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アイスストームと【魔法祭典】
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ティナのこと抜きにしても、ここまで話した校長が俺を見逃すはずないだろう。
殺る以外に逃げ道はない。
スキルでもなんでもない。
俺は経験と勘からこの危険な状況を即座に感知した。
「喰らえ校長!」
俺はノータイムで校長の心臓めがけてナイフを突き出した。
ナイフは素人でも心臓さえ狙えばどんな人間だって一撃なはずだ。
「カーズくん横!」
「…えっ?」
「グアアアア!」
「速い!?」
ドコッ!
気づかぬうちに接近していたブラックグールというかゾンビの攻撃が俺にヒットする。
やはり知性が感じられないため、ゾンビという表現が的確だろう。
「グハッ!いつの間に」
「カーズくん!」
あまりの威力に俺は吹っ飛ばされた。
痛い…これだから戦闘というのは苦手なんだ。
この一撃はティナには意外だったらしく、絶望を強めて俺に問いかける。
「えっカーズくん強くなかったの?」
「俺が強い、わけないだろ」
「幻の剣スキル『残像剣』使えるんだし!もっと頑張ってよ」
「何回もいうが、残像剣ってなんだよ!」
「なら伝説の剣スキル『夢想剣』でもいいよ!校長を倒して」
「?なんだそれ」
ティナは絶望しながらも、俺を励ますあたり、『自分も殺される』と肌で感じているんだろう。
だが…
「ティナはたいしたもんだよ」
「えっ」
「俺に殺されそうになっても、校長から真実を告げられそうになっても、それでも生きようとしている。ものすごいポジティブだな」
「なにそれ褒めてるの」
「俺はティナが奴隷だと知って、驚いた。なぜなら奴隷にティナのような明るいヤツはいなかったからだ」
実際ティナは、もう立ち直っている。
校長から真実を告げられた時点で、普通の人間なら絶望のあまり立ち直れないだろう。
いやそもそもティナは、心に深い傷を抱えていた奴隷にさえ全く見えなかった。
てっきりリアル充実していた学生かと…
ティナが底抜けのバカでポジティブなバカであることが理由として考えられる。
それともう1つ、太陽のように明るいバカのようだ。
「いいから校長をやっつけてよ」
「?」
「私の居場所を奪った校長をやっつけて!カーズくんお願い!」
やっぱりそのティナでも悔しいのか。
ともあれこの校長は殺さないことには活路はない。
ようするに俺とティナは今、利害が一致している『仲間同士』ということだ。
「俺が前に出る。魔法で援護しろ」
「カーズくん!なにかとっておきのスキルが!?」
「しっかり援護しろよっ」
ダッ
いくら雑魚ティナとはいえ、それなりの攻撃方法はあるはずだ。
一瞬でも足止めできればあるいは…!
素人の俺でも注意さえ逸らせれば、校長の心臓にナイフを突き立てることは可能なはず。
「いまだっティナ!」
「アイスストーム」
「またそれかよっ」
それしかないのか。
思わずティナにツッコんだ。
氷の刃を作り出す魔法だが、ティナのはとても期待できない性能だ。
だがその落胆に反して、ティナの唱えた氷の魔法は以前の数十倍の大きさだった。
「えっ…!」
「氷の刃がデカい!?力を隠していたのかティナ」
「知らない!私知らないっ」
魔法を唱えた本人のティナが逆に驚いている。
どういうことだ?
大きい氷を見ると、妖しい光をまとい、紫水晶のように薄く黒光りしていた。
見覚えがある。
これは闇魔法『黒の魔法祭典』。
他者の魔法の威力を何倍、何十倍にも高めるリリスおなじみの闇魔法だ。
「さてはリリスのヤツ!」
姿を見せないリリスだが、この気まぐれはありがたい。
そして『貸し』なしで手助けとは珍しい。
期待はしていなかったが、ティナのことをよほど気に入ったんだろうか。
「カ、カーズくん!?どうすれば…」
「とにかくそれを放て!校長でもゾンビでもどっちでもいい!」
「いっけえええ!アイスストーム!」
ドカーン!
ティナの放ったアイスストームは、校長がやっとの思いで出したゾンビを体ごと貫いていた。
とてつもない即死級の威力だ。
校長はまさかの結果にしばし呆然とする。
もちろん、このチャンスを逃すほど愚かでもない。
「そんな…ワシの…ワシのブラックグールが」
「それはブラックグールでもなんでもない。グールにさえなれなかった失敗作のゾンビだ」
「なんだとっ」
「死ね校長!」
「しまった!」
グサ…!
