最強の召喚魔法を駆使して生きて!〜亡命の召喚騎士、生き延びるため必死に抗う~

DORA

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勝利ムードと【たすからない】

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「うああああ!」



手ごたえあり、確殺だ。
俺のナイフは確かに校長の心臓を貫いた。



「おのれえええ…」

「悪いな。俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ」
「やったあカーズくん!」

「…ずいぶん手こずったな」



何事もなかったかのように、リリスは姿を現していた。

コイツには俺がピンチだろうが全く関係ない。
それは過去の経験から何度も実証済みだ。
召喚騎士が召喚した召魔は決して、あるじの思い通りにならないという良い例だろう。




「チッ、今さら出てきたかリリス」
「?『隠れろ』といったのはあるじだぞ。しかも生き残ったではないか」

「…まあいい。最後はありがとよ。手伝ってくれて」
「なんのことだ?」
「手伝ったろ」
「手伝っていない」



手伝ったのをしらばっくれるのもリリスらしい。

まあ考えるだけムダな存在のコイツのことは放置して、この先どうするか考えなければ。
冷静に振り返ってみて、俺は死霊術研究所のボスを殺したわけだし。


タタタタッ


「カーズくん!やったね」
「あ、ああ。ティナもよくやったな」
「へへへーすごいでしょう私?」


ティナは明るい顔で俺に笑いかける。

ゾンビを倒したのが嬉しくてたまらないといった様子。
すごいのはリリスの闇魔法なんだが…
だが、今はティナの学生のノリに付き合ってやるのも悪くない気分だ。


「そうだな。ティナは実際たいしたもんだよ。色んな意味で」
「エッヘン!私もやればできるんだから」
「ハハハ…」


こういう学生気分も悪くない。
俺も召喚騎士でなければ、こういった人生もあったのだろうか。
ティナのような友人がいれば学園生活も楽しいはずだ。

場が和み勝利ムードにつつまれはじめた。


その時だった。


「グギャアアア!」
「教官ゾンビ!?」


胴の部分に穴を開けながらもゾンビが再度立ち上がった!


「失せろ。深淵≪ダーク≫」
「ギッ…!?」


立ち上がるやいなや、ゾンビは秒でリリスの闇魔法により身体ごと持って行かれた。

だが。
本当に気をつけなければならないのはそこではなかった。


パリーン!


「この煙…校長!?」

「ワシの…ワシの死霊術は最強なんじゃああ…死霊術ネクロフィア!」
「キャアアアア」


校長は最後の力を振り絞って、そして絶命した。

びっくりした。
唱えたはいいが、例え死霊術でも術者が死んでしまってはどうにもならない。
死霊術はどうやら間に合わなかったようだ。


「いや…違うぞあるじ!」
「なにっ」

「キシャアアア!」


リリスの声にハッとする。

そして信じたくない光景だが。
目の前には浅黒い肌と変わり果てたティナがいた…。


「ティナ!?ネクロフィリアをモロに喰らったのか」
「キシャアアアア!」
「おい!しっかりしろティナ」


明るかったティナの面影はなく。

ティナは今にも攻撃をしかけんばかりの狂気に満ちたゾンビと変わり果てている。

本来、死霊術ネクロフィリアは生者をアンデッドにするほどの恐るべき代物ではない。
それだけ校長の研究は進んでいたのかもしれない。

だが今はそんなことはどうでもいい。



「ティナ!終わったんだ!ぜんぶ!」
「キシャアアアア」
「もうお前は奴隷でもモルモットでもない。これからなんだ!」
「キシャアアアア」
「明るいお前がなんで…なんでこんなことに…!おいリリス!助けろ!ティナを助けてやってくれ!」



『貸し』でいい。
リリスならなんとかしてくれるはずだ。


スッ…


そうしてリリスは静かにティナの前に立った。


「深淵の治癒≪ダークヒール≫」
「キッ!?」


全てを癒し、そして優しく包み込むリリスのダークヒール。
その魔法にティナの動きが微動だに止まる。


「ティナは助かるのか!?」


そのあとリリスは悲しそうにいった。


「たすからない」


俺の問いかけにリリスは静かに首を横に振った。


「助からない!?」
「ダークヒールでアンデットの特性および攻撃性は消えた。が、それが精一杯だった」
「ということは…?」
「今のコイツは生きるしかばねだよ。しかばねのように生き、しかばねのように死ぬだけの存在」
「…!」



リリスでもダメなのか。

たしかにティナの肌は人間らしく戻っているが、その一方で全く動かなくなった。
目に光はなく、ただうつろに一点を見つめている。



「おいティナ!しっかりしろ!」
「…」
「おいティナ…」
「…」


必死に呼びかける俺の横目で。
リリスはティナを見つめ、冷めたように言った。


「なるほど。娘の寿命1000年…死霊術の被害者。そういうことか」
「興がさめたわっ」


リリスは目を閉じ、消えてしまった。






「ティナ…」
「カ…」
「!?」


そうしてあきらめかけていた、その時。
俺は確かにティナの口から大切な言葉を聞いた。


「カ…ズ…くん…ア…リ…ガ…」
「…!」


それ以降ティナが口を開くことは決してなかった。
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