15 / 18
さみだれ突きと【ゾンビゴーレム】
しおりを挟む
「これでとどめですわ!スキルさみだれ突き」
「グオオオオ…」
「チリと化しなさい」
俺はエレナに従い街からはずれた場所、ここでのモンスター討伐に同行していた。
自称S級冒険者のエレナは、ご自慢の槍で迫りくるモンスターたちを蹴散らしていく。
といってもモンスターはゴブリンやオーク、C級でも苦労しないモンスターたちだ。
「どうやらスキル『残像剣』を使えるあなたの出番はなさそうですわね?」
エレナは自分の力を示しニヤッとこちらを見る。
「ゴブリンやオークを殺してご満悦とは大したS級冒険者様だな」
「わたくしは水龍の加護の副団長ですわよ!?少し強いからって口の利き方がなっていないようですわね」
「…そんなことより本題はなんだ?戦力として俺を連れてきたわけでもあるまい」
「あら」
エレナは驚いた、といった様子でこちらを見る。
「察しだけは良いようですわね?品性はないですけれど」
「言いたいことがあるならさっさといえ」
妙な緊張感が辺りを走る。
トントン拍子で騎士団に入団できたはいいが、なにか臭う。
そもそもこのエレナというヤツ、冒険者と騎士を兼任しているようだがこれが理解できない。
本来、騎士も冒険者も兼任できるような生半可なものではない。
そしてエレナが常識を覆すだけの天才にも見えない。
「では単刀直入に。あなた、わたくしの直属の部下となりなさい」
「俺は騎士団に入団した。だから既にエレナの部下のつもりだったが」
「いや、えーと」
「態度を改めろ、ってことか?」
そういうことじゃなくて…とエレナは少し考え込む。
「あなたこの国の英雄、グイン様のことを悪く言っていたわね?」
「だったらなんだ」
「何度も言いますがグイン様への悪口は重罪でしてよ?」
「それは悪かった。以降気をつけるよ」
「そんなに…グイン様のことがお嫌い?」
エレナは高圧的に質問を投げかけた。
ちなみにこの国の英雄(らしい)グインと俺は帝国の同じ召喚騎士同士で面識がある。
仲も決して悪くない。
俺は闇の悪魔リリス、グインは水の龍ヴリドラを召魔として召喚している。
ともに仲間として戦場に立ったこともあるくらいだ。
だがこの場で、そのことをいうわけにもいかない。
俺は適当に嘘をついた。
「嫌いだね。あいつは突っ走ることしか頭にないからな」
「それは政治的な意味ですわね?」
「??まあ、そんな感じかな??」
そこまでいうと、エレナの顔が明るくなった。
先ほどとは違い野心に満ちた表情をしている。
「では…この国、正しい指導のもと、早く立て直さなきゃいけないですわね?」
「ん?まあそうなるのかな?」
立て直すもなにもない。
水の国ヴリドラは近いうち『終わり』だ。
学生で構成されたエレナの騎士団を見ていてそう思う。
戦争などまるで知らないお遊びレベルだ。
帝国が腰を上げればひとひねりだろう。
「あなたの考えは良く分かりましたわ。それで本題に戻りますけど…」
「!ちょっと待て」
イヤな空気が流れた。
命を脅かしうる敵の気配がする。
これも人間流に言ったらスキルというヤツなのだろうか。
その時後ろから大きな音がする。
ゴゴゴ…
「なんですのあれは!?」
「ゾンビゴーレム!?」
俺たちの目の前に10倍の大きさはある泥をまとった人形が立ちはだかる。
ゾンビゴーレム。
戦場で戦力として充分に通用する。
その従順な利便性と高い再生力からそこらの召魔がよく好んで使っていたのを見た気がする。
どちらにせよ今は味方でないことは確かだ。
「エレナはあれと戦ったことは?」
「初めて見ましたわ!」
それもそうか。
この国であのようなモンスターが出没すること自体がイレギュラーだろう。
つまりエレナは戦力として計算できないわけだが、どうするべきか…。
色々と思案していたその時だった。
バッ!
