にかなっている。理にかなっているのだが、エル会長から恋愛絡みの言葉を聞くとは思わなかった。エル会長は常に忙しそうにしていたし、休暇のときも恋煩いのような様子は見られなかったからだ。



 そんな様子を察してかルルがカップに注がれた紅茶を飲むと、話していた。



「エルちゃんはロドリゴ先輩のことが好きなのです......」



 そんなルルの言葉が予想外だったのか、会長は頬を赤らめ唇を尖らせていた。



「そ、そんなわけないじゃないの! ルルちゃん、それは誤解よ!」

「そうなのです......」



 この様なやり取りが繰り広げられていたが、会長は観念したのかついに首を縦に振った。



「いつからですか?」



 イリアが尋ねていた。



「中等部のときからよ。アミル潜入の時にちらっと聞いただろうけど、私たちは幼馴染なのよ。だから、ロドリゴとは幼い時から常に一緒にいて、気づいたら好きになっていたというわけ......」



 ロドリゴ先輩がエル会長を好きなことは出会った時から薄々気づいてはいたが、まさか両思いだとは思わなかった。



「でも、好きなら何故告白をしなかったのですか?」



 俺の問いにエル会長は



「女の子から告白するのって嫌じゃない? 私はロドリゴが告白するのを待っているのよ。今回だってそれを期待しているわ」



 またもやいつもの会長らしからぬ発言に俺たちは、驚愕する。エル会長も女の子らしいところがあったようだ。会長は指を何度も交差させながらそう言っていた。



 会長はロドリゴ先輩が告白してくることを望んでいるようだが、ロドリゴ先輩が今まで告白をしてこなかったことを聞くと、自らするとは思えない。ということは、外野である俺がロドリゴ先輩を説得しなければいけないということだ。後でロドリゴ先輩にそれとなく伝えたほうがいいだろう。



「会長、ロドリゴ先輩が告白してくれるといいですね」



 可哀想に思ったのか、リリーは会長に近づくとエールを2つ頼んでいた。



「ええ、そうなればいいのだけど......」



 会長は目を伏せてエールを眺めていた。



 俺はここで会長にロドリゴ先輩に今聞いたことを伝える予定だと話すこともできる。だが、もし言えば、会長はきっと俺が言うことを止めるだろう。会長はそういう人だ。ロドリゴ先輩が考え行動してほしいのだろう。



 そんなことを考えているとルルは再び話しかけていた。



「リリーちゃんとイリアちゃんはどうなのですか?」



 ストレートな質問に対して、俺たちは何も答えることができなかった。この国では一夫多妻制は認められてはいない。だから、一人を選ぶということは必然的にこの関係を崩すことになるのだ。



