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第一章 男装陰陽師と鬼の皇帝
謁見
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呪封師とは、特殊な封印術を用いて呪いを封印する術師のことである。
国に災いをもたらす邪悪なあやかしや怨念や呪術によるおそろしい呪いを封印するために存在する。
呪封師は和国に数えるほどしか存在しない。中でも術師自身の体に封印する呪封術がもっとも強力であり、扱える者もごくわずかである。
***
庸国に招かれた天御門 星は、長い船旅の末にようやく皇帝陛下に謁見することができた。
玉座の前でひざまずき、両手と頭を地につける。
「わ、和国の天御門 星が、皇帝陛下に拝謁いたし、ましゅる」
初めての謁見に緊張しながら、正しい礼儀作法で皇帝陛下に御挨拶できたと星は思った。
(船の中で何度も練習したのだから、きちんと御挨拶できているはず……)
かすかな笑い声が聞こえてくる。脇に控えている太監が失笑しているようだ。口元を抑えてはいるが、和国出身の星の話し方を蔑んでいるのかもしれない。
(もしかして何か間違えてしまった? どうしよう……)
不安と恐怖で、玉座の前から逃げ出したくなった。だが許可なく動くことも、今の星には許されない。
「まだ庸国の言葉に慣れておらぬのだな。気にせずともよい。天御門 星、おもてをあげよ」
必死に学んだ庸国の言葉だったが、ぎこちなさが残ってしまうようだ。恥ずかしさで体が熱くなるのを感じながら、星はゆっくりと顔をあげた。
庸国皇帝の顔と姿を見て、気配を感じた瞬間。
星は悲鳴をあげそうになってしまった。
「陰陽師天御門 星よ。和国より海を越え、はるばるよく来てくれた。朕が庸国皇帝 雷烈である。華奢な体で危険な船旅はさぞかし辛かったことであろう。無事にそなたに会うことができたことを朕は嬉しく思うぞ」
皇帝陛下の歓迎の御言葉を聞きながら、星は唇を噛んで必死に叫び声を抑え込んだ。
(この方は、庸国の皇帝陛下は……)
絶叫はしなかったが、心の声と体の震えまでは抑えられなかった。
緊張と不安で自分の感覚がおかしくなっているのではないだろうか。星は皇帝雷烈の気配を再度感じてみた。
(霊視せずともわかる。皇帝陛下の気配は鬼だ。庸国の皇帝が鬼なの、か……?)
皇帝陛下のご尊顔を長く見つめるのは無礼であることも忘れ、星は雷烈から目をそらすことができない。若き皇帝が見惚れるほど整った容姿をしていたからではない。鬼の気配から目をそらすことができないのだ。
硬直する星の様子をじっくりと眺めながら、雷烈は満足そうに微笑んだ。
「そなたが来るのを待ちわびていたぞ。ようやく会えたな」
若き皇帝に視線を向けられると、星の心臓がどくんと跳ねた。雷烈の声を聞いているだけで、顔と体に焦れるような熱を帯びるのを感じる。それだけ力の強い鬼ということなのだろうか。
(皇帝陛下が鬼……。信じられないことだ。けれど皇帝が鬼であっても『私』は逃げるわけにはいかない。兄様の敵を討つために、はるばる庸国まで来たのだから)
和国より海を渡ってやってきた華奢で小柄な陰陽師には、大きな秘密があった。
(鬼の皇帝陛下が自分を人間だと偽っているならば。それはある意味、私も同じことだ。女の身で、男と偽り庸国に来たのだもの)
和国から来た陰陽師の正体は、双子の兄の力を受け継いだ少女だった。
「陰陽師天御門星よ。そなたには後宮に現れる化け物を退治してほしい。期待しておるぞ」
和国より星が呼び寄せられた理由は、数多の妃がいる後宮内の化け物退治だ。庸国の道士では退治することができず、今も多くの者が怯えて暮らしているという。
軽く息を吸い、心を落ち着かせてから星は頭を下げる。
「はい。精一杯務めさせていただき、ましゅる!」
「うむ。よろしく頼む、天御門星」
庸国の若き皇帝雷烈と、和国の陰陽師天御門星の初めての出会いであった。
国に災いをもたらす邪悪なあやかしや怨念や呪術によるおそろしい呪いを封印するために存在する。
呪封師は和国に数えるほどしか存在しない。中でも術師自身の体に封印する呪封術がもっとも強力であり、扱える者もごくわずかである。
***
庸国に招かれた天御門 星は、長い船旅の末にようやく皇帝陛下に謁見することができた。
玉座の前でひざまずき、両手と頭を地につける。
「わ、和国の天御門 星が、皇帝陛下に拝謁いたし、ましゅる」
初めての謁見に緊張しながら、正しい礼儀作法で皇帝陛下に御挨拶できたと星は思った。
(船の中で何度も練習したのだから、きちんと御挨拶できているはず……)
かすかな笑い声が聞こえてくる。脇に控えている太監が失笑しているようだ。口元を抑えてはいるが、和国出身の星の話し方を蔑んでいるのかもしれない。
(もしかして何か間違えてしまった? どうしよう……)
不安と恐怖で、玉座の前から逃げ出したくなった。だが許可なく動くことも、今の星には許されない。
「まだ庸国の言葉に慣れておらぬのだな。気にせずともよい。天御門 星、おもてをあげよ」
必死に学んだ庸国の言葉だったが、ぎこちなさが残ってしまうようだ。恥ずかしさで体が熱くなるのを感じながら、星はゆっくりと顔をあげた。
庸国皇帝の顔と姿を見て、気配を感じた瞬間。
星は悲鳴をあげそうになってしまった。
「陰陽師天御門 星よ。和国より海を越え、はるばるよく来てくれた。朕が庸国皇帝 雷烈である。華奢な体で危険な船旅はさぞかし辛かったことであろう。無事にそなたに会うことができたことを朕は嬉しく思うぞ」
皇帝陛下の歓迎の御言葉を聞きながら、星は唇を噛んで必死に叫び声を抑え込んだ。
(この方は、庸国の皇帝陛下は……)
絶叫はしなかったが、心の声と体の震えまでは抑えられなかった。
緊張と不安で自分の感覚がおかしくなっているのではないだろうか。星は皇帝雷烈の気配を再度感じてみた。
(霊視せずともわかる。皇帝陛下の気配は鬼だ。庸国の皇帝が鬼なの、か……?)
皇帝陛下のご尊顔を長く見つめるのは無礼であることも忘れ、星は雷烈から目をそらすことができない。若き皇帝が見惚れるほど整った容姿をしていたからではない。鬼の気配から目をそらすことができないのだ。
硬直する星の様子をじっくりと眺めながら、雷烈は満足そうに微笑んだ。
「そなたが来るのを待ちわびていたぞ。ようやく会えたな」
若き皇帝に視線を向けられると、星の心臓がどくんと跳ねた。雷烈の声を聞いているだけで、顔と体に焦れるような熱を帯びるのを感じる。それだけ力の強い鬼ということなのだろうか。
(皇帝陛下が鬼……。信じられないことだ。けれど皇帝が鬼であっても『私』は逃げるわけにはいかない。兄様の敵を討つために、はるばる庸国まで来たのだから)
和国より海を渡ってやってきた華奢で小柄な陰陽師には、大きな秘密があった。
(鬼の皇帝陛下が自分を人間だと偽っているならば。それはある意味、私も同じことだ。女の身で、男と偽り庸国に来たのだもの)
和国から来た陰陽師の正体は、双子の兄の力を受け継いだ少女だった。
「陰陽師天御門星よ。そなたには後宮に現れる化け物を退治してほしい。期待しておるぞ」
和国より星が呼び寄せられた理由は、数多の妃がいる後宮内の化け物退治だ。庸国の道士では退治することができず、今も多くの者が怯えて暮らしているという。
軽く息を吸い、心を落ち着かせてから星は頭を下げる。
「はい。精一杯務めさせていただき、ましゅる!」
「うむ。よろしく頼む、天御門星」
庸国の若き皇帝雷烈と、和国の陰陽師天御門星の初めての出会いであった。
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