「とにかく見たことないレアモンスターを討伐し、これで【蒼のエレナ】の名声もますます上がりますわっ。あなたはそこで見ていなさい!」
「やめろ危険だぞ!」
「渾身の力を込めて…スキルさみだれ突き・極!」
「グオオオオ…」
「チリと化しなさい」
俺はエレナに従い街からはずれた場所、ここでのモンスター討伐に同行していた。
自称S級冒険者のエレナは、ご自慢の槍で迫りくるモンスターたちを蹴散らしていく。
といってもモンスターはゴブリンやオーク、C級でも苦労しないモンスターたちだ。
「どうやらスキル『残像剣』を使えるあなたの出番はなさそうですわね?」
エレナは自分の力を示しニヤッとこちらを見る。
「ゴブリンやオークを殺してご満悦とは大したS級冒険者様だな」
「わたくしは水龍の加護の副団長ですわよ!?少し強いからって口の利き方がなっていないようですわね」
「…そんなことより本題はなんだ?戦力として俺を連れてきたわけでもあるまい」
「あら」
エレナは驚いた、といった様子でこちらを見る。
「察しだけは良いようですわね?品性はないですけれど」
「言いたいことがあるならさっさといえ」
妙な緊張感が辺りを走る。
トントン拍子で騎士団に入団できたはいいが、なにか臭う。
そもそもこのエレナというヤツ、冒険者と騎士を兼任しているようだがこれが理解できない。
本来、騎士も冒険者も兼任できるような生半可なものではない。
そしてエレナが常識を覆すだけの天才にも見えない。
「では単刀直入に。あなた、わたくしの直属の部下となりなさい」
「俺は騎士団に入団した。だから既にエレナの部下のつもりだったが」
「いや、えーと」
「態度を改めろ、ってことか?」
そういうことじゃなくて…とエレナは少し考え込む。
「あなたこの国の英雄、グイン様のことを悪く言っていたわね?」
「だったらなんだ」
「何度も言いますがグイン様への悪口は重罪でしてよ?」
「それは悪かった。以降気をつけるよ」
「そんなに…グイン様のことがお嫌い?」
エレナは高圧的に質問を投げかけた。
ちなみにこの国の英雄(らしい)グインと俺は帝国の同じ召喚騎士同士で面識がある。
仲も決して悪くない。
俺は闇の悪魔リリス、グインは水の龍ヴリドラを召魔として召喚している。
ともに仲間として戦場に立ったこともあるくらいだ。
だがこの場で、そのことをいうわけにもいかない。
俺は適当に嘘をついた。
「嫌いだね。あいつは突っ走ることしか頭にないからな」
「それは政治的な意味ですわね?」
「??まあ、そんな感じかな??」
そこまでいうと、エレナの顔が明るくなった。
先ほどとは違い野心に満ちた表情をしている。
「では…この国、正しい指導のもと、早く立て直さなきゃいけないですわね?」
「ん?まあそうなるのかな?」
立て直すもなにもない。
水の国ヴリドラは近いうち『終わり』だ。
学生で構成されたエレナの騎士団を見ていてそう思う。
戦争などまるで知らないお遊びレベルだ。
帝国が腰を上げればひとひねりだろう。
「あなたの考えは良く分かりましたわ。それで本題に戻りますけど…」
「!ちょっと待て」
イヤな空気が流れた。
命を脅かしうる敵の気配がする。
これも人間流に言ったらスキルというヤツなのだろうか。
その時後ろから大きな音がする。
ゴゴゴ…
「なんですのあれは!?」
「ゾンビゴーレム!?」
俺たちの目の前に10倍の大きさはある泥をまとった人形が立ちはだかる。
ゾンビゴーレム。
戦場で戦力として充分に通用する。
その従順な利便性と高い再生力からそこらの召魔がよく好んで使っていたのを見た気がする。
どちらにせよ今は味方でないことは確かだ。
「エレナはあれと戦ったことは?」
「初めて見ましたわ!」
それもそうか。
この国であのようなモンスターが出没すること自体がイレギュラーだろう。
つまりエレナは戦力として計算できないわけだが、どうするべきか…。
色々と思案していたその時だった。
バッ!
「とにかく見たことないレアモンスターを討伐し、これで【蒼のエレナ】の名声もますます上がりますわっ。あなたはそこで見ていなさい!」
「やめろ危険だぞ!」
「渾身の力を込めて…スキルさみだれ突き・極!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる