【完結保証】宮廷仕えの聖女の護衛は、王や宰相から追放を言い渡される~聖女の護衛の任は表向きの話。平和のために俺は帝国を黄金時代へと導く~

カレキ

文字の大きさ
15 / 52

第15話 平和路線反対派を捕えるための罠を仕掛ける

しおりを挟む
ニールを拘束し、アシスヘイム城へと戻るとティアとリリーザは俺を待っていた。

「ありがとう! 本当にありがとうだ! ジーク!」

そう言いながら、ツインテールの髪を揺らす。
そんなリリーザは妹のようにかわいい。

「なに、そんな大したことじゃない」
「でも、リリーザちゃんを暗殺しようとしていたのが、補佐官だったなんて」

俺はティアの言葉に頷いた。補佐官はリリーザの側近だ。
それに、側近であるのが厄介で、階級こそ高くはないが、発言力がある。

「それが厄介だな。発言力があるニールが暗殺を企てたという事は、他にも仲間がいる可能性が高い」

「うーん! 私も平和的な路線を気に入らない奴らがいることは知っていたぞ! でも、ジーク。どうすればいいのだ?」

「急だが、明日、大勢の民衆の前で俺たちの就任式を行おう。そうすれば、聖女とクルザ出身の俺を見に大勢の人が集う。そんな絶好の機会を反対派は逃すわけがない。そこを俺の魔法でどうにかする」

就任式を行えば、クルザ出身の俺や魔の力を削ぐ聖女見たさに人が大勢集まる。
そんな就任式でリリーザをあえて狙いやすい場所にいさせれば、平和路線反対派は必ず食いついてくる。

今後二度とそんなチャンスはこないかもしれない状況で、クルザ出身の俺を殺すことや平和路線を止めるチャンスが転がっているんだからな。

まさに一魔法二鳥だ。

だが、それは俺たちにとっても一魔法二鳥だったというわけだ。
リリーザを助けることで俺の印象が良くなるし、反対派も片付けられる。

「流石はジークだぞ! だが、具体的にはどうするのだ?」
「アシスヘイム広場を使う」

アシスヘイム広場はアシスヘイム城へと続く大通りにある広場だ。
そんなアシスヘイム広場はかなりの広さがあり、大勢の民衆を集めることもできるし、周りにはちょうどいい高さの建物があるため暗殺するにはもってこいの場所だ。

俺はそのことをティアとリリーザに伝える。

「おおー! なるほどなるほどな! ジークとティアが広場中央で民衆を釘付けにしている間、私はあえて民衆の目が届かないところにいればいいんだな!」
「まぁ、そう言うことだな」

俺がそういうとリリーザは広場を指さす。

「じゃあ、早速行こうではないか!」




というわけで、俺たちは広場に着く。

「まずは俺とティアが目立つための高い演説台を作ろう」

俺はそう言うと、予め魔法で持ってきていた木々を丁寧に加工し、演説台と梯子を形作る。

「なんと! 魔法はそんなこともできるのか、ジーク!」
「リリーザちゃん。これはジークだからできるのよ。普通の人は出来ないわ」

そんな二人の会話を『いや、簡単にできるはずなんだけどな』と思いながら、数分で演説台を作り上げる。

すると、広場にいた帝国民からは色々な声が聞こえてくる。

「おいおい! 魔法使いがいるぞ!」「恐ろしいわ! 早く逃げましょう!」「でも、すごいね! お母さん」

うん。真っ当な反応だ。

「して、次はどうする?」
「次は待機場所だが、待機場所は演説台からなるべく離れた場所に陣取ろう」

俺は馬車30台分のところに簡易な待機場所を作る。
そして、杖を出し魔法陣を描く。

「これはなんだ?」
「幻影の魔法陣。幻の人を出現させる魔法陣だわ」

流石はティア。この魔法は幻影の魔物を倒さないと覚えられないんだが、ティアは倒しているようだ。

「明日、この魔法陣を起動すれば、敵は罠の可能性を疑わない」
「おおーー!! すごいな! すごいぞ! 魔法は! して、次は次は??」

俺の袖を引っ張るリリーザに俺は辺りを指さす。

「この辺りには高い建物がある。そこからなら容易にリリーザを狙うことができるだろ? そいつらを捕える魔法を設置する」
「おおー! すごいなジーク! 早速行こうではないか!」

俺は袖を引っ張るリリーザを止める。

「待ってくれ、ティア。右側の建物に拘束の魔法陣を設置してくれないか?」

するとティアは微笑む。

「任せて」

そう言うとティアは右側の建物に向けて歩きだしたので、俺たちも左側の建物に向かった。

「さて、これからは地味だ」

俺はそう言うと狙うことができる高さまでリリーザを抱えながら空中に浮遊する。

「と、飛んでるぞジーク!! 私は飛んでるぞ!」

大はしゃぎしているリリーザ。
そうか。リリーザは魔法があまり得意じゃなかったんだった。

「ああ、落ちないように気を付けてくれよ」

俺はリリーザにそう言いながら、片方の手で杖を取り出し窓の近くの壁に魔方陣を描いていく。

「これは何の魔法陣なんだ?」
「言った通り拘束の魔法陣だ。武器を持った奴がこの窓を開ければ、魔法の壁によって拘束される」

まぁ、絶対拘束されるわけじゃないんだがな。強い魔法使いなら簡単に抜け出せる。

「おおー!!」

リリーザは目をキラキラさせながら、工程を見守っていた。

「よし! できたぞ! あとは、最後に民衆の中からリリーザを襲ってくる奴に対処するために、リリーザに召喚獣を持たせる」

再び魔法陣を描くと、魔法陣は赤く光だし、火で燃えている。

「なんだ! 今度は何が出てくる?」
「リザードだ」

リザードは手のひらにすっぽりと収まるサイズのかわいい小さな火を噴くトカゲ。
だけど、その強さはサイズとは比例しない。
かわいい見た目とのギャップもあって、クルザの貴族の女には人気の召喚獣だ。

リザードは魔法陣からぴょんとリリーザの手のひらへと着地する。

「うわーー!! かわいいぞ! こやつ、かわいいぞ!」
「だろ? なんなら、そのリザードをあげてもいいぞ?」

リリーザがここまで喜んでくれるのは嬉しい。まるで妹のようだ。
少し魔力は使ってしまうが、微々たるものだ。

「いいのか? ジーク!」
「ああ、もちろんだ!」
「やったー!」

ツインテールを紐のように揺らすリリーザと俺はティアと合流すべく、広場へと向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...