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第4話 食用ナイフと黄金の剣

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夜、酒場はここ最近では一番盛り上がっていると村長は言っていた。
 クリスタルで魔力供給された、電球は温かみのある色で酒場を照らし、埃被っていたはずの酒場の料理場からは、香ばしい匂いがしてくる。

 そんな中、クリスタル鉱山から戻った大勢の人々に囲まれながら俺とリスティアは、歓喜の声が沢山かけられた。

「ありがとうございます! ジーク様! 聖女様!」
「いえ、私は何も..... ジークがすごいだけなので」

 リスティアは微笑みながら手を横に振る。

「そんなことはありません、聖女様がいるだけで、私たちは安心して生活できるのですから」

 中年の女はそう言うと、聖女に頭を深々と下げていた。それをみて、リスティアは苦笑いしながら、軽く会釈している。
 俺はそんな微笑ましい光景を見ながら、エールを口に含むと前方から今度は若い男の声が聞こえてきた。

「なあ、ジーク様、聖女様」
「どうした?」
「実は頼みがあるんだ。その頼みってのは、この村のことだ。ジーク様と聖女様のおかげでこの村は良くなった。だけど、根本が解決されないとまたもとに戻る。だから、お願いだ! この村に来る、クリスタル回収係の騎士ガレフを倒してほしい!」

 そう言うと、男は頭を下げていた。

「もちろん、その予定だから安心してくれ」

 俺はこの村を助ける予定だった。流石にここまで、困窮している状況を見放させない。
 俺がそう言うと、男は頭を上げる。

「いいのか!?」
「ああ。任せてくれ。ティア、あれをくれないか?」

 俺はリスティアの聖女の署名付きの紙が欲しかった。
 悔しいが、この国で俺が『この村で搾取することは禁止する』なんて署名付きで発行したところで、効力なんてまるでない。

 そんな俺の意図を分かってくれたのか、リスティアは頷き、紙に何やら書いていた。
 やがて書き終わったのか、リスティアは指を上下に動かしながら紙をその男の手元にふわふわと落としていく。

「これでしばらくは大丈夫なはずです。私の署名があれば、王や貴族たちも行動は出来ないでしょう」

 そう、聖女であるリスティアはそれだけの権力を持っている。それはこの国だけでなく、他の国でも同様だ。この世界には、魔族が潜んでいる。今は平和だが、魔の力を削ぎ落す役割として、聖女は重要だからだ。

「ありがとう! 聖女様! ジーク様!」

 男はそう言うと、その紙を手に持ちどこかに消えていった。

「ねえ、ジーク。ガレフはどうするの?」

 リスティアは賑やかな酒場で俺たちの会話なんて聞こえていないというのに、俺に近寄っていた。

「おい、ティア! なんか近いぞ! そこまで近づかなくても大丈夫だろ」
「そんなに近くない!」
「わかったよティア! だから、そんなにむっとするなって!」

 酒に酔っているのか、顔を赤くしながらむっとしていたが、ティアは酒場の入り口で何かを発見したのか、俺の袖を引っ張っていた。

「どうした、ティア?」
「ガレフ!」

 俺はティアが指さす方を見ると、全身金色の鎧に覆われた男がこちらに向かっていた。

「聖女様! お初にお目にかかります。珍しく、この村が活気づいていたので来ました。私は、騎士ガレフ! その名を聞いたことがあるのでは。私は――」
「それで、ガレフ。何の用だ」
「おい、聖女の従者ごときが、この私に口を聞くな!」

 ガレフはそう言うと、咳払いをする。
 俺はどうせ後で突っかかってくることが分かったので、黙って聞くことにした。

「聖女様。さきほど、村長にこのような紙を渡されたのですが、一体どういう事でしょうか?」
「ガレフ様。書いている通りです。この村への干渉はおやめください」

 リスティアがそう言うと、ガレフはため息をついた。

「聖女様。ご無礼をお許しください。その件は承知しました。ですが、先ほどの従者の件は許すことなどできませんぞ!」

 ガレフはそう言うと、金色にコーティングされた剣を抜き放ち、俺を見てにやりと笑っている。

「ジーク、どうするの?」

 リスティアはその光景を見て、呆れたように言っていた。

「どうするも何も、プライドが高い貴族様らしいので、相手をするしかないだろ」

 俺はにやりと笑っているガレフの前まで進むと、ガレフは間髪入れずにで剣を俺に振るっていた。
 だが、予定していた攻撃よりも何十倍も遅い攻撃に俺は、驚きながら相手の剣を指でつまみ、左手で食用ナイフを持ち、右足を数歩分前に動かす。
『ハデン流』1の型。俺が得意な型で、攻撃を得意とする型だ。
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