最強の召喚魔法を駆使して生きて!〜亡命の召喚騎士、生き延びるため必死に抗う~

DORA

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魔法石と【第2形態】

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エレナの必殺技らしき一撃は巨体のゾンビゴーレムを中心から大きく貫いた。

ズシン!

ゾンビゴーレムは大きな音を立ててその場に倒れ込んでいく。



「やったか!?」
「ハァ…ハァ」



技を放ったエレナはお疲れのようだが、俺は多少興奮してしまった。

なぜなら、この構図は戦場ではよくある光景だったからだ。
実際に戦場で、召喚騎士を守るため、このようなザコ敵の露払いをするのが騎士のおもな役割だ。



「!まだですわよっ」



必殺技が威力不足だったようでゾンビゴーレムは立ち上がろうとする。

エレナは奥の手といわんばかりに胸にさげていたペンダントの宝石を割った。
見覚えのある宝石だ。
おそらく貴族の騎士が好んで使っていた高価な魔法石と同等のものだろう。



「おいっ!そこまでやる必要ないんじゃ」
「エレナ=ミスーレ家の誇りにかけて!ウォーターストーム!」


ズゴゴゴゴ!


強烈な水の嵐がゾンビゴーレムを襲う。
魔法石は強力な魔法が封じ込められているとっておきのアイテムだ。
しかし高価な割には1回限りの消耗品でもある。
そのため、ここぞという場面で使用は限られているのが常識。

エレナはゾンビゴーレムを跡形もなく粉砕したようでご満悦だ。



「これでわかりまして?蒼のエレナは絶対に敵に回してはいけない本物の実力者だということを」
「もったいない…ゾンビゴーレムごときに魔法石使う騎士とか初めて見たぞ」
「なんですって!?」



エレナは俺の言葉に不機嫌になりながら死体のゾンビゴーレムに近づいていく。



「あとは素材を持ち帰って…ギルドに報告ですわ」
「待てっ、近づくんじゃない」
「えっ?」


もったいないと言ったのには理由がある。

なぜならゾンビゴーレムはまだ第1形態だったからだ。
厄介な第2形態のためにも温存して戦う必要があった。
そして、第2形態のいやらしさが召魔にも気に入られている要因だろう。

そのいやらしさについてだが…


ブーーン


「キャアアアア!死体からハエが!?」
「遅かったか!」


ゾンビゴーレムの死体から出てきた無数のハエが瞬く間にエレナの身体にまとわりついた。

身体全体がハエで覆われた人間。
戦場では良く見た光景だ。
こうなれば、騎士といえどもどうにもならない。
ゾンビゴーレムを大量に展開し大量のハエをばら撒くのは強力な召魔『水晶のミラ』もやっていたように一つの戦術といえる。

攻撃性の高い無数のハエは対象の皮膚を噛み、そして卵を植え付けるのだ。



「た…たずけてぇ…」
「いま助けるぞ」



バリン!

俺は懐にいれていた聖水を手につけた。
そして、エレナの身体についているハエを丁寧に手でほろっていく。
ハエが寄りつかないよう対策している召喚騎士の俺だからこそできる対処法だ。



「あ…あ…」
「チッ。むかしのイヤなことを思い出すぜ」



貴族らしい立ち振る舞いだったエレナの面影はもはやどこにもない。

まとわりついた時間は数秒といえども。
当然ながらハエはわずかな時間の間に身体の至る所をかじり、そして卵を産みつけている。
卵は身体の奥深くに浸透し、内蔵を食べてはやがて成虫する。
ようするに、エレナはこのままでは死も同然というわけだ。



「そしてハエはしばらくたつと消滅する…」
「たすけて…たすけて」



エレナからか細い声で助けを求める声が連呼される。

実際エレナの今の状況はヒドイありさまだ。
特に制服を着ていなかった顔面付近の損傷がひどい。
というか、仮にもモンスター退治なのに制服1つで戦いにいくのもどうかと思うが。

どちらにせよ、思いがけない形で秘宝がまた一歩近づいたこととなる。



「エレナ、よく聞け。お前の身体には凄まじい速度で成虫するハエの卵が産みつけられてる。それも何万、何十万と無数の数だ」
「ひ…あっ…!」
「助かりたければ回復魔法を受けるほかない。ただし条件がある」
「なんでも…するから」

「俺の従順な手下となれ。ノーといわない部下だ。というのも、あるものが欲しいんだ。エレナに協力してほしい」
「は…」
「それともこのまま虫の温床となって死ぬか?」
「い…や」



そういえば、はじめエレナは逆に俺を囲もうと目論んでいた気がする。

コイツにはコイツの目的があったみたいだが、皮肉なもので俺に利用される結末になるとは。
ただ、元が高圧的な態度だったし、さほど心は痛まないが。
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