俺の一撃は確かに校長の心臓を貫いた。
殺る以外に逃げ道はない。
スキルでもなんでもない。
俺は経験と勘からこの危険な状況を即座に感知した。
「喰らえ校長!」
俺はノータイムで校長の心臓めがけてナイフを突き出した。
ナイフは素人でも心臓さえ狙えばどんな人間だって一撃なはずだ。
「カーズくん横!」
「…えっ?」
「グアアアア!」
「速い!?」
ドコッ!
気づかぬうちに接近していたブラックグールというかゾンビの攻撃が俺にヒットする。
やはり知性が感じられないため、ゾンビという表現が的確だろう。
「グハッ!いつの間に」
「カーズくん!」
あまりの威力に俺は吹っ飛ばされた。
痛い…これだから戦闘というのは苦手なんだ。
この一撃はティナには意外だったらしく、絶望を強めて俺に問いかける。
「えっカーズくん強くなかったの?」
「俺が強い、わけないだろ」
「幻の剣スキル『残像剣』使えるんだし!もっと頑張ってよ」
「何回もいうが、残像剣ってなんだよ!」
「なら伝説の剣スキル『夢想剣』でもいいよ!校長を倒して」
「?なんだそれ」
ティナは絶望しながらも、俺を励ますあたり、『自分も殺される』と肌で感じているんだろう。
だが…
「ティナはたいしたもんだよ」
「えっ」
「俺に殺されそうになっても、校長から真実を告げられそうになっても、それでも生きようとしている。ものすごいポジティブだな」
「なにそれ褒めてるの」
「俺はティナが奴隷だと知って、驚いた。なぜなら奴隷にティナのような明るいヤツはいなかったからだ」
実際ティナは、もう立ち直っている。
校長から真実を告げられた時点で、普通の人間なら絶望のあまり立ち直れないだろう。
いやそもそもティナは、心に深い傷を抱えていた奴隷にさえ全く見えなかった。
てっきりリアル充実していた学生かと…
ティナが底抜けのバカでポジティブなバカであることが理由として考えられる。
それともう1つ、太陽のように明るいバカのようだ。
「いいから校長をやっつけてよ」
「?」
「私の居場所を奪った校長をやっつけて!カーズくんお願い!」
やっぱりそのティナでも悔しいのか。
ともあれこの校長は殺さないことには活路はない。
ようするに俺とティナは今、利害が一致している『仲間同士』ということだ。
「俺が前に出る。魔法で援護しろ」
「カーズくん!なにかとっておきのスキルが!?」
「しっかり援護しろよっ」
ダッ
いくら雑魚ティナとはいえ、それなりの攻撃方法はあるはずだ。
一瞬でも足止めできればあるいは…!
素人の俺でも注意さえ逸らせれば、校長の心臓にナイフを突き立てることは可能なはず。
「いまだっティナ!」
「アイスストーム」
「またそれかよっ」
それしかないのか。
思わずティナにツッコんだ。
氷の刃を作り出す魔法だが、ティナのはとても期待できない性能だ。
だがその落胆に反して、ティナの唱えた氷の魔法は以前の数十倍の大きさだった。
「えっ…!」
「氷の刃がデカい!?力を隠していたのかティナ」
「知らない!私知らないっ」
魔法を唱えた本人のティナが逆に驚いている。
どういうことだ?
大きい氷を見ると、妖しい光をまとい、紫水晶のように薄く黒光りしていた。
見覚えがある。
これは闇魔法『黒の魔法祭典』。
他者の魔法の威力を何倍、何十倍にも高めるリリスおなじみの闇魔法だ。
「さてはリリスのヤツ!」
姿を見せないリリスだが、この気まぐれはありがたい。
そして『貸し』なしで手助けとは珍しい。
期待はしていなかったが、ティナのことをよほど気に入ったんだろうか。
「カ、カーズくん!?どうすれば…」
「とにかくそれを放て!校長でもゾンビでもどっちでもいい!」
「いっけえええ!アイスストーム!」
ドカーン!
ティナの放ったアイスストームは、校長がやっとの思いで出したゾンビを体ごと貫いていた。
とてつもない即死級の威力だ。
校長はまさかの結果にしばし呆然とする。
もちろん、このチャンスを逃すほど愚かでもない。
「そんな…ワシの…ワシのブラックグールが」
「それはブラックグールでもなんでもない。グールにさえなれなかった失敗作のゾンビだ」
「なんだとっ」
「死ね校長!」
「しまった!」
グサ…!
俺の一撃は確かに校長の心臓を貫いた。
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