最強の召喚魔法を駆使して生きて!〜亡命の召喚騎士、生き延びるため必死に抗う~

DORA

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首切りと【戦意喪失】

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俺は突然の『声』にうずくまった。
対して、女生徒はセリアに向かって提案をした。


「セリア様!カーズくんだっけ?こんな奴無視して一緒に逃げましょう」
「…」
「セリア様?」


セリアから返事は返ってこなかった。



ズシャアアアアア!



「あ…あ…」



それもそのはず。
首切りだ。
温厚そうなセリアの顔は首ごと、鋭い刃のようなもので飛ばされていたのだ。



「セリア様ー!?」
「チッ!」


新手だ。
既に俺たちの前には、人間のゆうに2倍は超える巨体のトカゲが出現していた。
二足歩行のトカゲ。通称『リザードマン』。
リザードマンは聖女セリアの首を飛ばし、満足そうに奇声をあげる。


「キシャアアア!」

「セリア様…嘘でしょ」
「おい、ヤベえぞコイツは!」


リザードマンは力もさることながら、知性においてもモンスターとしては『それなりの動物』だ。
現にセリアの首を飛ばした武器として、鋭利な刃のついたオノを装備していた。
これは知性のないモンスターにはできない行動だ。

知性を持ったモンスターが明確に統率されている。
卒業試験の明らかな違和感。
その正体がようやく見え始めていた。


「カーズくん、危ない!」
「なっ…」


ズシャアアアアア…


しかし、考える間もなくリザードマンは俺にオノで一撃を浴びせた…。
忙しい敵だが、これを喰らってやるほどマヌケでもない。


「回避だ」
「ギッ!?」


ブ…ン…

リザードマンのオノは空しく宙を舞った。


「今のはスキル『残像剣』!?」


女生徒は、俺の動きに思わず声を上げた。
興奮のあまり、続けて喋る。


「残像剣!剣スキルを極めた者だけが習得できる幻の回避スキルをイチ生徒のカーズくんがっ?」
「…」
「カーズくんはいったい何者!?」


女生徒は分かりやすいリアクションで驚き、叫んだ。

残像剣ってなんだ?
そもそも俺は剣すら持っていない。

こちらからいえばスキルでもなんでもない、ただの回避なんだが。
ことわっておくが、俺の身体能力が異常だ、とか神に選ばれた勇者だ、ということも断じてない。
なぜなら、このくらいの回避運動を行う者は俺の回りに山ほどいたからだ。


「おいっ。女生徒!」
「はいっ!?」
「俺がひきつけるから、攻撃しろっ」
「ええ!?」
「俺は武器を持ってきてないんだ」
「えーなんで!大事な卒業試験だよ!?」

「なんでもいい、ホーリーアローとかいうのでいい!」
「ア…アイスストーム!」


女生徒の手から氷の刃が出現し、そしてリザードマンめがけて飛んでいく。
そして、その攻撃は見事に背中にヒットした。


「ギッ!?」
「直撃!やったああ!」


しかし、リザードマンには全く些細な攻撃だったようで、動きが落ちる様子もない。


「おい全然効いてないぞ!」
「そんな…氷属性は効果がない!?」


ちなみに魔法においての俺の見解だが。
属性や相性とやらもさほど関係性はない。
断じてない。
したがって、女生徒のアイスストームは単純に威力が雑魚の可能性がある。

強い魔法は強く、弱い魔法は弱い。
ただし弱い魔法でも、リザードマンを殺すくらいの殺傷力は本来あるはずだが。


「そんな…直撃だったのに」


女生徒はショックで戦意喪失し、その場に座り込んだ。
本日2回目の『戦意喪失』だ。


「クソッどうすんだよ」


連撃で繰り出されるリザードマンの攻撃をかわしつつも、俺は若干焦り始めた。
なんせ俺には攻撃手段がない。
なぜなら今まで、攻撃手段の必要さえない人生だったからだ。


(…けて)


再び頭の中に声が響く。


(…助けてやろうか?)
「いやいい!」


俺は頭の『声』に即答した。
拒否だ。
『声』のこいつには、なるべく貸しを作りたくない。


(…助けてやるよ)
「いや!だからいい!」

(困っているんだろ?)
「困ってない!全く困ってない!」

(じゃあ…)


頭の中の『声』が聞こえなくなり、ホッとしたのも束の間だった。


「じゃあ勝手に助ける」
「ギイイイイッ!?」


その言葉とほぼ同時に、リザードマンは『骨化』していた。
正確いうと、地獄の炎によって瞬時に焼き尽くされたのだ。


「え…」


女生徒は驚愕のあまり言葉を失う。
その驚愕は骨化したリザードマンより、突如現れた金髪の美しい女に向けられていた。
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