「アムステリアでは認められていないけど、南方にある島国ジャポラだったら一夫多妻制は認められているはずよ」



 見かねたのか、会長が沈黙を破っていた。



 俺が南方の島国にいくことは問題ない。だが、リリーは次期皇帝だし、イリアはリリーの懐刀なのだ。もしリリーとイリアが同意してくれたとしても、家族が許すわけがない。



 俺が頭を抱えていると、二人は俺に向き直っていた。



「イツキは私の婿さんになればいいわ! そして、法律を変えればいいじゃない! それが叶わなければ、私はジャポラに行くわ!」

「私も姫様と同じ意見です。イツキは男らしく『何も考えず、ついてきてくれ』と言っていればいいのだ」



 リリーとイリアはそう答えてくれていた。ということは、二人と結婚してもいいということになる。だが、念のためにもう一度聞いたほうがよさそうだ。



「本当にそれでいいのか?」



 俺がそういうとイリアはジト目で俺を見ながら答えた。



「私たちが決定したのに聞き返すとは、乙女心がわかっていないな! わ、私たち二人はイツキのお嫁さんになると言っているのだ!」



 イリアの言葉に同意なのか、リリーも首を何度も縦に振っていた。



「ふふふ。イツキ君はこんなに可愛い二人のお嫁さんを貰うことができて幸せね!」



 会長は円満に事が進むことが分かったのか、満面の笑みで俺たちを祝福してくれていた。



「おまえたち! 早いな!」



 ロドリゴ先輩の声が入口から聞こえてくる。どうやら1時間近く話をしていたようだ。時刻は8時を回ろうとしていた。



「ロドリゴ先輩! ちょっといいですか?」



 俺はエル会長の隣に座ろうとしたロドリゴ先輩に話しかけていた。ここで誰かが声をかけなければ、今から始まる愛の告白ゲームでロドリゴ先輩はエル会長に告白しないだろう。



「ああ、もちろんだ!」と言ったロドリゴ先輩を酒場の外に連れ出すと、なぜ告白しないのか尋ねた。



「そ、それは...... もし、エルに振られたとしたら、今の関係ではいられないだろ? 俺はそれが怖いんだ。というか、俺が好きなのを知っていたのか!」



 どうやらロドリゴ先輩はケースは違えど、俺と同じことで悩んでいるようだった。



「ええ、ロドリゴ先輩がエル会長を見る目は愛そのものですからね!」



 俺がそう言うとロドリゴ先輩は顔を赤くしていた。誰にもばれていないと思っていたのだろう。



「でも、なんでこの状況で聞いてきたんだ?」

「それはエル会長もロドリゴ先輩を好きなように感じたからです」

「それは本当か!?」

「正直に言えば、分かりません。でも、今は戦時中で告白しておかなければ明日にはできないかもしれません」



 俺がそう言うと、ロドリゴ先輩は腕組をしながら考え込んでいた。



「イツキの言いたいことはわかる。だが......」



 どうやらロドリゴ先輩はかなり慎重派らしい。だとすればロドリゴ先輩には危機感を覚えてもらうしかない。俺はロドリゴ先輩を煽ることにした。



「もしかしたら、別な生徒にエル会長を奪われるかもしれませんよ? 実は今、酒場では愛の告白ゲームが行われているのです」



 俺はロドリゴ先輩に酒場でゲームが行われていることを話した。すると



「そんなゲームが行われているのか!? エルを奪われるわけにはいかん! 早速中に入るぞ!」



 ロドリゴ先輩は酒場のドアを豪快に開けると、中では愛の告白ゲームは既に始まっていた。



「続きまして! 88番をお持ちの方!」



 猫耳を付けた女性店員がそういうと、体格がいい戦士のような男が立ち上がっていた。



「俺だ!」

「じゃあ、愛の告白を!」



 猫耳店員がそういうと、男はその店員に向き直り、頭を下げていた。



「リアちゃん! ずっと前から好きでした! つきあってくださああああああい!」

「ありがとう!! いつもありがとうね、ランズさん! じゃあ、今度デートに行きましょう」



 猫耳を付けた店員はそういうと、男の手を取り、空いてる席に誘導していた。本来、酒場で行われる愛の告白ゲームは店員に告白するゲームだったのだろう。呼ばれる番号の見知らぬ男たちは、コスプレをした店員に告白をしていた。



「続きまして! 69番をお持ちの方!」



 うさ耳を付けた店員がそういうと、俺の隣にいるロドリゴ先輩は札を2度見し、そして立ち上がっていた。



「俺だ!」

「じゃあ、愛の告白を!」



 うさ耳を付けた店員がそういうと、ロドリゴ先輩は深呼吸をすると外にも聞こえそうな大声で愛を告白していた。



「エル アルジャンテ! 関係が壊れるのが怖くてずっと言えなかったことを今から言う! 今日、イツキに『他の誰かがエルの彼氏になるかもしれない』と言われて思ったんだ。俺はエルを他の誰かに奪われたくないんだ!」



 それを聞いていたA組の皆は目を潤ませていた。そして、エル会長の頬にも涙が伝っていた。エル会長の顔はくしゃくしゃで目は充血し、瞳からは溢れんばかりの涙が出ていた。



 酒場は静まり返っていて、俺たちはロドリゴ先輩の言葉の続きを息をのんで待っている。



 すると、ロドリゴ先輩は深呼吸をするように、口から空気を目一杯吸うと続きを話した。



「ずっと前から! 中等部の時から、エル アルジャンテのことが好きでした!! 付き合ってください!!」



 ロドリゴ先輩は肺にある空気を全部使いきったかのような大声で告白すると、エル会長は涙を浮かべながら満面の笑みで答えていた。



「遅いわよ!! ずっと待ってたんだから!! 馬鹿ロドリゴ!」



 会長は立ち上がると、ロドリゴ先輩に近づき、胸板を拳で何回も叩いていた。



「それじゃあ......」

「ええ! もちろんよ! 私と付き合ってください!!」



 エル会長がそう言うと、酒場全体から拍手や口ラッパが聞こえてきた。



「おめでとうエル!」

「エルちゃん、おめでとうなの......」

「エル会長おめでとうございます!」

「ロドリゴ先輩、よかったですね!」



 A組の皆や、この酒場に来ていた人々は二人を祝福していた。こんなにも心が温かくなったのは、いつぶりだろうか。俺はロドリゴ先輩とエル会長に近づき「おめでとうございます!」というと二人同時に



「こちらこそ、ありがとう!」



 と答えていた。

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感想 1

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みんなの感想(1件)

獏睡
2020.01.22 獏睡

ストーリーはノンストレス無双系で分かりやすくていいと思います。
しかし、キャラそれぞれの語調が不安定で、今どのキャラが喋ってるか分かりにくいです。
後は、それぞれのキャラが生きていないというか、こういう口調や態度をするならこういう考え方だろうみたいな不変的ステレオタイプと異なる感じが、違和感を生んでいる気がします。
処女作で、ここまで評価を頂ける作品を作る構想・創造的な力は素晴らしいものがあると思います。
これからも応援しております。

2020.02.03 カレキ

感想ありがとうございます! 遅くなりすみません。

キャラの個性に関していえば、私なりに語調を変えてはいるのですが、いかんせん何が悪いのか良いのか分からなかったので、貴重な意見をもらえてうれしいです。

キャラの口調や態度から想像できる人物の性格に関していえば、全くその通りだと思います。今後このキャラならどう考えるかを想像しながら作品に登場させていきたいと思います。

処女作ではありますが、ここまで読んでいただき、そして感想まで... ありがとうございました!


解除

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